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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
237/562

第237話 彼女達の事情

ついに始まった美人コンテスト。八名の出場者が競う中、審査員たちによるルックス講評を終え、さらに審査は進む。



次に本人のアピール。


「では先ず、犬耳娘のラフタちゃん、お願いします」

そんな司会のアナウンスに応えて、ラフタがマイクの前に立つ。

「私の生まれた犬獣人の村が襲われて、奴隷商人に掴って牢で病気で死にそうになっている所を買って頂いたんです」


「奴隷としてお金で?」と審査員の一人が突っ込む。

ラフタは「エッチな目的で買われた訳じゃないですよ。だから、なかなか手を出して貰えなくて。けど治療を受けさせて貰って、ちゃんとした衣食も貰って、戦い方を教えて貰って」

「彼の代わりにあなたが魔物と戦闘?」と、もう一人の審査員が・・・。


ラフタは解説した。

「彼、鍛冶の神の神殿にお百度を踏んだら、満願の日に神様が現れて"特別な武器を作ってやるけど何がいいか?"って。それで、痛いのは嫌だからと楯を望んで、万能の楯を作って貰ったんですけど、神様に気に入られた彼は特別な加護を与えられて、その楯以外の武器を使えなくなって」

「それ、加護というより呪いなんじゃ・・・」と疑問顔の審査員。

「それで、彼の代わりに魔物を倒す役が必要だったんです」

そんなラフタに、審査員の一人が「どこかで聞いたような話ですけど」


ラフタはテンションMAXで剣を抜く。

「けど、魔物を倒すって最高ですよね。敵の攻撃は全部、楯役の彼が防いでくれるから安心だし。それに見て下さい。この剣」

そう言って構える彼女の剣の刀身に、七つの魔石が埋め込まれている。

「これ、素早さスキルを大幅アップする魔力が込めているんですよ」


ラフタ、実演する。

手が20本くらいに見えるような高速で剣を突き出しながら「ゥァタタタタタタタタタタタタ!」


そしてラフタはノリノリで「こうやって魔物を機関銃みたいに薙ぎ倒すんですよ。攻撃に魔力を込める仕様になってるんで、どんな装甲の硬い魔物でも、ヒデブと叫んで内側から爆発するのがもう・・・カ・イ・カ・ン」

「その剣もナオフミさんが?」

そう審査員の一人が問うと「東のシーノに伝わった宝具だそうです。名前は確かナントカ神剣・・・」

「いや、いいです。想像つきますんで」


そして彼女はマイクを持ち、笑顔で観客たちに「という訳で、魔物退治のご依頼は"ナオフミ勇者事務所"へ」



残念な空気を誤魔化すかのように、司会は次の出場者へ。

「では兎娘のバニーさん、お願いします」


バニーがマイクの前に立つ。

「鮫魚人の海賊団に襲われたんですが、彼が助けてくれまして」

「やっぱり村を襲われて?」と審査員の一人が・・・。

「いえ、旅の途中に捕まって乱暴されて赤裸にされたのを」

そんなバニーの言葉に審査員たちは「そりゃ酷い。性暴力は魂の殺人・・・って、まてよ? 確か魚人ってチンコが無くてメスの産んだ卵に精子をかけるんじゃ・・・」


バニーは「そうじゃ無くて、南方大陸から海を渡る時、渡海費用が無くて鮫魚人の海賊船を騙して乗せて貰ったんだけど、無賃乗船がバレて半殺しに・・・」

「それを戦って守って貰ったんですか?」

そう審査員の一人に問われてバニーは「じゃ無くて、ボコボコにされた所を通りかかった冒険者の一団が傷の治し方を教えてやると言って、傷口にトウガラシを・・・」

「おいおい」

「それでますます腫れて酷い目に遭ってたら、荷物持ちをしていた彼が治癒魔法で治してくれまして」とバニー。

「どこかで聞いたような話ですね」


そしてバニーは「それで兎魔獣だった私は彼の使い魔になって、人化の魔法をかけて貰って」

「それじゃ、乱暴された時は兎の姿?」

そう突っ込まれてバニーは「そうですけど、何だと思ったんですか?」

「けど、赤裸って・・・」と審査員。

バニーは「毛を毟られたんです」

「それはそれで酷い」


そしてバニーは言った。

「それで彼は辞職して、私と一緒に事業を始めて成功しまして、彼は私のことを幸運の女神って呼んでくれてます。今はプレイボーイという店で夜のお仕事を・・・」

観客たちは(要するに風俗嬢のヒモかよ)と一様に呟く。


そして彼女はマイクを持ち、笑顔で観客たちに「という訳でキャバクラ、"プレイボーイ"をよろしく。手頃な料金ポッキリで夢の体当たりサービス」



更に残念な空気を誤魔化すかのように、司会は次の応募者へ。

「では狐娘の秋姫さん、お願いします」


秋姫がマイクの前に立つ。

「実は私は人化じゃなくて、ジパングでとある神に仕える人の姿の半神獣でした。それが、唯一神信仰の宣教師が来て信者をさらって行くものだから、仕えていた神が対抗して、私は海外布教を命じられてジャカルタに行ったんです。けど、誰も信者になってくれなくて、唯一信者になってくれたのが彼だったんです。だから彼は私の唯一のファミリアなんです」


「どこかで聞いたような話だな。それでその神様って何かご利益ってあるの?」

そう審査員の一人が言うと、秋姫は「異世界と繋がるルートを開いて貰って、向うの美味しい料理を出せる食堂を開く事だって・・・」

「それは凄い。ってか、それもどこかで聞いたような話だな」と審査員の一人が・・・。


そして彼女はマイクを持ち、笑顔で観客たちに「という訳で"イキナリ教"をよろしく。皆さんの不幸はきっと先祖のたたりです。それを鎮めるにはこの壺を・・・」

司会は慌てて「そういうカルトは要らないから」



残念な空気の中で応募者のアピールは続いた。


エルフ娘のディードはエルフ至上主義を語り、タマは猫耳至上主義を語り、観客はドン引した。

リリスは女子会至上主義を語って観客をドン引きさせた。


そしてリラはエンリ王子への恋を語る。頭を抱えるエンリ。

「あれは、この海の主とも呼ばれる、大きな魚が姿を見せた、月のきれいな夜でした。王子様が海岸に来て、しばらく海を眺めていました。それは海を深く愛する人の目でした。そして王子様はいきなり」

エンリ、慌てて「ちょっと待て。お前、それ見てたのかよ」



とてつもなく残念な空気を誤魔化すかのように、司会は「ではアンリエッタさん、お願いします」


アンリエッタがマイクの前に立つ。

そして彼女は司会に言った。

「あの、何を言えばいいんでしょうか。私はカサノバさんに愛して頂くために、この世に生まれました。それを誰かにアピールするって、何の意味があるのでしょうか」

「・・・・・」


それを聞いてカサノバは呟く。

(それでいいんだ)

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