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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第315話 軍船の監獄

フェリペ皇子とともにオケアノス西端に辿り着き、オケアノス支配の拠点とすべくルソン島征服を開始したサルセード将軍。

抵抗する現地部族の族長代理アギナルドは密林を利用した猟兵戦でスパニア軍に対抗し、サルセードはその拠点となる村への掃討戦を展開した。

だが、一般人の殺戮を伴うサルセードのやり方についていけないフェリペたちは、アギナルドが放った使い魔エミリオに情報を伝えて村人を逃がした。

サルセードは現地人の猟兵戦を封じるべく、大規模な闇魔法で密林を枯野に変える作戦を開始した。



アギナルドの元にラプラプ王から、援軍要請の返事が届いた。

返事の手紙に曰く。

「あと十日ほど待って欲しい。強力な援軍を送る事が可能となる」


アギナルドの部下たちは溜息をついた。

「そんなに待てない。五日ほどで密林の枯死はここに到達しますよ」

「到達してから五日。その間、我々だけで何とかするしか無いな」とアギナルド。

そして彼は脇に居た山猫の使い魔に言った。

「エミリオ、御苦労だった。お前のおかげで多くの人命が救われた」

「もう一度行かせて下さい。あの人達はきっと助けてくれます」

そう言う山猫エミリオに、アギナルドは「いや、恐らく彼らの行為は味方に露見している筈だ。これ以上迷惑はかけられない」

「アギナルド様・・・・・・」



サルセード将軍も作戦会議を続けていた。


フェリペと三人の従者も参加する中、サルセードは言った。

「追い詰められた敵は、恐らくあと数日で大規模な攻勢をかけて来るだろう」

「いよいよ決戦ですね」と陸戦隊長。

そしてサルセードは言った。

「全力を挙げて奴らを殲滅するぞ。それとフェリペ皇子。あなたの従者ともども拘束させて貰う。敵に通じて情報を漏らしたのは、あなた達ですね?」


フェリペと部下たちに緊張が走る。

仮面を被ろうとするフェリペ。剣を抜こうとする三人。

その時、サルセードの額に第三の眼が開き、フェリペとその従者は強力な麻酔魔法を喰らった。



マゼランが目を覚ますと、そこは軍船の監禁室。

そこには、フェリペと他の従者二名。そして三人の女官とヤンとマーモ。

部屋には、強力な魔法封じの結界が施されていた。


間もなく、眠っていたフェリペが目を覚ます。

「僕たち、どうなったんだっけ?」

そうフェリペが言うと、マゼランは「サルセード将軍にバレたんですよ」

フェリペは憤懣やる方無いといった声で「けど僕は皇太子だぞ。こんな所に閉じ込めるなんて」

「作戦の邪魔をすると思われたんでしようね」とチャンダ。

「作戦のためなら何をしてもいい訳じゃない。後で重い罰を与えてやる」

そう息巻くフェリペに、マゼランは「そんなの彼は恐れません」

溜息をつくフェリペの仲間たち。


「あの人って、凄い人ですよね。武術や魔法の先生としても」

マーモがそう言うと、ヤンが「魔道具作っちゃったりとか」

ライナが「けど、一般人を平気で殺したり」

「戦争って、そういうものですよ」とマゼラン。

「密林を枯らしたり」とルナ。


「彼、どうしちゃったのかな?」

そうフェリペが言うと、シャナが「そういうば、額に目があったな」

リンナが「それでモンスターに操られていたりとか」

するとマゼランが言った。

「いや、あれは魔眼ですよ。額に植え付ける事で、凄い魔力が使えるようになるんです」

フェリペが「そういえば、父上がイギリスで戦ったモリアーティという犯罪者も、それを持ってたって聞いた。彼はその力で魔導戦艦というものを作って、イギリスを滅ぼそうとしたって」

