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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
345/562

第345話 二つの海賊団

南方大陸南端で争っていたズールー族と反ズールー連合が和解し、オランダ人植民市本家ポルタは反ズールー連合との関係を断たれた。

オランダはフェリペたちと別れて本家ポルタに残ったメアリ王女を手駒に使うとともに、これと合流すべく超大型艦を含む大艦隊を派遣して、南方大陸南端を武力で制圧する態勢をとった。

そして対抗策をとろうとしたエンリ王子たちの先手をとり、元祖ケープの港の船を焼いてしまう。

エンリたちは対抗するための船を失ったかに見えたが、彼等にはまだフェリペ皇子たちが乗っていたヤマト号が残されていた。



侵攻して来るオランダ艦隊に対応すべく、エンリとその仲間たちは、フェリペとその部下たちも加えた作戦会議を続け

た。

「とりあえず超巨大艦の超長距離砲をどうするか・・・だよね?」

そうエンリが言うと、ムラマサが「ファフ殿のドラゴンで、砲弾に憑依した霊的使い魔を威嚇したと聞いたでござる」

「あれは対策が取られただろーが」とエンリ。

すると、シャナのペンダントの姿のアラストールが「私なら、もっと迫力のある咆哮を見せてやるぞ。シャナに近付く悪い男はみんなこのドラゴンの咆哮で撃退だ」

エンリは困り顔で「そういう"俺の妹に手を出すな"ギャグは要らないから」


「シールドの無い水中から攻撃するというのは?」

そうマゼランが言うと、マーモが「俺の潜水艇で爆雷をぶちかましてやる」

エンリは「それも対策はとられてる筈だ。光魔法のシールドは海中でも展開可能だから、戦闘が始れば必ず海中はガードされるぞ」

「イタリアでは飛行機械で沈めたよね」

そうタルタが言うと、ヤンが「一基じゃ無理だ」

チャンダが「対空装備の大型銃だろ? あんな銃弾、装甲で防げないかな?」

「重くなって飛べないわよ。それに回転翼に当たったらアウトよ」とニケが指摘。


するとジロキチが「急降下なら、飛行能力が無くても自由落下でいけるんじゃないか?」

「確かに・・・」と全員頷く。

エンリが「いや、爆雷を転送した後、どうやって離脱するんだよ」

「シールドに弾き返えされた奴を回収すればいーんじゃね?」とタルタ。

「激突した衝撃で死ぬぞ」

そうエンリが言うと、タルタは「俺なら鉄化してれば死なないけどな」

「なるほど」と全員頷く。


「けど、完全鉄化だと動けないですよね?」

そう若狭が言うと、アーサーも「どうやって転移魔道具を作動させるんだ?」

「一瞬だけ鉄化を解く」とタルタ。

カルロが「タイミングの問題ですね」

ジロキチが「大丈夫だろ。鉄化の切り替えで刃物振り回してた奴だぞ」

するとタルタが「どうせなら爆雷と言わず、この体で乗り込んで大暴れしてやる」と言い出す。

「いや、転移座標抜きだと生命体の転移は危ないんじゃ無いでしたっけ?」

そうマゼランが言うと、リラが「鉄化したオリハルコンの体でも危ないんですか?」

「そう言えば」と全員、思案顔。


「どうなの? アーサー」

そうエンリが振ると、アーサーは「大丈夫だと思います。生命体を構成する物質が異界を通る時、変質する可能性があるんです。けどタルタは眠った状態で二千年間生きて、物質的変質は無かった訳ですから」

「だったら・・・・・・」

そう全員が納得顔を見せた時、エンリは言った。

「ちょっと待て。一瞬だけ生身に戻って魔道具を操作するって事は、その一瞬で転移する訳だろ。って事はその瞬間は生身であってオリハルコンの体じゃない」

「駄目じゃん」と全員ガックリ。


するとニケが言った。

「こういう時は工夫あるのみよ。こういうのはどうかしら。転送距離の長さの竿を取り付けるの。それが下に向けて落下しながら、竿がシールドに触れて押し込まれる力でスイッチを押す」

