表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
339/562

第339話 トカゲとカメレオン

南方大陸南端で対立するポルタ人とオランダ人の二つのケープ港。

そして現地人たちはズールー派と反ズールー派に別れて争い、反ズールー派はオランダ人の支援を受けていた。

フェリペ皇子を追ってこの地に来たエンリ王子たちは、フェリペたちがオランダ人に加担してズールー族との戦闘に参加している事を知り、そしてこのポルタ人の拠点を守るため、現地人同士の争いを終わらせようと、ズールー族の指導者ベルベドを通じて彼等に和解を働きかけた。



その頃、オランダ人の植民市本家ケープの市長庁舎では・・・。

現地人部族間の戦争から戻ったフェリペたちが居た。


ドラゴンどうしの戦いに参加したファフを目の当たりにした彼等は、あれこれ言う。

「父上、来てたね」

そうフェリペが言うと、ライナも「見つかっちゃいましたね」

マゼランも「だから介入は止そうって言ったのに」

そう言って彼等が視線を集中させた先に居るメアリ王女は「現地人に恩を売るチャンスなのよ」


フェリペの部下たちには顰蹙買いまくりのメアリだが、リーベック市長は彼女に揉み手で「ポルタ商人を追い出して、この交易路をオランダが掌握し、我々の時代を築く。そして現地人を操ってオランダ人農民の勢力を拡大し、彼らを支配する事で、この拠点は磐石なものとなります」

「それに協力すれば、私の身柄は保証して貰えるのよね?」

そう言うメアリに、リーベックはドヤ顔で「オランダはイギリスの属国ではありません」


「それより、注文していた化粧品、まだ届かないんだけど」

そう言うメアリに、リーベックは困り顔で「あなたは王族でもイギリス人で、我々オランダ人とは無関係。しかも政治犯ですから、あまり好き勝手されても困るんですけどね」

「私はあの国の王位を奪還して女王となる身よ。恩を売っておけば、いずれオランダの大きな得となるわ」とメアリ王女ドヤ顔。

リーベック、あきれ顔で「それって売国って言いません?」


メアリは更なるドヤ顔で言った。

「国家は王の所有物で、王位は神から与えられた聖なる立場よ」

リーベックは溜息をついて「今時、王権神授説なんて流行らないと思いますけど」

「絶対王政の基本理念よ。それに、あなた達はジュネーブ派よね? 現世の幸福は神に愛された証で、全ての職業は神が与えた天職・・・だったわよね。だったら王という職業も神が与えたもので、本人が喩えその地位を得るために母親のお腹から出る以外の努力をしなかったとしても無関係、という事になるわよね?」

