表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
326/562

第326話 南国のおもてなし

サンクリアン王子を取り合う四人の精霊女子の争いを女子会で収めようというフェリペ皇子の部下たちの作戦は、ついに破綻した。

彼女たちと繋がった火山のエネルギーが引き金となった大震災の危機。

その時、駆け付けたエンリ王子は、この地に定着したアラビア信仰が認めた「四人と同時の結婚」の案を提示し、精霊たちはこれを受け入れ、危機は回避された。



火山の精霊の問題が解決すると、いよいよエンリは本来の目的に着手した。

「今度は逃がさないからね」

そう言って、フェリペとその部下たち全員に拘束の首輪を嵌めるエンリたち。

「これを付けておけば、どこに行っても位置を把握できる。魔力も体力も封じられて、抵抗出来ないですから」

そう説明するアーサーに「けど、オケアノスの島で付けたのは、外されちゃったぞ」と疑問を呈するジロキチ。

「魔法だと工夫次第で破る奴は居るけど、今度のは物理的な鍵ですから」と、アーサーは太鼓判を押す。


そしてポルタに向けて出港の準備に入るエンリたちの所に、マラッカ王が大臣とともに訪れた。

「皆様のお陰で、この国は救われました。お礼に、あなたと御子息、そして部下の方々のために、おもてなしを用意しております。倒壊した王家の別荘は新築しましたので」

「そんな暇無いんだけどなぁ」

そう困り顔で言うエンリに、担当大臣は「ここは美味しいものが多いですよ」

「グランガチ料理とか?」

そうファフが言うと、タルタも「あれは美味しかったなぁ」

「ここはカレーも絶品ですよ」と担当大臣。

「インドだけかと思っていたが」

そうジロキチが言うと、担当大臣は「向うの文化も入ってきていますから。けど、たくさんの島に独自の料理があります。密林にはいろんな果物も。とりあえず温泉に入って、のんびりして下さい」

