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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第34話 聖櫃で戦争

南海交易の支配権を巡って対立するユーロとアラビアの商人たち。

ユーロ側のポルタ商人たちに加勢すべく、エンリ王子たちが南方大陸の迂回ルートでアデンの港に到着した時、どちらが交易路を支配するかを決める方法を話し合っていた。

そして、海戦を回避するため、双方の魔導士どうしの代表戦で決着をつけようという話になっていた。



ポルタ商人たちと合流するエンリ王子一行。

交渉を続けてきた商人たちから話を聞く。


「海戦回避っていっても、オッタマの艦隊は壊滅した筈だが、こんな短期間で再建したっていうのか?」

そう問うエンリに、ポルタ商人の代表が訴える。

「この目で見たんです。港を埋め尽くす膨大な数の軍船を。オリエントを支配するオッタマ帝国の底力は計り知れません」


「で、こちらの代表魔導士は、アーサーがやるのか?」とエンリ。

「私よ」

そう言って出てきたのは、ギリシャの島で別れた魔女マーリンだ。

「結局、プラトンアカデミーの遺跡からは何も出なくて、聞けばもう調査された後だって言うじゃない。それでポルタに戻ったら、イザベラ妃から声がかかってね」と彼女は言った。



「で、代表選って、ファイヤーボールでも打ち合うのか?」とエンリ王子。

商人代表は「一方が全てを貫くゴッドランスの攻撃呪文を使い、他方があらゆる攻撃を跳ね返すイージスの防御呪文を使って、守りを破れるかどうかで勝敗を決めようという話になったのですが」

「どこかで聞いたような話だな」とジロキチ。

「どちらが攻撃側をやるかで折り合いがつかず」と商人代表。

エンリは「相互に交代してやればいいだろーが」

「その手があったかー」と商人代表。



「で、結局何に決まったんだ?」とエンリ。

「聖櫃戦争ですよ」と代表。

「聖杯じゃなくて?」とアーサー。

商人代表は「あれはこちら側の宗教だけの聖道具アイテムですから。本来どちらの教えも元は一つの宗教で、拝んでる神は同じなんです。その元の宗教のアイテムが聖櫃です」


「で、聖櫃戦争ってどうするんだ?」とエンリ。

「ってか、そもそも聖櫃って?」とタルタ。

「原初の預言者が神から授かった戒律を記したタブレットを納めた宝箱ですよ。元はエルサレムの神殿に保管していたんですが、長い戦乱で失われて、インディというトレジャーハンターが世界中探して、ついに見つからなかったそうです。聖櫃戦争の勝者が決まるとそれが出現して、あらゆる願いを叶えると」と商人代表が説明。