そんな事をヌケヌケと語るメアリに、リーベックは「確かに・・・」

メアリは「解ったら、未来の王たるこの私に、せいぜい奉仕する事ね。ほーっほっほっほ」



そんなメアリを見て、市長の部下たちがあれこれ・・・。


「いいのかなぁ? あれ」

そう怪訝顔で言う一人の部下に、もう一人が「奇貨置くべし・・・って奴なんだろ?」

更に、もう一人が「ウイリアム殿下をたらし込んで、その妃でも収まるつもりかよ」

すると別の部下が言った。

「けど、イギリスに居る信者を使って革命でも起こせば、王族を使って丸ごとイギリスは我々のものに・・・」

もう一人の別の部下が「一滴の血も流さず、名誉ある革命って訳かぁ」


「そういう皮算用はどうかと思うが」

更にもう一人の別の部下がそう言うと、最初に発言した部下が「それにさ、だったらそもそも彼女が政治犯なのも、神の計画の一部という事にならない?」

「・・・・・」



サン族の村へ向かうエンリたちとベルベド。


タルタが背負う荷物の上に、カメレオンの姿となっているドラゴンが居た。 

「あのドラゴンって、おじさんのお友達なの?」

そうファフがカメレオンに話しかけると、カメレオンは「同類ではあります。彼は普段はトカゲの姿をしていますけどね」



サン族の集落に着くと、何人もの兵が入口を守っており、オランダ人たちの姿も見える。

ベルベドはエンリたちに言った。

「ここからは私が。皆さんは目立ちますので」

カメレオンはファフに「爬虫類の小動物どうしで話をつけてやるさ」

その言葉をベルベドがエンリ達に伝える。


すると、猫の姿のタマが「私も小動物だけどね」

カメレオンは「トカゲは猫を怖がるんですよ」

「ファフは同じドラゴンなの」

そうファフが言うと、カルロが「俺はスパイで潜入は得意」

アーサーが「私は隠身という魔法が使えます」



「で結局、全員でついて来ちゃったって訳かよ」

そう言ってあきれ顔しつつ、エンリは仲間達と隠身で姿を隠し、村に潜入する。

草で覆った家が幾つも立ち並ぶ中、集会所らしき大きな建物がある。

その建物を指して、ベルベドは「彼はあの中です」


中に入ると、神を祀るらしい怪異な像のある祭壇。そこにトカゲは居た。

カメレオンはタルタが背負った荷物から飛び降りて、トカゲの所へ。

トカゲはそんなカメレオンに「お前、こんな所で何やってるんだ?」

カメレオンは「こっちの台詞だ。お前こそ、こんな所で戦争の手伝いなんて・・・」

トカゲは「お前こそ、支配者の道具なんてやってるのかよ」

「彼は俺の司祭だ」

そう言ってカメレオンはベルベドを見る。


カメレオンがベルベドに合図すると、彼はトカゲに名乗り、そして言った。

「私は彼によって預言の力を得ました。その預言により警告に来たのです」

「という訳で、お前の司祭はどこだ?」

そうカメレオンが言うと、トカゲは「ここには居ない。彼は友達との約束で遠くに居る。俺は彼の願いによりここに来て、ここの人たちを助けているんだ」

カメレオンは「お前の司祭って誰だ?」

トカゲは「ニカウという若者だよ」


「司祭って?」

そうファフが尋ねると、カメレオンは「このベルベドが私の司祭でね。我々の声は司祭でないと届かない」



カメレオンはトカゲが説明した内容をベルベドに伝え、そしてベルベドはエンリたちに説明する。


「つまり、そのニカウという人を連れて来て、村の人たちに話して貰えばいい訳ですよね? それで彼はどこに?」

そうエンリが言うと、ベルベドは「サン族の村から聖地に行く途中で知り合って友達になった、ユーロ人の牧場主の所です」


説明によると、ニカウは神が落とした秘宝を拾って、村に持ち帰ったという。

村人たちはみんな欲しがり、取り合いになった。争いの種になった秘宝を神に返すために、ニカウは聖地へ旅立ち、そしてトカゲに出会ったという。

「で、その聖地って?」

そうエンリが尋ねると、ベルベドは「ジンバブエの神殿跡だそうです」



エンリたちはベルベドとカメレオン、そしてアーサーを連絡役としてその場に残し、ドラゴンに変身したファフの背に乗って、聖地の方角へ向かった。

地上を観察しつつ、あれこれ噂するエンリたち。


「ユーロ人の牧場主とか言ってたけど、つまりオランダ人農業移民だよね?」

そうエンリが言うと、ニケが「本家ケープとかから、随分と離れてるけどね」

ジロキチが「無許可植民って奴かな? サンフラワー村の人たちみたいな」

タルタが「ジュネーブ派の本部からの指令に嫌気がさしたっていう?」


リラが「けど、ジュネーブはそういうのを止めた筈ですよね?」

「代わりにオランダがジュネーブ派の中心みたいになってるんだよ」とエンリ王子。

「それじゃ、オランダ政府の指令に嫌気がさして・・・って事?」と若狭。

「あの国の人達も一枚岩って訳じゃ無いという事ですかね?」とカルロ。

「ってか、そもそもオランダ人とは限らなくね?」

そうタルタが言うと、一同「確かに・・・・・・」

そんな中でタマが地上の一点を指して「あれじゃないの?」



十数頭のヤギの群れと、一軒の家。

エンリが「植民村というより単独移民だね」

カルロが「大勢で男が固まってると、女日照りに苦しみますからね」

ムラマサが「それでホモに走ったり、一人だけ居る女の子の取り合いになったりするでござる」

「オタサー姫がサークル崩壊させるみたいな?」

そう若狭が言うと、ジロキチが「あれは経験皆無なオタクが恋愛に夢見過ぎて、そうなっちゃうんだろ?」

「ってか、そもそも本当にそんなので内輪揉めする馬鹿の集まったサークルって実在するのか? マスコミがネタで流してるデマだろ」とタルタ。

「ってか女、居るけど」とタマが、ヤギの世話をしている女性を指して言った。


ムラマサが「つまり非モテ女が集まった女子会植民地でござるか?」

タルタが「百合日常系ブームに乗ろうと、植民地で百合ん百合ん集団なんてのに手を出したのかよ。この作者、落ちる所まで落ちたな」

「けど、男性も居るけど」とタマが柵の修理をしている男性を指して言った。

全員、声を揃えて「つまりリア充植民者」

ファフが「こういう時って爆発しろって言うんだよね?」

「さすがにそこまで落ちるのは嫌だなぁ」

そうタルタが言うと、エンリは「ってか、俺たちが探してるのって、ニカウっていう現地人だろ?」

「あれがそうなんじゃ無いの?」とタマが、干し草を運んでいる現地人男性を指して言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