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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
301/562

第301話 国境の島

メアリ王女を連れて逃走したフェリペ皇子たちを追うエンリ王子の一行は、北の群島ナハ国がシーノ帝国に与する事を防ぐべくナハ王を説得し、駐留していたシーノ軍を追い出した。

だが、シーノ軍は群島の南の国境紛争の島、センカク島を大艦隊を以て占領。

小さな島を支配する拠点として、多数の船を繋いで固定した人工島を築いた。

これに火責めをかけるエンリ王子たち。



「主様、ドラゴンがそっちに行ったよ」

そう通信魔道具で、青龍と格闘中のファフが報告すると、エンリは「お前も戻って来て、奴の相手をしろ」


向うに青い龍が姿を現わし、固定された船団が燃えている所に水を吐こうと口を開けた所を、エンリは風の巨人剣を伸ばして突きを喰らわせた。

不意打ちを喰らった青龍の吐く高圧の水は、あさっての方向へ。

そこにファフのドラゴンが飛来した。

「魔剣で加勢してやる。俺を乗せろ」

そう指令したエンリを乗せ、ファフは再び水を吐こうとする青龍に向かう。

ファフの頭に乗ったエンリは炎の巨人剣で青龍に斬りつけた。


青龍による消火を妨害され、消火不能になった固定船団から、リラのウォータードラゴンは仲間たちを回収。



一方、本隊の火災に気付いたタルタ号追跡中のシーノ船団では・・・。


「本体が襲撃を受けています」

魔導通信手から報告を受けた船団指揮官は「向うは200隻以上居るんだぞ」

「それが、火責めに遭って、船の固定が禍いして延焼が激しいと・・・」

「救援に行くぞ」

そう指令する指揮官に、参謀は追跡中のタルタ号を指して「あの船はどうしますか?」

「十隻もあれば追撃には余裕だ」と指揮官。



タルタ号追跡のための十隻を残して、反転するシーノ船団。

その様子を眺めていたのは、タルタ号に残っていたニケ、タルタ、アーサー。

アーサーが「行ったかな?」

「行ったわね」とニケ。

タルタが「こっちも反撃だな」


タルタ号からタルタの鋼鉄砲弾がシーノ船の中の一隻に突入。

命中して破壊された船から次の船へと、タルタは鋼鉄砲弾をお見舞いする。

混乱に乗じて反転したタルタ号から、ニケの大砲が炸裂。

アーサーの遠距離攻撃魔法も炸裂。



追撃に残った十隻を片付けたタルタ号は、残りの救援に向かった艦隊への追撃に入る。

火災中の本体の救援に向かうシーノ艦隊では・・・。


「後方から砲撃です」

部下からそう報告を受けた指揮官は「残した十隻はどうした?」

部下は「どうやら反撃されて壊滅した模様」


艦隊の前方にウォータードラゴンが出現。

その、もたげた鎌首からジロキチが、カルロが、妖刀を持った若狭が、シーノ船に飛び降りて切りまくる。

ウォータードラゴンは高圧の水を吐き、その頭上でリラはウォーターカッターの攻撃を放つ。


背後から追撃してきたタルタ号からはタルタの鋼鉄砲弾。

そしてニケの砲撃、アーサーの遠距離攻撃魔法。

そこへ、エンリを頭上に乗せたファフのドラゴンが合流。

船の火災でシーノの魔導士の召喚魔術は途切れ、青龍は既に姿を消していた。


こうして、シーノ艦隊は壊滅した。



燃え盛る固定船団から逃れたシーナ兵は、小舟でセンカク島に辿り着き、狭いセンカク島はすし詰め状態。

そこにタカサゴ島から無数の海賊船が到着。

その様子をファフの頭上から眺めて、エンリ王子は「ようやく来たか。ミン帝のジパング海賊軍団」


包囲されたセンカク島で武器を構えるシーノ兵達だが、押し合いへし合いで身動きがとれない。

そんな中でシーノ兵たちは、互いに言い争う。

「狭すぎだろ。誰か、海に入って場所を開けろ」

「お前が海に入れ」

「いや、お前、泳げるよな?」

「俺は泳げないんだよ」


そんな中に海賊船から発射された砲弾が、島の中央で炸裂した。

そして海賊船団の指令が拡声魔道具で降伏勧告。

