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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
373/562

第373話 異界へ潜入

エンリ王子はアルビ十字軍に介入して撤退させると、独自にレーモン伯領のカタリ派支部を制圧した。

そして、逮捕したカタリ派支部のリーダー、自称完徳者に対する自白の魔法が、ついにカタリ教団の本拠地に関する情報を引き出した。

本拠地はアビニョンの郊外の、厳重に隠蔽された固有結界の中にある。

そこに入るためのいつくかの魔道具、そして信者カードと記憶魔道具が押収された。



レーモン城では、ポルタ諜報局と魔導局の職員たちを使って押収品を調べるカルロとアーサー。

エンリが様子を見に行くと、二人はあれこれ状況を報告する。

「通信魔道具の類が無いですね」とアーサー。

カルロが「霊波を辿られるのを警戒しているんだと思いますよ」


教義書と幾つかの聖典が発見された。

調査に参加していたレーモン城付きの僧侶が「古い時代の唯一神信仰の影響を受けていますね。かなり神秘主義の色彩が強い」

「東方教会の聖典の記述と同じ部分が多々あります。もしかしたら向うに起源があるのかも」と魔導局の職員。

「東ローマを支えた東方教会の本山はオッタマの支配下にあって、辛うじて信仰が許されている。そういう中から活路を求めて西へ・・・って事なのでは?」とアーサー。

カルロが「ロシアの教会がその流れですから、背後にあの国が関わっている可能性も考えられます」

「国教会同盟に対抗するための繋がりの一端だとしたら、裏で双方を操っている者が居るのかもな」とエンリ王子。


鎮圧完了後の遺留品調査に参加していた諜報局員が、難しい顔で報告に来た。

「これなんですが」

そう言って彼が差し出した、箱に一杯の魔石。それを見てエンリは「かなりの数の精霊石だな」

「資源として希少なこの魔石の、この数は異常ですね」とアーサー

「引き続き調査を進めてくれ。俺は本部制圧の準備のため、ポルタに戻る」

そう言うと、エンリは現場の指揮を二人に任せ、他の部下たちとともに一旦ポルタに帰国した。



エンリはポルタ大学の魔法学部へ行き、パラケルサスの居る学部長室へ。

そこには遠坂・間桐・ローラが居た。


「どうされました? エンリ王子」

学部長室に居たパラケルサスにそう声をかけられ、エンリは「実は・・・って、先客か?」

「遠坂が学部長に相談があって来たんですけど」と間桐。

「だったら終わるまで待とう」

そうエンリが言うと、パラケルサスは「いえ、王子は緊急の要件なのでは? カタリ教団討伐の関係ですよね?」

「それなんだが・・・」


エンリは支部で押収された精霊石を出す。

「精霊石ですか?」

目を丸くしてそう言うパラケルサスに、エンリは「カタリ教団の支部で押収したものなんだが・・・」

「貴重な精霊石のこの数は異常ですね」

そう言って難しい表情を見せるパラケルサスに、エンリは「どう思う? とりあえずこれまでの調査で判明した事は、この報告にまとめさせたんだが・・・」



レーモン城に居るスタッフがまとめた報告書を一通り読むパラケルサス。

「なるほど、恐らくその固有結界も、この精霊石の魔力によるものでしょうね。これを使えば魔力に乏しい者でも相当な魔素を使った大規模な術式が可能になります。眷獣の召喚もこれの力でしょうね。本部制圧には私も参加させて下さい」


