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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
300/562

第300話 ナハの戦い

流刑地から救出したメアリ王女を連れてオケアノスを西に逃れたフェリペ皇子たちを追って、タカサゴ島に辿り着いたエンリ王子たちは、ナハ群島国がタカサゴ侵略に加担するのを阻止する仕事を請け負う破目になる。

そしてナハ王の御前会議でシーノへの加担を止めるよう説得したものの、既にシーノ軍はナハ島に拠点を確保していた。



ナハ本島のフテンマに建てられた兵営に、シーノの軍が駐留している。

ここの指揮官でシーノ帝国の代理を務めるのが、オウキ将軍だ。


グシケン大臣がナハ王の代理として、オウキ将軍に面会。付き添いとして同行するエンリ王子。

グシケンはナハ王の意を伝えた。

「平和を願う民として、タカサゴ島占領には参加できない。シーノ軍には退去して頂きたい」

「解りました。駐留軍としてこの地に留まる事は止めます」

そう答えたオウキに、グシケンは「大陸に退去して頂けるのですね?」と確認する。

「駐留軍としてこの地に留まる事は、止めますから」とオウキ将軍。

グシケンは「理解して頂く事に感謝します」



対談は終わり、ほっとした表情のグシケン大臣。

「居座りを決め込まれたらどうしようかと、冷や汗ものでしたよ」


そんな彼にエンリは指摘した。

「けど、さっきの問答、変ではありませんか? 同じ事を二回繰り返していましたよね?」

「よくある事です。煙草を吸って指導された高校生に反省文を書かせると、同じ事を何度でも書きます」とグシケン。

エンリは「何字以上書けと言われてる訳じゃ無いんですが」

「ネットで反論されたリベラル派なんか、壊れたテープレコーダーみたいに、何度でも繰り返しますよ」とグシケン。


「じゃなくて、"駐留軍では無い何か"として、この地に留まるって事なのでは?」

そうエンリに指摘されて、グシケンは「あ・・・・」

エンリは言った。

「今夜あたり、彼等、行動を起こすかも知れませんよ」



その夜、フテンマのシーノ軍が兵営を出て、ナハ城へ進軍した。


城門前でオウキ将軍が口上を叫んだ。

「天帝の代行者たるモータクサン皇帝の命により、歴史的に中華の一部であるナハの群島の処分を伝える。ナハ群島はシーノの省の一つとなり、ナハ王は退位し、このオウキが総督として、この地を管理し教導する。我等は駐留軍ではなく、中華の治安を守る地方軍である。これより、この地の支配を引き継ぐため、ナハ政府に無血開城を命ずる」

城門からはナハ国の将軍が返答を叫んだ。

「拒否します。ナハの地はナハに住む人たちのものだ。断じて中華の一部などでは無い」



戦端が開かれ、シーノ軍によるナハ城への砲撃。

リラとアーサーが防御魔法でこれを防ぐ。


ファフがドラゴンに変身すると、シーノ軍の頭上に青いドラゴンが出現した。

「あれは青龍だ」と鄭成功が叫ぶ。

ファフが炎を吐き、青龍は高圧の水を吐く。空中で二頭のドラゴンの格闘が始まる。


城の裏門から出撃したナハ軍が、シーノ軍の側面から突入し、白兵戦開始。

矛を構えて突撃するシーノ歩兵に、刀を抜いて切りかかるナハ兵たち。

右手の刀で矛を防いで一瞬で距離を詰め、左手の拳で一撃。

「ここの奴らって、かなり強いんだな」

そうジロキチが言うと、グシケンは「唐手という拳法ですよ。平和主義とか言って武器を持つ事を禁じた事があった時、ミンから伝わった拳法に磨きをかけたんです」


シーノの歩兵隊が後退し、鉄砲隊が前面に出て射撃を開始。

飛び道具が少ないナハ側が押され、アーサーとリラが防御魔法で必死に銃弾を防ぐ。

「あの中に飛び込んで攪乱するぞ」

そうエンリが号令すると、タルタは「まかせろ」

彼は鋼鉄砲弾となって敵の鉄砲陣に飛び込み、部分鉄化で槍や刀を防いで、周囲の敵を殴りまくる。


「俺たちも行かなきゃ」

そうジロキチが言うと、エンリは「だったら俺に掴まれ」

エンリは風の巨人剣を抜き、一端縮めて地面に立てる。ジロキチ、カルロ、妖刀化したムラマサを持った若狭と、猫の姿のタマがエンリに掴まると、風の巨人剣を伸ばし、棒高跳びの要領で敵の鉄砲陣に飛び込む。

