表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
276/562

第276話 はじめての上陸

救出したメアリ王女を連れて逃走したフェリペ皇子とその部下たちが、西方大陸東岸を南下してオケアノスを目指すであろうと予測したエンリ王子。

彼は、沿岸にある港の植民市に命令を出した。

フェリペたちの乗る船が入港したら連絡するように・・・と。


スパニア人の海賊コロンボが大洋を西に進んで西方大陸を発見し、西方大陸はスパニアの領土となっていた。

内陸には、そこを征服した様々な貴族、所謂コンキスタドールたちの領地が点在する。

そして沿岸にはスパニア皇帝の命令で造った都市もあるが、港の殆どはポルタ商人が交易の拠点として建設した植民都市だ。

そんな都市のひとつ、アマゾナの港に、何も知らずに入港したフェリペたちのヤマト号。


ヤマトは上陸する彼等を甲板で見送る。

「それじゃ、私はここで留守番しています」

「お買い物とか、楽しいわよ」

そうリンナがヤマトを誘うと、彼女は「残念ですが、私はこの艦のメンタルモデルなので、基本、船からあまり離れられないんです」



船を降りて街を歩くフェリペたち。


「やっぱり地面の上は落ち着くなぁ」

そうヤンが言うと、チャンダが「海賊の居場所は船の上じゃ無かったでしたっけ?」と突っ込む。

するとマーモが「港は海賊の拠点ですよ。船乗りは港港に女ありって」

ライナが興味津々顔で「じゃ、ヤンさんもマーモさんもリア充?」

「そりゃ・・・」と言葉を濁す、二人の大人男子。

「けど風俗女だよね?」とマゼランが言い出す。

ルナが不審そうな目で「不潔だ」


「いや、そりゃお子ちゃまの発想だよ。ハンター冴羽も自来也先生も風俗で恋愛エンジョイしてるんだから」

そう、二人を庇ったつもりで言うマゼランに、リンナが矛先を向ける。

「まさかマゼラン様も?」

「不潔です」と彼に不審そうな視線を向けるライナ。

「いや、俺まだ十五歳なんだが」

そう慌てて否定するマゼランに、チャンダは「けど、一番そっち系で頭が一杯な年頃ですよ」


「チャンダだってそうだろ」とマゼランは口を尖らす。

チャンダは困り顔で「俺、海に出たのは、ついこの間なんだが」

「けど、ヒンドゥーの神はカーマと言って、そういうのを認めてるんだよね?」と、追及の手を緩めないマゼラン。

リンナが不審そうな目で「不潔です」

チャンダは困り顔で「勘弁して下さいよ」


するとフェリペは不思議そうな顔で「ねぇリンナ、不潔って何の話?」

「それは・・・・・、つまり雄蕊と雌蕊です」



不思議そうに首を傾げる幼いフェリペと、バツの悪そうな年上たち。

そんな残念な雰囲気を誤魔化すように、ルナが「とりあえずお腹空いた」

「酒場にでも入ろうよ」とマーモも・・・。

シャナが「メロンパンは売ってないのか?」

ヤンは困り顔で「もっと美味しいものがあると思うよ」



酒場に入って席に座ると、店主が注文をとりに来た。

いきなりメアリ王女が「ここで一番高い料理をお願いするわ」

マゼランが困り顔で「あの、メアリ王女、少しは節約を考えて頂かないと」

「私は王女よ」

そうドヤ顔で言うメアリに、マゼランは「目立つと、見つかってセントヘレナ島に逆戻りですよ」

メアリは残念そうに「解ったわよ」



すると、店の人が料理を持って来て「お待ち。当店で一番高いステーキ定食でござい」

「・・・」


何だかんだ言いつつ、テーブルに並んだご馳走を食べる団員たち。

財布の中味を確認するマゼラン。

食べながらシャナが「メロンパンの方が美味しいぞ」

「贅沢言うな」と、困り顔のマゼラン。



食事を終えて店を出るフェリペたち。

ヤンが「とりあえず水と食料の補給だな」

「特に食料だよね」とマゼラン。

チャンダが「あの後、魚ばっかりだったもんなぁ」


「買い付けは俺たちに任せて下さい」

そうマーモが他の団員たちに言うと、メアリ王女が口を尖らせて言った。

「お買い物は女のレジャーよ」

「服飾ブランド店とか行きませんからね」とマゼランがぴしゃり。

「何でよ。王女の部屋があんな殺風景じゃ駄目でしょ。洒落た小物に化粧品セットに・・・」

