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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第37話 船旅でナンパ

オッタマ帝国保護下のアラビア商人とユーロのポルタ商人との間で、交易の自由を保障する協定が締結された。

再び旅立つエンリ王子たちを見送るアリババたち。

「行くのか?」とアリババ。

「宝さがしは海賊のロマンだ」とタルタ。

「そこらへんは万国共通だな」とシンドバッド。

「何しろ、世界の海を支配できる秘宝だって言うんだからな」とエンリが言った。



その時、マサイがエンリに言った。

「それってこの槍の事ではないでしょうか。征服王と呼ばれ、世界の統一を成し遂げた偉大な王の侵略を防いだ我が祖先が、敵であった王より勇戦を讃えられ、授かった物です。かの王が自ら振るい、その征服の原動力となった宝器」


するとタルタが「悪いけどそれ、雑兵の槍だよ。その槍くれたってイスカンダル王だよね? 俺の親父がその兵隊だったんだ。同じものを親父も持ってた」

マサイ唖然、そして「何ですとーーー!」


タルタは言った。

「普通の国の兵隊は、右手でその半分の長さの槍を持って、左手で楯を持って戦うんだけど、両手で長さ倍の槍を持つから、リーチが全然違って絶対勝てる。あの王様は戦の天才だって親父が褒めてた」

