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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
360/562

第360話 地底の世界樹

ダンジョン探索中に行方不明となったフェリペたちが囚われたミノタウロスと子供たちの世界。

それは、ミノタウロスを愛したミノス王の娘パシパエに居場所を与えるために、ミノス王がダンジョンの知性体ダイダロスと盟約して作られた固有結界だった。

エンリは、牛を愛する性癖を恥じるパシパエを説得し、彼女が愛したキングミノタウロスに人化の魔法を受けさせた。

役割を終えた固有結界は消滅し、パシパエと彼女の王国の子供達は解放された。

そしてエンリはフェリペと部下たちを連れて、このダンジョンの正体を見極めるべく、更に深部を目指す。



ダンジョンの中枢らしき巨大な湖から出現したドラゴン。

そして湖を取り囲む、どこまでも高くそびえる崖面に無数に穿たれた大きな横穴から現れた、膨大な数のモンスター。

エンリたちが居る広い洞窟もまた、そうした横穴の一つだ。


湖の向うにある多数の横穴の魔物たちが、一斉に攻撃魔法を放った。

「みんな、下がって」

そう言って、アーサーが前に立って防魔の短剣を翳す。

攻撃魔法は全て、その目の前で消滅。


湖の上空を埋め尽くす有翼の魔物、ハーピーの群れを銃撃するニケとヤン・マーモ。

十数頭のコカトリスとグリフォンも飛来。

「上ががら空きなのはまずい。洞窟の奥に退避だ」

そうエンリが号令し、彼等は湖から距離をとるべく洞窟の奥へ。


湖周辺の横穴からは崖面を伝ってラミアとアラクネが迫る。

水からカルキノスや魚人が上がって来る。

「俺が囮になる。俺ごと奴らを叩け」

そう言って、湖の前に立ちはだかって完全鉄化するタルタ。

タルタに襲いかかる魔物たちは、彼に噛み付き取り付いて、大きな塊となる。

アーサーが、そしてライナたちがタルタに取り付いた魔物たちに炎の波濤を放つ。


魔物たちが受けたダメージにシャナの斬撃の灼熱の衝撃波が追い打ちをかけ、ジロキチ、若狭、カルロ、そしてマゼランとチャンダが切りかかる。

魔物たちの死体の山の中で部分鉄化に切り替えたタルタが、まだ生きている魔物に斧を翳して斬りまくる。

そんな魔物たちの上から飛来するハーピーたちにアーサーが炎の波濤。

更に押し寄せるハーピーの群れを、フェリペが操る多数の鉄の仮面が宙を舞って牽制し、ニケ・ヤン・マーモの銃弾が次々に仕留める。


コカトリスとグリフォンも飛来する。

「コカトリスの石化光線はまずい。奴を優先して倒せ」とエンリが号令。

ニケが雷属性の銃弾でコカトリスを次々に撃ち落とす。エンリ王子が炎の巨人剣でグリフォンを仕留める。

背後の湖から迫るドラゴンに、ファフとアラストールがドラゴン化して立ち向かった。


背後の洞窟奥からはマンティコアとネメアーの群れが押し寄せた。

マゼラン、チャンダそしてシャナが剣を抜いて立ち向かう。その背後からライナたち三人の魔法攻撃が援護。

更にその背後からギガンテスと多数のトロル。

リラがウォータードラゴンを召喚し、その頭上でエンリ王子が魔剣を振るう。


「きりが無いな」

そうエンリが言うと、アーサーが「トラップで掃討と行きますか」

アーサーはタマに多数の魔法カードを持たせる。タマは魔物たちの足元を駆け回り、周囲の地面にカードを配置。

「設置完了よ」

そう言ってタマが戻って来ると、リラがみんなに呼び掛けた。

「皆さん、集まって下さい」


ライナたちが防御結界を張り、その中に全員で立て籠もる。

