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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
322/562

第322話 精霊の女子会

メアリ王女を連れてユーロを飛び出したフェリペ皇子とその部下たち。

フェリペたちは、オケアノス横断の際に行動を共にしたサルセード将軍の、ルソン島征服のやり方について行けず、将軍と決別。

彼らが加わった現地人アギナルドの砦が陥落寸前となる中、それを救ったラプラプ王の救援軍とともに、エンリ王子たちが到着。

エンリはサルセードを倒すとともに、ラプラプ王にルソン島を率いて、シーノ帝国の脅威に対抗する島嶼国連合に加わる事を解いた。

そしてフェリペ皇子たちは、彼等をユーロに連れ戻そうとするエンリ王子の手から抜け出し、更に西へと向かった。



ルソン島を出てジャカルタに向かったフェリペ皇子たちのヤマト号。

「マラッカの港に寄るのよね?」

そう言って詰め寄るメアリ王女に「いや、寄らないから」と、マゼランはぴしゃり。


だが・・・・・・・・・・・・。

ルナは「魚以外が食べたい」

リンナは「化粧品は?」

ライナは「週間私の騎士様、何号まで出てるのかなぁ」


マゼランは、そんな女子達をあきれ顔で見て「あれだけ苦労してエンリ殿下から逃げて来たってのに。港には絶対手配が回ってるよ」

「けど・・・。フェリペ様も港に寄りたいですよね? マラッカは賑やかで楽しいですよ」と、ルナはフェリペを味方につけようと・・・。

「ヒーローは苦しくても我慢するものです」

そうマゼランに言われたフェリペは「解った。我慢する。ところで今日のおやつは?」

「お砂糖も小麦粉も切らしてまして、おやつの材料がありません」とライナがぴしゃり。


「それは困るな。マゼラン、港に寄ろうよ。」

おやつ欲しさにあっさり寄港派に寝返ったフェリペ。

「駄目です」とあくまでも拒否の姿勢を崩さないマゼラン。

フェリペは「囲まれたら突破すればいいじゃん」

リンナは「要は、私たちだとバレないようにすればいいんです」

「だったら」と女の子たち、強気になる。



風向きが変わり、寄港するぞ的な空気になった船内で、マゼランは女の子たちに釘を刺す。

「変装とか言ってナース服とか魔女服とかコスプレ気分で目立つ格好するのは止めて下さいね」

「解ってまーす」と女の子たち。

するとメアリ王女が「要は、実用的な服装がいいのよね?」


「本当に解ってるのかなぁ」

そう疑問顔で言うマゼランに、メアリは「軍服は実用性の最たるものよ」

「あの悪の組織の女幹部みたいなのが一番マズイんだが」と、頭痛顔で呟くマゼラン。

そして・・・。


「ところであいつ等・・・って、フェリペ皇子もどこに行った?」

何時の間にか、女の子たちが部屋から消えているのに気付くマゼラン。


フェリペは別の船室で、三人の女官の着せ替え人形になっていた。

「本当にこんな格好するの?」

女の子の趣味丸出しの服装に赤面しつつ、そう言うフェリペに、ルナは「可愛いですわよ」

「目立つと思うんだけど」と、困り顔のフェリペ。

そんな女官たちを眺めて、シャナは「何やってんだか・・・」



マラッカ海峡に入る所で、小さな港に立ち寄る。

「ここ、植民都市じゃないよね?」

街らしきものが見えない港の様子を眺めつつ、不思議そうにそう言うフェリペに、マゼランは言った。

「水先案内を雇うんです。ここは岩礁が多くて危険ですので」


港に入り、岸壁に面した受付の小屋に接岸して、マゼランは窓口の係員に呼び掛けた。

「お願いします」

「へい喜んで」

そう係員が営業モードで対応し、奥へ注文を伝えた。

「マゼラン海賊団様ご一行、水先案内一名、入りました」


受付の小屋の奥で通信魔道具を使って、何やら連絡する係員。

「例のエンリ王子の御子息一行です」

「本人じゃないのか?」

そんな魔道具からの声に、係員は「彼はルソン島でまだ揉めてるようですから」

「こちらは一刻の猶予も無い。彼らにお願いするしか無いか・・・」


間もなく一隻の小舟が来る。

そして小舟を操る水先案内人は、ヤマト号に向けて「ちゃんとついて来て下さいね」



小舟の後をついて港を出て、海峡を進みながら、チャンダは呟いた。

「大丈夫かな?」

「魔導による自動操縦ですから、操船に間違いは無いかと」

そう自信たっぷりに答えるヤマトだが、チャンダはなお疑問顔で言った。

「そうじゃなくて、あの水先案内。さっき"マゼラン海賊団様御一行"って言ってたよね? 俺たち、マゼラン海賊団だって名乗ってないぞ」

「そういえば・・・」と言って、他のメンバーたちは互いに顔を見合わせる。



小舟は航路を逸れて海岸の入り江へ船を誘う。


異常を察知したマゼランは「ヤマト、大砲の用意だ」

「了解です」

そう、緊張した表情で答えるヤマトに、マゼランは「危なくなったらすぐ脱出するぞ」

「けど、水先案内が居ないと、この海峡は通れないんですよね?」

