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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
219/562

第219話 暗示で運命

大預言者ノストラがルイ王の死を預言し、エンリ達はそれを預言したという詩の解釈から、剣術の稽古での事故であろうと、王に警告した。

この調査の中で、この預言された死が、実は暗殺ではないかとの疑惑が持ち上がった。



その日、ルイ王は、書類の山を前に、ぼーっとしていた。

様子がおかしいと聞いて、アトスが執務室へ様子を見に来る。

「あの、王様?」

そうアトスに問いかけられ、ルイ王はビクっとして顔を上げると、「いや、寝てないぞ」

「お疲れですか? 何だか目が死んでますよ」と、アトスは王に・・・。


ルイ王は言った。

「どうも体がなまっていかん。アトス、剣術の稽古の相手をしてくれ」

アトスは困り顔で「いや、剣術の稽古は危ないから控えるようにって・・・」

「いや、大丈夫だ。俺は王だぞ。剣術の稽古なんかで死んだりするもんか」と、王はあくまでアトスに、剣術の相手をねだる。


稽古をする・しないの押し問答が始り、全く聞く耳を持たないルイ王。

家来たちも、そしてエンリ王子たちも騒ぎを聞きつける。

「とりあえずお茶でも飲んで落ち着いたらどうかしら」

そう言ってニケが差し出した茶を飲み、間もなくルイ王は眠った。

エンリは「ニケさん、睡眠薬盛ったでしょ?」

「いい判断だったでしょ?」とニケ。


「けど、王様ってあんなに頑固でしたっけ?」

そう言うリラに、ジロキチは「権力者ってのはそういうものだろ」

「けど、自分の命の危険が危ないって説明して納得してたよね?」とアーサー。

「どうなってる?」とエンリの仲間たちは疑問声で顔を見合わせた。



翌日、またルイ王はアトスに稽古の相手を命じた。

床をころがって泣き喚くルイ王。

「相手してくれなきゃ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ・・・・・」


そんなルイ王を見て、エンリは「子供かよ」

タルタは「ここは玩具屋の前じゃ無いんだが」

アトスは「大の大人が、実に嘆かわしい」

「けど大人の玩具ってのも・・・」

そう言いかけたカルロの後頭部をニケはハリセンで思い切り叩く。


エンリは溜息をついて「王様ってあんなキャラだっけ?」

するとリシュリューは溜息をついて「気に入った男性に振られた時は、たまにああなります」

「けど、剣術でああはならないよね?」とエンリは言った。



仕方なく相手をするアトス。


双方防具をつけ、剣先に安全用の留め具をつけて、ルイ王とアトスは向き合って剣を交える。

激しくぶつかり合う二人の剣。

アトスが横に払った剣が、ルイ王の防具面をかすり、防具面が外れた。

「危ない」と叫んで、アトスは間一髪で剣を引っ込めた。


稽古は中止となる。

「防具面が外れるなんて、危ないなぁ」と呟くエンリ。

防具を外したルイ王に、今度は王妃がお茶を出した。


家来たちが王を引っ張って行く。

それについて行こうとする王妃に、エンリは訊ねた。

「さっきのお茶って・・・」

「薬用です。殿下の健康にと医師が」とアンヌ王妃。

「医師・・・ねぇ」とエンリは呟いてニケに目配せ。


王が茶を飲んだカップをニケがそっと懐に入れた。



アトスは、王が付けていた防具面を調べている。

その様子を覗き込むエンリに、アトスは言った。

「外れやすくなってますね」

「不良品かよ」

そう言って溜息をつくエンリに、アトスは「だといいのですが」

「いや、王室御用達が不良品じゃ駄目だろ」とエンリ王子。

アトスは「不良品なら別の物を使えばいい。けど、留め金が緩むような装着の仕方をしていたとしたら・・・」


騒ぎが収まる様子を深刻な表情で眺めるエンリに、アーサーが言った。

「王様、きっと明日も剣術の稽古を言い出すよね?」

するとニケが「エンリ王子、王妃がルイ陛下に飲ませてたお茶なんだけど・・・」

そう言って、ニケはエンリにそっと耳打ち。

「それって・・・」と、エンリは表情を曇らせた。


その時、パラケルサスから通話の魔道具で連絡が来た。

「ルイ王にかけられた魔法の正体が解りました」



翌日、またルイ王がアトスに剣術の稽古を命じた。

アトスは「解りました。手合わせのお相手を務めましょう」


双方、防具を着け、剣の先端に安全用の丸い止め具を付ける。

互いに向き合い、剣を突き出すアトスとルイ王。

留め具の付いた剣が激しく打ち合う。


アトスが胸を目掛けて突き、王がその剣先を払う拍子に、留め具が外れる。

