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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第346話 艦隊とドラゴン

南方大陸南端のズールー対反ズールーの争いがエンリ王子らの努力により和解となり、現地人との関係を失ったオランダ側は、フェリペたちと離れたメアリ王女を外交の駒に使うとともに、武力でこの地を奪おうと、超巨大艦を含む大艦隊を差し向けた。

エンリたちは元祖ケープ港にある船を全て焼かれ、メアリ王女を乗せてオランダ艦隊と合流する本家ケープの艦隊を追跡する手段を失った。

だが、味方についたフェリペ皇子が本家ケープ港に残っていたヤマト号を呼び戻し、エンリたちとフェリペたちは、これに乗ってオランダ大艦隊を迎え撃つ。



決戦の火蓋を切るべく、ファフとアラストールがドラゴンとなって空へ飛び立った。

二基のドラゴンがワイバーンの群れを牽制。


少し遅れて転送魔道具を装着したタルタを乗せたヤンの飛行機械が空へ。

「シートに座るんじゃないのかよ」

鉄化したまま機体の下に取り付けられ、そう文句声を発するタルタに、ヤンは「贅沢言うな。これは単座だ。それとも俺の膝の上にでも座るか?」

タルタは「それは願い下げだ」

「それにお前は爆弾と同じ要領で投下するから。おれはこいつで敵艦を狙って外した事は無いっ( ー`дー´)キリッ」

そうヤンが言うと、タルタは更なる文句声で「キリッじゃねーよ。俺、人間扱いされてないじゃん」


二体のドラゴンとワイバーンたちとの空中戦を横目に、ヤンは高高度から飛行機械で超大型艦上空へ。

ヤンは機体の下のタルタに「そろそろ行くぞ」

「船が見えんが」

そうタルタが言うと、ヤンは「見える所まで急降下して投下だ」

タルタは「急降下って・・・ちょっと待て」


重力を利用して高速で遥か下の超巨大艦へ特攻をかける飛行機械。

「ちょっと早すぎだろ」

そう叫ぶタルタに、ヤンは「鋼鉄の砲弾の速度はこんなもんじゃ無いだろ」

タルタは「自分で飛ぶのと勝手が違うんだよ。高いの怖い早いの怖い」

「要は慣れだ」

そんなお気楽な事を言うヤンに、タルタは「慣れる時間なんて無いだろ」


艦側が気付いて迎撃。銃弾と攻撃魔法の射線が集中する。

「そろそろ投下するぞ。歯ぁ食い縛れ」

そう言って投下ボタンに指をかけるヤンに、タルタは「いや、殴り合いじゃないから」と突っ込む。

そして「投下!」


転送魔道具を装着した鉄化タルタを飛行機械は投下すると、離脱軌道へ。

鉄化したタルタは真っ直ぐ艦へ降下しながら、何発もの銃弾を弾き返す。 

光魔法が命中するが、それも弾き返して艦の真上のシールドに突っ込む。

装着された竿の先端がシールドに触れ、転送魔道具に繋がる糸が切れる、その一瞬にかかった力が魔道具のボタンを押して転送発動。

タルタの姿は消え、シールド内の甲板上10mの空間に転送。魔道具はそのままシールドに叩きつけられて破壊。

タルタのオリハルコンの体は地響きを立てて甲板に落下した。



鉄化を解いて元に戻ったタルタの周囲に、敵艦の乗員多数。

「侵入者だ」

タルタは慌てて周囲を見回すと、向こうに搭のような建造物。

「艦橋だな。とりあえずあそこに・・・」


鋼鉄砲弾で艦橋で飛び込むタルタ。

タルタにより大破した艦橋内部に、吹っ飛ばされた姿勢の敵士官多数。

多数のオランダ兵が艦橋に駆け登り、タルタを指して「捕まえろ」

慌てて甲板に飛び降りたタルタは、乗員たちに追い回され、甲板を逃げ回る。


タルタに取り付けた盗聴の魔道具で、その様子をあきれ顔で見るエンリの仲間たち。

「タルタは何をやってるんだ」とエンリもあきれ顔。

ジロキチは通信魔道具で「そんな奴ら,一ひねりだろ」

「そーだった」


タルタは逃げるのを止めて乗員たちに向き直り、部分鉄化で大暴れ開始。

鉄砲も刀も跳ね返し、襲いかかる乗員を千切っては投げ千切っては投げ・・・。

盗聴の魔道具でその様子をあきれ顔で見るエンリと仲間たち。

エンリは通信魔道具で「違うだろ。シールドの魔導装置を破壊するんじゃ無かったのかよ」

「そーだった。ところでシールドの魔導装置って、どこにあるんだ?」

そうタルタに返され、エンリたち一同顔を見合わせて「どこだろう」


敵艦隊の上空に居る部下に確認を求めるが・・・。

ファフとアラストールは「確認どころじゃないよ」

ヤンは「銃弾を一発喰らった。飛行が不安定だ。これから帰還する」



エンリは待機していた部下たちに号令した。

「とにかく、俺たちも出撃するぞ」

そして、残った二つの海賊団メンバーとベルベドを乗せたカメレオンのドラゴンが翼を広げて空へ。

そしてドラゴンは、カメレオンの力で姿を消した。


二頭のドラゴンとワイバーンたちの空中戦を横目に、姿を消して超巨大艦の上空を飛ぶカメレオンのドラゴンとエンリたち。

ドラゴンの上からアーサーが看破の魔法で超巨大艦の甲板を探る。

そして「あそこだ。艦橋の後ろの小型の建造物」

アーサーが通信魔道具で、艦橋の脇で大立ち回りを演じているタルタに連絡。

「シールド装置は艦橋の後ろの小型の建物だ」


「あれを飛び越えた向うだな?」

そうタルタが返すと、アーサーは慌てて「いや、お前から見て後ろじゃなくて」

「どっちだよ」

その時、リラが通信魔道具でタルタに呼び掛けた.

