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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
344/562

第344話 艦隊の王女

ズールー族と反ズールー部族の争いは、エンリ王子たちの努力により、和平が実現。

そして現地人たちの奴隷制廃止に伴う新たな社会造りに協力するポルタ人の元祖ケープ。

フェリペたちもエンリの元に戻ったが、メアリ王女はオランダ人の本家ケープに留まっていた。



諸々の問題が片付くと、サン族のニカウはトカゲのドラゴンとともに、再びスタインの牧場に戻る事になった。

「ドラゴンとともに明日牧場に旅立ちます」

その連絡を受け、エンリとベルベドは、サン族の族長集落に出向いて、彼を見送る事になった。


ファフを連れたエンリと、カメレオンを肩に乗せたベルベド。

そしてトカゲを肩に乗せたニカウが村の入り口へ。

三匹はドラゴンに変身し、そして言葉を交わす。

別れを惜しむ三人と三匹。

村人もニカウを見送る。

「居なくなるのは寂しいです」

そう口々に言う村人を見て、エンリは「ニカウさん、随分と慕われているんですね」

ニカウは「慕われているのは私ではなくドラゴンですけどね」

「・・・・・・」

これが最後だと、ドラゴンの尻尾にじゃれつく子供達。


そんな中で、トカゲはカメレオンに言った。

「一つ聞いていいか? 俺たちは大精霊の意思を伝える使者として人々の元へ行った。俺が彼等に伝えた言葉は"人は必ず死ぬ"。お前が担った言葉は"人は永遠に生きる道がある"だった」

「それ、永遠の時を楽しむって話じゃないけどね」

そうカメレオンが言うと、トカゲは「けど普通飛び付くだろ。そしてそれが救いになる筈だった。なのにお前は寄り道をして、人々の元に行かなかった。いったい何をやってたんだ?」


そしてカメレオンが何か言う前に、トカゲのドラゴンは言った。

「いや、皆まで言うな。つまり旅の途中で魅力的なカメレオンのメスを見つけて、口説いていたんだよな? 俺はつまらん言葉のせいで人々からも他の動物からも見限られて、ずっとあの遺跡で一人で過ごして来たんだ。なのにお前は彼女とせっせと子作り。リア充爆発しろ!」

「それ、聞きたい事じゃなくて言いたい愚痴だろ。それに、道草というのは誤解だ。人々に言葉を伝えようにも、人々に俺の姿は見えず、ずっと無視され続けて来たんだ」とカメレオンは弁解する。

「けど、今は見えるようになってるよね?」

そうトカゲが言うと、カメレオンは「ベルベドさんには見えたんだよ。彼は呪術の修行を積んだ。見えないものを見る事が術の基本だからな。今は人に見えるようになったが、それは彼のおかげなんだ」


そんな雑談を終え、ニカウはトカゲのドラゴンの背に乗り、ドラゴンは翼を広げ、牧場へと飛び去った。



ニカウが去り、村人たちも解散すると、エンリはベルベドに言った。

「あなたのその力は、カメレオンの彼によって覚醒したのですよね?」

「彼の言葉を受け取る時、精霊の世界を見たのです。そこは時間を越えた場所でした。あらゆるものが過去から未来へと変化しながら繋がる姿を見て、この力を得たのです。ですが、この技も私が死ねば終わりです」