「それより、国軍は動かせないの?」

そうニケが言うと、エンリは「ポルタを丸ごと巻き込む事になるからなぁ」

ニケは口を尖らせて「戦争はお金儲けの最大のチャンスよ」

「あのなぁ」

ジロキチが「動かすならスパニア軍だろ。ポルタの軍は弱いからなぁ」

「悪かったな」

そう言ってエンリは口を尖らせると、一呼吸おいて気をとり直して「スパニアも表向きは第三者の立場で居て貰うつもりだ」

「イザベラ様やフェリペ殿下を巻き込む訳にはいきませんからね」

そう若狭が言うと、エンリは「ってか、いざという時、イザベラの裏工作が物を言う」

「・・・・・・・・・・」


横で話を聞いていた遠坂が「俺たちも参加させて下さい」

「お前等が?」

遠坂は言った。

「実は、魔法戦闘で忍術にユーロの魔術を応用する仕組みを考えていたんですが、精霊石って瞬時に大きな魔力を出しますから、新しい技に凄い応用が出来ると思うんです」



パラケルサスたちを連れてトゥールに戻るエンリと、彼の仲間たち。

パラケルサスは調査に参加し、魔導士たちとともに押収品の分析に加わる。


完徳者の証言とも照らし合わせ、本部のある固有結界に入る仕組みはほぼ解明された。

「彼等の本拠は固有結界の中にあって、内側からしか開かない。そして入口を移動する事が可能です」

そう説明するパラケルサスに、エンリは「つまり、察知されたら侵入は困難って訳か。軍を引き連れるような目立つ行動は不可だな」

パラケルサスは「移動できなくする妨害方式を構築してみましょう」

「解った。その間にパリの王宮に行って、ルイ王に会う」

そうエンリが言うと、パラケルサスは「どちらの?」

「六歳児に通じる話では無いだろ。先王に・・・だよ」



エンリはパリの王宮へ。

そして、王宮の客間でルイ先王と面会。先王の脇にはリシュリュー宰相。


「恋人として会いに来てくれたのですね?」

そう真顔で言う先王に、エンリは「そういう冗談は止めて下さい。カタリ教団の件ですよ」

すると、先王は期待半分に「南フランスは教皇派の巣窟だ。うまくいけば丸ごと没収して王領に・・・」

「そう、うまく行くとお考えで?」

そう疑問声で言うエンリに、リシュリューが「いかないでしょうね。教皇派が黙っていない。それに、その背後に居る筈のドイツ皇帝も、あれこれ手を打って来るでしょうし」

「ドイツは外交革命で敵対的な動きは封じてあるのだよな?」

そう先王が言うと、リシュリューは「とは言っても、裏で何をやるか解りませんからね」


そしてエンリは言った。

「それと、どうやら東方教会が、カタリ派の教義の元らしいのです」

「だとしたら、その背後にロシアが居る可能性がありますね。いざという時は、あそこを武力で押さえる手筈を整えておきましょう」とリシュリュー。

「それとエンリ王子。彼等を連れて行ってくれないか。きっと役に立つと思う」

そう言ってルイ先王が合図すると、三銃士が部屋に入ってきた。



エンリは仲間たちと、三銃士を連れてトゥールに戻る。


一行を出迎えたパラケルサスが、トゥール城の調査室で、その後の押収魔道具の解析成果について報告。

「どうやら本拠地に出入り出来るのは、完徳者自身と彼に引率された信者だけのようですね」

「あの逮捕した完徳者、協力者になってくれるかな?」

そう言ってエンリが難しい顔をすると、パラケルサスも「無理でしょうね。ですが、彼の霊波をコピーする道具があります」

「そんな事が?・・・」


「そういうものを発明した人が居るんです」

そう言ってパラケルサスが出したものを見て、エンリ唖然。

「これ、ジョンケイのヘッドギア。あの教皇の霊波をコピーするっていう残念発明かよ。速攻でバレると思うぞ」

「乗り込んだら固有結界入口の移動を妨害します。乗り込んだ所で向うの魔導システムを押えて、軍を移動させて制圧する」

そんなパラケルサスの立案に、エンリは「もう少しスマートに出来ないのかよ」と言って溜息。



そしてパラケルサスは言った。

「それと、完徳者に偽装するには、特殊な身体条件がありまして・・・」

「過酷な修行が必要とか?」

そう問うエンリに、パラケルサスは「あなたでも物理的に可能な修行ですよ」

「何だよ物理的って」と、疑問顔で言うエンリ。

「やってみますか?」

「今は非常時だ。やれる事なら何だってやるさ」

そうドヤ顔で決意表明するエンリに、パラケルサスは言った。

「長期間のオナ禁です」


エンリ唖然。そして一瞬で先ほどの決意表明を撤回する。

「絶対嫌だ! ってか奴ら、そんな事をやってるのかよ」

「禁欲は本来の坊主の修行の基本ですよ」とアラミスが口を挟む。

「禁欲って女を遠ざけるんだよな? それで男ならいいだろって・・・・・」

そうエンリが言うと、アラミスは「異性愛以上にアウトですから」

「自分で出すのは?」

そう問われてアラミスは「更にアウト」

「寝てる間に勝手に出るのは?」

そう問われてアラミスは「夢魔と交わったって事になるのでアウト」


エンリは溜息をついて「つまり溜まる一方と?」

カルロが「けど、女性は男性のそういうのを求めてますよ。男は我慢してナンボだって」

「それで、欲求不満で野獣みたいになるのが女の理想か?」

そうエンリが頭痛顔で言うと、カルロは「修学旅行で女子全員温泉でまったりしている間、男子は全員山寺修行で極限我慢させられるんですよ。それで欲求不満で野獣みたいになった奴等を、メイド様な生徒会長女主人公が、イケメンなヒロメンと一緒に千切っては投げ・・・」

「そういう危ない少女漫画のステータスヒャッハーには心底関わりたくない」と言って溜息をつくエンリ。


アトスが「理屈は理解し兼ねますが、フェミナチ党のタージマとかいうカルト教祖が、"男には勝手に発射する権利は無い"と言ってます」

ダルタニアンが「"てれびたっくる"という布教芝居で彼女が言ってた台詞ですよね」

エンリは溜息をついて「自分で出すにも女の許可が必要ってか? カタリ教団よりそっちを先に潰す必用があるのでは・・・」

「いや、モテたいならやる価値はあります。男性フォルモン増進に効き目があるとかで、モテを目指す男子はみんなやってます」

そうカルロが言うと、エンリは「そうまでしてモテたいとは思わん」



「それより王子」とアーサーが困り顔で・・・。

「何だよ」

アーサーは背後に居る人たちを指して「さっきから女性陣がドン引きしてるんですけど・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

そこには、赤面しているリラと若狭、ゴミを見る視線を向けているニケとタマ。

そしてファフがエンリの上着の裾を引いて、興味津々顔で「ねえねえ主様、出すって何を出すの?」

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