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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
234/562

第234話 最高の女性

ユーロ中の美女を誘惑して回る最強の色事師カサノバ。

千人居ると言われる元カノと良好な関係を保っていた彼が、新しい恋人を定めて他の女性との関係を断ったという。

その新しい恋人は自律機械人形のアンリエッタ。

納得出来ない彼の三人の元カノが、マーリンに彼の翻意を促すよう依頼し、話がエンリ王子たちの所へ持ち込まれた。



「とりあえず、カサノバ本人と話をしようよ」

エンリはそう言って、仲間たちとともにカサノバの住処に向かった。

郊外に、塀に囲まれた大きな建物と、それなりの庭がある。

それを見てエンリが「ここがカサノバの家か。かなり大きな屋敷だよね」

「けど豪邸って感じじゃ無いわよね」とニケ。

アーサーが苦笑しながら「芸能人じゃ無いんだからさ」

「けど、ヤリチンだよね? セレブな雰囲気は女の子をゲットする必要不可欠な武器ですよ」とカルロ。


「それに彼は金持ちだよ。あちこちで事業に成功しているからね」

エンリのその言葉で、いきなりニケの目の色が変わった。

「彼って博愛主義者で、全ての女性を愛しているのよね? それで、目の前の女性の願いをテレパシー能力で察して、何でも叶えてくれるのよね?」


エンリは困り顔で「いや、お金が欲しい相手に札びら切ったりしないと思うぞ。ドザエモンじゃないんだから」

「王子、それ水死体」とアーサー。

エンリは「ドラエモンだっけ?」

「不二子先生にぶっ飛ばされますよ」と困り顔のアーサー。

エンリは「じゃなくてホリエ・・・まあいいや。そもそも彼は今、自律機械人形に夢中で他の女は眼中に無いから」



呼び鈴を押すと、メイド姿の女性が出て来た。

リラがエンリに小声で「この人が例の?」

「確かに美人だ」とアーサーも・・・。


「あの、何の御用でしょうか?」

そう怪訝声で言う女性の手を、いきなりカルロは執って「あなたをお誘いに・・・」

ニケはカルロの後頭部をハリセンで思い切り叩いて、言った。

「違うでしょ。この女の敵が!」

そんな彼らを見て頭を掻きながら、エンリは「カサノバさんは御在宅ですか?」

「主様のお客様ですね?」



客間に通され、しばらくすると、男性が出て来た。

「私がカサノバですが」

三十代の長身で細マッチョ。浅黒く精悍な面持ちの相当なイケメンだ。

「私は王太子のエンリです」

そうエンリが名乗ると、カサノバは「アンリエッタは渡しませんよ」

「はぁ?」


カサノバはいきなりファイヤーアローを放ち、アーサーが咄嗟に防御魔法で防ぐ。

「何をする! 王族殺しは重罪だぞ」

そう慌て顔で言うアーサーに、カサノバは「私に権力は通用しません。あなたが手下その一ですね」


聞く耳持たず風の矢を連打するカサノバに、アーサーは防魔の短剣を翳し、攻撃魔法はその手前で消滅。

「何か勘違いしてませんか? 彼は横恋慕したヒロインを奪うため邪魔な主人公を狙うゲスな権力者ではありません」

そうアーサーが言うと、カサノバは「違うのですか?」


エンリは憮然顔で「あんた、変なアニメの見過ぎだろ。あんたの元恋人たちに頼まれて来たんだ」

カサノバは「つまり、邪魔な俺の恋人を始末しようと」

「それも違うから」



カサノバとアンリエッタは並んで椅子に座り、エンリたちと向き合う。

「その人って自律機械人形ですよね?」

そうエンリが言うと、カサノバは「彼女は人間です。知性があって自ら考え行動するのが人間の定義であると、かの賢者チェンバレンは言いました。自ら考え行動するなら、赤い血は流れていなくても人間であり、流れていても自ら考え行動しなければ人間とは言えない」

「チェンバレンなんて賢者、居たっけ?」

そう怪訝顔で言うタルタに、エンリは「突っ込んだら負けだと思うよ。SFとファンタジーはそもそも分野からして違う」


「彼女は自ら何を考えるのですか?」とアーサー。

「私を愛する事を・・・です」

そう答えたカサノバにエンリは「そう見えるよう行動するように作られたのではないのですか?」

「大賢者カルビンは言いました。人間が自ら考え行動しているように見えても、そう考えるよう神が仕向けただけなのだと。それと、どこが違うのですか?」とカサノバは問い返す。