ニケがウキウキ顔で「火山の国なら温泉もあって当然よね」



新築した別荘に案内される。

建物に入って中を見渡すエンリとフェリペ、そして彼等の部下たち。

「ジパングの温泉宿みたい」

そう若狭が言うと、担当大臣は「向うから移住した大工に作らせたものです」

そして「では先ず、温泉にご案内します」


女中さんの案内で浴室へ。

そして「こちらが男湯、こちらが女湯になります」

「じゃ、後で」

そう言って男湯へ入ろうとする男性たち。

するとリラがエンリの手を執って「王子様、ご一緒します」

若狭がジロキチとムラマサに「三人一緒に入りません?」

「そうだな 別府の湯を思い出す」とジロキチも・・・。

「タルタ、また頭洗ってよ」

そう言って彼の上着の裾を掴むタマに、タルタは「人の姿でか?」

タマは「猫はお風呂が苦手なのよ」


そんなエンリたちに、フェリペの部下たちは困り顔で「あの・・・・」

エンリは彼等に「という訳でお前等は女湯の方で」

「いや、そう言われても・・・」と困り顔のマゼラン。

そんな中、物欲しそうにしているフェリペを見て、エンリは「フェリペ、一緒に入るか?」

「はい、父上」

するとルナが「私がフェリペ様の髪を洗って差し上げます」

「ファフもやる」

そうファフが言い出すと、ライナとリンナが「フェリペ様を洗って差し上げるのは私たちの役目です」


そんな彼等彼女等を見て、マゼランとチャンダは「だったら俺たちは・・・」と言って、女湯の方へ。

すると、ライナがマゼランの上着の裾を掴み、リンナがチャンダの上着の裾を掴む。



「それで、何でこうなった?」

そう言って、ヤンとマーモは、今一状況を理解出来ない風で男湯を見回す。


男湯の大きな浴槽に歓声を上げて飛び込み、盛大な湯飛沫を上げるタルタとファフ。釣られてフェリペとマゼランとチャンダも・・・。

浴槽の中でイチャイチャするエンリと人魚の姿のリラ。

フェリペを取り合う三人の女官。


「お前等っていつもこうなのか?」

そうシャナが言うと、ニケは「馬鹿ばっかだから」

「ほんと、馬鹿ばっかだな」とあきれ顔で周囲を見るシャナ。


「そこの下僕二人、私の体を洗って頂けるかしら」

洗い場のメアリからそう声をかけられたヤンとマーモ。

ヤンは「いや、俺たち下僕じゃないんだが」

マーモは「ってか、こういうの男にやらせるんですか?」

メアリは「仕方ないでしょ。セントヘレナ島には衛兵の男しか居なかったんだから」


「ところでカルロは何やってんだ?」

女湯との間を仕切る壁の所で不審な行動中のカルロを見て、エンリはそう訝しげに声をかける。

「覗きは男のロマンですよ」

そう答えるカルロに、エンリは溜息をついて「いや、いいけどね。けどそっちには誰も居ないと思うぞ」



夕食は、ご馳走とお酒でどんちゃん騒ぎ。

「お前等も飲め」

そう言って銚子を右手に、ほろ酔い気分のタルタはマゼランとチャンダを相手にアルハラを決め込む。

「俺たち未成年ですよ」

そう迷惑そうに言う二人に、タルタは「海賊は酒が飲めてナンボだぞ」

そのうち、タルタはヤンとマーモを相手に、イタリアの海賊団時代の昔話に花を咲かせる。

タマが猫の姿でタルタに甘える。


メアリ王女がヤンとマーモに愚痴を延々と・・・。

「エリザベスなんて私より五歳も年下なのよ。おまけに私の母は皇女、あの子の母親なんて若いだけの風俗女よ。私専属の女官や近衛対象の世論調査では断然私の支持率は上なのよ。姉より優れた妹が居てたまるものですか」

「そうですね、おう思います」と調子を合わせるヤンとマーモ。

横から小声でタルタが二人に「お前ら、本気でそう思ってる?」

そんなタルタにヤンは「女の愚痴ってのは、どんな変な事を言われても、調子を合わせてハイハイ言っとくものだ」


エンリが胡坐をかいた上にフェリペが座る。隣に寄り添うリラ。

ファフはエンリの上着の裾を引っ張り、「主様、そこ、ファフの場所」

「お前も来るか?」と、エンリはファフの頭にポン、と手を置いて・・・。


エンリが胡坐をかいた足の上にフェリペとファフが並んで座り、エンリは二人の頭を撫でる。

隣でリラが寄り添う。

そんなリラに、フェリペは「リラ姉様、母上より母上っぽい」

そんな四人を見てリンナは思った。

(いいなぁ)


ライナはマゼランの隣に陣取って、ご馳走を箸でつまんで「あーん」

リンナがチャンダに「あーん」

そんな四人を見て、タマは人の姿になる。

そしてタルタに甘えて「タルタ、あれ、タマにもやって」


三人でわいわいやるジロキチと若狭とムラマサ。

「畳の上は落ち着くでござる」

そうムラマサが言うと、若狭は「ジパング流のおもてなしって、いいですね」

「詫び錆でござるな」とムラマサ。

ジロキチは「ちょっと違うと思うぞ」


ご馳走を運んできた女中さんにちょっかいを出すカルロ。

アーサーを相手に愚痴を言い始めるニケ。



ロキが宴会場入口の襖戸に黒板消しを仕掛けるのを見て、エンリが「粉が飛ぶのはご馳走が駄目になるから止めてくれ」

「そんな事を気にするのは悪戯じゃないぞ。それよりデザートのパイは来るんだよな?」

そう言って悪戯気分をエスカレートさせるロキに、エンリは「パイ投げも止めてくれ。後で掃除が大変だ」

「俺たちはお客様で神様だろ?」とロキが言うと、エンリは溜息をついて言った。

「いや、その神様は料金払った人の事だぞ。俺たちは招待されただけ」

「俺、お客様じゃなくても神様なんだが」とロキ。


お寿司が来る。

「食べる世界遺産キタ――(゜∀゜)――!!」とはしゃぐ等全員。

各自、目の前の握り寿司を口に入れる。

そして、寿司に仕込まれた大量のわさびの辛さに、思わず口を押えた。

「わさびテロ大成功」

そう言ってはしゃぐロキに、エンリは溜息をついて「お前はどこぞの半島国人かよ」



庭ではドラゴンの姿に戻ったアラストールが大きな食器でご馳走を食べる。

「うまいか?」と、横でメロンパンを齧りながらシャナが言うと、アラストールは言った。

「ここの料理は絶品だな。昔、やり合ったフェンリルが、"異世界から来た料理人と従魔契約を結んで、いろんな珍しい食事にありついた"と自慢していたが、これは奴のありついたご馳走に負けないと思うぞ」