「あらゆる願いが叶うって?・・・」とエンリ。

「お金がいっぱい貰える」とニケ。

「最強の剣士になれる」とジロキチ。

「神秘の根源を教えて貰える」とアーサー。

「もしかして、それがひとつながりの秘宝って事も・・・」とタルタ。

「絶対勝つぞぉ」と仲間たちが気勢を上げる。


「で、どうやって勝敗を決めるんだ?」とエンリ。

「召喚魔術を使う魔導戦争ですよ」と代表。

「つまり七人のサーバントを召喚して戦わせる訳か」とアーサー。

「じゃなくて、マスターとして双方が崇拝する神を召喚して、それが双方の軍勢から七人のサーバントを選んで指揮して戦わせるんです」と代表。

エンリは「人間が召喚した存在に命令されて戦わされるのかよ。嫌な魔導戦争だな」

「だって相手は神様ですよ。それに宗教戦争って、そもそもそういうものですから」と商人代表。



エンリは「で、その神様を呼び出す魔導士がマーリンって訳か」

「そうよ。それで、イザベラ妃から依頼される時、彼も連れて行けって言われてね」

そうマーリンが言って、出て来た男を見て、エンリ達唖然。

エンリは彼に言った、

「お前、イザベラの所に居た道化師のカルロじゃないか」


カルロは「私、実はスパイなんです・・・って、驚かないんですか?」

「いや、そうだろうと思ってた」とエンリ。

「やっぱりハードボイルドな雰囲気って、隠せないんですね」とカルロは自分で納得してみせるが・・・。

エンリは「いや、道化師にしてはギャグが寒い」


カルロは言った。

「こう見えても俺、エリートなんですよ。ボローニャ大学の陰謀学部を主席で卒業してマキャベリ学部長から表彰されたんです」

「陰謀学部って・・・」とエンリ、疑問顔。



そしてエンリはカルロに「で、ポルタには何を探りに?」

「イザベラ姫の美しさの虜となって是非とも落とそうと」とカルロは真顔で言う。

するとエンリは「姦通罪未遂は死刑な」

カルロは慌てて「嘘です。あの人の対外裏工作を探れと」


エンリはあきれ顔で「お前、任務と身の安全とどっちが大事だ?」

「もちろん身の安全です」とカルロはドヤ顔。

「お前なら、そーだろーなぁ」とエンリ。


そしてカルロは「という訳で、イザベラ様の心を射止めかけたのですが、もちろん間男になるつもりは皆無だったのでご安心を」

エンリはますますあきれ顔で「いや、いいけどね、お前相当うっとおしがられてたぞ」

「いや、女性には照れというものがありますから。あは、あはははは」とカルロ。



そしてエンリはカルロに「で、どこに依頼された?」

カルロは「依頼主については秘密厳守」


「ドイツ皇帝だろ」とエンリ。

カルロは驚き顔で「何で解ったんですか?」

「顔に書いてある」とエンリ。

「まさか、さっき顔を洗ったばかりなのに」とカルロ。


エンリは更にあきれ顔で「こんな単純な鎌かけにひっかかるんじゃないよ」

「なーんだ、あてずっぽうですか。いや、全然違います」とカルロ。


「もう遅いよ。それとフランス王とイギリス王もだろ」とエンリ。

カルロは驚き顔で「何で解ったんですか?」

「お前、絶対スパイに向いてないと思うぞ。口が軽すぎだ」とエンリ。

「軽さはイタリア男の武器ですから」とカルロはすまし顔。

エンリは「民族偏見で炎上するぞ。それと、その上着の背中」


カルロがスーツの上着を脱ぐと、背中に「スパイ・裏工作はカルロ諜報事務所へ」

それを見てカルロは「いかん、営業用スーツ着てきちゃった」

「お前、そんなもん着て宣伝してるのかよ」とエンリ。

「やっぱり多くの顧客に顔を憶えて貰うのは全てのサービス業の基本です」とカルロ。

「スパイが顔憶えられたら駄目だろ」とエンリ。



その時、17才ほどの女の子を連れた、見覚えのある若者がエンリ王子に声をかけた。

「エンリ殿、久しぶりです」

若者を見て、エンリは「ノルマン王子のカールじゃないか」と・・・。

「グングニルの聖槍を持って駆け付けました」とカール。


エンリはカールが持つ槍を見て「それ、役に立つの?」

「こう見えても私、槍術の教官ですよ。父からこの槍を託されて、今では自分の体の一部」とカール。


「王の証で国宝級のお宝だろ。日常的に使って欠けたりしたら大変じゃないのか?」とエンリ。

カールは「武器は使ってこそです。それに、これで突いても何故か相手が死なないので、生徒を鍛えるにはもってこいなんです」

そして、カールの連れの女の子は言った。

「大神オーディンは慈悲深いですから、敵であっても命を奪うまいと」


エンリとアーサー、顔を見合わせる。

そして「死なない・・・って、不殺の呪い、まだ解いてなかったのかよ」とエンリはアーサーの耳元で・・・。

「そーだった」とアーサー。



アーサーが不殺の呪いを解く間、エンリは女の子を見てカールに問う。

「ところでその子ってカールの・・・」

「婚約者です」とカール。

「えーっ」と驚く王子の仲間たち。


