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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
209/562

第209話 戦空の豚

ポコペン公爵に武装集団への対策を依頼されたエンリ王子たちは、彼等と関係するらしいニケの幼馴染スパルティカを追って、武装集団ポルコ海賊団のたまり場に辿り着いた。

だが、秘密裡に捜索していたつもりの彼等は、そのポルコという頭目と出会って早々、あっさり正体がバレてしまう。



緊張した空気の中、店に入った若者は、その空気に気付く。

そして、まごつき顔で「もしかして俺、やっちゃった?」

そんな彼を見て、ニケは柄にも無く目を潤ませて「スパルティカ」

「ニケ・・・・」と、彼女に気付いて、目を伏せるスパルティカ。


そんな二人を見て、ポルコは「そういう事か・・・。まあ座れ。ここは酒を飲む所だ。酒場で喧嘩なんて三下のやる事さ」

そして彼は店主に「この二人にグラッパ。俺の奢りだ」と言うと、スパルティカとニケに目配せして、店の隅の開いているテーブルを指した。

「あの、ポルコさん?」と、困り顔のスパルティカ。

そんなスパルティカにポルコは「イタリア男の流儀だ。郷に入らば郷に従えって言ってな」


すると、彼の隣に居る部下らしい男が「それを言ったらジーナさんはどうするんですか?」

「そうですよ。可哀想でしょ」と、別の部下も・・・。

ポルコは困り顔で「俺の事はいいんだよ」



店の隅のテーブルで向かい合って座るスパルティカとニケ。


ニケは「あれからどうしてたの?」

「いろいろあってな」と、スパルティカ。

「いろいろって剣闘士?」とニケ。

「まあな」とスパルティカは口ごもる。


ニケは辛そうな表情で「殺し合いだよね?」

「不殺の魔法はかけてた」とスパルティカ。

「でも、辛かったよね?」とニケ。

スパルティカは「そりゃ、斬られるのは痛いさ」


俯いて涙を滲ませるニケに、スパルティカは「お前って、そういうキャラじゃ無いだろ?」

「私だって、成長ってものがあるんだからね」

そう言うニケに、スパルティカは笑って「"私のお金ー"は卒業したのか?」

「うるさいわね」とニケは口を尖らす。



エンリたちがテーブルに座ると、ポルコが来て、言った。

「で、誰に頼まれた?」

「誰って?」

そう怪訝顔で言うエンリに、ポルコは「俺たちを倒しに来たんだよな?」

顔を見合わせるエンリと仲間たち。


するとファフが「ポコペンのお爺ちゃんだよ」

エンリが困り顔で「おいファフ」

するとポルコは「あの公爵かよ」

そんなポルコの反応を見て、エンリは「意外そうだな?」

「奴は教皇庁の犬じゃ無いだろ」とポルコ。

「教皇庁って?」

そう聞き返すエンリに、ポルコは「何も知らないんだな?」


エンリは隅のテーブルに居るスパルティカを見て、「あいつ、逃亡奴隷だよな?」

「他にも大勢居る」とポルコ。

「殺し合いやらせた奴等に報復でもするのか?」

そうエンリが言うと、ポルコは「そう吹き込まれたのか?」



そしてポルコは立ち上がる。

「そろそろ行くか」

そう彼が周囲に向って言うと、店に居る客たちも一斉に立ち上がる。


ポルコはスパルティカにお金の入った袋を投げた。

そして「軍資金だ。うまくやれよ」

反射的に袋を受け取ったものの、おろおろしながらニケを見るスパルティカ。

エンリと仲間たちは顔を見合わせる。


タルタが「これ、ニケさんは別行動って流れだよね?」

エンリは「じゃ、ニケさん。後は若い二人で」

そう言ってエンリ達はポルコ達が去ったのと別方向へ・・・。


すると「ちょっと、エンリ王子」

そう呼び止めるニケに、エンリは「何? 怖気づいた?」

ニケは「私にも軍資金」

仲間たち、前のめりでコケる。


エンリはあきれ顔で「いや、ここは彼氏に奢って貰うって流れだろ」

ニケは物欲しそうに「男女平等よ」



その夜、宿屋のベットの上には、寄り添うニケとスパルティカが居た。


「あんた達、何と戦ってるの?」

そう訊ねるニケに、スパルティカは「それを聞いてどうする?」

ニケは「どうするって・・・」

「俺たちみたいなのは潰すのが軍の流儀だろ?」とスパルティカ。

「私たちは軍じゃ無いわ」とニケ。

「お前等のボスは王太子。そして私掠船は放し飼いの海軍だ」とスパルティカ。

「それは・・・。けど、公爵家を恨んで・・・」とニケ。


スパルティカは言った。

