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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第292話 ドラゴンの葬送

オケアノスを東に向かったフェリペ皇子一行を追うエンリたちは、同行するビーグル号とともにガラパゴス島に上陸し、博物学者ダーウィンの動物種の探索に協力し、そこで島を守るドラゴンのゴジラと出会った。

そして、島に居る動物たちを狙って西方大陸から押し寄せるゴブリンの大群の撃退に加勢するエンリたち。



「あれだけ倒せば当面来ないでしょう」

そう言って一安心といった声を上げるゴジラに、エンリは言った。

「あんなふうにして、ここを守ってきたんですか?」

ゴジラは「この島は特別な場所ですから。私の一族が祖先の代から、ずっと住んでいた所なんです」

「ドラゴンの神を祀る神殿でもあるの?」とタルタ。

「超古代文明が栄える大陸の一部だったとか?」とカルロ。

「一夜にして海に沈んだムー大陸の一部とか?」とジロキチ。

エンリは困り顔で「そういうトンデモ話は要らないから」


そしてアーサーが言った。

「けど、長命なドラゴンの先祖って、何十万年前から居たんだろーなぁ」

「何百万年前?」とカルロ。

「何億年前?」とタルタ。

「一桁飛ばしてないか?」とエンリが突っ込む。

「そーだっけ?・・・一、十、百、千、万、十万、百万、臆・・・」

そう言って指を折って確認するタルタに、ニケは言った。

「千万って単位を飛ばしている。算数の勉強が苦手だと、釣銭を誤魔化されるわよ」

「ニケさんは誤魔化す側だろ?」

そうタルタが言うと、ニケは口を尖らせて「失礼ね。私を何だと思ってるのよ」


「読み書き算盤は、ちゃんと学ばなきゃでござる」

そうムラマサが言うと、ファフが「算盤って何?」

「計算の道具だろ?」とアーサー。

「計算尺の事かな?」とニケ。

若狭が「尺って目盛りがついてるんだよね?」

「算盤は玉がついてるんだ」とジロキチ。

カルロが「計算尺は、どっちかというと棒の形?」

そんな会話を聞きながらエンリは、何やら顔を赤くしているリラを見て「言葉で表現すると誤解を生むぞ」


実物を出そうという事になり、ジロキチが算盤を、ニケが計算尺を出す。

東西の計算の道具の使い方を確認しながら、エンリの仲間たちは「これは便利・・・って、俺たち何の話をしてるんだっけ?」



そして、逸れた話題を本題に戻す、ダーウィンとエンリたち。

「けど、だったら化石は、この島にもあるのかな?」

そうエンリが言うと、ダーウィンは「ドラゴンの化石とかも・・・」



翌日、エンリたちとダーウィンは、島の中心部にある岩山に、化石探しに出かけた。


高台にある岩崖の下で、ダーウィンが小石の中から、それを見つけた。

「この部分、石化した獣骨ですね」

「って事は、ここは昔の動物の墓場みたいな所か?」

エンリがそう言うと、ダーウィンは「完全な形の化石も、どこかにある筈です」


岩場の崖面の中に、何種類かの動物の化石。その中に、翼のある化石があった。

「鳥か? それとも蝙蝠かな?」

そうタルタが言うと、ニケが「けどこの頭骨の口の所、嘴じゃないわね」

「けど蝙蝠にしては、羽毛の模様がありますよ」とアーサー。

するとダーウィンが「つまり、鳥に進化したばかりの状態、といった所でしょうか?」

「鳥って、蝙蝠みたいな獣から進化したの?」

そうタルタが言い、みんなが考え込む。


そんな中で、ニケは化石の下側にある何かに気付く。

「この丸いのって卵じゃないのかな?」

それを見たダーウィンは「卵を産むって事は、どっちかっていうと、蜥蜴の類が元なのか?」

「前足が翼って事は、地上では二本足で歩くよね?」と若狭。

ジロキチが「鳥はみんなそうだろ?」

リラが「ゴジラは蜥蜴と似てるけど、二本足ですよね」



「ってか進化って何?」とタルタが言い出す。

エンリが「鳥に進化すると飛べる」

「すごい便利だよね。飛行魔法って最強のスキルだぞ」とカルロ。

ジロキチが「空中から地上の敵を一方的に攻撃できる」

「すぐ戦争の道具と考えるのは良くないですよ」とカルロが突っ込む。

「そう言うけどなぁ」

そうジロキチが口を尖らすと、カルロは「平和が一番ですよ」

「またお花畑な」

そう言ってジロキチが溜息をつくと、エンリが「けど、カルロにしては、まともな事を言うんだな」

カルロはドヤ顔で言った。

「そうですよ。女の子をお姫様抱っこして空を飛んで夕日を眺めたら、イチコロで落とせます」

全員、溜息をついて「結局それかよ」


そんな中でリラが「もしかして、進化って生存に便利になるための?」

「だったら生物はみんな空を飛ぶ方向に進化して、動物は翼の生えた奴ばかりになるぞ」とタルタ。

エンリが「けど、空を飛ぶには体を軽くしなきゃいけない。それで、いろんな機能を犠牲にする」

するとダーウィンが言った。

「例えば南方大陸にキリンという動物が居ます。高い木の葉を食べるために、足と首が異様に長い。像という動物は大きくなる事で敵に対して有利だけど、足が太くなって座るのが大変になり、地面の水を飲み芋を拾うため、鼻が触手みたいに長い」


