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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
227/562

第227話 オランダの商館

マラッカの植民市からの依頼で、オランダ・イギリス両商館のトラブル対策の応援に来たエンリ王子たち。

行方不明になったイギリス商館職員について調査を始めた彼等は、最初に行方不明となったジパング人警備員シチゾーと親交のあったジパング人サコンと出会い、オランダ商館による誘拐の可能性が深まった。



イギリス人誘拐に関する情報集めが始った。

植民市で働く現地人も多い。交易港として栄えると仕事にありつくチャンスも増えるためだ。

手分けして、酒場で聞き込みをする。



エンリ・アーサー・リラで一軒の酒場に入り、三人の客の居るテーブルに座って酒を注文し、先客に話しかける。

「このあたりも物騒になりましたね」とエンリ。

酒場の客の一人が「イギリス人とオランダ人の喧嘩とか?」

もう一人の客が「海賊とかも、うろうろしてますし」とアーサー。

更にもう一人の客が「ゴイセンの奴らとか」


「あんた達も巻き込まれたりするの?」とエンリ。

「毎度の事さ」と、客の一人が。

「かち込みで流れ弾とか?」とアーサー。

「毎度の事さ」と、もう一人の客が。

「出入りとか怖いですよね」とリラ。

「毎度の事さ」と、更にもう一人の客が。

「改造銃使う鉄砲玉とかも居るんだよね?」とアーサー。

「毎度の事さ」

そう客の一人が言うと、エンリが「あと、誘拐とか」


「な・・・何の事かなぁ。そろそろ行かなきゃ。マスター、お勘定置いとくね」

そう言って、怯え顔で代金を置いて席を立つ現地人たち。

「何か隠してるよね」と、アーサーがエンリに耳打ち。



集合して聞き込みの成果を照らし合わせると、やはり現地人たちが何かに怯えている様子が伺えた。

まもなく、猫の情報網で情報を集めに行ったタマが戻って来る。

そしてタマは言った。

「オランダ人がイギリス人を浚って商館に担ぎ込んだのを目撃した猫が居るそうよ。



目撃したという猫に合い、行方不明になったイギリス人の似顔絵を見せる。

猫は一枚の似顔絵を指して「この人です」


「決まりだな」とアーサー。

タルタが「とりあえず襲撃して奪還するか?」

エンリは「相手は組織だし、こっちは家主として監督する立場だ。交渉して解放させる事が出来るなら、それに越した事は無い」


するとタマが言った。

「それより王子、他の複数の猫たちが耳にした事なんだけど・・・」



植民市の警備兵たちでオランダ商館を包囲し、エンリは警備所長と市長を連れてオランダ商館に乗り込む。

そして係員に「商館長は居ますよね?」


オランダ商館長が出て来ると、エンリは言った。

「イギリス商館とのトラブルについて話し合いをするので、同行願いたい」

「どちらに?」

そう聞き返す商館長に、エンリは「街の裁判所へ」

商館長は焦り顔で言った。

「裁判でしたら、準備が必要です。弁護士や関係者も揃えませんと」

「裁判は午後から始めます。関係者はその時までに来て頂ければ宜しいかと」とエンリ王子。



オランダ商館長を連行して裁判所の建物へ。

イギリス商館の代表たちも揃い、傍聴席には一般の傍聴人たちが集まる。

オランダ側の席には商館長と数名の幹部。そして弁護士らしい女性。



そして開廷する。

裁判長が裁判の趣旨を述べると、オランダ側の弁護士が発言。

「弁護士のクマラスワミです。オランダ商館は被害者です。イギリス人たちは商館を襲撃する計画を立てており、証人も居ます」


証人が連れて来られた。

「シチゾー。やっぱり・・・」とサコンが呟く。

怯え切った表情で俯いて証言台に立つシチゾー。

「彼が襲撃計画を自白しました。そうですね?」

そう質問するクマラスワミ弁護士に、シチゾーは力無くうなだれた姿勢で「はい・・・」


イギリス側の弁護士がシチゾーに質問。

「あなたはその襲撃計画を本当に聞いたのですか?」

「それは・・・」

そう言葉を濁すシチゾーを見て、イギリス側弁護士は裁判長に「彼は拷問されたのではないですか?」

「そんな事はありません」とクマラスワミ弁護士。


アーサーは看破の魔法でシチゾーの体の損傷部位を探る。

そしてアーサーは証言台に立った。

「シチゾーさん、あなたが受けた拷問は金蹴りですね?」

「はい」とシチゾー。



クマラスワミ弁護士は傲然と叫んだ。

「金蹴りは拷問ではない」

「傷害ですよ」とイギリス側弁護士。

「金蹴りは正義です。全ての創作物で主人公やヒロインが自ら行い、男が股間を抑えて悶え苦しむ事で笑いをとるギャグであり、断じて傷害などでは無い」とクマラスワミ弁護士。

「肉体を損傷し、著しい苦痛を与えるものです」とイギリス側弁護士。

クマラスワミ弁護士は言った。

「損傷するのは男性の性的部位です。それを害するのは権利です。全てのセックスは男性の女性に対する暴力です。それに彼はジパング人男性です。ジパング人男性に人権は無く、彼等に死ねと言っても、それはヘイトスピーチではない」


イギリス側ドン引き。裁判長もドン引き。

傍聴人も全員ドン引きし、口々に言った。

「それって人種差別って奴?」

「ってか男性差別?」

「この女、頭ダイジョーブかよ」

「性嫌悪がモンスター化すると、こうなっちゃうんだなぁ」



その時、カルロが裁判室に入ってきた。

そして「拷問被害者、救出しました」


十人のイギリス人が担架に乗せて運び込まれる。

全身に火傷を負った者、ずぶ濡れで昏睡状態の者、手や足を切断された者・・・。

傍聴人たち、恐怖に顔を強張らせて「酷ぇーーーーーー」

カルロは言った。

「地下室の拷問部屋に居たのをダウジングで発見しました。行方不明者はこれで全部ですよね」


イギリス側の弁護人は言った。

「襲撃計画というのは拷問によって無理やり言わされたもので、オランダ側に弁解の余地無いと思われます」



そして裁判長は判決を下した。

「拉致・監禁・暴行・傷害により、オランダ東インド会社はこの都市より追放とする」

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