「将軍、そのせいで変になったんでしょうか?」とルナが言い出す。


フェリペが「彼を止めなきゃ」

「皇子様、怖い」

そう言ってルナがどさくさに紛れてフェリペにすりすり・・・。

「大丈夫だ。僕は闇のヒーロー、ロキ仮面・・・って、仮面が無い。あれが無いとロキを呼び出せない」

そう言ってフェリペが慌て出すと、シャナも「私もアラストールのペンダントが無い」

「俺たちの剣も」とマゼランとチャンダ。

三人の女官も「私たちの魔法の杖も・・・」

「眠らされてる間に没収されたんだ」と、彼等は一様に呟いて溜息をつく。


マゼランが「だったら魔法で・・・って、魔法封じがかかってたっけ」

するとヤンが「俺が開けます。ピッキングは得意なんです」

「便利屋さんみたい」

そうリンナが言うと、ヤンは「ダンジョンに入る時は、宝箱の鍵穴をいじって鍵を開ける係でした」

「どこかで聞いたような話だな」とチャンダが突っ込む。


ヤンは細長いピンを鍵穴に差し込んで、カシャカシャやるが・・・。

「これ、魔法のかかった鍵で開ける仕様になってますよ」



その頃、浜辺の拠点では・・・。


エミリオがフェリペたちのテントを覗くと、水兵たちが噂話をしているのが聞こえた。

「命令通りに軍船の監禁室に閉じ込めたけど、フェリペ様にこんな事をして、俺たち大丈夫なのかな?」

「責任は上官がとってくれるんだろ?」

「けど五歳児だぞ。"お前等なんか大嫌いだー"とか言って床を転げ回られたらどーするんだ?」

「泣く子と地頭には勝てないって言うからなぁ」


エミリオは呟いた。

「あの人達、情報を漏らしたのがバレたんだ。沖に浮かんでるあの船に居るんだ。助けに行かなきゃ。けど、どうしよう。猫は泳げないんだ」

そう言ってうろうろしているエミリオを、メアリが見つけて抱き上げる。

「あら、猫ちゃん、こんな所に居たのね」

エミリオは脳内で(メアリ王女。この女に構ってる場合じゃ無いんだけど)


