第212話 機械で大空
十字軍復興を目論むヴェスヴィオ公に抗うポルコ海賊団に協力しようと、彼の拠点に乗り込んだエンリ王子たち。
そこで出会った歌姫ジーナを巡って、カルロは飛行機械でポルコと決闘するが、銃手役を買って出たニケの助力で、カルロは勝ってしまう。
番狂わせに唖然とした周囲の残念な空気の中、ジーナはポルコ機の不備を指摘して、再戦という事になった。
ジーナがポルコの赤い機体の修理を始めた。
機体をあれこれいじる彼女を見ながら、並んで座るポルコとカルロ。
二人はジーナについて、あれこれ話す。
「彼女、歌姫なのに機械整備も出来るんですね?」とカルロ。
ポルコは「ジーナはこっちが本業だ。歌姫は元々、開発費稼ぎのバイトさ」
「この飛行機械は彼女が発明したの?」
そうカルロが訊ねると、ポルコは「発明したのは賢者ピッコロ。レオナルドって賢者が発明したものの改良品だそうだ。ジーナはそのピッコロの孫だ」
「あんたは?」
ポルコはそれに答えて「テストパイロットさ。空が飛びたくて、彼女の所に来た」
「女より空って訳かよ」と言って、カルロは溜息をつく。
「飛べない豚はただの豚さ」と言ってポルコは笑った。
「海賊団の奴らは?」とカルロ。
ポルコは言った。
「彼女が歌姫のバイトをやってる間にファンになった奴等さ。ここは海賊くずれのたまり場でな。そこをヴェスヴィオ公の代官が治めていた。その公爵が拠点をここに移した。奴隷剣闘士業者を連れて来て、新しく買い集めた奴隷も入れて軍団にして戦争に使うと言って。ピッコロに飛行機械を武器にするため協力しろって」
「ピッコロはどうなった?」
そうカルロが問うと、ポルコは「協力を拒んで、殺されたよ」
「それで反乱を起こして、海賊団かよ」と言って、カルロは溜息をつく。
エンリはポルタ城に連絡し、諜報局にヴェスヴィオ公の動向についての調査を命じた。
間もなく報告が来る。
「教皇庁がテコ入れして、ドイツ皇帝が兵を貸すそうです」
そう報告する局員に、エンリは「魔導士隊か?」
「恐らく。それと、国教会同盟に対抗するって事で、オランダが巨大艦を・・・」と局員は報告。
「更に厄介だな」とエンリは溜息をつく。
「あと、シーノから巨大火矢を輸入しました」と局員は報告。
「破滅の魔道具付きか?」とエンリ。
「恐らく」
エンリは溜息をついて、言った。
「いざとなったら、あれでここを丸ごと吹っ飛ばすって事かよ。って事は、それを打ち上げる基地があるんだよな?」
「そうなりますね」と局員。
「場所は解るか?」
そうエンリが訊ねると、局員は「シチリア島のアンジュ―公領になるかと。元々、十字軍復活を言い出したのは彼なんです」
「シチリア島って事は、攻め込めばシチリア騎士団を相手にする事になるな」とエンリ。
局員は「内部に潜入して破壊工作というのが得策かと」
「お前等、やってくれるか?」
そうエンリが言うと「それじゃ、まるでスパイじゃないですか」
エンリはあきれ声で「お前等スパイだろ」
局員は「妻役と子供役仕立てて偽装家族で地元の小学校に入れるとか?」
「そこまでやれとは・・・ってか、そういう他所のアニメの話は要らないから」とエンリは突っ込む。
「けど潜入って命の危険が危ないですよね?」
そんなヘタレた事を言う局員に、エンリはあきれ声で「お前等なぁ」
すると局員は言った。
「遠坂さんに頼むというのはどうでしょうか。彼、忍者ですし」
エンリは通信の魔道具でボルタ大学に連絡。
魔法戦闘科の準教授に昇格していた遠坂に、仕事の内容を伝えた。
「やってくれるか?」
エンリがそう言うと、いきなり間桐が通話に出る。
そして「破滅の魔道具と巨大火矢ですか? ミンの道術の集大成じゃないですか」
「いや、遊びに行くんじゃ無いんだが・・・」
エンリが困り声でそう言うと、いきなりローラが通話に出る。
「火蜥蜴の幼生を載せてるんですよね? あれ、可愛いですよね。私、雷鼠よりあっちの方が趣味なんです」
エンリは仲間を集め、ポルコたちの所に行って、仕入れた情報を伝えた。
「巨大火矢は、どうやら何とかなりそうだ」
そうエンリが言うと、アーサーが「あとは巨大艦の超長距離砲かぁ」
「それってドラゴンの威嚇で対抗できるよね」とタルタ。
「それ、対策とられてたけど」とニケが指摘。
「あ・・・」
ジロキチが「だったらシールドの張ってない海中を」
だが、エンリは「超長距離砲で対策をとってたって事は、シールドだって同じだと思うぞ」
「シールドを転移魔法ですり抜けるというのはどうですか?」とリラ。
「短い距離ならともかく、転移座標の無い所に離れた所から・・・ってのは無理だぞ」とエンリ。
「だったら海中のシールドを俺たちがすり抜けて」とカルロ。
「転移座標が無いと生命体は難しいですよ」とアーサー。
するとポルコが言った。
「どうも話が見えないんだが、その巨大艦って、どんな代物なんだ?」
エンリたちはポルコに、巨大艦のあらましを説明する。
ポルコは言った。
「なるほどな。だったら空中から接近して、シールドの真上で爆雷をシールド内に転移させるというのは? 超長距離砲の弾を込めてる所に爆雷を放り込めば、誘爆させて戦闘不能に出来るだろ」
アーサーが「対空戦の備えは相当あったと思うが」
エンリも「乗り込んだ時に大型銃座が並んでたのを見たが、あれで転移距離まで近づくのは、相当きついと思うぞ」
「俺たちを何だと思ってる。大空はポルコ海賊団のホームグラウンドだ」とポルコが言い、彼の部下たちも頷いた。
ジーナは、ポルコ機の修理を終えた。
ポルコとカルロの再戦となる。
ポルコの部下たちやエンリ王子たちが集まり、多くの人が見守る。
「言っとくけど、噛ませ犬でも本気でやりますからね」
そうカルロが言うと、ポルコも「当然だ」
その時、その場に居たエンリにアーサーが情報を持って来た。
「シチリア島のローラさんから連絡です。軍船多数と巨大艦、それと、変な船が港を発進したそうです」
「変な船って?」
そうエンリが聞き返すとアーサーは「船首に鉄の角みたいなのを付けてるとか」
タルタが「ギリシアの体当たり船かな?」
エンリが「この大砲の時代に、そんなものが・・・」
「砲撃戦なら集成艦で叩き潰してやるさ」とポルコが気勢を上げる。