「タルタさん、艦橋の右」

「右ってどっちだっけ」

タルタがそう言うと、リラは「お箸を持つ方です」

「解った」


通信を終えると、エンリは困り声で「あれって、子供に教える言い方じゃ無いのか?」

「タルタには丁度いい」とジロキチは言って笑った。



タルタは艦橋の近くの小型の建造物に向けて鋼鉄砲弾で突入。

シールド魔道具は破壊されて、船団を覆っていたシールドは消滅した。

「乗り込むぞ」

そう言ってジロキチが気勢を上げると、エンリは「その前に周囲の船をどうにかするか」

二頭のドラゴンに指令を出した時、二頭はワイバーンの半数以上を倒してした。

残る数匹を牽制しつつドラゴンは船団に向かい、炎を吐く。

「密集していると全滅するぞ。散開しろ」

そう艦隊司令は号令し、百隻を越える船団は散らばって大砲で応戦する。


そんな中、姿を消しつつカメレオンのドラゴンは超巨大艦の甲板に降り立ち、そしてその巨大な姿を現わした。

ドラゴンの背から十五人の戦士が降り立つ。

「一気に占領するぞ」

そう言ってジロキチと若狭は乗員たちを相手に奮戦しているタルタに加勢。

ニケとタマがこれに続く。

新たに上がってくるオランダ兵をカメレオンのドラゴンが炎を吐き尻尾を振るって蹴散らし、その頭上に居るベルベドが攻撃魔法を連射。


マゼランはチャンダ、シャナ、マーモと共に剣を抜くと、エンリに「甲板の奴らは俺たちで制圧します」

「解った。俺たちは敵の首脳部とメアリ王女を確保するぞ」

そうエンリが言うと、アーサーが「それで、奴らはどこに居るんでしょうか?」

「艦橋って司令部だよね?」

そうフェリペが言うとリンナが「破壊されてますけど」

マゼランが「そっちも俺たちが制圧します」


「なら、俺たちは艦内だ。入口はどこだ?」

そう言ってみんなが周囲を見回す中、エンリは「面倒だ」と言って、炎の巨人剣を抜いた。

エンリは念じた。

「俺は炎。全てを破壊する撃滅の爆炎」

全身に漲る炎の気が剣に収束し、目の前の甲板に振り降ろした。


足元の看板が破壊されて大穴が空き、エンリら数名はその中から広い艦内に突入。

「乱暴すぎですよ」

そうアーサーがあきれ顔で言うと、エンリは「いいだろ。侵入口が解らないなら、作ればいいだけだ」

「けど、これだけ大きな船の中をどうやって探しますか?」

そうアーサーが言うと、カルロが「それは俺の得意分野ですよ」

カルロはダウジング棒を持って先頭を走る。


エンリの隣を走りながら、リラは言った。

「あの、王子様。既に脱出してるって事は・・・」

エンリは「確かに有り得る。リラ、魚の使い魔で周囲を見張れ。脱出する潜水艇が居ないかチェックだ」

リラは周囲の海域に居る魚の使い魔を超巨大艦の周囲に集めた。


行く先々で出くわす乗員たちを蹴散らして艦内を走るエンリたち。

「こっちです」

そう言って先頭を走るカルロのダイジング棒に導かれ、船尾近くの側板に面した広い空間に出た。

そこに居た多くの兵が一斉に銃撃。

咄嗟にアーサーが防御魔法で攻撃を防ぎ、三人の女官が攻撃魔法で反撃。

仮面をかぶったフェリペが無数の仮面を操って敵兵を攪乱。

カルロが斬り込み、瞬足で敵兵の間を駆け抜けながらナイフで斬りまくる。


向うにメアリ王女と本家ケープ市長の姿があった。

ハッチを開けて、その向こうに消える二人。

「あの向うにあるのは潜水艇です。脱出しようとしているんだ」

そう叫ぶアーサーに、エンリは「どうにかして阻止するぞ」

アーサーがハッチに向けて氷結魔法を放つが、ハッチを操作していた乗員が妨害魔法で対抗。

三人の女官が対抗する妨害魔法は押し切られ、潜水艇はメアリを載せて発進した。


「逃げられちゃいしたよ」

そうリラが言うと、エンリは叫んだ。

「させるか!」

エンリは炎の巨人剣で側板を突き破り、大量の海水が部屋に流れ込む。

敵も味方も部屋から退避する中、リラがウォータードラゴンを召喚した。

リラは召喚した水龍の中に入ると「王子様も来て下さい。脱出した潜水艇を追います」



潜水艇の行方は、艦の周囲に居た魚の使い魔によってリラに伝わり、エンリが開けた大穴から海中に出たウォータードラゴンは、真っ直ぐに潜水艇を追う。

何隻もの潜水艦が行く手を阻もうと、ウォータードラゴンに向けて高速で銛を射出し、水魔法攻撃を放つ。

だが、高密度のドラゴンの水の体がそれらの攻撃を阻む。


エンリは呼吸の魔道具を咥えてドラゴンから身を乗り出し、水の巨人剣でそれらの潜水艦を破壊した。

破壊した潜水艦の向うに、メアリ王女が乗る潜水艇。

エンリは呟いた。

「あいつを破壊したら王女が危険だ。彼女は生かして捕える必用がある」


エンリは、海水と水の巨人剣の一体化の呪句を唱え、剣を取り巻く巨大な渦巻を作った。

渦巻は潜水艇を巻き込み、その動きを封じる。

そしてリラはメアリに念話で投降を勧告した。

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