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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第218話 預言と暗殺

過去にユーロ各地で何人もの王族や大貴族の死を予言したと言われる大預言者ノストラ。

彼がフランスのルイ王の死を預言した。

心配したアンヌ王妃はエンリに助けを求め、彼とその仲間たちはフランスへ。



ルイ王の死を予言したとされる一篇の詩が、王のどんな死に方を象徴するのか。

エンリたちによる調査が始まった。

「とりあえず、解釈のヒントを手分けして探そう」

そう切り出すエンリに、仲間たちは「どこを探す?」

一同、頭を捻る。

「一騎討ちによる戦いの野・・・って事は、軍隊とか?」と若狭が言った。



陸軍の兵営に行くと、慌ただしい空気に包まれていた。


士官たちに指図している将軍がエンリに説明する。

「ジュネーブ派の本拠地を討伐する計画が進んでいまして」

「スイスに戦争を仕掛けるってか?」と深刻な表情になるエンリ王子。

将軍は「国内の信者に指令を出して我が国を乗っ取ろうと画策するジュネーブ派の跳梁を、見過ごせなくなりまして」


「ハイブリット戦争って奴ですね?」とアーサー。

「ですが、信者の多くは商工業者ですよね?」とエンリ。

「だから、禁止すれば信者が国外に逃げて、経済が打撃を受けます。司令塔を潰すのが一番得策だろうと」と将軍。



銃士隊に相談に行く。

アラミスが隊員たちに剣術の稽古をつけていた。


アトスがエンリたちに対応する。

「うちも、一騎打ちってやりますけど、今時の戦争の基本は集団戦ですからね」

「すると、軍隊というより、決闘とか試合とか?」とエンリ王子。

アーサーが「黄金の籠って何だと思いますか?」

「籠なら、試合の時に使う防護面って、目の細かい籠ですよね」とアトス。

「けど、黄金の防護面なんて無いからなぁ」とエンリ。


アラミスが隊員たちの所を離れてアトスの所へ・・・。

「おいアトス、次はお前の番だぞ」

アトスは防護を付けて剣を持って隊員たちの稽古へ。

アトスの代りに、戻って来たアラミスが対応。


「何の話をしていたんですか?」

そう言って首を突っ込むアラミスに、エンリは「預言者ノストラの預言詩の解釈についてなんですが」

いきなり食いつくアラミス。

「ああいうのは神秘主義の中で使われる概念の象徴を盛り込んでましてね。占星術における惑星は四大元素の何れかと対応していて、それがギリシアの神やその眷獣の・・・」

エンリはタジタジ顔で「そういうマニアックな蘊蓄はとりあえず要らないから」


「それで、黄金の籠って何だと思いますか?」

そうアーサーが訊ねると、アラミスは「普通に防護面でしょ」

「けど、黄金の防護面なんてありませんよね?」とアーサー。

アラミスは「王の運命を予言したなら、黄金は王権の象徴ですよ」

「って事は一騎打ちって剣術試合か?」とエンリ。

「ルイ王が剣術試合?」とジロキチ。


アラミスは「よく稽古の相手をやらされますよ。防護面はそういう時も使います」

「相手は?」

エンリがそう訊ねると、アラミスは近くに居るダルタニアンと顔を見合わせて「いろいろだよね」

「二隊って?」とアーサー。

アラミスは「衛士隊と銃士隊ではないかと」

「獅子って?」とアーサー。

アラミスはダルタニアンと顔を見合わせて「社交界のご婦人がアトスを仇名でそう呼んでるよね?」


ポルタスと交代してアトスが戻って来る。

話を聞いたアトスは青くなって「俺が練習中の事故で王を殺すって? どうしよう。王殺しは重罪だ」

「だったら・・・」



エンリ王子と三銃士はルイ王に進言した。

「一週間の間は剣術の稽古は控えるように、お願いします」



とりあえず対策はとったと、一息つくエンリ王子たち。

王宮の客間であれこれ話す。

そんな中で若狭が「ノストラって、あちこち渡り歩いてる人なんですよね? それが、ずっとここに留まってるって・・・」

「王宮に居るって事は、誰かの客分としてだよね?」とアーサー。


「アンヌ王妃の客分だそうですよ。彼は元々医師だからね」

そう言うカルロの表情に、柄にも無く重苦しい影を垣間見て、エンリは言った。

「カルロ。何か気になる事でもあるのか?」

カルロは言った。

「彼がその死を予言したという重要人物について調べてみたんですけど、みんな国教会派の大物なんです。それって、この死によって得をする国教会派の敵が居る・・・って事なんじゃ・・・」