その周囲に集まる魔物たちが、二重三重に結界を取り囲む。

「今だ」

そのエンリの掛け声とともに、タマは叫んだ。

「大きな大きな炎になれ」

周囲の一帯は炎に包まれ、魔物たちは壊滅した。



残る湖のドラゴンと、ファフ・アラストールの戦いは続いている。 


シャナが「アラストールに加勢するぞ。皇子、仮面の筏を出してくれ」

それを聞いたエンリは「俺も行く」

フェリペが召喚した多数の仮面を縦横に並べた筏に、シャナとエンリ、そしてリラも乗って、湖の上を飛んだ。

フェリペの仮面の筏から湖のドラゴンに灼熱の剣を振るって衝撃波を放つシャナ。

エンリが炎の巨人剣で切り付け、リラがフリーズランスを放つ。


エンリは思考した。

熱したガラスを急激に冷やすと、ガラスは割れる。逆に、凍らせたものは高熱に対して脆くなる。

エンリは三人と二頭のドラゴンに言った。

「タイミングを合わせるぞ。炎と氷の攻撃を交互に繰り出すんだ。狙いは背後の首の付け根だ」


リラがフリーズランスを打ち込み、距離を詰めてシャナが灼熱の斬撃。そして少し距離を取るとエンリが氷の巨人剣で切り付け、アラストールが炎を浴びせる。

繰り返す炎と氷の攻撃で、ダメージが集中する後頭部の下の部分の鱗が次第にひび割れる。

苦しくなったドラゴンが水中に逃げようとするのをファフが抑え込む。

そしてエンリの炎の巨人剣が止めとなり、ドラゴンの首は切り落とされた。



ドラゴンの首が落ちる間際、その断末魔の咆哮とともに振るう尻尾が仮面の筏を襲った。

「危ない」

ドラゴンの尻尾を避けようと、筏は大きく傾き、フェリペが湖に落ちた。


「フェリペ!」

そうエンリが叫ぶと同時に、リラが彼を助けようと、人魚の姿になって湖に飛び込む。

湖の中央では、逆巻く渦がドラゴンの死骸を呑み込んでいる。

その渦に巻き込まれまいと、小さなフェリペを抱えて必死に泳ぐ人魚のリラ。


「待ってろ、リラ」

エンリは水の魔剣を抜いて湖に飛び込んだ。

向うではフェリペを抱いたリラが渦に捕まり、流されつつある。


エンリは周囲の水と剣の一体化の呪文を唱えた。

「汝、水の精霊。迷宮を満たせし生命の奔流。マクロなる汝、ミクロなる我が水の剣とひとつながりの宇宙たれ。魂を宿す個として生きたるダンジョンのその命の流れに理性を以て秩序を示し、内在する数多の命との調和と成さん。水流操作」

エンリとリラの周囲の水は渦の流れから切り離され、彼等を押し流そうとする水の力から解放された。



リラはエンリの所まで泳いで、その手を執ると、周囲を見回す。澄んだ水の向うには、上から続く崖面がずっと下まで続いているのが見える。その崖面にも、あちこちに水没した横穴。

「エンリ様、ここって・・・・」

そうリラが言うと、エンリは「まるで樹木の幹と枝だな」


エンリは思考を巡らせた。

あのダイダロスは、自らをこの迷宮の知性だと言った。それは人と同様の存在であるという事だ。

そして人の構造を示す図式として「生命の樹」というものがある。

地上の樹木は空間の中に物質的に幹や枝を伸ばし、その中で生命を担う水が行き交う。

地中は地上とは逆に、物質である岩で満たされている。


だとしたら、そんな中で成長する樹木とは、普通とは逆に物質である岩の中に空間としての幹や枝を伸ばすのではないか。

だとすると、今までの通路は枝か? そこに水が流れ、大量の魔素に満たされ、精霊の世界の影響を強く受けている。

そう言えば、あの固有結界が果実だと言っていた。

あんなのが通路のあちこちに実っている、という事は・・・・・・・・・。

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