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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第02話 お魚と二本足

ポルタという小国の王子エンリに恋をした人魚の少女リラは、魔女から人間の下半身を貰って、王子に仕えて人魚姫と呼ばれた。

だが、二本の足と引き換えに声を失ったリラ。

彼女は城の魔導士アーサーに相談し、エンリ王子への想いを伝えるため、王子に恋文を書いた。


エンリ王子はリラを自分の部屋に呼んで、言った。

「君は私のことが好きなのかい?」

頷くリラ。

「そうか。君は素敵な人だ。君から感じる海の匂いは好きだ。けれども隣国との政略結婚は、王家に生まれた者の義務として応じなくてはいけない」

「王子様・・・」とリラは筆談の紙に・・・。



そんなリラの、自分を見つめる目を見て、エンリの心は動いた。

そしてエンリは言った。

「私と一緒に逃げてくれるかい?」


リラは歓喜して「私でいいんですか?」と筆談の紙に・・・。

「君が居れば寂しくない」とエンリ。

「どこまでもお供します。それで、どこに行くんですか?」とリラは筆談の紙に・・・。

「理想の女性を探しに行く」とエンリ王子。


人魚姫リラ、唖然。

「はぁ?」と彼女は筆談の紙に・・・。

そして筆談の紙に「私じゃ駄目ですか?」


エンリは辛そうな表情を見せて、言った。

「君は人間の女性としては最高だ。けれども私の性癖はどうやら人とは違うらしい。お魚フェチと言うんだそうだ。魚の、あのヌメヌメした鱗に覆われた体でないと、欲情しないんだ。どこかに上半身が人間で下半身が魚・・・って女性が居たらなぁ。居る訳無いよね。おとぎ話じゃあるまいし」

「そ・・・そうですよね。おとぎ話じゃあるまいし。あは、あははははは」と、リラは涙目で筆談の紙に書いた。



エンリ王子の性癖を知った人魚姫リラは海岸で膝を抱えていた。

(人魚の体に戻りたいなぁ)と心の中で呟くリラ。

その時、海から人魚の女性が現れた。それは人魚姫の姉だった。


「リラ、何やってるのよ、あんたは」と人魚姫の姉。

リラは驚いて「レラ姉さま、どうしてここに」

姉人魚レラは言った。

「あんたが持ってるそれ、念話の魔道具よね? 伝えたい相手に意識を集中しないと、言ってる事も考えてる事も、魔力持ってる人や魔物にダダ洩れよ。ここらへんの魔物にみんな聞かれてるわよ」

