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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
324/562

第324話 かりそめの仲良し

ジャカルタで、火山の精霊たちの宥め役となっていた精霊サンクリアンを好きになった四人の精霊の女性が、彼の取り合いを始め、ジャカルタは同時多発噴火の危機に瀕した。

精霊たちの争いを何とか収めようと、マラッカ王から依頼を受けたフェリペ皇子たちは、三人の女官の発案で、精霊たちを王家の保養所に招待し、女子会による同性関係を説くのだが・・・。



温泉から上がると夕食。

浴衣を着て広間で机を囲み、ご馳走を食べ酒を飲み、わいわいやる。

記憶の魔道具で録音した伴奏によるカラオケ大会。


そしてリンナが一席ぶつ。

「女の子どうしのお付き合いって楽しいわよね。ご馳走は美味しいわよね。男と女は感性が違います。同性だからこそ解り合えるんです」

ライナも一席ぶつ。

「お酒も美味しいわよね。男の前で可愛く振舞おうなんて思わなくていい。女の子どうしって、とっても楽です。お風呂も気持ちいいわよね。女性には共感脳があって、互いに解り合えるように出来てる筈です」 


精霊たちはドン引き顔。

エンダが「私、プラティを解ろうなんて思わないですわ」

マーヤも「私もシェリの事嫌い」

プラティも「私だって・・・」

そんな彼女たちの文句を遮るように、ルナが言った。

「なので、そんな楽しい女子会の雰囲気を壊さないように、女子会には掟があります。これを頭に入れて守るんです。念話は五秒以内に返事を。女子会に男を連れ込むべからず。みんなのサンクリアンには抜け駆け禁止」


精霊たちに紙が配られ、そこに並ぶ掟の項目を見て、彼女たち唖然。

「この40あるのを暗記して縛られろ、てか?」とシェリが声を荒立てる。

マーヤも「いい加減、サンクリアンに会わせてよ」

エンダも「こんな茶番、もうたくさん。今すぐ山に・・・って、あれ?」


バタバタと倒れて眠りにつく女性たち。



静かになると、隣室で様子を伺っていたマゼランたちが出て来る。


マゼランは溜息をついて「やっぱりこうなったか」

「ご馳走に眠り薬を仕込んでおいて正解でしたね」とマーモ。

「けど、リンナたちまで・・・」

そうチャンダが言うと、マゼランが「こいつらどうする?」


ヤンは「布団の敷いてある部屋に寝かせておけ」

「一緒の部屋に?」

そう怪訝顔で言うマゼランに、ヤンは言った。

「女子会のイベントって言ったら、もう一つあるんだよ」



精霊たちが布団の中で目を覚ますと、枕元にはお菓子とジュース。

「あたし等、どうしたんだ?」と言いながら、起き上がって周囲を見回すシェリ。

プラティも起き上がって「ってか、ここどこ?」


一足先にライナたちが目を覚ましている。

自分たちのものも含め、九人分の布団が敷かれている。

「布団部屋かよ」

そうマーヤが言うと、シェリは「女子会って食っちゃ寝の事か?」


するとライナが言った。

「寝ませんよ。これからパジャマパーティですから」

「何だそりゃ」と唖然顔の四人の精霊。

「お菓子を食べながらおしゃべり。楽しいですよ」

そうリンナが言うと、「いや、おしゃべりって何を?」と疑問顔のマーヤ。

三人の女官は声を揃えて「恋バナです」

精霊たち唖然顔。

そしてシェリは他の三人の精霊を見て「こいつらのサンクリアンとの嘘臭いのろけを聞けってのかよ」

「他に恋愛経験ってありますよね?」とライナ。

「他人の恋愛って興味ありません?」とリンナ。

「そりゃ・・・」


そしてルナが言った。

「私、好きな人が居ます。フェリペ皇子です。五歳の男の子で、とっても可愛くて」

「ショタコンかよ」

そう、あきれ顔で言うマーヤを他所に、ルナは「彼は君主で、世話係として面倒を見てあげているんだけど、いざとなると、とっても強くて、あんな小さな体で"僕がみんなを守るんだ"って・・・」

