第38話 神々の兵器
インドに着いたエンリ王子たち一行。
タイガとはここで別れ、エンリたちは秘宝の探索に乗り出した。
ここにも海賊は居る。
港に船を泊めて上陸し、街の酒場で彼等から話を聞く。
酒場に居る海賊は言った。
「海賊バスコのひとつながりの大秘宝・・・ねぇ」
「かなり前なんだが、そんな奴が居たって話を知らないか?」とエンリ。
その隣に居る別の海賊が言った。
「ちょっと前なら覚えちゃいるが、そんな昔じゃチト解らねえなぁ。海賊がねらうお宝だって、ここにゃ沢山あるからなぁ。悪いなぁ。他をあたってくれよ。で、あんたら、そいつの何なのさ」
他の酒場に行って、海賊に話を聞く。
海賊は「世界の海を支配ねぇ」
「海賊が使う武器みたいなもんかな?」と別の海賊。
「一発で海軍の艦隊を吹っ飛ばすとか」と、もう一人の海賊。
すると店の人が言った。
「そーいや、大昔の神がそんなの使ったって聞いた事がある」
「神話だろ?」とエンリ。
だが、店の人は「今もどこかにそれが眠ってるって話だ。神殿に行って賢者に聞くのが早いんじゃないのか?」
神殿に行く。
石造りの神殿を飾る女神像をすりすりして、カルロが言った。
「やっぱり俺、改宗しようかな」
アーサーがあきれ顔で「そういうの、ぶっ飛ばされるぞ」
神殿に居る学者に訊ねる。
学者は言った。
「遥か古代に神々の戦争がありました。空を飛ぶ戦車を駈り、地上を一瞬で滅ぼす兵器を使ったといいます」
「その神の名は?」とエンリが訊ねる。
学者は「インドラ神」と答える。
「その兵器が今もあるという話を聞いたのですが」とアーサーが訊ねる。
学者は「北にインドラ神の神殿があります。眠っているとすれば、多分そこに」
場所を教わって、その場所に向かう。
神殿に向かう道中で、エンリは言った。
「なぁ、神様って大抵自然現象の神格化だよな?」
「太陽みたいに、実は真っ赤に焼けた丸い岩の塊だった・・・とか?」とニケ。
「じゃ武器って実は自然災害の類か?」とアーサー。
「地震とか」とエンリ。
「雷とか」とジロキチ。
「火事とか」とカルロ。
「親父とか」とタルタ。
「いや、親父は関係無い」とアーサー。
エンリが「ってかそれ、中年男性差別だろ。大体、オヤジがどんな災害を・・・」
「カミナリを落とすとか」とタルタ。
「それは別枠に出てるし、ってかそのカミナリと違うと思う」とアーサー。
「ちゃぶ台ひっくり返すとか」とカルロ。
「あれはスポーツ界を追放されて建設労働者になった奴の話だと思うが」とエンリ。
ジロキチが「その親父と喧嘩してグレた息子が更生して、コンダラとかいう重い道具引っ張って、グランド整備の労働奉仕を・・・」
「いい話だなぁ」とタルタ。
エンリは「いや、何か違う気がするが・・・ってか、俺たち、何の話してたんだ?」
「自然災害だろ?」とジロキチ。
「火事も自然災害じゃなくて人災だぞ」とアーサー。
「けど、キンカ帝国の人たちは、鉄砲を見て神の武器だと思ったのよね?」とニケ。
「大昔に別の文明があって、そこの人たちが使った最終兵器が神の武器として神話に残ってる・・・なんて事も」とタルタ。。
「どこかで聞いたような話だな」とカルロ。
「とにかく行って見ましょう」と人魚姫リラ。
北の神殿に着く。そして神殿に居る学者に訊ねる。
「東にインドラ神が降臨したという聖地があります。そこの神殿に行けば・・・」と学者は言った。
場所を教わって、その場所に向かう。
東の神殿に着く。そして神殿に居る学者に訊ねる。
「南にインドラ神の化身が開いたという寺院があります。そこの神殿に行けば・・・」と学者は言った。
場所を教わって、その場所に向かう。
南の神殿に着く。そして神殿に居る学者に訊ねる。