そんなアラストールにファフが話しかけた。

「おじさん、人間の姿にはなれないの?」

「昔はいろんな姿に変身できたのだがな。あるドラゴンと変身勝負した時、"大きなものに変身出来ても、小さなものには変身できまい"と言われて、奴はネズミに変身したのさ。それで、リベンジしようとこの小さなペンダントに変身するため頑張って変身修行の結果、ついに奴に勝ったんだが、それ以外のものに変身できなくなってしまってな」

そんな昔話をするアラストールに、ファフは「どこかで聞いたような話なの」



夜更けまで酒を飲んでどんちゃん騒ぎが続いた。

エンリたちが眠ると、ヤンはピッキングの道具を使って、フェリペたちの首輪の鍵を外した。


「次はどこに行きますか?」

ヤンがフェリペの鍵を開けながらそう言うと、フェリペは「インドに行こうよ。あそこはチャンダの故郷だ。お前、母様に会いたいよね?」

そう話を振られたチャンダは「俺はもう子供じゃないですから」

そんなチャンダにリンナは言った。

「会うべきだと思います。私、フェリペ様とエンリ様を見て思ったんです。家族っていいな・・・って」



フェリペたちは船着き場に向かい、ヤマト号に乗船した。

彼等を出迎えるヤマト。


「ご馳走美味しかったですか?」

そうヤマトが言うと、フェリペは「美味しかったよ」

「お酒、美味しかったですか?」

そうヤマトが言うと、ヤンは「美味しかったよ」

「温泉、気持ちよかったですか?」

そうヤマトが言うと、マゼランは「もしかして・・・」

ヤマトは慌てて「べべべ別に自分だけ温泉に行けなくて悔しいとか思ってませんから。私って船とセットのゲームキャラで、この船から離れられない仕様になってるのって、皆さんのせいじゃないので」


「いや、思ってて当たり前だと思うけどね。そう思って折詰とお酒貰ってきたんだ」

そう言ってマゼランは折詰とお酒の瓶を出す

「ありがとうございます」

そう言ってお土産を受け取ったヤマトは、ほぼ一瞬でそれを平らげる。

そして「あの、お代わりは?・・・」

マゼランは脳内で呟いた。

(そーいや、この人って食いしん坊キャラだったっけ)


「とにかく父上が気付かないうちに出航だ」

そうフェリペが号令し、ヤマトは「了解しました。ヤマト号出航します」



港を出て海峡の航路に入り、船を進めながら、ヤマトは思い出したように言った。

「あの、ここって確か岩礁が多くて水先案内が必用なのでは?」

「あ・・・」


船に衝撃が走る。

ヤマトは焦り声で警報を叫ぶ。

「緊急アラーム。右舷第一デッキに浸水」

「第一デッキって?」

そうマーモが疑問声で言うと、ヤンは「艦隊アニメのお約束だろ。とにかく排水と修理だ」


船板の亀裂から、盛大に水が漏れている。

チャンダが「どうやって排水するんだ?」

「ひしゃくとか使うのか?」

そうシャナが言うと、ルナが外を指して「ひしゃくなら・・・」


甲板から外を見ると、海面から柄杓を持った手が何本も・・・。

「魔物じゃないか」とフェリペ。

ルナが「あれを貸してくれるって言ってます」

「何て親切な魔物さんたち」とライナとリンナ。

するとヤンが「いや、違うぞ。あれは船幽霊と言って、あの柄杓で船に海水を汲み入れて沈めてしまうんだ」



浸水場所に戻って対策についてあれこれ言うフェリペの部下たち。

ライナが「水魔法で汲み出せばいいのでは?」

フェリペが「亀裂は氷魔法を使えばいいよ」

マゼランが「氷なんてすぐ溶けてしまいますよ」


そんなグダグダ状態な彼等にヤンが言った。

「とにかく外側を凍らせてくれ。排水したら俺たちが内側から板を張って裂け目を塞ぐんで」

「けど、その後は?」

そうリンナが言うと、マーモが「俺が潜水艇で岩礁の無い所を探して先導しますよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