「って事は暗殺かよ」とタルタ。

「けど予言だろ?」とエンリ。

「得をする者を疑えというのは推理の基本ですよ」とカルロ。


「アーサーはどう思う?」

エンリにそう問われて、アーサーは「そもそも彼は本当に予言の能力を持ってるんでしょうか」

「どういう事?」とエンリが問うと、アーサーは言った。

「ズールーのベルベドさんと魔力の質が違うんです」

「じゃ、予言っていうより、予告?」とエンリ王子

「って事は、彼が王の暗殺計画と関係? だとすると、ノストラを呼んだアンヌ王妃が・・・」

そうタルタが言った一言で、「まさか」と、仲間たちは顔を見合わせる。


「俺たち外国人だよね?」とエンリ王子。

「そーだよ部外者だ」とタルタ。

「あんな綺麗な人が旦那を殺すなんて」とカルロ。


するとニケが言った。

「それって現実逃避じゃないかしら。もし成功したら、フランスはポルタやスパニアの敵になるわよ」

「だよな」と、仲間たちは顔を見合わせる。

「彼女はイザベラ妃の姉よ。当然、彼女の地位を狙う兄弟の誰かと繋がる可能性はあるわ」とニケは追い打ちをかける。

「ニケさんがまともな事言ってる」

そうタルタが言うと、ニケは慌て顔で「べべべ別に勝ち馬に乗ってガッポリ利益をなんて思ってないから」


その時、物陰に居た鼠の使い魔が、そっと壁に空いた小さな穴に潜り込んだ。

そしてその夜、衛士隊が王妃を拘束した。



翌日、エンリたちが宿泊しているミゲル皇子の屋敷にダルタニアンが乗り込んだ。

「エンリ王子、俺と決闘しろ!」


そう玄関で喚くダルタニアンの声を聞いて、エンリと彼の仲間たちが出て来る。

「何言ってる。ってか理由は?」

そうエンリが問うと、ダルタニアンは「コンスタンツを泣かせた」

「王子、何やったの?」とニケ。

「まさか外交問題になるとか言って脅して、あんな事やこんな事を」とムラマサ。

「見損なったぞ」とタルタ。


エンリは慌てて「いや、俺何かしたっけ? ってか泣かせたって・・・」

「王妃様が国王陛下の暗殺を謀ったとデマを」

そうダルタニアンが言った時、彼の背後から出て来たアトスが、ハリセンでダルタニアンの後頭部を思い切り叩いた。

そして「事情を把握するのが先だろーが!」


そこには頭を抱える三銃士が居た。

アラミスが「アンヌ王妃が王の暗殺を企むなど絶対に無い!」

ポルタスが「ってか、何故そんな話になったんだよ」

エンリは困り顔で「いや、そもそも俺たち、あれを誰かに漏らして無いぞ」

アトスは溜息をついて言った。

「あのな、ポルタではどうだか知らんが、普通の王宮って、使い魔やら盗聴の魔道具やらがそこら中で聞き耳立ててるものだぞ」



ノストラの預言についての疑惑について説明するエンリ。


話を聞いたアトスは言った。

「つまり、あの予言が暗殺計画に絡んでいると・・・」

「だから、アンヌ王妃が何故彼を呼んだのかを知りたい」とエンリ王子。

アラミスはダルタニアンを見て「コンスタンツなら知ってるよね?」



王妃の衣装係の名目で手足となっているコンスタンツに問い質すが・・・。

「言えません。けど、信じて下さい。彼を呼んだ目的は暗殺とは無関係です」とコンスタンツ。

「って事は、病気とか健康とかの話じゃ無い」

そうエンリに言われて、コンスタンツは「はい」

「美容とかダイエットとか胸を大きくするって話でも無い」

そうエンリに言われて、コンスタンツは「そんな方法があるなら私が知りたいです」


ダルタニアンはコンスタンツの肩を抱いた。

そして「コンスタンツ。そんなものが無くても、君は十分綺麗だ」

そして見つめ合う二人。

「ダルタニアン」

「コンスタンツ」

「ダルタニアン」

アトスは困り顔で「そーいうのは後にしてくれ」


エンリは言った。

「とにかく信じよう。俺はリシュリューに王妃の解放を要求する。それと、アーサーはパラケルサスに連絡してくれ。この暗殺計画には何らかの魔法が絡んでいる筈だ」



エンリ王子は衛士隊を手足に使う宰相リシュリューと面会した。

「アンヌ王妃は無関係だと?」

そう問い返すリシュリューに、エンリは「俺たちの話を盗聴したんだよな? その俺たちが言ってるんだ」

「その根拠は?」とリシュリュー。

「それは・・・」


リシュリューは言った。

「王妃が怪しいというのは、あなたが言ったから信じた訳ではない。言った内容に筋が通っているからです。違うというなら、その理由が必要です」

それに対してエンリは「関係しているかも、とは言ったが、それは暗殺を企てる立場とイコールとは限らないだろ。もしノストラ自身が暗殺を企てているなら、予言とか言ってわざわざ警戒させるような事をするかな?」


「それは」

そう口ごもるリシュリューにエンリは言った。

「それに、暗殺計画があったとして、今、王妃を拘束して防げるのか? 相手に警戒させて対抗策をとらせるだけだと思うぞ。そもそも暗殺を実行するのは王妃じゃない。その具体的な手段が解らなければ対応できない。それを探るために警戒させずに泳がせておいた方が賢いんじゃ無いのか? まだ日はあるんだ」



アンヌ王妃は解放された。

タマが猫の姿でノストラを監視する。だが・・・。


仲間たちが集まる中、タマはノストラの動きについて報告した。

「全然尻尾を見せないのよね」

「彼、何やってるんだ?」とエンリ。

タマは「医師として王妃様の健康相談よ」

「内容は?」

とエンリが問うと、タマは「最近どうだとか、一向に無いとか」


「何が一向に無いんだ?」とエンリは疑問顔で・・・。

タマは眉をひそめて「詮索しちゃいけない話じゃないの?」

「何だよ」

そう問い質すエンリを異様な目つきで見る女性陣。


「だから詮索しちゃいけない話なの。これだから男は・・・」とニケ。

「空気を読めという事かと」と若狭。

エンリは困り顔で「リラ、解るか?」

「多分・・・」と、リラも困り顔で・・・。

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