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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
323/562

第323話 残念なキャッキャウフフ

メアリ王女を救出して海外へ逃亡したフェリペ皇子とその部下たちは、エンリ王子たちの追跡から逃れ、ルソン島を脱してジャカルタに逃げ延びた。

そこで現地のマラッカ王から、サンクリアン王子を取り合って争う四人の火山の精霊を宥める役目を依頼された。

その手段としてリンナたち三人の女官が提示したのが「精霊たちに、女子会で仲良くする手ほどきを」・・・。



とりあえずフェリペたちは、マラッカの王宮へ行き、当事者であるサンクリアンと面会する。

彼は王宮の一室で、引き籠り状態となっていた。


「あなたがサンクリアンさんですね?」

そう話しかけるマゼランに、サンクリアンは憔悴しきった表情で言った。

「エンリ王子の関係者の方々ですよね? あの四人の宥め役に来て頂いたと聞きます。けど、私はもう、あいつ等には関わりたく無いです」

「踊りながら会話する王子様キャラって聞いたけど」と言って、三人の女官は互いに顔を見合わせる。

「よほどひどい目に遭ったみたいですね」

そうマゼランが言うと、サンクリアンは「君だけが全てだって言っても、信じてくれない」

「そりゃ信じないだろ」とあきれ顔のヤンとマーモ。


悲痛な表情を浮かべるサンクリアンの手を執って、ライナが言った。

「それをどうにかするために、私たちが来たんです」

サンクリアンは、救われたような表情でライナの手を執り、「君、可愛いね」

ライナが頬を染めた。

そして彼はリンナの手を執り「メルアド教えてくれませんか」

リンナが頬を染めた。

更に彼はルナの手を執り「この後一緒にお茶とかどうですか?」

ルナが頬を染めた。


「なんて素敵な私のサンクリアン様」

そう言ってウキウキ状態になるライナに、リンナは「いや、サンクリアン様はあなたのじゃ無いでしょ」

「いや、私のサンクリアン様よ」とライナが言い返す。

ルナも「いや、私の・・・」


言い争いを始める三人の女官を他所に、サンクリアンはすっかり、いつもの調子を取り戻して「僕はー君達にー会えてーしーあーわーせーだーーーーー」

そんな様子をマゼランはあきれ顔で眺め、そして言った。

「こういう風にして修羅場が出来ていく訳なんだなー」

チャンダも「これ、宥め役にも問題があると思うぞ」


彼らを案内した担当大臣は、心配顔になりつつ、女官たちに訊ねる。

「それより女子会って、何を用意すれば良いのでしょうか?」

三人は顔を見合わせ、暫し思案顔に・・・。

そしてライナが「どこか保養施設みたいな所はありませんか? 温泉があってカラオケがあって」

「でしたら、王家の別荘を用意します」と大臣は言った。



マゼランたちはサンクリアンから四本の短剣を受け取り、ヤンの飛行機械でそれぞれの山へ。

そして、噴火寸前な常態で溶岩の沸き立つ噴火口に立ち、火口の溶岩に短剣を投げ込む。

そして現れた精霊に言う。

「サンクリアンさんの使いで来ました。彼が二人の愛の巣で待っています」

大喜びで飛行機械に乗って、保養施設に案内される精霊の女性たち。


そして、保養施設で四人鉢合わせ。たちまち言い争いが始った。

「何であんた達がここに居るのよ」

そう一人の精霊が他の精霊たちに言うと、別の精霊がマゼランたちに「私のサンクリアン王子はどこ?」

更に別の精霊が「いや、あんたのじゃ無いでしょ」


「あの、皆さん落ち着いて下さい」

そうライナが焦り顔で言うと、更に別の精霊が「落ち着いてじゃねーよ。王子はどこだ」

「とりあえず、今は居ません」

そうリンナが言うと、精霊四人は声を揃えて「話が違うぞ」

そして、その中の一人が「私たちに何やらせる気?」

「女子会です」

そうルナが答えると、精霊四人は声を揃えて「何だそりゃ」


四人を前に"女子会で仲良く"を解くライナ。反発する精霊たち。

その時、メアリ王女が言った。

「これはサンクリアンの試験よ。一番仲良く出来た人を選ぶと、彼は言ってるわ」

それを聞いて四人は一瞬で沈黙し、真顔になった。


リンナは焦り顔でメアリに言った。

「そんな出まかせ言っちゃって、いいんですか?」

「後で何とでもなるわよ。先ず彼女たちを乗せるのが先決よ」と、しれっと言うメアリ王女。



とりあえず自己紹介・・・という事になった。

一人づつ順番に名乗る四人の精霊の女性たち。


「私はエンダ。見ての通りの大人の女ですの。サンクリアン王子の母親への恋は、皆さんご存じですわよね? つまり彼に相応しいのは、私のような母性の権化ですのよ。ほーっほっほっほ」