シーノ兵を斬りまくるジロキチ、カルロ、若狭。

猫の姿ですばしっこく跳ねまわって攻撃魔法を連射するタマ。

エンリは風の巨人剣で周囲のシーノ兵を薙ぎ払う。


シーノ鉄砲隊の混乱に乗じてナハ兵が突撃をかけ、シーノ軍団は港へ撤退し、船に乗って海へ逃れた。


「これで諦めてくれると助かるんですけどね」

そう不安そうに言うナハ王。

エンリは「そう簡単にはいかないと思いますよ」



翌日、ヤエヤマ島から急報が届いた。

「ナハを撤退したシーノ軍が、センカク島に上陸して占拠したとの事です」


知らせを聞いたエンリの仲間たちがあれこれ言う。

「本格的に漁が出来なくなるぞ」

そう、タルタが心配そうに言うと、アーサーも「それに、あのすぐ南はタカサゴ島です。侵攻の基地にされますよ」

「すぐにタカサゴ島のジパング海賊に連絡して、応援を求めます」

そう鄭成功が言うと、エンリは「俺たちも現場に行くぞ」と仲間たちに号令。



ナハ王と大臣たち、そして王城守備隊の一団を乗せた数隻の船とともに、タルタ号はヤエヤマ島に向かった。

島に到着して、島主の守備隊と合流する。

島主はナハ本島の援軍とともに、センカク島の対岸へ。

そして沖合を指して言った。

「あの向うがセンカク島です。その沖合にシーノの軍船が多数、居座り続けています」



アーサーが上空から鴎の使い魔で偵察する。

使い魔の視覚を映した水晶玉の映像を示して、アーサーは言った。

「小さな島ですね。あれでは、そう多くの兵の上陸は無理だと思いますよ」

「けど、軍船があんなに」とリラ。

タルタが「入る港が無いんじゃ、嵐が来た時困ると思うぞ」


「けどあれ見てよ」と、ニケが映像の中の船の様子を指して言った。

多くの軍船を密集させ、船と船をロープで繋いでいる。船どうしが激突しないよう船縁に緩衝材を取り付け、長い棒を渡して固定。

「ポルコの部下が小舟を繋いだのと同じだな」とジロキチ。

「大型船を繋いで、人工の島みたいにしているって訳か」とエンリ。


「あれを攻めるという事は海戦ですよね? 我々は水運立国ですが、海戦の経験は・・・」

そうグシケン大臣が心配そうに言うと、エンリは「タルタ号だけで十分です」

「ですが・・・」

「こういう戦には慣れてますんで。それに少数で多数を破るって、気持ちいいじゃないですか」

「いや、そういうゲーム感覚は要らないと思うんですけど」と、困り顔のグシケン。


「その台詞って、王子がフィンランドのマンネルハイム公爵に言ったのと同じですよね?」

エンリはそうアーサーに指摘され、「俺、そんな事言ったっけ?」と、すっ呆ける。



タルタ号が出撃し、海戦開始。


シーノの船団にタルタ号が接近して砲撃する。

固定されていない数十隻のシーノの軍船がタルタ号に向かうと、タルタ号は後退しつつ砲撃を続行。

敵船からの砲撃はアーサーが防御魔法で防ぎ、追撃してくるシーノの船団をセンカク島から引き離す。


「次はファフ、出番だ」とエンリは号令。

ドラゴン化したファフがセンカク島へ向かう。

青龍が出現し、これを迎え撃とうとすると、ファフは距離をとって逃げる素振りを見せ、これを追う青龍はセンカク島から引き離された。

その間、人魚となったリラは、繋がれて固定されたシーノの船団に海中から接近し、小さな油と発火装置のついた樽をあちこちの船に設置。


離れた海上の小舟にはエンリ、ジロキチ、若狭、カルロ、タマ。

リラが小舟に上がって来ると、エンリは「そろそろだな。発火すれば奴らは消火作業に追われる。それを妨害するぞ」

リラはウォータードラゴンを召喚し、全員その中に入る。


やがて、固定された船団のあちこちから火の手が上がった。

慌てて消火作業を始めたシーノ兵。

その時、船団の縁に辿り着いた水龍は鎌首をもたげ、ジロキチたちは一斉に船団の甲板に飛び降り、斬りまくって消火を妨害。

エンリは炎の巨人剣を中央付近の敵船に突き立てて、船火事の追い打ち。


オウキ将軍は焦り声で叫んだ。

「青龍を呼び戻せ。奴に水を吐かせて火事を消すんだ」

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