猫を抱いて愚痴を垂れるメアリ。

「あの三人が居ないと、お茶のお菓子も無いのよ。私の抱き枕のフェリペ君も居ないし。将軍、敵に通じてるとか言って。そろそろお風呂の用意が出来ている筈よ」

メアリは水兵に小舟を出させ、猫がついて行く。

小舟の上でメアリは猫を抱き上げて「あなたもお風呂に入りたいのね。私が洗ってあげるわ」



水兵がメアリをヤマト号に送り届けると、水兵は小舟で軍船へ。

猫はそっとメアリの傍を離れ、船縁から水兵の小舟に飛び乗った。


ヤマト号では、メアリはヤマトを見つけて「お風呂の用意は出来ているわよね?」

「出来ていますけど、他の皆さんは?」

そうヤマトが訊ねると、メアリは「何だか、敵に通じたとか言って、将軍が連れて行っちゃったのよ」

「大丈夫でしょうか?」とヤマトは心配顔。

メアリは「フェリペ君なら大丈夫よ。私はこの猫ちゃんと・・・って、あの子、どこに行ったのかしら?・・・・。まあいいわ」



軍船の監禁室では・・・。

「お腹空いたね。誰か食べる物、持ってる?」

そうフェリペが言うと、ライナが「非常食のチョコレートがあります」

そう言って出された一袋のチョコレートを見て、フェリペは「みんなで食べよう」

「俺たちはいいです。大人だから」

そうヤンとマーモが言うと、ライナが「駄目ですよ。腹が減っては戦が出来ません」


ルナが「皇子様、あーん」と言ってチョコレートをフェリペの口元に・・・。

フェリペは顔を赤くして「恥ずかしいよ。こんな時に」

「こんな時だから、じゃないかな?」

そうチャンダが言うと、リンナが「そうですよ。だからチャンダ様、あーん」

そう言って、あーんを迫られたチャンダは、顔を赤くして「いや、何で俺に?・・・」

「女の子の好意は受け取っておくものだぞ」

そうマゼランが言うと、ライナが「そうですよ。だからマゼラン様、あーん」

そう言って、あーんを迫られたマゼランは、顔を赤くして「いや、何で俺に?・・・」

それを見てチャンダは「女の子の好意は受け取っておくものだ・・・ってマゼラン、さっき言ってたぞ」

そんな光景を見て、ヤンとマーモは微笑ましそうに「青春だなぁ」



チョコレートを食べると、少しだけ元気が出る。

だがその分、冷静になり、自分たちが監禁されている事を思い出す。

「私たち、どうなっちゃうんでしょうか?」

そう言って俯くライナに、マゼランが「俺が守ってやる。剣が無くたって、この腕がある」

「そうだよね。騎士は貴婦人を守るものだ」とチャンダも・・・。

ライナは目をうるうるさせて「マゼラン様・・・」


「私たち、貴婦人じゃなくて女官見習いなんですけど」

そうリンナが言うと、チャンダが「俺にとっては貴婦人だ」

じーん・・・となるリンナ。

「だって俺・・・」

最底辺身分の自分にとっては、一般人だって貴族みたいなもの・・・とチャンダが言いかけた時、マゼランが言った。

「もう、変な身分から抜けたんだろ?」

「そうだな」

そうチャンダは言い、そして思った。

(俺、ここでは底辺身分じゃ無いんだよな)

そしてリンナは思った。

(身分から抜けたって、やっぱりチャンダ様ってインドの王様の落胤で、凄い身分だったんだ)



そんな風に、部下たちが勝手に盛り上がっているのを見たフェリペは、少しだけ拗ねた声で「あの、先ず君主を守るんだよね?」

「そりゃまあ・・・」と全員顔を見合わせる。

そしてマゼランとチャンダ、そして三人の女官が声を揃えて「フェリペ様は私たちがお守りします」

そんな彼等にヤンが「こういう時は大人を頼るものだぞ。亀の甲より年の功って言うだろ?」

ルナが「それ、お爺ちゃんの台詞」

「君達より十年は長く生きてるぞ」

そうマーモが言うと、シャナが「たった十年だけどな」


「けど、いろんな経験積んでるぞ」

そう言ってドヤ顔するヤンに、フェリペは「じゃ、こういう時って、どうやって助かるの?」

ヤンは「えーーーーーっとーーーー・・・。誰かが助けに来てくれる?」

全員、前のめりでコケる。


マゼランがあきれ顔で「思いっきり他力本願じゃん」

「アラストールさんが目を覚ます」とライナ。

シャナが「あいつ、一度寝たら、なかなか起きないからなぁ」


「あの、皆さん・・・」


「メアリさんは監禁されてないよ」とリンナ。

チャンダが「あの人、こういう時の危機感はゼロだからなぁ」


「あの、皆さん・・・」


「父上が助けに来てくれる」とフェリペ。

マーモが「それ、スパニアに連れ返されるって事なんだけど」


「あの、皆さん・・・」


何度か、そう彼等に呼びかける声に、彼等はようやく気付いて、声のする方向を見ると・・・。

鉄格子の向うに、山猫のエミリオが居る。

「敵である私の図々しいお願いなのは解ってます。けど、主とみんなを守りたい。どうか助けて下さい」

マゼランは「いや、助けて欲しいのは、こっちなんだが」



鍵束を探し出してヤンに渡すエミリオ。

それを使って牢の鍵を開ける。

「それで、もうすぐ決戦が始ります。手を貸して貰えないでしょうか」

そうエミリオが言うと、フェリペは「解ってる。将軍は魔眼というもののせいで、変になっちゃったんだ。彼を止めなきゃ」

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