そして次の瞬間、ルイ王は姿勢を低くして一歩前に。

相手の胸を突こうとしたアトスの剣先の前にはルイ王の顔が来る。そして王の防具面が外れる。

「危ない!」

剣を止める間も無く、留め具の外れた剣先がルイ王の目を貫いた。


「陛下!」

そう叫ぶとアトスは、やってしまった・・・と、茫然と立ち尽くす。

駆け寄るアンヌ王妃と宮廷医師。

そして医師は言った。

「即死です」

「とうとう予言が・・・」と、場は騒然となった。



そんな様子を物陰から見て、ノストラは呟いた。

「約束は果たされた」


ノストラは王宮の建物を出て裏の物陰へ。

そこには魔法陣が描かれていた。ノストラはその中央に立って呪文を唱える。

古代文字が現れ、魔法陣は光に包まれる。


だが、突然魔法陣を包んだ光は弾け、何事も無かったかのように・・・。

「転移魔法は無効化されました。妨害措置を施しましたんで」

そう言って出て来た男性に、ノストラは「あなたは?」と問う。

「ポルタ大学魔法学部長のパラケルサスです」と男性は答えた。


ノストラは杖をパラケルサスに向けた。

その瞬間、脇に生えていた樹木の上から、猫の姿のタマがノストラに金縛りの呪文。

動けないノストラを横目に、パラケルサスは魔法陣に残った魔素を読み取る。

そして「転移先はジュネーブ派の教会堂ですね?」



「そういう事か」

その声の方をノストラが見ると、そこには三銃士とエンリ王子たち。そして事故死した筈のルイ王。

ノストラ唖然。そして言った。

「ルイ陛下、何故。あなたは死んだ筈だ」


アトスは言った。

「こうなる事を予想して、練習用の剣に不殺の呪いをかけておいたのですよ」

パラケルサスは言った。

「あなたはジュネーブ派から派遣された刺客ですね? あなたに予言の力は無い。死を予言されて確実にそれが起こる運命だと信じた人が、そうなるように行動してしまう場合がある。そんな暗示をかける催眠魔法で、死に向かうよう促す。それがあなたの暗殺術だ」


「いつから?・・・」

そう問うノストラにエンリが答えた。

「あの予言詩。あれが具体的に何を予言するのかは解らないと、あなたは言った。けど私は王妃から、事故死の預言だと聞いた。つまり王妃にはそう説明したという事だ。あなたは嘘をついていた」

そしてアーサーが言った。

「あなたの魔力の質は予言能力のものではない。南方大陸に本物の預言者が居ます。その人と魔力の質が大きく異なる。あなたのそれは催眠魔法のものだ」

リシュリューが言った。

「ジュネーブに討伐隊を送る計画が進んでいます。王が死ねば、その計画は中止となる。それが狙いですね?」



ノストラは溜息をつく。

彼は死を覚悟した者の表情を見せ、そして言った。

「ユーロは新たな文明により世界に進出している。各国は世界中に領土を広げて支配する事になるだろう。その時、商工業者を信者としたジュネーブ派はユーロの経済を支配している。そしてジュネーブ派が唯一神信仰を統一し、かつての教皇に代わり宗教でユーロと世界を支配するなら、我等の指導者カルビンが世界を指導して神の国が実現する。何者にも邪魔はさせない。大賢者カルビンに勝利を!」


彼は呪文を唱えて、金縛りの魔法を破る。

そして上着の前を開くと、上着の内側に多量の爆薬。

アラミスは咄嗟に転移の呪文を唱え、ノストラの周囲に転移の魔法陣が出現した。

ノストラの姿は消え、遠くで爆発の音が響いた。

「彼が自爆の用意をしていたと見越して転移座標の用意を?」

そう問うエンリに、アラミスは「追い詰められた敵役が殺しそこねた相手を巻き込もうと自爆を図るのは、こういう場合のお約束ですからね」



エンリたちの背後でこの様子を見ていたアンヌ王妃は呟いた。

「彼にそんな目的があったなんて・・・」

そんな王妃に、エンリは「アンヌ王妃。王に飲ませた茶に薬を混ぜていましたよね?」

「それは・・・」

そう口ごもる王妃に、ニケは「あれは、催眠魔法の効果を高めるものよ」

王妃は唖然とした表情を見せ、そして言った。

「だってあれは媚薬だと言われて・・・。陛下から相手をして頂けないから。王妃でありながら、何てはしたない」


その場の全員が声を揃えて「アンヌ王妃は悪くない」

そして彼等の視線がルイ王に集中する。

王は慌てて「俺が悪いのかよ」


「彼女は政略結婚のためにフランスに来たんだ。それでも頑張って家族であろうとしたんです」とエンリ。

「こんなに美人で性格だって」とアーサー。

「みんなの憧れなのに」とリシュリュー。

三銃士が声を揃えて「王様が悪い」

ルイ王は困り顔で「そんなぁ」

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