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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
278/562

第278話 魔剣と仮面

補給港にエンリ王子の手が回っている事を、アマゾナの港で知ったフェリペ皇子たちは、港での補給を断念した。

そして、水と燃料を得るため河口に上陸したフェリペたち。

その動きをリラの魚の使い魔により察知したエンリは、キャンプ気分で陸地で一泊するフェリペたちの寝込みを襲った。



マゼランたちがジロキチたちに押される中、初めてエンリの前でロキの仮面をかぶるフェリペ。

ロキの力を得るとともに、その人格を乗っ取られたかに見えたフェリペと向き合ったエンリは、魔剣の威力を押え、風の魔剣との一体化で得た素早さで、短剣を抜いたフェリペを取り抑えようと・・・。


だが、仮面を被ったフェリペは、有り得ない身軽さで風の魔剣をかわし、宙に浮く仮面の上に立った。

そして彼は、仮面を外してエンリに言った。

「大丈夫です、父上。こいつは僕を主と認めたんです」

「何だと?」とエンリ唖然。


「さあみんな、撤退だ」

そうフェリペが号令すると、リンナは気絶したヤンを、ライナはマーモを、ルナは動けないメアリを抱え、それぞれ仮面を掴んで宙に浮く。

マゼラン・チャンダ・シャナも、ジロキチたちが宙を飛んで襲い来る仮面を防いでいる隙に、海岸へ走る。



「あいつらを逃がすな!」

そうエンリが叫んだ時、海上に停泊していたフェリペの船から砲撃が・・・。

立て続けに飛来する砲撃の爆風を避けながら、エンリは隣に居るアーサーに「あの船は無人の筈だぞ」


アーサーは望遠鏡でフェリペ達の船を観察。

「あれ、魔力で動いてますよ」

「何だと?」とエンリ唖然。

「けど甲板に人が居ますよ」と、同じく望遠鏡で船を観察するリラが指摘。

するとアーサーが「あれ、ホムンクルスですよ」


フェリペたちは、ヤマト号からの砲撃がエンリ達を牽制している隙に、ボートに乗って海岸を離れた。

ボートから船に乗り移るフェリペたちを茫然と眺めるエンリ。

「あいつがロキの仮面を・・・。しかもあのロキが臣従? 何で?」

混乱状態のエンリにアーサーは言った。

「とにかく、我々も船に戻って追跡しましょう」



ヤマト号では・・・。

「お帰りなさいませ。御主人様」

甲板に上がって来るフェリペたちをメイド服で迎えるヤマト。

「そういうメイド喫茶の真似は要らないから」

そう困り顔で言うマゼランに、ヤマトは残念そうに「流行ってるって聞いたんですが」



そんな中でチャンダが言った。

「それより、何で我々の位置が解ったのかな?」

「盗聴の魔道具でも仕掛けられたかな?」とヤン。

リンナが「それともこの中にスパイが?・・・」


その時、マゼランが何かに気付いたように「ちょっと待て。俺たちのメンバーって十人だよね?」

各自、脳内でメンバーを確認する。

(皇子と従者が三名に女官三名に航海士二名とメアリ王女・・・)