するとリンナが割って入って「ハイハイ、もういいわよね。フェリペ様は私の君主でもあるんだけど、すごく可愛くて・・・」

更にライナも割って入って・・・。


そんな三人の女官たちを見て、精霊たちは「結局、こいつ等も一人の男を取り合ってるのかよ」

そのうちに言い争いを始める三人。

メアリも加わって収拾不能となり、四人の精霊唖然。



その時、シャナが言った。

「ほんとお前等、馬鹿ばっかだな」

「シャナはどうなのよ」

そうライナが言うと、シャナは「私はお子ちゃまに興味は無い。メロンパンが食べられるから従者になっただけだ」

「じゃなくて、恋愛経験はどうなのよ」とリンナ。

メアリも「ある訳無いわよね。会話の相手がペンダントでコミュ力ゼロ。女子力もゼロ」


「うるさいうるさいうるさい」

そう言って反発するシャナに、ペンダントのアラストールは「あいつはどうなんだ? 裕二は」

三人の女官は「それ、誰?」

シャナも「あいつ、恋人なのか?」

「好きだっただろ?」とアラストール。


「どんな人?」

いきなり食いつく女子達。

シャナは枕元の刀を手に執って「この刀を鍛えてくれた刀鍛冶の少年だ」

「お前、剣士か?」

そうシェリが言うと、アラストールは「彼女は妖怪ハンターだ。トモガラという特殊な妖怪を狩る存在だよ」

「鬼じゃなくて?」とライナが突っ込む。

リンナも「けどそれ、炎の魔剣よね。火の呼吸とか水の呼吸とか・・・」

「刀に炎を宿すのは彼女自身の能力だよ。ただ、裕二が打った刀でないと、炎に耐えられない」とアラストールが解説。

「じゃ、刀鍛冶の里みたいな所に居る、特別な刀鍛冶?」とルナ。


シャナは「いや、彼はトモガラのハーフだった」

「それって・・・。つまり敵と恋に?」と興味を示すマーヤ。

「ってかトモガラって?」とプラティも・・・。

「魔物は人の肉を食べる。けど、トモガラは人の存在そのもの食べるんだ。食べられるとその人が消える。そして、その人と関わった全ての人の記憶から消えて、その人が最初から居なかった事になってしまう」とシャナが解説。

「そんな魔物、居たっけ?」と言って顔を見合わせる三人の女官。


シャナは語った。

「そういう魔物の種族じゃなくて、いろんな魔物の中から隔世遺伝みたいに現れる。彼の父親はドラゴンのトモガラだった。そいつが人間の女と恋に落ちたんだ。彼の母方の父が名工で、領主から千本の刀を鍛えるよう命令されて、困った名工の娘が湖の主に祈った。湖の主だったドラゴンは若者の姿になって現れて、名工の弟子になって一緒に刀を鍛えて・・・」

シャナにまつわる意外な物語で、次第に場は盛り上がった。



翌日、アラストールのドラゴンの背に乗って首都へ。

九人で街を歩いてお買い物。

衣服に小物に化粧品に、わいわいやりながら買い物を楽しむ女性たち。

だが。


衣料品店で・・・・・・。

「こういう衣服ならシックなドレスよね」

そうドヤ顔で言うエンダに、プラティは「可愛くないの」

マーヤは「年増趣味だよね」

シェリは「やっぱりパンクだろ」


服装の趣味で言い合いを始める四人の精霊。

慌てて仲裁に入るライナたち三人。

そんな彼女たちに、四人の精霊は「あなた達はどう思うの?」

「え・・・えーっと」

誰かを支持すると、他の三人が機嫌を害する。


対応に苦慮する三人を見て、メアリはドヤ顔で言った。

「どれを買うかなんて、女の買い物じゃないわよ。セレブこそ女の生き方よ」

そして彼女は店の人に「この棚に並んでいるの、全部頂こうかしら」



翌日、王宮に届いた請求書を見て、マラッカ王は頭を抱えた。

「噴火を鎮める予算なんてヤギ百頭が相場だぞ。あの女たち、いったいいくら使う気でいるんだ?」  

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