エンリは「それに意味はあるのかという事だと思います。人が仮にそう思うように仕組まれたとしても、そこに至る思考は確かにあった筈です。男は女を愛し、女は男を愛するように出来ている。それが本能だとしても、その本能に従う事を人は自ら選ぶ。彼女はあなたを愛する事を自ら選んだのですか?」


カサノバは言った。

「私は全ての女性を幸せにしたかった。世界には男と女しか居ない。そして互いに引き合う。その引き合い満たし合う力が個の価値です。だから最高の男は、より多くの女に満足を与える事で、その価値が決まる」

「つまり恋愛で男性に満足するか否かを決める女性にあなたの価値を委ねると? ですが、自分の価値は自分で決めるのが人間ですよ」

そう反論するエンリに、カサノバは「それはただの自己満足です」

エンリは言った。

「人の行動の目的とは自らを幸せにする事であり、ならば個の価値とは、自らを幸せに出来るかどうかではないのですか? 人が誰かを幸せにしたいと思うのは、その相手の幸せを自分の幸せと感じる、そういう相手である事が前提でしょう」



リラは、カサノバの表情に影のような何かを感じた。

そして彼女はカサノバに「で、あなたは、今まで全ての女性を幸せにする事を考えていたけど、それを止めたのですよね? そしてあなたは彼女に独占される事を選んだ」

カサノバは「私は疲れたのです。やがて私は年をとり、魅力を失う。そして誰からも相手にされなくなる。だから、最高の男に相応しい最高の女を愛そうと」



エンリは溜息をつくと、仲間たちに「もう止めようよ。彼は虚しさを自覚したんだ。これでいいんじゃ無いの?」

ニケが言った。

「あの女の子たちはどうなるのよ」

「これは彼自身の問題だよ」とエンリ。


「ってかニケさん、彼女達からお金を貰ったんだよね?」

そう指摘するアーサーを無視してニケは「カサノバさん。本当に彼女は最高なんですか?」

カサノバは「人の容姿は偶然の産物です。だから最高を望むなら、人工的に作る事でしか実現しない」

「けど女の子の顔はアニメ絵では基本同じだよね?」と突っ込むジロキチ。

エンリは困り顔で「それは言わない約束だろ」


そしてニケは言った。

「それに女のルックスは化粧で作るものよ。可愛いは作れるの」

「いや、美白だの何だの言ったところで、整形でもしない限り、顔の作りは変わらないだろ」

そうエンリが突っ込むと、ニケは「女が化粧にどれだけの労力をかけてると思ってるのよ。これはお約束なの。今時の男子高校生なら、理想の彼女は?って聞かれたら、化粧の上手な子だって答えるわよ」

エンリはあきれ顔で「いや、化粧の上手な子と化粧で美人になった子はイコールじゃ無いから。化粧を前提としている点で既にアウトだ。女子力を計るスカウターで数値を競うようなお約束は本来の女性の魅力じゃ無い」



そんなエンリたちの内輪揉めを見て、カサノバは頭痛顔で「あの、話について行けないんですけど」

「話が斜め上過ぎるものなぁ」とジロキチ。

ニケは一呼吸置くと、カサノバに言った。

「つまり、彼女が最高だと思ってるのは、あなただけという事よ。それこそただの自己満足じゃないのかしら。私はここに居るリラの方がよほど綺麗だと思うわよ」


いきなりおだてられたリラは、「ニケさん」と言って彼女の手を執る。

ニケはリラの頬に手を当てて「可愛いリラ。私をお姉さまと呼んでくれるかしら」

「私、レズじゃ無いんだけど」

そう困り顔で言うリラに、ニケは「ちよっとは空気読みなさいよ。折角、あなたをヨイショして彼を挑発しようって時に」

そんなニケに、カサノバは困り顔で「そういう作戦会議は相手に聞こえない所でやってくれませんか?」


どこからともなく出現した百合の花瓶を片付けるアンリエッタ。



そんな残念な空気を振り払うように、エンリ王子は言った。

「いや、俺もリラの方が上だと思う」


リラは嬉しそうに「イザベラ様よりも?」

「あいつが絶世の美女だとかいうのは、スパニア諜報局が掃いて捨てるほど居る皇女を片付けるために流した流言飛語だろ」とエンリ王子。

さらにリラは「ファフちゃんよりも?」

「俺はロリコンじや無い」とエンリ王子。


「けどファフは主様の理想でこの姿になったよ」とファフは言ってエンリの上着の裾を握る。

エンリは困り顔で「その主様は俺じゃなくてアルフォンス初代王だろーが」



そんな残念な空気がおさまると、ニケは言った。

「それでカサノバさん。この件は公の場で多くの人のジャッジで決着をつけません?」

「公の場とは?」

そう怪訝顔で問うカサノバに、ニケは「美人コンテストよ」

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