女の子は「ワルキューレ養成学校に在学しています」

「あんなの養成するために学校まであるのかよ」と驚くタルタ。


「代々の王太子は武術を極めて、そこの教官になるのが習わしでして」とカール。

「じゃ、あの婆さんたちも」とエンリ。

「それであのジジババハーレムかよ」とジロキチ。


「けど、ワルキューレって聖槍の封印を守る役目なんだよね? その封印が解かれてるのに、存在意義あるの?」とニケ。

「とても重大な存在意義があるんです」とカール。

「どんな?」と王子の仲間たち。


カールは言った。

「百合日常系の舞台として最強」

「何だそりゃ」とエンリ王子の仲間たち。

「萌えという聖なるエナジーを司る儀式の場として東の国ジパングでは欠かせないと聞きました」と説明するカール。

「そうなのか? ジロキチ」とエンリ。

ジロキチは溜息をついて「知らん、ってか知りたくもない」



その時、アラビア側の一団が来て、彼等に話しかけた。

「あなた方が対戦相手ですね? 私はオッタマの賢者シーナー。知恵の館の館長をやっています」と、彼等のリーダーらしき男性。

「マーリンです。で、そちらがサーバントの方々ですね?」とマーリンがシーナーに・・・。

エンリは不思議そうな顔でマーリンに「いや、サーバントを決めるのは神様だろ?」

するとシーナーが「前もって内定啓示があるんです」



いかにも猛者という感じの男が七人。自己紹介する。


「ハサンです。クラスはセイバー。暗殺教団で戦士やってます」

そう自己紹介した男は、髑髏のような仮面を斜めにかぶり、腰に三日月刀、胸に煙草入れを下げている。


「ピグミーだ。クラスはアーチャー。南方大陸から来た。部族一の狩人と呼ばれている」

そう言った男は、身長1mそこそこの低身で、弓を持ち、見るからに敏捷そうだ。


「マサイだ。クラスはランサー。同じく南方大陸から来た。この槍は祖先が征服王と呼ばれた侵略者から贈られた宝器だ」

それは6mの槍を持つ身長2mの長身のマッチョだった。


そして三人の、いかにもアラビアな服装の屈強な男たちが、それぞれ自己紹介。

「アラジンだ。クラスはキャスター」

「俺はシンドバット。クラスはアサシン」

「俺はアリババ。クラスはライダーだ」


アリババを見てエンリは言った。

「お前、いつぞやの水先案内人じゃないか」

「ドラゴンを眠らせたのはこの俺さ」とアリババ。

「こいつらかよ。あのチョロい一隻海軍は」と、隣にいるシンドバットは笑う。

エンリ王子は「そのチョロい一隻海軍に艦隊丸ごと壊滅させられたのはお前等だろうが」

「俺たちは俺たちの役目を果たした。後は海軍の奴等の仕事で俺たちは知らん」とアリババ。


「ってか、お前等仲間か?」とアーサーはアリババたちに言う。

「ペルシャの海賊三人衆ってのは俺たちの事さ」とアラジン。


タルタは「お前等も海賊かよ。じゃ、"ひとつながりの大秘宝"って知ってるか?」

「知らん」と三人口を揃える。

「大海賊バスコは?」とタルタ。

「そんな奴いたっけ?」とアリババは他に二人に・・・。


するとアラジンが「あれじゃないのか? 何か地図みたいなの持って、あちこち廻ってる奴が居たとか」

「宝の地図かな?」とタルタ。

するとシンドバットが言った。

「それがその秘宝のありかって訳かよ。けど、宝なんかそこら中にある。一つの宝だけ追い求めるなんてコスパ悪すぎ。馬鹿のやる事だ」


最後に、いかにもインド人といった風の男が言った。

「私はタイガ。クラスはバーサーカーです」

彼を見てアーサーが「一番まともそうに見えるんだが」

「異能があるのです」とタイガは言った。



そんな彼等を見て、エンリ王子はマーリンに訊ねた。

「あのさ、マーリン。って事は俺たちも、その内定啓示さやらで、誰が何やるかも決まってるのか?」

「決まってるわよ。セイバーはジロキチ」とマーリン。

「当然だな」とジロキチ。


「アーチャーはニケ」とマーリン。

「弓じゃないけどね」とニケ。

タルタが「飛び道具って事だろ?」


「ランサーはカール王子」とマーリン。

カールは聖槍を掲げて「ノルマン騎士の名誉にかけて」と気勢を上げる。


「キャスターはアーサー」とマーリン。

「本職ですから」とアーサー。


「ライダーはエンリ王子」とマーリン。

エンリは困り顔で「あの、ライダーって馬に乗るんだよね? あまり得意じゃないんだが」

「乗り物なら何でもいいのよ」とマーリン。

ファフがエンリの上着の裾を引いて「主様、ファフの事なんじゃ」

「ドラゴンライダーか」とタルタが納得顔で言った。


「バーサーカーはタルタ」とマーリン。

タルタは困り顔で「バーサーカーって理性無くして暴れるんだよね?」

「何も考えてないって事だろ」とジロキチ。


「アサシンはカルロ」とマーリン。

エンリがカルロに「お前、大丈夫かよ」

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