そうゴネるメアリにマゼランは「買いません」


するとルナが「ぬいぐるみとおしゃれグッズは?」

リンナが「スイーツショップは?」

ライナが「"週間私の騎士様"の今週号」

「買わないから」と、あきれ顔で言うマゼラン。


メアリが「せめて、おフランスの三面鏡」

マゼランは溜息をつくと、メアリに言った。

「シェ―とか言ってる出っ歯おじさんじゃ無いんだから。・・・ってかあんたイギリス王女だろ。少しは国産品に愛着持ったらどうかと」


「それで何を買うの?」

そうフェリペが問うと、ヤンは「干し肉とか塩野菜とかの保存食と飲料水ですよ」



交易ギルドの商館へ行く。何だかんだで全員ついて来る。

ヤンとマーモが係員に用件を伝える。


二人の後ろで好き勝手言う団員たち。

「二人居る航海士が二人とも船を降りて大丈夫なんだっけ?」

そうフェリペが言うと、マゼランが「船はヤマトさんが全部管理してますから」

「航海士二人も要らなかったんじゃ・・・」とリンナ。

「どっちかクビにする?」とメアリ王女。

「そんなぁ」と、ヤンとマーモは抗議顔で声を揃えた。


そんな彼等の間抜けな会話を他所に、商館長が出て来て、彼等に移動を促した。

「では商品を確認するので、こちらへ」



全員がらんとした倉庫に案内される。

商品らしきものが見当たらない事に不審を感じるマゼラン。

「それで保存食と飲料水は?」


「すみませんが、拘束させて頂きます」

そう言い放つ商館長に、フェリペは「僕を誰だと思ってる!」

「フェリペ皇太子とイギリスの流刑地から脱走したメアリ王女ですよね? あなたの父上から照会が来ていますので」

そう言って商館長が合図すると、わらわらと警備兵が湧いて、彼等を取り囲む。


「どうして解った」と呟きつつ、三人の従者と二人の海賊は剣を抜く。

「俺たちが西回りルートを通ると予想したのかよ」

そうチャンダが言うと、マゼランも「貿易風の存在にエリン殿下が気付いてたんだ。とにかく突破するぞ」



立ち塞がる警備兵を剣で斬り伏せるマゼラン、チャンダ、シャナ。

周囲から迫る兵を剣で防ぐヤンとマーモ。

ウィンドアローを連射するメアリ王女。


倉庫から駆け出ると、大勢の警備兵が出口を取り囲んでいた。

彼等を指揮する市長がフェリペたちに向けて叫ぶ。

「投降して下さい、フェリペ皇子。けして手荒な事はしません」

「そうはいくか」

そう叫んでフェリペがロキの仮面を被ろうとした時、砲声が響いて、警備兵たちの包囲陣に四発の砲弾が炸裂した。

「ヤマトさんだ」と、彼等はヤマト号を係留している岸壁に視線を向けた。


接岸しているヤマト号の船首で「皆さん、こっちです」と叫びながら、ヤマトは機械背嚢の左右の砲を連射して警備兵たちを牽制する。

そして、船首に据え付けられた射撃機械を構えて引き金を引いた。

立て続けに放たれる多数の銃弾が、港に居る警備兵たちを襲う。

「今のうちに船に戻って出港するぞ」

そうマゼランは叫んで、射撃機械の機銃掃射が警備兵たちを牽制している隙に、十人の男女はヤマト号に移乗し、港を離れた。



エンリ達がアマゾナの港に着く。


市長の報告を聞いてエンリは溜息をついた。

「見つけたら報告だけして手を出すなって、あれほど言っただろーが」

「だってたった十人ですよ」

そう弁解顔で言う市長に、ジロキチは「甘く見過ぎだ。従者のマゼラン一人でも、俺たちとまともに戦えるくらい強いんだからな」


「で、他は?」とエンリは聞き取りを続ける。

警備隊長が「メアリ王女らしき女性と女官らしき女の子が三人」

「それは戦力外かな?」とアーサーは言ってエンリを見る。

だが、警備隊長は続けて「メアリ王女は魔法を使います」

「だろうな」と言って腕組みするエンリ。


商館長が「刀で先頭に立った人が三人と、海賊らしき男が二人」

タルタが「その二人ってヤンとマーモだよね?」

エンリが「三人はマゼランとチャンダと、最近フェリペが連れて来たっていう、シャナっていう女の子だろうな」

「その女の子も、かなり強くて、強力な炎の魔剣を使います」と警備隊長が付け足した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