そう不安そうに言うヤマト。

マーモは「俺の潜水艇があります。それで岩礁の無い場所を探して先導しますよ」



入り江の奥に船着き場がある。そこに現地人の一団が居る。

チャンダは彼等を望遠鏡で観察しつつ、「あれ、ポルタの植民都市の人たちじゃないよね」


ヤンが降りて彼等と接触。

彼は船着き場の人たちと会話を交わし、そしてヤマト号に向けて、言った。

「大丈夫です。彼らはここのマラッカ王国の人たちですよ」


ヤマト号が停泊し、ヤマトを残して全員が下船。

船着き場の奥の建物に案内された。



部屋に入ると正面に、何やら偉そうな人が・・・。

「私がマラッカ王です。皆さんの事は植民市の人たちから聞いています。あなたがフェリペ皇太子ですね?」

そう言われて、フェリペは思わず「それは仮の名。その実態は・・・」

その言葉を遮るように、マゼランは「皇子、ヒーローは正体を明かしてはいけません」

「そうだった・・・」


そしてマゼランは、改めてマラッカ王に訊ねた。

「それで、我々にどんな用が?」

「あなたの父君のエンリ王子には、少なからぬ縁で助けて頂いたのですが、それに関する事で重大な危機が生じていまして、彼に助けて欲しいのです」とマラッカ王。

「彼はルソン島にしばらく足止めな状態ですが」

そうマゼランが言うと、マラッカ王は「緊急事態で、それが済むのを待てないので、皆さんのお力をお借りしたい」


「重大な問題って?」

怪訝顔のマゼランたちに、マラッカ王は深刻顔MAXのドアップで言った。

「火山の噴火ですよ。四つの火山が同時多発的に噴火しそうなのです。それで恐ろしい事が・・・」

「空飛ぶ巨大な鉄の鳥の自爆テロみたいな?」とチャンダが突っ込む。



そしてマラッカ王は語り始めた。

「もっと恐ろしい修羅場です。エンリ殿下がここで知り合ったサンクリアンという火山の精霊が居ます」

「噴火しそうな火山があると、彼がその山の精霊を宥めてくれたと聞いていますが」とマゼラン。

マラッカ王は「それなのです。あれから幾つもの火山が噴火しそうになり、その度に彼に宥めて貰いました。火山の精霊には女性が多く、何人もの精霊が彼を好きになったのです。ああいう性格なので、彼は大喜びでそのハーレムを満喫していたのですが、そのうち四人の精霊の女性が彼の取り合いを始め、それで恐ろしい修羅場が・・・」

「そういう修羅場ね」とヤンは溜息。

「彼女たちの言い争いはどんどんエスカレートし、煽り合いで感情が激化した彼女達の怒りと直結した火山は、今にも火を噴きそうな状態で・・・」


マラッカ王が語る現状を理解したフェリペの部下たちは、互いに顔を見合わせて「どーすんだ? これ」

「女の扱い方なんて知らないぞ」

そうマゼランが言うと、ヤンとマーモが声を揃えて「こういう時は大人の出番ですよ」

ライナが「二人とも妻帯者ですよね?」


「どうすればいいのでしょうか」

そう問うマラッカ王に、ヤンは「女性の宥め方なんて一つしか無いですよ。"俺は君だけ居ればいい。他の女なんて興味は無い"って」

「そうだよね。そのサンクリアンって奴、誠意が足りないよね」と、彼に同調したつもりのリンナ。

ルナも「少しくらいモテるからって、調子に乗り過ぎですよ」

マーモも「そんなのが居るから、俺たちみたいなのに順番が回って来ない」

ヤンも「そうだよ。リア充爆発しろ!」


そんな彼らにシャナが「お前等、言っててミジメにならないか?」

チャンダが「ってか、妻帯者だろ?」

マゼランが「それに"誠意が足りない"って、どこぞの半島国がヘイトスピーチやる時の常套句だよ」

「そうだった。俺たちとした事が」

そう言ってしゅんとなる、ヤンとマーモと三人の女官。

そしてマゼランが言った。

「まあさ、それで本人が暴走した女に刺されて首をお持ち帰りされるのは自業自得だけど、噴火で地元民がとばっちりを喰うのは理不尽だよ」



その時、ライナが「私たちに任せて下さい」

「何か考えがあるの?」

そう怪訝顔で問うマゼランに、ライナは言った。

「例えば、アニメでハーレム系ってありますよね? 男主人公一人に何人ものヒロインが出て来てサービスしまくる。ああいうののスピンアウトって、どんなのになります?」

「百合日常系だよね」とチャンダ。

ライナは語った。

「つまり女子会ですよ。女の子はみんな、お友達グループを作ってキャッキャウフフな世界を演出して、無理やりにでも盛り上がる事で、男なんか居なくても自分は人生をエンジョイしている勝ち組なんだと、自分自身にアピールする事で自我を保つ、そういう戦略で生き残るんです。私たちがその精霊さんたちに、正しい女子会エンジョイを手ほどきしてあげるんです」


マラッカ王は救われたような目でライナの手を執り、「よろしくお願いします」

「大丈夫かよ」

そうチャンダが言うと、マゼランも「女子会の仲良しアピールって、見せかけな部分が多分にあるからなぁ」

そしてヤンとマーモも「しかも、それを牛耳るのがあの三人だぞ」

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