「西にインドラ神の宝具を納めた神殿があります。そこの神殿に行けば・・・」と学者は言った。
場所を教わって、その場所に向かう。
西の神殿に着く。
その石造りの建造物を見て、タルタが「ここ、見た事あるような気がするんだが・・・」
「神殿なんて大概似たようなものさ」とエンリ。
神殿を飾る女神像をすりすりして、カルロが言った。
「やっぱり俺、改宗しようかな」
アーサーがあきれ顔で「そういうの、ぶっ飛ばされるぞ」
そんな二人を見て、何か既視感のようなものを感じるリラ。
神殿に入り、そこに居る学者に・・・。
学者は彼等を見て「おや皆さん、何か忘れ物ですか?」
エンリたち唖然、そして言った。
「最初の神殿に戻って来たんじゃねーか」
気を取り直してアーサーが訊ねた。
「それで、ここはインドラ神の宝具があると聞いたのですが」
学者は「インドラ神ではなくてシバ神ですよ。戦を司る神と死を司る神。たまに勘違いする人が居るんです。ごらんになりますか?」
「是非」とエンリたち。
学者はエンリたちを神殿の奥に案内する。
そして、大事そうに祀られている、それを示して言った。
「これがシバ神の祭具、聖なるリンガです」
「解った」とエンリたちは一言。
エンリたちの間に残念な空気が漂う。
「あれは絶対違う」とアーサーが言った。
リラは怪訝顔で「王子様、あれって何ですか?」
王子は「ググれば解る」と一言。
するとカルロが「けど、ある意味強力な武器なんじゃ・・・」
エンリはカルロに「そういうのはいいから」
がっかりして神殿を出るエンリ王子たち。
神殿の入口に年老いた修行者が居た。
修行者はエンリたちに言った。
「あんたら、インドラ神のヴァジュラの火をお探しか?」
「ヴァジュラっていうんですか?」とエンリ。
「地上を焼き滅ぼす恐ろしい神の武器さ。北の山岳に封じられたと聞いておる。行ってみるかい?」と修行者。
エンリは「場所、教えてください」
平原の北に連なる巨大な山岳。
遠くから見ても、その巨大さが分かる。
それを眺めてアーサーは「これ、スイスの山の倍は高さがあるぞ」
「どうやって登るんだよ」とタルタ。
「麓に神殿があるって言ってたぞ」とエンリ。
麓の神殿に行く。そこに居る学者に訊ねる。
学者は「この山を登ると洞窟寺院がある。そこに封じられているという」
「盗賊が狙ったりしないんですか?」とエンリ。
学者は「険しい地が阻んでいる」
エンリはアーサーに「もし盗賊が手に入れて悪用されたら大変な事になるぞ」
そして学者に「どこから登るんですか?」と尋ねた。
学者は「神殿の背後からだ」
神殿背後にまわると、そこはどこまでも続く絶壁だった。
人魚姫はその崖を見上げて「どうやって登るんですか?」
「よじ登るのさ。何しろここは修行者の寺院なのだから」とタルタは事も無げに言った。
タルタ・ジロキチ・カルロは早速、崖をよじ登り始めた。
「私たちはどーするのよ」とニケが口を尖らせる。
「この程度の崖も登れないなら冒険なんて無理だろ」とタルタはドヤ顔。
「まー指くわえて見てなよ」とジロキチも・・・。
断崖の岩の突き出た所で一息つき、タルタは言った。
「だいぶ登ったな」
「けど、まだあんなに」と、上に続く断崖を見上げるカルロ。
「けど、ここまで来れたんだ」と、下を見下ろすジロキチ。
「そのうち日が暮れるぞ」とカルロが言った。
その時、背後で「苦行ごくろうさん」の声。
空中で、ドラゴンの背中に乗ったエンリ王子ら男女四人が笑っている。
それを見てタルタは「ずるいぞ。俺たちも乗せろ」
「この程度の崖も登れないなら冒険なんて無理とか言ってなかったっけ?」とニケが笑う。
エンリは溜息をついて言った。
「まあそう言うな。あいつらも戦力なんだ。ファフ、乗せてやれ」