「だって彼は遥か昔の・・・」とマサイは異議を唱えるが・・・。

タルタは「俺、魔法で二千年眠ってたんだ」


マサイは「そ・・・そんなぁ。我が祖先から受け継いだ部族の宝が雑兵の槍・・・。ちょうちょが一匹、ちょうちょが二匹・・・」

ショックで茫然となり、焦点の定まらない目で呟くマサイ。


彼を見て好き勝手言うエンリの仲間たち。

「どーりで何の飾りも無い普通の造りだと思った」とジロキチ。

「マサイさん、大丈夫でしょうか」と人魚姫リラ。

「仕方あるまい。事実は事実だ。そこにいくと我がグングニルの聖槍は神から授かりし本物の宝器」と得意げなカール。

「いや、それコンスタンティ製の贋物なんだが」とアーサーは小声で。

そんなアーサーにニケは「言っちゃ駄目よ。せっかく夢見てるんだから」


だがタルタは「けどさ、いくらもともと安物でも、ちゃんと昔に作られた本物だってのは凄い事だよね」

「時間は金じゃ買えないからね」とエンリが言った。



「それよりアラジン」とエンリがアラジンに話しかけた。

アラジンは「このランプはやらないぞ。絶対違うから」

「いや、要らないよ。それより海賊バスコはどっちに行ったと思う?」とエンリ。

アラジンは言った。

「間違いなくインドだろうね。向こうの密林には他で採れないものも多いし、こことは違う文明があって、財宝も多い」


「インドかぁ」とエンリ。

「あそこは食い物が美味い。カレーとかいうのが絶品だ」とジロキチ。

「酒もあるんだよな」とタルタ。

「女も美人だぞ」とカルロ。

「金銀宝石もいっぱい」とニケ。



そんな彼等にタイガが言った。

「インドに行くなら乗せていってくれませんか。水先案内も出来ます」

「それは有難い」とエンリ。


そんなタイガにマーリンが言った。

「ところであなた、賢者に救われて虎が人間に転生したって言ったわよね?」

「そうですが」とタイガ。

「転生って、死んだ者の魂が別の存在として生まれ変わる、って事よね?」とマーリン。

「その筈ですが、そこらへんの記憶が曖昧で」とタイガ。


「その賢者って、こんなものを使わなかった?」

そう言って、マーリンは人化の魔道具を取り出した。

「そうです。これと同じものを使った儀式で、私を導いたのです」とタイガ。


マーリンは言った。

「それ、転生じゃないから。魔法で人間の姿を得たのよ。あなた、人化した虎魔獣なのよ」

タイガは「そうだったのか」



そんな話を聞いていたエンリは、ふと思い出したように「って事はその時使った魔道具の中に・・・いや、止めておこう」

「何ですか?」とタイガは不審顔でエンリに・・・。

エンリはタイガの肩に手を置いて「あのな、タイガ君、世の中には知ってはいけない事ってあるんだよ」

「そうなんですか?」とタイガは怪訝顔。


「ところでこの人化の魔法って・・・」とタルタ。

マーリンは「知らないわよね。これ、ルーマニアのブラド伯爵が創作した新式魔法式なのよ」

「あのバンパイア族の長がルーマニア王に臣従したという」とエンリ。

マーリンは「コンスタンティの背後に上陸したオッタマ軍と戦うために、伯爵はこれで狼魔獣や蝙蝠魔獣を人化して戦力に加えて、異教徒軍と戦ったの」と説明する。



「マーリンさんはこれからポルタに帰るんだよね?」とエンリ。

マーリンは「今回の件が成功したら、ポルタの王立劇団のイケメンを一人紹介して貰える事になってるの。誰にしようかしら」

「じゃ、俺も・・・」とカルロが言いかけると、マーリンはカルロに言った。

「あなたはこのまま彼らと同行しなさい」

カルロは「いや、だって」と口ごもる。

「世界の女が待ってるわよ」とマーリン。



そのマーリンの一言でその気になったカルロは、エンリに「王子、俺を是非仲間に」

エンリ王子は困惑顔で「船長はタルタだよな?」とタルタに投げる。

タルタは困惑顔で「知恵袋のアーサーに頼め」とアーサーに投げる。

アーサーは困惑顔で「戦力って事はジロキチの部下になるって事だよな?」とジロキチに投げる。

ジロキチは困惑顔で「こういう時に陰で決定権持つのはオーナーの嫁だろ、って事で姫」と人魚姫に投げる。

人魚姫は困って「ニケさん、どうしよう」


ニケは「しょうがないわね。あなた、何が出来るの?」とカルロに問うた。

カルロは「ナンパなら最強」

「そういうのは要らないから」とニケ。

「道化師とか」とカルロ。

「いや、それお前一番苦手な奴」とエンリ。


カルロは「あと、料理は得意。女を口説くには胃袋を掴むのが一番」

「それ、男女逆のような気がするんだが」とジロキチは疑問を呈したが・・・。

「いいわね。採用よ」とニケは言った。


「ニケさん、愛してます」とカルロ。

ニケは「そういうのは要らないから」



こうしてカルロを仲間に加え、王子たち一行は東のインドに向った。

そしてカルロは、船の中でニケを口説いた。


カルロは船底にニケを連れ込んで・・・。

「私、安くないわよ」とニケはカルロに・・・。

「もちろん」とカルロ。

「男の甲斐性って奴、見せてくれるかしら」とニケ。


互いの耳元でひそひそと話す二人。

「商談成立ね。今夜、私の部屋にいらっしゃい」



その夜、ニケはスケスケの夜着を着て、ウキウキ気分で夜の計画。

「どれ使ってやろうかしら。お金せしめたらこの眠り薬で。いや、こっちの、アレが勃たなくなる薬ってのもいいわね。それとも、この痺れ薬で動けなくして弄んでやるってのも・・・ところで、カルロ、遅いわね」