「降伏しろ。武器を捨てて投降すれば、交渉次第で生かして返してやる」


センカク島を占領したシーノ軍は投降した。



「交渉次第と仰いましたよね?」

捕虜となったオウキ将軍がナハ王と向き合い、そう言った。

ナハ王の横にはグシケン大臣、ヤエヤマの島主、セキヘイ外交官と鄭成功、そしてエンリたち。

「あの島は歴史的に我が中華のものだ。自らの領地に基地を築くのは権利。これを攻撃したのは不法行為である」

そう主張するオウキに、グシケンは「あそこが中華の島だ・・・などというのは、あなた方が大陸を支配してから言い出した事ですが?」

「ミンの記録に載っている」とオウキ。

「あの島はヤエヤマの民のものだ」とヤエヤマ島主。


エンリが問うた。

「記録って具体的に何ですか?」

「役人がナハに渡った時の旅行記録だ」

そう言うオウキに、エンリは「旅行記録なら、相手国の土地の事だって記載されてる筈ですよね?」

「無人島で、その島の存在を知っていたから書けた」とオウキ。

「その旅行はミンの人だけで来たのですか?」

そう問うエンリに、オウキは「ヤエヤマ島の漁民が案内した」

「つまり、島を知っていたのはヤエヤマの人ですね?」

そう確認するエンリに、オウキは「彼らは、この島のそちら側が境界だと言った」


「そうなのですか?」

そうエンリが島主に問うと、彼は「海を渡る特別な場所ですから」

「特別って?」

島主は言った。

「船の安全を祈るのです。あの島は元々、海の神を祀る御神体のような存在でした」

「つまり、島全体が社のような神聖な地であったと。その祀りはあなた達が?」

そうエンリが問うと、島主は「そうです」

「って事は、神の島として管理して来たのは?」

そうエンリが確認すると、島主は「私たちです」

「やっぱりセンカク島はヤエヤマの人たちのものだ」とグシケン大臣。


「オウキさんは境界と言いましたが、どういう境界ですか?」とエンリは更に島主に問う。

「海を渡る祈りの場という意味で、その場所で海神に供物を捧げるのです」

そう答えた島主に、エンリは「その供物を捧げる場所が、島のこちら側という事ですか?」

「そういう事です。けれども境界とは海神の聖地という意味で、そしてその聖地は、あの島とその周囲全体です」

その島主の説明を、エンリは総括した。

「つまり、島のヤエヤマ側ではなくて、島の周囲全体が境界という事であり、その境界を管理したのはヤエヤマの民という事ですね?」



するとオウキは感情的な声で叫んだ。

「そんな事は無い。あの島はタカサゴ島の一部で、あの島のヤエヤマ側が国境だ」

強弁するオウキに、エンリは毅然と指摘した。

「だから境界は神を祀る場としての島そのもので、そのヤエヤマ側では無い。管理していたのも知っていたのもヤエヤマだ。あなた、さっきの話を聞いてました?」


セキヘイ外交官も指摘した。

「それに、タカサゴ島の一部というが、タカサゴ島はシーノのものではない」

「違う。タカサゴ島は中華の一部だ」

そう言い張るオウキに、エンリは「それを決めるのはタカサゴ島に住む人たち自身であって、シーノでは無い」

「シーノは世界を統べる中華の主。シーノによる決定は世界の意思だ」と、なお言い張るオウキ。

エンリは「それは、あなた達が宗教で言ってるだけです。そんな強弁を繰り返すだけのあなた達に、道理は無い」

「違う。何が正しいかを決めるのは、最も上位に居る者であり、それは世界の中心たる中華の皇帝である、我がシーノのモータクサン皇帝だ」

そんなオウキにナハ王は言った。

「我々が中華として仕えるべき相手と認めて朝貢して来たのは、奴隷として言いなりになれと言う暴君のような支配者では無かった筈です。我々はあなた方の言いなりにはならない。ヤエヤマの一部であるセンカクを中華のものとは認めない」


そしてエンリは言った。

「正しさは誰かが勝手に決めるものではなく、客観的にあるものを事実と論理によって見つけるものです。偉い人がこう言った・・・など、ただの言い張りに過ぎない」

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