「えぇーーーーーっ?!」と人魚姫リラ。


そして、赤面しながら姉に意識を集中して経緯を話す。

「あんな変態王子を好きになるあんたの気が知れないけど、可愛い妹のためだもの。私が魔女と話をつけるわ」と姉人魚。



姉人魚は洞窟に居る魔女を訪ね、経緯を話して、妹が元の体に戻れるように頼んだ。


魔女は小さな瓶を出して言った。

「この小瓶を使うといいよ。王子の胸を短剣で刺して、その血を小瓶に入れるのさ、それを使えば人魚に戻れる」

「それじゃ王子が死ぬでしょーが」と姉は口を尖らせた。すると魔女は言った。

「本当はもっといいものを使うんだけど、若い女の子に、とてもそんな事はさせられないからね」

「それって精液ですよね?」と姉人魚レラ。



姉は海岸に戻ると、リラにその小瓶を見せて、言った。

「私が王子を誘惑して、精液でこの小瓶を満たせば、あなたは人魚に戻れるわ」

「姉さまにそんな事をさせられません」と人魚姫リラ。

「可愛いあなたのためだもの」と姉人魚レラ。

リラは「王子様は私だけのものです」


レラはあきれ顔で「あんたねぇ、少しは自分の姉の心配もしなさいよ」



リラはエンリ王子を口説き落とそうとする。だが、王子は反応しない。


彼女は魔導士に相談した。

「男性をその気にさせるには、どうしたらいいでしょうか」とリラ。

「裸で迫るというのは無理だよね?」とアーサー。

「さすがにそれは」とリラ。


アーサーは言った。

「裸エプロンというのがあるんだが、それより王子は海が好きで、海と言えば水着だ。水着エプロンというのはどうだろう」

「やってみます」とリラ。


ビキニの上にエプロンを着てエンリに御奉仕するリラに、反応しないエンリ。

マイクロビキニの上にエプロンを着てエンリに御奉仕するリラに、反応しないエンリ。


「アーサーさん。駄目でした」とリラは彼に相談する。

アーサーは「露出度を高めるより、むしろ逆の方が萌えるという人も居るが」

「やってみます」とリラ。


スクール水着の上にエプロンを着てエンリに御奉仕するリラに、反応しないエンリ。


「アーサーさん。駄目でした」とリラは彼に相談する。

「だったらハイレグってのはどうだろう」とアーサー。

「ブラジル水着というものがあると聞きましたが」とレラ。



その時、「アーサーさん、何をやっているのですか」

二人の居る小間使いの控室の入り口で怖い顔で立っている上役女官の声だ。

そして上役女官は言った。

「宮廷魔導士が新人の宮廷小間使いを着せ替え人形にして遊んでいるって、女官たちの間でもっぱらの噂ですよ。大概にしないとセクハラで訴えられますからね」



リラは最後の手段に出た。王子のベットを整え、王子がベットに入ると、服を脱いで全裸となって、言った。

「実は私、裸でないと眠れないのですが、最近、私のベットが冷たくて。王子様に温めて頂く訳にはいきませんか」と筆談の紙を示すリラ。

「いいよ。入りなさい」とエンリ王子。


思いがけず受け入れてもらえたと、喜ぶ人魚姫のリラ。そっと寄り添い、触れる王子の感触。高鳴る鼓動。

(王子様・・・)と脳内で呟く。

リラがそっと王子の股間に手を伸ばした時、エンリ王子は・・・・・寝落ちしていた。


がっかりしたリラは思った。

(やっぱり私じゃ駄目なんだ。仕方ない。姉さんに頼もう)



翌朝、リラは王子に筆談の紙を示した。

「王子様、紹介したい人が居るんです」

「誰だい?」とエンリ王子。

「私の姉です」とリラ。

彼女は姉に魔道具で呼びかけ、王子を姉の元に案内した。



エンリ王子は人魚の姉を見て大喜び。そして姉人魚に言った。

「本当に人魚が居たなんて。なんて美しいんだ。君、私の妃にならないか?」

「あの・・・」と戸惑う人魚の姉。


「政略結婚が何だ。恋愛は自由だ。結婚は両性の合意によってのみ成立するんだ。しかも私は次期国王だぞ」とテンションMAXなエンリ。

(あの・・・)と戸惑う人魚姫リラ。

エンリは「親父の命令なんぞ糞くらえだ。息子の恋を邪魔する親なんか親じゃない。クーデターでも起こして追放してやる」


「あの・・・やっぱり嫌です。王子様を他の人になんて」とリラは筆談の紙に・・・。

姉人魚のレラも「私だって嫌よ。こんな変態」

「あの・・・」と、姉人魚の本音に戸惑うエンリ王子。



人魚姫リラは筆談の紙に書いた。

「王子様、実は私も人魚なんです。海岸で王子様を見かけて、好きになって、一緒に居たくて、魔女に魔法をかけてもらって人間の姿になりました。けど王子様が人魚の方がいいなら。私、王子様が愛してくれたら、また魔法をかけて貰って人魚に戻れるんです。王子様、私を抱いて下さい」

そんなリラを見てエンリ王子は言った。

「そうだったのか。解った。一度だけ人間の君に身を任せよう」

「王子様」と人魚姫リラは筆談の紙に・・・。


姉人魚のレラはあきれ顔で言った。

「あのさ、リラ。最初からこんなふうに、全部話せば簡単だったんじゃないの?」



彼女と一夜を過ごしたエンリ王子は、すっきりした表情で言った。

「やってみると人間の体も悪くない。これなら君を毎晩でも愛してあげられそうだ」

喜ぶリラは思った。

(これなら人間のままでもいいかな?)


そしてエンリ王子は言った。

「それじゃ、これから父上の所に行って来る」

「お願い事ですか?」と筆談の紙に・・・。

「政略結婚の話を進めて貰うのさ」とエンリ。

「はぁ?」とリラ、唖然。


エンリは言った。

「やはり国家の安寧のために隣国と姻戚関係を結ぶのは、王族たる者の義務だ。父上、私はこの国のために自らを捧げます。イザベラ姫ってどんな人なんだろーなぁ。絶世の美女かぁ」

リラ、絶句。そして思った。

(やっぱり人魚の方がいい)



ジョアン王の謁見室で父と息子の会話が盛り上がる。

「やっと覚悟を決めてくれたか、王子よ。実は先方から矢の催促でな。あやうく外交問題になる所だった。あの軍事大国と戦争にでもなったらこの国は終わりだ」とジョアン王。

「王太子として当然の務めです」とエンリ王子。


そんな声が謁見室の外にも聞こえる。謁見室の外でリラとアーサーがあきれ顔。

「スパニアの皇帝って、そんなに切羽詰まってるんですか?」とリラ。

「側室が三十三人も居て、皇子も皇女も掃いて捨てるほど居るからね。しかもドイツ皇帝の縁戚で有数の格式と来てる。釣り合う結婚相手見つけるのに一苦労なのさ」とアーサーが説明。

「大変なんですね」とリラは溜息をついた。


そんな中で、魔導士アーサーはリラが持つ小瓶を見て言った。

「それ、人化の魔道具ですね?」

「人化ですか」とリラ。

「それで人魚に戻るんですよね?」とアーサー。

「そうですけど」とリラ。


アーサーは言った。

「あなたが魔女から受けた魔法は魔物を人の姿に変えたらそれっきりですが、その小瓶を使って魔法をかければ、自由に人になったり魔物に戻ったり出来るんです。その儀式なら、私にも出来ますよ」

「お願いします」と人魚姫リラはその話に飛びついた。

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