廊下で何やらひそひそと話し声が聞こえる事に気付くニケ。

そして「あの声、カルロじゃないかしら?」



ニケがドアを開けると、廊下でカルロが・・・人魚姫を口説いていた。

「困ります。私には王子が」と人魚姫リラ。

カルロは「いいじゃないか」

リラは「でも・・・」と口ごもる。

「男を歓ばせるにはテクニックが必要だよ。それには恋愛経験だ。君はもっといい女になれる」とカルロ。

「そうでしょうか」とリラ。



「カルロ、あんた何やってるのよ!」

そう、鬼の表情で怒鳴るニケ。

激怒するニケを見てカルロは「あれ、ニケさん居たの?」

「居たのじゃないわよ。私との約束すっぽかして別の女口説くとか、一体何考えてるのよ!」

そんなふうに叫ぶニケの声を聞いて、エンリや仲間たちが駆け付ける。


「何の騒ぎだ」

そう問うエンリ王子に、ニケはカルロを指して訴えた。

「聞いてよ。こいつ散々人を口説いておいて、ちょっといい顔見せて合う約束したら、それすっぽかして人魚姫口説いてるのよ。あんたこの子の男でしょ?」

エンリは困り顔で「それよりニケさん、その恰好」

「あ・・・」

そう言って真っ赤になり、慌てて部屋に戻って着替えるニケ。



そんなニケを見て仲間たちは好き勝手言う。

「あれって、一発いくらとかって話なんじゃね?」とタルタ。


ニケは着替えの途中で出て来ると、タルタに「私は売春婦じゃないわよ」

「金貨100枚で約束取り付けました」とカルロは取引内容を暴露。

ニケはカルロの顔面を思い切り殴る。


エンリは困り顔で「だから着替え終えてから出てきなって」

「あ・・・」

そう言って、慌てて部屋に戻って着替えを続けるニケ。



ニケが着替えを終える。

そして、船の食堂に場を移す仲間たち。


「で、何なのよあれは」とニケがカルロを追及。

カルロは「何って・・・女性が居るのに口説かないのは失礼かと」

ニケはあきれ顔で「イタリア男ってみんなそうなの?」

「エスニックジョークではそうなってるけどね」とアーサー。

「けど、約束したんなら最後まで面倒見なよ」とエンリはカルロに・・・。


タルタが「でも、どーせお金だけ貰って睡眠薬で眠らせるとか」

「やりそう」と言って笑うジロキチ。

ニケは「私を何だと思ってるのよ」と言って口を尖らせる。


するとカルロは三つの薬瓶を取り出して「さっきこれ、ニケさんの部屋で見つけました」

「人の部屋に勝手に入るんじゃない!」とニケが怒鳴る。


瓶の一つを見てエンリが「これ睡眠薬だよね?」

「こっちは勃たなくなる薬」と、もう一つの瓶を見てアーサー。

残った一つを手に取ってジロキチが「この痺れ薬で何するつもりだったの?」


「これ、同情の余地無いよね?」とタルタ。

ニケは冷や汗顔で「私をそんな目で見ないでよ!」



残念な空気が漂う中、エンリはカルロに言った。

「けどさあカルロ、最後までやらないなら、何のために口説いたの?」

「女性を落とすのが恋愛というゲームじゃないですか」とカルロは平然と答える。


エンリは溜息をついて「約束取り付けるのがゴールって訳かよ」

「我が家の家訓です。釣ってない魚にだけ餌をやれと」とカルロ。

タルタは溜息をついて「空しい家訓だな、おい」

「女の敵よね」とニケ。

「それ、楽しいのかよ」とジロキチ。



カルロは記憶の魔道具を取り出し、ニケの声を再生する。

再生されたニケの声が「今夜、私の部屋にいらっしゃい」

カルロは得意顔で「これをオカズに三発はイケます」


「お前本当は童貞だろ」と男子たちは口を揃えて溜息をついた。

カルロは「違いますよ。ただ・・・」

「ただ、何よ」とニケ。


カルロは言った。

「ある程度レベルの高い女じゃないと、その気にならないんです」

ニケはカルロの顔面を思い切り殴った。


残念な空気が漂う。



ジロキチは溜息をついて「さすがに今のはゲス過ぎだな」

タルタも溜息をつき、カルロを見て「このナンパ野郎は」

するとカルロは「それは非モテの僻みかと。皆さん童貞ですよね?」


「馬鹿にすんな。船乗りは港港に女ありって言ってな」と、ムキになるタルタ。

するとアーサーが「それ風俗女だろ」

「つまり素人童貞って奴だ」とジロキチ。


タルタは捲し立てた。

「んなもんは女何人孕ませたとか言って自慢したいだけのゲス野郎のマウンティング用語だ。そーいう人間にだけはなりたか無ぇわ。自来也先生だってハンター冴羽だって風俗で恋愛エンジョイしてんだぞ」


「で、ポルタの港にも女が居るんだよな? 誰だよ」とジロキチ。

タルタは「猫カフェミケ子のシロちゃんだよ」

「人間じゃ無いじゃん」と男子たち口を揃える。

それに対してタルタは「猫可愛いだろ猫。可愛いは正義だ。それよりジロキチはどうなんだよ」



「俺の恋人はこれだ」

そう言って、背負った刀を指さすジロキチ。

「生物ですら無いじゃん」と男子たち口を揃える。


ジロキチは捲し立てた。

「刀は武士の魂だ。一つの道を極め、それを愛し、それと共に生きる。これぞ男のロマンだ!」


「けど四本あるよね?」とアーサー。

「浮気者だ」とタルタ。

それに対してジロキチは「一夫多妻は男の甲斐性だ。オッタマの異教徒なんか四人同時に結婚出来るんだぞ。それよりアーサーは?」



「知ってるだろ。マーリンさんのせいで女性不信だ」とアーサー。

「寂しい青春だな」とタルタ。

アーサーは「ほっとけ」と一言。


そんな三人にエンリは言った。

「まあ、そのうち、お前等に惚れる女も現れるさ」

「リア充には関係無い」と三人は口を揃える。

「あ・・・そう」とエンリ。



そんな会話を聞きつけて、ファフとタイガが食堂へ。

ファフがエンリたちに「ねえねえ何の話?」

「子供には関係無い」と男子一同。

「あの、何の話を」とタイガ。

「向こうの人には刺激が強すぎる」とタルタ。


するとタイガは「もしかして男女の秘め事ですか?」

エンリは一瞬"意外"・・・という顔をしたが、すぐに納得顔になって「まあ、どこの国にもそういう文化はあるさ」

タイガは言った。

「私にそういう配慮は無用です。カーマと言って、ヒンドゥーの神は性の快楽を認めていますから」


するとタルタが「そうなの? 俺、改宗しようかな」

「それだけは止めておけ」と男子たち口を揃える。

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