タマが「つまり、頑張って首や鼻を伸ばそうとした結果って事?」

ムラマサが「筋トレで頑張ってマッチョになると、腹筋をピクピク動かす異能が身に着くでござる」

「それ異能じゃないから」と全員で突っ込む。

そして「いや、頑張っても体の基本的な作りは変わらないと思うぞ」とアーサー。


ダーウィンは「進化というのは、チューリップの模様が変化するように、親から子へと受け継ぐ形質の変化の積み重ねですよ」

「だよな。雷鼠が大雷鼠に進化するみたいに、個体がそのまま変化するのは、漫画やアニメの中だけだ」とエンリ。

ファフが「じゃ、大雷鼠になるみたいなのは何て言うの?」

「虫が蛹から蝶になるような場合ですね。そういうのは変態と言います」

そうダーウィンが言うと、全員の視線がエンリ王子に向いた。

エンリは口を尖らせて「何で俺を見るんだよ」


「それじゃ、ゴジラみたいなドラゴンが減って蜥蜴が増えたのって、小さく進化したって事なのかな?」

そうリラが言うと、ジロキチが「いや、小さいと敵に勝てないぞ」

「けど、餌は少しで済むし、隠れる事も容易になる」とアーサー。

若狭が「そういう進化って何を頑張るの? 頑張って敵をやっつけるために大きくなるんだよね?」

ニケが「ってか、そもそもチューリップに模様が出来るのって、どんな意味があるの?」

するとダーウィンは「逆なんじゃないでしょうか? 意図してそう変化したんじゃなくて、ランダムにいろんな変化が起こる。それで生存に都合のいい種が生き残る」

「逆に都合の悪い変化もあり得るって事だよね?」とエンリ。

ダーウィンは「そういうのは絶滅するんですよ」



エンリたちが海岸の拠点に戻ると、ゴジラが待っていた。


「どうでしたか?」

「珍しい化石を見つけたんだが、それより、この島に居たドラゴンについて、知っている事を話して欲しいんだが。みんなゴジラみたいな奴ばかりだったの?」

そうエンリに訊ねられて、ゴジラは「祖父から聞いた言い伝えなのですが、ここには様々なドラゴンが居たそうです。ですが、天変地異により、多くのドラゴンが滅んだと・・・」


エンリが「鳥のような獣のような奴は居たか?」

ゴジラは少し考え込むと「それは聞いた事は無いのですが、見つけた場所に連れて行って貰えますか?」



ゴジラは二本足で陸を歩き、エンリたちと山に向かった。

岩場の化石を見せた後、ゴジラは、仲間の気配を感じる・・・と言い出した。

その気配を辿ると、洞窟が口を受けていた。


入口が小さく入れないゴジラを残して、エンリたちは中へ・・・。

奥が広くなっており、そこに巨大なドラゴンの頭骨があった。

「ゴジラの先祖の骨かな?」

そうタルタが言うと、リラが「見せてあげたいね」

エンリが「けどゴジラはここには入れないし、外に持ち出すのは無理だぞ」

「だったら・・・」

そう言ってニケが、記憶の魔道具で映像として記憶。


外で待っていたゴジラに見せる。

「確かに私の祖先の遺骨ですね。彼等はどんな世界で、どんなふうに生きていたのでしょうか?」とゴジラは感慨深げに言う。

「本人に聞けないかな?」とタルタ。

「骨になってるど」とタマが突っ込む。

若狭が「降霊術で呼び出せないの?」

「あれは名前が解らないと・・・なぁ」とアーサー。

ニケが「スケルトンみたいにアンデッドとして・・・ってのは?」

「死んだのがこれだけ昔だと・・・なぁ」とアーサー。

リラが「残留魔素は残ってますよね? これの気配を辿ったんだから」



アーサーは読心魔法の応用で、遺骨に残っている記憶を探った。

魔素を感じ、その中に精神体となって潜る。

より深い領域へと潜ると、やがてドラゴンの頭骨の記憶がイメージとなって捉えられた。

広大な草原の向うに森があり、様々なドラゴンが居た。

草食のもの、肉食のもの。

大きいもの、人間サイズのもの。

あるものは、蝙蝠のように翼を持って空を滑空した。

あるものは、長い首と大きな胴体を持ち、四本の足は鰭の形で、海に住んだ。

あるものは、長い首と尾を持ち、巨大な胴体を四本の太い足で支えた。

犀のような角のあるもの、背中に大きな突起の並ぶもの・・・。

ゴジラに似た二本足で立って走るドラゴンは、頑丈な顎と鋭い歯を持ち、他のドラゴンを襲って、あたかも王者のように君臨した。

やがて気候が寒冷化し、草や木が枯れ、それらを食べる草食が死に絶え、肉食も飢えた。

大地は地震を繰り返し、次第に島は沈んで小さくなった。

そして生き残ったのは、小型になって陸に住むものと、海中に適応して魚を食べるものへと・・・。



アーサーは化石から読み取ったイメージを記憶の魔道具で映像化し、ゴジラに見せた。

ゴジラは感慨深げに言った。

「我々はこんな時を経てきたのですね。彼等の生き残りとして、私に何が出来るのでしょうか?」

ダーウィンが「人は親しい者が死んだ時、葬式という事をやります」

「それは具体的には何をするのでしょうか?」とゴジラ。



洞窟の前で、ゴジラは二つの海賊団とともに、かつてここに居たドラゴンたちを弔う宴を開いた。

ファフも元の姿に戻り、人に混じってわいわいやる二頭のドラゴン。

ファフが獲ってきた大型の魚を食材に、カルロが料理の腕をふるう。


それを食べながら、ゴジラは言った。

「どれも美味い。カルロとやら、俺と従魔契約を結ばないか? 俺がお前を守る代わりに、お前は飯を作る。どこぞの最上位狼魔獣に負けないくらい、俺は強いぞ」

カルロは「止めておきます」

「大量の料理を三食作るのって大変そうだもんなぁ」

そうエンリが言うと、カルロはゴジラに「ってかあなた、雄ですよね?」


全員、あきれ顔で「問題はそこかよ」

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