露出の多目なドレスを纏った、一見おっとりタイプな巨乳肉体派に、腹黒な裏面が透けて見える。


「プラティなの。サンクリアンにいにはプラティの事、小さくて可愛いって言ってくれるの。萌えってプラティの事なの。可愛いは正義なの」

ひらひらな服装の小柄な、いかにも我儘そうなロリ系娘で、見かけは小学生と言っても通用する。


「マーヤよ。わわわ私はあんな王子、別に好きじゃないんだからね。彼が私が居ないと生きて行けないって言うから、仕方なく付き合ってあげてるんだからね。勘違いしないでよね」

いかにもな偽ブランドっぽいカジュアル服に身を包んだ、攻撃的なツンデレ丸出しのツインテ娘。見かけは十代後半といった所か。


「俺はシェリだ。こいつ等みたいなハンパな気持ちであいつと付き合ってんじゃねーぞ。マジなんだよマジ。そこんとこ夜露死苦」

パンクスタイルの口の悪いヤンキー系。目つきがかなりきつい。



先ず温泉。

脱衣所で服を脱ぎつつ、未だ趣旨を呑み込めない精霊たち。

「あたし等、レズじゃないんだけど」

そう釈然としない声で言うシェリに、ライナは「お友達として裸の付き合いは基本ですよ」

「温泉会とかいう、視聴者サービスの定番ですわよね」

そう言って胸を誇示して見せるエンダに、マーヤは「小説でそれやって意味あるの?」

ルナは困り顔で「それは言わない約束かと」



浴槽の中で、無理に盛り上がってみせるライナたち。

「ほーらバストチェック」

そう言いながらライナはルナに後ろから・・・。

リンナも「ルナちゃん、お肌すべすべ」


そんなわざとらしい同性イチャラブに、マーヤは「あの子たち、もしかしてガチレズ?」

三人の女官は慌てて声を揃えて「違います」

「ヨイショし合って気分を盛り上げるんだよな?」

そうシャナが言うと、ルナは困り顔で「いや、そういうネタばらしはちょっと・・・」

「つまりスペック自慢?」とプラティ。

「いいんじゃね? あいつ等人間私たち精霊」とシェリ。

「スペックの差は歴然ですわよね」とエンダ。


散々言いたい放題の精霊たちを横目に、三人の女官は顔を寄せ合って小声で言った。

「我慢よ。共通のバッシング対象を持つ事で女は結束するんだから」


更に調子に乗る精霊たち。

シェリが「やっぱりガキンチョだよな」

カチンと来る三人の女官。ライナは小声で「我慢よ」

プラティが「けど十二歳過ぎたらオバサンなの」

更にカチンと来る三人の女官。


そしてシェリが「そしたら大人の女とか言うんだろ? けど人間は二十歳過ぎたってアレだもの」

メアリがカチンと来る。

「メアリさん、我慢ですよ」

そう言って小声で制するライナを他所に、メアリは言った。

「精霊の皆さんはさすがのプロポーションですわね。胸の大きさとか」


気を良くして胸の自慢を始めるエンダ。

「やっぱり持つ者と持たざる者との差ですわよね。ほーっほっほっほ」

反発する他の三人の精霊。

「だらしなく大きいより形だろ」とシェリ。

「体系が可愛くて胸もあるのが萌えなの」とプラティ。

「脂肪が溜まってるだけなんて、ただのデブよ」とマーヤ。

エンダはドヤ顔で「負け惜しみは見苦しくてよ」

そのうち、四人で互いに貶し合いを始め、収拾つかなくなる。


「メアリさん、不味いですよ」

そう小声で言う困り顔のルナに、メアリは「ああいう手合いは一度くらい内輪もめで潰し合って痛い目を見た方がいいのよ」

「その潰し合いで、こんな事になってるんですけど」とリンナも困り顔。



その時、シャナが言った。

「人間も精霊も馬鹿ばっかだな」

「シャナさん」

そうライナが止めに入るが、シャナは続けて言った。

「胸なんか小さい方がいいという男はいくらだって居るぞ。アラストールもそう思うだろ?」

「そうだな。私は貧乳こそ萌えだと思うぞ。掌にすっぽり入るくらいがちょうど良い」と、シャナの胸のペンダントの姿のアラストール。

「それってロリコン・・・」

そう言いかけたマーヤに、シャナは「私は200才過ぎてるぞ。水の精霊の格を貰ってるからな」


そしてアラストールは更に言った。

「巨乳なんてAVの宣伝で情弱を流すだけの商業主義のバンドワゴンだ。そんなのと一緒に流された愚かなフェミナチ信者が、月曜日がどーの温泉娘がどーのと馬鹿な暴れ方をして社会に恥を晒す。そんなのを人権運動だ、などと偽物が跋扈するせいで、人権という言葉自体が信用されなくなる。悪貨は良貨を駆逐するというが、由々しき事態だと思うぞ」

しゅんとなる精霊たちを見て、シャナは「そのくらいにしておけ」とアラストールに・・・。

「そうだな」



その時、エンダは言った。

「ちょっと待って。今のって男の声よね? どこかに覗きでも居るの?」

シャナはペンダントを手に執って「アラストールは私の保護者だが」


エンダがペンダントのアラストールをひったくって空に投げた。

「男は出て行け!」

そしてアラストールは星になった。

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