「俺たちは、ただ生き残りたいだけだ」

ニケは「それを許さない人が居るの?」

「そうさ。あの人は人を殺さない。これは戦争じゃ無いからと言って・・・」とスパルティカ。

「・・・」

そしてスパルティカは「ニケ。生き残れよ」

「生き残れ・・・って?」

ニケがそう聞き返した時、スパルティカは既に寝落ちしていた。


ニケは呟く。

「私の事は何も聞かないのね」



翌朝、ニケが目を覚ました時、スパルティカの姿は既に消えていた。

そして彼女が宿屋を出ると、街から海賊たちの姿は消えていた。


酒場の前で仲間たちと合流するニケ。

「彼等は?」

そう酒場の店主にポルコの事を尋ねると、店主は「もう出港しましたよ」

「ここって奴らの拠点なんだよな?」とエンリ。

店主は「本拠地じゃ無いですけどね。この辺にいくつも拠点があります」

「領地みたいなものか?」とエンリ。


店主は言った。

「ここの領主を倒したんですよ。ここは元のヴェスヴィオ公領です」

エンリは溜息をつくと「そういう事か」

「どういう事?」とニケ。

エンリは言った。

「教皇庁の犬とか言ってたよな? ヴェスヴィオ公は十字軍の再興を計画していたんだ。何が起こったのか確認する必要がある」



タルタ号が出港する。

舵を操りながら、ニケは言った。

「アーサー、周囲を警戒して。ポルコ海賊団の襲撃が来るわ」

「では魚の使い魔を出します」とリラ。

するとニケは「そうね。けどきっと敵は空から来るわ」

「飛行機械かよ」とジロキチ。

「けど、どうして?」と若狭。


ニケは言った。

「スパルティカが言ったの。生き残れって」

カルロが「ベットの上で?」

ニケは「そうよ・・・って、何よその顔」

周囲の視線が集中している事に気付いて慌てるニケ。


タルタが「いや、やっぱりそこまで行ったかぁ」

カルロが「ニケさんも女なんだねぇ」

ニケは赤くなって「いいでしょ。もうお互い大人なんだから。あんたら中学生か」

「ねえねえ、行ったって、どこに?」とファフがタルタの上着の裾を引く。

タルタは「大人の階段を登ったのさ」

「それ中学生の発想」とニケはあきれ顔で言った。


その時、アーサーが「右方向、空から何か来ます」



小型の赤い何かが高速で接近する。

エンリが叫んだ。

「ポルコの飛行機械だ。ファフ、俺を乗せて飛べ。空中戦だ」


球体に近い小型のボディーの上に何かが高速で回転している。

エンリを頭に乗せて空を飛ぶドラゴンのファフがそれを見て「何なのかな? あれ」

エンリは「レオナルドの爺さんが発明した飛行機械の改良板だろう。傾けた細長い板を何枚か放射状に並べて、それを回転させる事で風を下に押し出して、その力で宙に浮くんだ」


空飛ぶ機械は、機体に固定された大型の銃を連射する。その銃弾をドラゴンの鱗が弾く。

エンリは風の巨人剣を振るうが、かるくかわされる。

その機械に乗ったポルコが放つサンダーボルトの攻撃魔法が、ドラゴンに命中。

エンリが「大丈夫か?」

「けっこう痛い」とファフ。


ポルコが放つヒートランスの攻撃魔法がドラゴンに命中。

ファフが「熱いよ、主様」

「この野郎」とエンリは叫ぶ。


ドラゴンは旋回して正面に飛行機械を捉え、エンリは風の巨人剣との一体化の呪句を唱える。

そして「これでどうだ」

一体化による素早さスキルで巨人剣を振り下ろした瞬間、飛行機械は姿を消した。

ポルコに後ろに回り込まれ、背後からサンダーボルトを喰らうドラゴン。


さらに飛行機械三機が飛来し、船に向けて幾つもの爆雷を投下。

落ちて来る爆雷をニケが短銃で撃ち抜く。



通信魔道具でリラから連絡。

「王子様、左方向から潜水艦が来ます」

エンリは焦り声で「奴らの母船は?」

アーサーの切羽詰まった声が「探すどころじゃ無いです」と訴える。

「仕方ない。撤退するぞ」

そう号令するエンリに、アーサーが「どうやって?」


エンリは言った。

「とりあえず潜水艦が来る反対側へ逃げろ。追って来る所へ魔法カードで渦巻だ。俺は空中の奴を風の魔剣で足止めする。アーサーとタマは巻き込まれないよう防御魔法」


エンリは風の魔剣を大気と一体化させる呪句を唱え、巨大なつむじ風を起こす。

四基の飛行機械はこれに巻き込まれて悪戦苦闘。

潜水艦は、逃げながら後ろに投げた魔法カードで起こした渦巻に巻き込まれる。

その隙にタルタ号は戦場を離脱した。

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