そんな中でマゼランが「十一人居るぞ」

「アラストールとロキは入ってないよね?」とフェリペ。


全員、その場に居る人数を数える。

そして「本当に十一人居る」

ルナが「つまり、その十一人目がスパイ?」


「いや、実はこれは何かの試験で、その十一人目はきっと試験官だよ」とヤンが言い出す。

「何の試験だよ」

そうチャンダが言うと、マーモが「フェリペ皇子が皇帝に相応しいか」

リンナが「いや、きっと皇子の妃を決める試験なのよ」

三人の女官が互いに視線を向け合い、火花を散らして「負けないわよ!」

そんな彼女たちを見てチャンダは溜息をつき、「そういう他所の漫画の話は要らないから」



すると、ヤマトが「あの、その十一人目って、私なのでは?」

「じゃ、ヤマトさんがスパイ?」

そうライナが言うと、チャンダは「じゃなくて、途中参加で数に入って無かっただけだろ」

「そーだった」



残念な空気の中、ヤンが「俺たち、何の話をしてたんだっけ?」

「何でこの艦の位置がバレたかって・・・」とマゼランが指摘。

するとリンナが言った。

「あの、向うにはリラさんが居ますよね?」

「居るね」

そうマゼランが応えると、リンナは「彼女は人魚で、魚の使い魔を使いますよね? それに追跡させていたんじゃ・・・」



マーモが潜水艇で海中を探索。

「近くに魚は居る?」

そう念話でマゼランが問うと、マーモは「何引きか居ますね」

「どうする?」


マーモは雷撃の魔法を使い、周囲の魚は感電して水面に浮いた。

そして「気絶してるだけだから、すぐ目を覚ましますが、これで追跡をまけます」



その頃、タルタ号では・・・。


「エンリ様、魚たちが向うの船を見失いました。どうやら、何かの方法で気絶させられたようです」

魚の使い魔を操っていたリラが残念そうに、そう報告。

「どうする?」と言って顔を見合わせる仲間たち。

「次の港の報告を待つか?」

そうタルタが言うと、エンリは「いや、植民市にはもう立ち寄らないだろうな。けど、きっとあそこを通る。大陸南端で待ち伏せるぞ」



「ところで、あいつらが乗ってた船・・・」

そうエンリは言い、全員考え込む。


「魔法で動かす船なんて、どこで建造したんだ?」

そうエンリが言うと、カルロが「元はイギリスの魔導戦艦だよね?」

アーサーが「その技術がオランダに渡ったよね?」

「オランダ東インド会社から買い付けたとか?」とニケ。

「けど、超巨大艦とは随分と違うぞ」とエンリ。

タルタが「動力は普通に風だよね?」

エンリが「そのオランダに渡った魔導戦艦の技術者って、更にどこかに行ったよね?」

「どこだっけ?」と全員、考え込む。


アーサーが、思い出したように言った。

「救出したのは我々ですよ。でもってポルタ大学海賊学部の造船科に・・・」

「そーだった。あいつ等、魔導船の開発を続けてたんだっけ」とエンリ王子。



翌日・・・。

通話の魔道具でポルタ大学の造船科に連絡するエンリ王子。


「お前等、魔法を応用した船を開発してたよね? あれ、どうなった?」

そうエンリに言われ、研究室での飲みニケーションでわいわいやっていた教授の一人は「それは・・・」と口を濁す。


そんな彼等にエンリは「まさか、研究を放棄して連日飲みニケーションの日々って訳じゃないよね?」

教授は慌てて「そそそそそそんな事無いです。魔導船の開発は進んで、先日ついに試作品が完成・・・」

「それ、今どこにある?」

そうエンリがすかさず追及すると、教授は「それは・・・」と口を濁す。



エンリは言った。

「今、イギリスのメアリ王女を連れ出して家出したフェリペを追ってるんだが、奴らが乗ってた船が魔法を応用した代物だったんだが、お前らが開発した魔導船が、それじゃ無いよね?」

「それは・・・」と教授は口を濁す。


「ってか、そんな船が完成したなんて話は聞いてないぞ」

そうエンリが言うと、教授は「報告は出しましたよ。けどそれ、未決済書類の山の中ですよね?」と突っ込む。

「あ・・・」

残念な空気が流れる。


「で、奴らが何でそれに乗ってる?」

そう追求されて、教授は「持ち逃げされました」

「あのなぁ!」

エンリ王子唖然。



気を取り直してエンリは会話を続けた。

「その船にホムンクルスの女性が乗っていたんだが」

「メンタルモデルですね」と答える教授。

「何だそりゃ?」


教授は解説する。

「人体の構造を模した船という、魔導戦艦のコンセプトを引き継いだ開発なんですが、その頭脳として聖杯の代わりにホムンクルスを使ったんです。ローラさんの実家のお家芸だったんで」


「それが人の姿で船の中をうろうろ・・・って訳か?」

そうエンリに突っ込まれ、教授は更に解説する。

「イギリスの魔導戦艦では、生命の樹の構造の十個のセフィラの中で、精霊界と繋がってたのが聖杯を格納したダアトですが、その代わりに彼女の精神が、あの船のダアトの制御魔道具と霊波通信のパスで繋がって、全ての艦の機能を彼女を通じてコントロールする仕様でして」


「で、それが若い女の姿って、誰の趣味だ?」とエンリ。

「イギリスのヘンリー王とドレイク提督ですよ」と教授は答える。

「あのオッサン連かよ」とエンリ王子は溜息。


「あの魔導戦艦事件の後も、しばらく研究は続いたんですけどね、その時に追加の要求仕様として、軍艦娘の実現を・・・って」

そう解説され、エンリは溜息をついて「人体の構造を模してるから、。若い女の子の姿でキャッキャウフフって、あれかよ」

「最初は船自体を変形合体させて人の姿に、ってのを目指したんですが、どうもロボット丸出しの女の子要素ゼロな姿にしからなず」

そう解説されて、エンリは「そりゃロボットだもんな」と突っ込む。

「で、色々検討した結果、ああいう形に・・・」

「その構想をポルタ大学で落ち着いた所で復活させたと・・・」と、ようやく状況を把握した態のエンリ王子。


「お気に召しませんでしたか?」

そう揉み手口調で言う教授に、エンリは「いや、要らないから。とにかく、船を持ち逃げされた責任は、後程処理するとして・・・」

「責任問題とか言います?」

そう不満げに言う教授に、エンリは「当たり前だろ!」


「けど、子供がしでかした事は、親の責任ですよね?」と教授は突っ込んだ。

「・・・・・・・・」

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