「いや、押す力が強すぎてスイッチが壊れるぞ」

そうヤンが言うと、ニケは「押し込む力で糸を引くのよ。それで、竿がシールドに触れた衝撃で糸が切れる一瞬かかる力がスイッチを押す」

「つまり、余分な力がかかる前に糸が切れて魔道具は無事と」

そうエンリは言い、「完璧じゃん」と全員頷く。


作戦会議が終わると、ヤンとマーモがアーサーと協力して、鉄化タルタに取り付ける転移装置の制作を開始した。



ヤマト号が元祖ケープの港に到着した。

「お話は聞いています。これからエンリ様たちの船としてオランダと戦うのですよね?」

乗り込んで来たエンリたちにそう言って迎えるヤマトに、カルロはその手を執って「話の続きはお茶しながら。何なら港の見えるホテルでディナー・・・」

ニケがハリセンでカルロの後頭部を思い切り叩いて「いきなり口説くんじゃない」


そんなニケに、ヤマトは頭を下げて「ニケさん、ごめんなさい」

ニケは変な誤解を受けたと思い、慌てて言った。

「いや、大丈夫よ。こいつと私は無関係だし、馬鹿な事をやってるのを叱りつけただけで・・・」

そんなニケの弁を余所に、ヤマトは「航海士なんですよね?」

「そうだけど」

怪訝顔でそう答えるニケに、ヤマトは「この船、全部魔法で私を通じて操作するので、この船が皆さんの乗船になると、航海士は不要になりますよね?」

ニケは困り顔で「だ・・・大丈夫よ」


そんな二人を余所に、はしゃぐエンリの部下たち。

「これが今日から俺たちの船に?」

そうジロキチが言うと、タルタも「魔導船だものな。最強の海賊団になれるぞ」

「けど・・・」

お気に入りの玩具を手放すような辛そうな表情のフェリペたちを見るエンリと仲間たち。

「フェリペ皇子たちから、この船、本当に取り上げちゃうの?」

そう若狭が言うと、アーサーも「無断で持ち出した代物だからなぁ」

エンリは少し考え、そして「まあ、先の事は後で考えるさ。とにかく出港だ」



エンリたちは一旦船を降りて、出撃の準備を整えると、港に居る関係者たちを集めた。

彼等を前に、エンリは語る。

「敵は超巨大艦と海軍数十隻。本家ポルタから出航したゴイセン艦隊数十隻と合流した後に、この港を奪いに来るだろう。いつものように返り討ちにしてやる」


すると、フェリペが参加を申し出た。

「父上、僕たちもお供します。そして、捕まっているメアリ姉様を助け出すんです」

「まだそんな風に思ってるのかよ」

タルタたちはそう言ってあきれ顔を見せたが、エンリは「よし、ついて来い」


市民兵たちを引き連れた市民軍隊長が参加を申し出た。

「我々も行きます」

「いや、足手纏いだ」

そう身も蓋もなく言うエンリに、隊長は「けど、占領した敵船を管理する人手が必用ですよね?」

タルタが「面倒な事を言わずに撃沈すりゃいーじゃん」

だが、エンリは「いや、少なくともメアリ王女は生かして返す必用がある。後で外野から、ある事無い事言われないよう、きちんと証言させなきゃ」


カメレオンを肩に乗せたベルベドが参加を申し出た。

「私も連れて行って下さい。カメレオンのドラゴンは役に立つかと」

エンリは「お願いします」



ヤマト号はタルタ海賊団とマゼラン海賊団、そしてベルベドと元祖ケープ市民兵の一団を載せ、港を出撃した。

空では鴎の使い魔を、海中では魚の使い魔を索敵に出す。

緊張した表情を見せる乗船者たちを見て、ヤマトは言った。

「先ずご飯にしませんか? 腹が減っては戦は出来ないと言いますし・・・」


ヤマトが船の厨房で大量の料理を作る。カルロがそれを手伝いながら味見。

「本当に美味いな。店を出せるんじゃないか?」

「出してましたよ」

そう言うヤマトに、ニケが「どうせ素人営業で、売り上げなんてたかが知れてるでしょ?」

「確か昨日の売り上げは・・・」と言って帳簿をめくるヤマト。

読み上げた数字に、ニケは「えーっ!」


「ポルタの港で飲食店を出せば、大繁盛でお金ガッポガッポ」

そう言って有頂天顔で盛り上がるニケの声を聞いて、エンリが厨房に入ってくる。

そして「何の騒ぎだ?」

「またいつものアレですよ」

そう言うあきれ顔のカルロを余所に、ニケは「ポルタに戻ったらヤマト食堂を開店するわよ」

するとヤマトは「けど、材料費で赤字でしたよ」

「そんな筈無いわ。私が経営のプロとして面倒を見てあげる」とニケ。



食事の時間となり、ヤマト号の甲板にテーブルが並び、兵たちも集まる。

大皿に盛った大量の料理と、幾つもの大鍋。


「頂きまーす」

ヤマトとファフが並んで物凄い勢いで食べ始め、全員唖然。

「早く食べないと無くなりますよ」

そうヤマトに言われ、全員慌てて食べ始める。

見る見る無くなっていく料理の山。

ニケはあきれ顔で「材料費で赤字って、こういう事ね」



食べ終わってまもなく、鴎の使い魔が敵の位置を捕捉した。

そして作戦会議。

使い魔の視覚情報が水晶玉に投影される。

「本家ケープから向かった船団と合流したようだな」とエンリ王子。

「しかもこれ、超大型艦の周囲に百隻以上の船団が密集隊形を組んで、全船がシールドの中ですよ」とアーサー。

空には何匹ものワイバーン。

魚の使い魔が、海中で何隻もの潜水艦の姿を捉えている。


「厳重だな」と全員溜息。

「けど海中からドラゴンで突撃というのは?」

そう市民軍隊長が言うと、エンリは「敵が来て海中戦になったら海の中にもシールドを張るだろうな」

そしてエンリは言った。

「とにかく先手必勝だ。こっちにはドラゴンが三頭居る。タルタがシールドの魔道具を破壊したら、俺たちがドラゴンで乗り込んで一気に制圧してやる」


「けど、ワイバーンがあれだけ居ると、大勢載せての空中戦は荷が重いかと」

そうマゼランが言うと、エンリはベルベドをちらっと見て、そして言った。

「大丈夫だ。こっちにはカメレオンのドラゴンが居るからな」

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