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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第269話 ライバルは姉王女

両親と一緒にイギリスを訪問した幼いフェリペ皇子が、即位を控えたエリザベス王女と恋に落ちた。

二人に恋の駆け引きを説きつつ仲介役を演じるマーリン。



毎夜の通話の魔道具を介した音声デートで、最初は、自分が何をやっているのか理解出来ていないフェリペを相手に悪戦苦闘するエリザベスだったが、次第に彼女は本領を発揮し、フェリペはエリザベスの気の無い素振りに悩まされる事になる。


「エリザベス姉様、やっぱり僕の事、好きじゃないのかな?」

そう言って落ち込むフェリペに、ルナは言った。

「マーリンさんが言ってた恋の駆け引きですよ」



ロンドンの王宮では、優勢なゲーム展開に盛り上がるエリザベス王女が居た。


ドレイク提督を相手にティータイム。

ウキウキ気分で今夜の音声デートの作戦を練るエリザベス。

「そろそろあの子も内堀まで埋まってる頃よね。もう一押しで無条件降伏って所かしら」

そんなエリザベスに、ドン引き顔のドレイク提督は「五歳児相手に大人げ無さ過ぎですよ」


エリザベスは言った。

「情けは無用よ。国王の結婚は国家の問題なのよ。政略結婚は二つの国を結び付ける。それがどう結びつくかが問題よ。友好なんて言葉だって、どこぞの半島国みたいな悪意に満ちた国にとっては、醜い支配欲を隠す着ぐるみよ。まして国王夫婦は二つの国家の代表として主導権を争う対戦者。ベットの上は国家と国家がぶつかり合う戦場なの。スパニア皇帝が何故33人もの側室を集めたか解るかしら?」

「女好きな精欲モンスターって事ですよね?」

そんな間抜けな事を言うドレイクに、エリザベスはあきれ顔で「あのね、多くの国と縁戚関係を持てば、相手国の血筋が途絶えた時に、相続権が転がり込んで、その領地をそっくり植民地に出来るのよ。だから人は言ったわ。"幸福なスパニアよ。戦争は他国にやらせておけ。汝は結婚せよ"と」


「逆に内戦で草刈り場になりましたけど」とドレイクは突っ込む。

「我がイギリスだって、姉上を通じてスパニアのものになる所だったのよ」とエリザベス。

「政略結婚怖ぇーーーー」とドレイクは肩を竦めた。

エリザベスは言った。

「けど逆に相手国を乗っ取るチャンスでもある。縁戚は仮初めのお友達よ。その輪の中でいかにトップに立って環の中に居る者を従えるか。マウントのトップを占めよ。これは女子会戦略の鉄則よ」



スパニアではマーリンが、フェリペと三人の女官の相談に乗っていた。

「つまりエリザベス王女にいいように振り回されているって訳よね?」

そう、あきれ顔で言うマーリンに、ルナは「五歳の皇子には無理ですよ」

フェリペも「姉様に冷たくされるのは寂しいよ」と、しょんぼり顔で・・・。


マーリンは言った。

「そんなのだから、向うは自信を持って皇子を振り回すのよ。相手にもっと危機感を感じさせなきゃ」

「危機感って?」

そう怪訝顔で聞き返すフェリペに、マーリンは「例えば、皇子を横取りするかもしれないライバルの出現とか」


「僕がその人を好きになるって事? けど僕、姉様以外の人を好きになんてなれないよ」とフェリペ。

「フリだけでいいのよ」とマーリン。

ルナが「けど、モブじゃ駄目なんですよね?」

「貴族令嬢とかなら」とリンナが言い出す。

するとライナが「ロゼッタ様とか」

リンナが「リリア様でしょ」

ルナが「ローズ様かと」


「ちょっと待って。それってただの当て馬よね? 自分が本来仕えていた主に当て馬やらせる気?」

そう言い出したライナに、リンナが「あんた、ロゼッタ様にやらせようって言ってたでしょーが」と・・・。

そんなリンナにライナは「あなたはリリア様押してたわよね?」

するとルナが「いいのよ。ローズ様は一時でも優しくして貰えて他の令嬢の悔しがる姿が見れれば満足なんだから」

リンナも「リリア様だって」

フェリペ、唖然顔で「彼女達、そんな事を考えていたのかなぁ」



するとマーリンは、とんでもない思い付きを言い出す。

「もっといい人が居るわ。遠島送りになっているメアリ様よ」 

三人の女官は唖然。

ライナが「いや、孤島に収監されてる囚人をどうしろと」

リンナも「また通信魔道具で遠距離恋愛ですか? ライバルって事はエリザベス王女は知ってるのが前提ですよね? 他国の皇太子が政治犯と連絡とりあったりしたら、国際問題ですよ」


