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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
232/562

第232話 南海の英蘭

オランダ東インド会社に胡椒強制栽培農園として占領されたアンボイナ島に潜入したエンリ王子の仲間たち。

そして味方を連れて合流するエンリ王子。彼等の活躍で奴隷化された住民は解放された。

砦に立て籠もって抵抗する東インド会社側は、リバイアサンとビヒモスの二体の巨大魔獣を召喚した。



リバイアサンにファフのドラゴンが斬りかかる。

ビヒモスにジンが組み付く。

そしてリバイアサンとビヒモスは、地下から湧き出るような声を揃えて呪句を唱えた。

「我等水陸を統べる世界の双頭。汝、万物をかたどる原子たる実在。その内なる力以て、我等の元に集え」


すると、その場に居る誰もが異様な苦しみを感じて、その場に蹲った。

「何だこれは。体が重い」

そうエンリが呻くと、アーサーが「これ、重力の魔法ですよ」


ファフのドラゴンもこれには逆らえず、身動きを封じられて剣と楯を落とした。

「主様、体が重いよ」

そんな悲鳴を上げるファフに、エンリは「頑張ってリバイアサンから離れろ」


ただ、ジンだけはこの影響を受けず、ドラゴンが落とした剣と楯を拾って、リバイアサンと切り結ぶ。

しかしビヒモスも加勢し、ジンに角で突きかかる。左手に持った楯でこれを防ぐジン。

エンリは言った。

「ジンには魔法耐性があるんだ。アーサー、妨害魔法は使えるか」

「この重力の中ではちょっと」とアーサー。


「防魔の短剣があるだろ」

そうエンリに言われて、アーサーは「あれで魔法から逃れるのは俺自身だけですよ」

「それでお前が自由になれば妨害魔法は使えるよな」とエンリ王子。

「なるほど」

そう呟くと、アーサーは防魔の短剣を鞘から抜く。自由になったアーサーは妨害魔法の呪文を唱えた。

重力魔法の効果は削れたが、打ち破るにはパワーが足りない。


エンリはドラゴンに呼び掛ける。

「かなり楽にはなったが、どうだ、ファフ」

「戦うのはちょっと」

そう言うと、ファフは炎を吐いてリバイアサンを牽制する。

「巨大モンスターのパワーで魔法を使う奴が居れば・・・」

そうエンリが言うと、サンクリアンが「だったら私のデーモンが居ます」


サンクリアンは翼の生えた巨大な悪魔を召喚した。

そして悪魔は妨害魔法の呪文を唱え、重力魔法は消滅した。

自由になったファフは背後からリバイアサンに組み付き、ジンがリバイアサンの胸に剣を突き立てる。

悪魔はウォーターカッターでビヒモスの首を刎ねた。



「よし、砦を攻め落とすぞ」とマラッカの将軍は全軍に号令。

ドラゴンと悪魔は空から台地の砦に舞い降りて東インド会社の兵を蹴散らし、ジンは台地の斜面を登って砦に乗り込んだ。

マラッカ王国の兵たちはジンに続いて砦に乗り込み、ついに砦は陥落した。



捕縛される東インド会社の社員。

「これだけの捕虜が居るんだから、身代金はいくら貰えるかしら」とウキウキ気分のニケ。


そしてニケは捕虜たちに「胡椒の栽培法、教えてくれるのよね?」

「それは我が社の企業秘密だ」と、捕虜の一人がニケを睨む。

「痛い目を見ても、そんな事が言えるかしら」

鼻息荒く、そう言うニケに、エンリは「ニケさん、金蹴りはダメだからね」

ニケは「何でよ」

「さすがに拷問は駄目だろ」

困り顔でそう言うエンリに、ニケは言った。

「金蹴りは拷問じゃ無くて正義よ。全ての創作物で主人公やヒロインが当たり前にやってる事で、男が股間を抑えて悶え苦しむ事で笑いをとるギャグよ。男性の性的部位を害するのは権利だから」

「怖ぇーーーーーーーーー」と、周囲に居る仲間たち。


サンクリアンは怯え顔で「この人って、いつもこうなんですか?」

エンリは残念顔で溜息をつくと「お金がちらつくと見境が無くなるだけですから」



胡椒の栽培法は、働いていた現地人たちからの聞き取りにより、体系化された知識として確立された。

栽培法の記録を手に、ウキウキ顔のニケ。


マラッカ王の代理として軍船に乗って来た大臣は、エンリに確認する。

「ここの胡椒農園は彼等のものという事でよろしいのですよね?」

「生産されたものを売って頂ければ、我々としても満足です。もちろん他の地域に、ジャカルタ商人として輸出するのは、あなた方の自由です」とエンリ王子。

「これで我々も豊かになれます」と満足顔の大臣。


そんなエンリの耳元で、アーサーが言った。

「少々気前良すぎじゃ無いですか? 何か利権的なものを貰っても良かったのでは?」

だが、エンリは「いや、栽培で大量に胡椒が出回れば、当然、値崩れを起こす。おまけに南方大陸でも西方大陸でも栽培は始まるからね」

「って事は、彼等はまた貧しくなるの?」と、同情顔になるアーサー。

「その時には、次の作物を見つければいいのさ、何しろここは膨大な種類の植物が存在する密林なのだから」とエンリ。



マラッカの植民市に戻るエンリ王子たち。

イギリス商館長が挨拶に来た。

「折角助けて頂いたのですが、イギリス東インド会社はここを撤退する事になりまして」

エンリは怪訝顔で「いや、ライバルは居なくなったんですよね?」

「ですがあの拷問で、社員がみんなビビッて辞職してしまったのですよ」と商館長。

「手足切断だもんなぁ」と、横で聞いていたタルタが溜息をつく。


「それにオランダ人はここを諦めていません」と商館長。

「会社組織でやってますからね」とエンリ。

商館長は言った。

「というよりオランダは小国ですから、至る所に割り込んで・・・という余力が無い。そこで重要な場所に絞って拠点を築いて支配しようと」

「その一ヶ所がここですか?」とアーサー。


エンリが「すると、もう一か所は南方大陸南端のケープですね?」

「そのようです」と商館長。

「あそこは手強いぞ。ベルベドさんが居るからなぁ」とエンリ。

そしてエンリは脳内で呟いた。

(そういえば彼が予言で言ってたな。農民として入って来て支配する勢力があると・・・)


エンリは「それでイギリスは今後はどうされますか?」

そう問われて、商館長は「とりあえずインド方面に重点を移そうかと」

そんな商館長に、若狭が言った。

「ここを引き払うという事は、シチゾーさんは失業する訳ですよね?」



ジロキチたち三人を連れて、エンリは病院のシチゾーに見舞に行く。

サコンが見舞に来ていた。


「シチゾー、体はもう大丈夫なのか?」とジロキチ。

シチゾーは「もうすぐ退院出来そうです」

「これからどうされますか?」と若狭。

「何なら王子から市長に頼んで貰って、植民市で雇って貰うというのはどうでござるか?」とムラマサ。

するとサコンが「いや、二人で相談したのですが、ここには他にもジパングから来たサムライは居ます。彼等と一緒に警備会社でも作ろうかと」


エンリは言った。

「それはいいね。いろんな人たちが交易の利権を奪い合う中で、中立の立場に立つ人たちは信用できる。きっと成功すると思うぞ」

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