そう語るベルベドに、エンリは「自分の死後が心配なら、予知の技を伝える後継者を育ててはどうですか? 後進を育てる場として、ポルタ大学には魔法学部があります」

「若者が予知の力を学べるよう、協力して頂けるのですか?」とベルベド。

エンリは「我々も予知の仕組みは解りません。だから、あなたに来て頂いて、それを学ぶやり方を一緒に探って欲しいのです」



エンリは元祖ケープの庁舎に戻り、仲間たちと今後について話す。

「本家ケープをどうしますかね?」

そうアーサーが言うと、エンリは「この地を侵略する者・・・って預言がある以上、現地人が放っておかないだろうね」


「メアリ王女、フェリペ皇子から離れて、あそこに居付いちゃいましたけど」

そうリラが言うと、エンリは「彼女はイギリスに引き渡すって、約束しちゃったからなぁ」

するとカルロが「それに、このままオランダに利用されて、イギリス乗っ取りに加担・・・なんて事になったら、国教会同盟にひびが入りますよ」

「確かに・・・・・」

エンリの顔色が変わる。



エンリは通信魔道具でイザベラに連絡した。


状況を話すと、魔道具の向こうからイザベラの深刻そうな声。

「まずい事になったわね。オランダは確実に彼女を悪用するわよ」

「オランダがメアリを使って、イギリスを乗っ取るってのかよ」

そうエンリが言うと、イザベラは「それもあるけど、非人道的な扱いを受けたと嘘の証言をさせて、責任をスパニアに押し付けて、イギリスとスパニアの戦争を・・・とか」

「けどフェリペは五歳の子供だぞ」とエンリ。

「あなたは大人の男性よね?」とイザベラ。

エンリ絶句。


「まさか俺が彼女に何かやったとデマを? そもそも俺は流刑地を脱出した後の彼女に・・・」

そうエンリが言いかけると、イザベラは語った。

「女性の下半身に関わる話は容易に人の理性を奪うわよ。下半身スキャンダルは悪意を以て人を害する悪玉の常套手段。捏造を捏造と指摘する事自体が糾弾の対象だと認識し、事実かどうか無関係だとドヤ顔で言い放つような偽人権が跋扈する。国際社会というのは、そんな魑魅魍魎の巣窟でもあるのよ」

エンリは「あのクマラスワミとかいう捏造話を集めた報告とか、世界の法学の権威と詐称しながら弁護士も付けないインチキ裁判ごっことか・・・」

イザベラは「ハニートラップや筒持たせは、詐欺師が正義を名乗る唯一の聖域。女の武器を使え。これは女子会戦略の鉄則よ」


「そんな糾弾ごっこに加担するのはただの馬鹿だろ」

そう言ってエンリが溜息をつくと、イザベラは「知らなかったの? 人間は馬鹿なのよ」

「私は・・・じゃ無くて?」

そうエンリが突っ込むと、イザベラは「アニメじゃ無くて現実の話よ。扇動家ゲッベルスは言ったわ。民が愚かである事を前提として政治を語れ・・・って」

「おいおい・・・」

「ナチスは一時、ユーロの大半を支配したわ」

そうイザベラが言うと、エンリは「結局破れたけどな」

「彼等は今も生きているわよ。ギョン毒とかいう半島国教授やロシアのプータローチンのような彼等の後継者は、自らではなく敵をナチス呼ばわりする。それは、そんな嘘を真に受けるほど民は愚かなのだという前提でやっている事よ」と語るイザベラ。


エンリは溜息をついて「何時の時代の話だよ。それでスパニアとしてはどうする気だ?」

イザベラは言った。

「ポルタは小国故に軍事的な抵抗力が弱く圧力を受けやすい。けれども、要求され得る多くを持っている」

「植民市の支配権とか?」

そう言うエンリに、イザベラは「イギリスもオランダも涎を垂らして欲しがるでしようね」

エリン絶句。



エンリは本国の諜報局に連絡した。

通信魔道具で要件を伝えると、魔道具からは局員の気の抜けた声。

「オランダの動きを探れ・・・ですか?」


エンリは「メアリ王女がフェリペの元から離れてオランダについた。オランダは彼女を利用して何か仕出かす筈だ。あの国の動向が知りたい」

すると局員は言った。

「それなんですけど、オランダ艦隊が超大型艦を伴って南方に向かったとの情報がありまして」

「な・・・何ですとー!」

エンリ絶句。



直ちに仲間たちとフェリペの部下たち、そして元祖ケープの代表者たちを集めて作戦会議。

諜報局が掴んだ情報を彼等に伝えた。


「艦隊の目的は?」

そう心配そうに市長が言うと、エンリは「数十隻の軍船にかなりの数の陸戦隊を載せているそうだ。それと、超長距離砲による陸上に向けた艦砲射撃の実験をやったと」

タルタが「俺たちのケープを滅ぼしてここの利権を独占する気かよ」

ニケが「けど、あの超長距離砲。相当な内陸へも届くわよ。海に面したここを攻撃するには、いかにもオーバースペックよね」

アーサーが「確かにここを潰すには、普通の艦砲射撃で十分だ。内陸のズールーの村を砲撃する気じゃ無いかな」

ジロキチが「その上で陸戦隊で地域を丸ごと占領する・・・と」


エンリは「奴らが来る前にケープに居るメアリ王女を確保するんだ」

すると、市民軍隊長が「それが、ゴイセン艦隊が今朝出航したそうでして。それに主な戦力を乗せて・・・」

エンリは立ち上がり、号令を発した。

「合流してここを襲う気だ。タルタ号直ちに出航。合流する前に追い付いて確保するぞ」


その時、港からの急報が届いた。

「王子、大変です。港の船が燃えています」



港に行くと、停泊していた船が全て炎上していた。

その場に居た一同、唖然。

「やられた・・・・・・」

そうエンリが呟くと、タルタも「俺たち、どうやって奴らを追えば・・・」

すると、フェリペがエンリの手を引き、そして言った。

「父上、船ならあります。僕たちが乗ってたヤマト号が」



マゼランが、軍船の出払った港に停泊して営業していたヤマト食堂に連絡する。

ヤマトは直ちに閉店し、ヤマト号は本家ケープの港を出航。喜望峰を回って元祖ケープに向かった。

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