三人の女官は沈黙の中、互いに顔を見合わせる。

そしてルナが開き直りモードで叫んだ。

「国際問題が怖くて恋愛が出来るかぁ!」

ライナが「いっそ救出して駆け落ちするとか」

リンナが「いや、恋愛ったって当て馬だから」


「よく解らないけど、それってエリザ姉様にすごく酷い事するって事なんじゃ・・・」

そんな風に弱気になるフェリペを見て、逆に乗り気になったマーリンは言った。

「いいえ皇子。彼女はエリザベス王女とは血を分けた姉妹なのよ。それが悪い家来たちにそそのかされて、王位を奪い合う破目になって、エリザベスは涙を呑んで自分の姉を処罰しようと。これも王族の定めなのよ」

ライナが「そうだっけ?」


「皇子は海賊団を立ち上げるのよね? 女性を浚うのは海賊の流儀。しかも相手は悲劇な囚われの姫。それを救出するのはヒーローの仕事よ」とマーリンは煽る。

リンナが「けど、下手すればイギリスと戦争に・・・」

「だから表のヒーローは手を出せない。こういう時こそ闇のヒーローの出番ではないのかしら?」

そうマーリンに煽られ、その気になってフェリペは言った。

「そうか。僕はこのために皇子として生まれたんだ。愛する人の姉様を救い出して、エリザ姉様の涙を拭ってあげるんだ」

「皇子様、その意気です」と、マーリンはおだてモードMAXに・・・。

ルナが「いいのかなぁ?」



最初は戸惑っていた女官たちも、次第に乗り気になってフェリペを煽り始める。

マーリンは笑いを堪えながら脳内で呟いた。

(面白くなってきたわね)



そして数日が過ぎた。

地中海に出向いていたマゼランが帰国した。チャンダとシャナも一緒だ。


「どうだった?」

そう問うフェリペに、マゼランは報告した。

「海賊団のスタッフとして、二人の海賊をスカウトしました」


そして二人をフェリペに引き合わせた。

「ポルコ海賊団から来たヤンです」

「マーモです」

それぞれ自己紹介する二人の海賊。


「二人は剣術や魔法はどうなの?」

そう問うフェリペに、マゼランは「かなりいけます。二人とも航海術はかなりのもので、ヤンは機械技師で潜入術も心得ています。マーモは医術が出来て、砲手として一流です」

「それと、三つの特別な機械を調達してきました」とチャンダが報告。



王宮の倉庫に案内されるフェリペ。

「これって・・・」

倉庫に並ぶ、見た事の無い大きな三つの機械を指して、ヤンが説明した。

「これは飛行機械です。空を飛ぶ機械で、俺が操縦します。こっちは1人乗りの小型潜水艇で、マーモに動かせます。あと、これは特別な銃器です」

フェリペは目を輝かせる。

「凄いや。これなら父上の海賊団にだって負けない」


その時、ロキが現れてフェリペに言った。

「お前、本気でそのメアリって女を連れ出す気か?」

フェリペは「エリザベス姉様の血を分けた姉妹だぞ」

「あのマーリンって女、完全にお前で遊んでるぞ」とロキ。

「そういうのってロキは大好きじゃなかったっけ?」とフェリペ。

ロキは「まあ、俺は面白ければ何でもいいんだが」



その日の夜。

フェリペから話を聞いた三人の女官は、口を揃えて言った。

「あの、皇子様、私たちも連れて行って下さい。お役に立ちたいです」


フェリペは「海賊船に女の子は危ないよ」

ルナは「私たちは皇子様より年上です。魔法だって多少は使えて、いざとなればフェリペ様を守る事だって・・・」

「僕を誰だと思ってる。闇のヒーローロキ仮面だぞ」とフェリペ。

するとライナが「海の上で誰が皇子様のおやつを作るんですか?」

リンナも「たまにおねしょした時、布団を干す人が必要ですよね?」


「解ったよ」とフェリペ皇子。

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