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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第318話 皇子の戦隊

ルソン島をオケアノス支配のためのスパニアの拠点にしようと征服戦争を開始したサルセード将軍。

彼と袂を分かち、抵抗する部族の長アギナルドに味方するフェリペ皇子たち。

アギナルド軍は、密林を枯らしつつ軍を進めるサルセードの軍と戦う。

その戦いの中、フェリペは生まれて初めて、戦いで傷つく痛みを知る。

そしてアギナルド軍はサルセード軍の猛攻の中、撤退した。



アギナルドの軍勢とフェリペたちが山の砦に辿り着いた。

あちこちに切り崖と防柵が巡らされ 山頂部近くの居住区には急こしらえの小屋が並ぶ。


子供たちが遊んでいる中、居住区に入るアギナルドの現地兵たち。

「お父さんたちが帰ってきた」

そう言って兵士たちに駆け寄る子供たち。

「あいつら、やっつけたの?」

はしゃぎ声でそう言う子供たちに、現地人兵士は「お父さんは強いからな」

「そうだね」と子供たちは嬉しそう。



族長のアギナルドが主な村人と現地人隊の長たちを集めて、あれこれ指令を出す。

そして、フェリペたちも参加して作戦会議。 


会議の場に赴くフェリペたちを見て、子供たちはあれこれ言う。

「あれ、子供だよね」

「僕たちより年上だけどね」

「剣を持ってるから戦士だよね?」とマゼランたちを指して・・・。

「女の子もいるよ」と三人の女官を指して・・・。

「スパニア人は呪術を戦争に使うのが得意だって言うからなぁ」

「それに、あの子は僕たちより年下だよね?」と、フェリペを指して・・・。



会議が終わって議場から出て来るフェリペに、現地人の五人の子供が話しかけた。

「君も戦士なの?」

そう訊ねられたフェリペは「僕はヒーローだ」

「ヒーローって?」と子供たちは首を傾げる。

「見せてあげるよ」

そう言うとフェリペは仮面をかぶり、微妙な変身ポーズをとって叫んだ。

「闇のヒーロー、ロキ仮面!」


子供たちは口々に「かっこいい」と言ってはしゃぐ。

「ヒーローごっこだね」と一人の子供が・・・。

もう一人の子供が「メンバーが必要だな。俺、レッドがいい」

「僕はブルー」と別の子供が・・・。

「私はピンク」と女の子が・・・。


そんなふうに盛り上がる子供たちだが、やがて深刻そうに俯くフェリペに気付いた。

「どうしたの?」

そう訊ねる子供たちを他所に、フェリペは呟いた。

「変だ。ロキ仮面になれない。ロキ、出て来てくれ」


フェリペの傍らにいきなり現れたロキに驚く子供たち。

「妖怪だ」

「幽霊だ」

ロキは「失礼な子供だな。俺は神様・・・って、主、どうした?」

「僕、ロキ仮面になれない。どうしよう」

そう言って泣きそうになっているフェリペの右目を、ロキは覗き込むと「痛みの記憶で精神が拒絶反応しているようだな」

「僕、もうヒーローになれないの?」

そう気弱な声で言うフェリペに、ロキは「主よ、それはあなた次第だ」



「君、大丈夫?」

そう心配そうに言う子供の一人に、フェリペは「僕、戦えなくなっちゃった」

すると、その子供は「いいんじゃないかな。父さんが言ってた。子供は大人に守られるものだって」

「けど僕は貴族だ。下に居る人たちを守らなきゃいけない」

そうフェリペが言うと、彼は「それは君のお父さんがやる事だよ」

「僕、その父上の所から家出してきたんだ。好きな人・・・のお姉さんを守るために」とフェリペ。

「かっこいい。君の名前は?」

そう訊ねられて、彼は名乗る。

「僕はフェリペ」


子供たちも次々に名乗る。

「俺はエイド」

「僕はジャス」

「ジェロだ」

「私はアンジェ」

「マリエよ」


そしてエイドは言った。

「フェリペ。もし戦えないなら、僕たちの指揮官にならないか?」

ジャスは「僕たちは邪神戦隊ロキレンジャーだ」


先ほどのフェリペの変身ポーズを真似て、子供たちのヒーローごっこが始まる。

「ロキレッド」

「ロキブルー」

「ロキイエロー」

「ロキグリーン」

「ロキピンク」

次々にポーズをとって掛け声。

そして全員、声を揃えて「五人揃ってロキレンジャー」


「では司令官、指令を。先ず、何をする?」

そうエイドが言うと、ようやく笑顔を取り戻したフェリペは「悪戯しよう」

「楽しそう」とアンジェがはしゃぐ。

「それでどんな?」

そうジェロが訊ねると、フェリペは「それには、ここでどんな悪戯が出来るかを調査するんだ」


エイドが言った。

「案内します。ここら辺は僕たちの遊び場だから」

ジャスが「向うのドングリの木にカブトムシが居るよ」

マリエが「その向こうに洞窟があるよ」

ジェロが「あっちに行くと魚が居る」

そんな彼等と一緒にはしゃぎながら、フェリペはふと思った。

(司令官なのに、みんなに仕切られてる気がするんだけど・・・まあいいや)



その頃、スパニア軍の陣では・・・。


サルセードが派遣した偵察兵が帰還して、将軍に報告。

「族長の拠点村が無人です」

「どこかに砦を築いて立て籠もったという訳か」

そうサルセード将軍は呟くと、魔導士官に使い魔による捜索を命じる。


まもなく、鳩の使い魔が情報をもたらした。

「現地人が立て籠もる山の位置が判明しました」

そう魔導士官から報告を受けると、サルセードは「よし。攻略対象を変更する。山の砦を攻め落とすぞ」


ジャングルを枯らしながら軍を進め、進軍開始から五日目、彼等は砦の山の麓に到達した。



攻撃開始一日目。


山の斜面を登るスパニア兵に向けて、砦側は、上から多数の丸太を転がして抵抗する。

丸太に追われて逃げ惑うスパニア兵。

魔導士官たちは爆炎魔法で転がって来る丸太を破壊するが、丸太は次から次へと迫って来る。


サルセード将軍は砦の動きを観察し、そして命じた。

「丸太はあの妨柵の所から転がしている訳か。あれを砲撃で破壊しろ」



防柵の破壊を狙って大砲を連射していると、ヤンが操縦する飛行機械が砲兵陣に飛来した。

「来たな。先日の轍は踏まんぞ。あれを撃ち落とせ」

そう砲兵隊長は号令し、銃と攻撃魔法で対空戦を仕掛ける。


「こっちは無理か。だったら・・・」

ヤンはそう呟くと、大砲から少し離れた所にある砲弾と火薬の集積に爆弾を投下。

弾薬の集積を失った砲兵陣は、まもなく手持ちの弾を撃ち尽くした。

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