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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第188話 雪上の戦士たち

迫るロシアとの戦争に備えるため、エンリ王子たちはポーランドを味方につけようとしたが、国論が割れて内乱状態となるポーランド。

そうした敵方の外交での失敗を見て、冬の到来とともに、ピュートル帝はノルマンに宣戦布告した。

同時にノルマン海に面して建設中の港町への遷都を宣言。新都ペテルブルグの誕生である。



側近たちがピュートル帝の元で気勢を上げる。

「ついに始まりましたね」と側近の一人が・・・。

「いよいよ我がロシア帝国が大海に覇を唱える第一歩だ」とピュートル帝。

別の側近が「奴らがポーランドを味方につける工作に失敗した隙に・・・」

「そんな事はいい。今は冬で、西側の奴らより我々は遥かに寒さに強い」とピュートル帝。

「ノルマンの奴らも寒さに強いですけどね」と、更に別の側近。


ピュートルは地図を広げ、指揮棒であちこち示して、言う。

「先ず戦場になるノルマン半島の根本はフィンランド。あそこは湖沼が多い。それが凍った冬なら、その上を歩いて通れる」


すると部下が報告に来る。

「陛下、イワン将軍が見えています。作戦についてご相談したいと」

ピュートルは「あんな役立たずな旧体制の化石なんぞ要らん。親衛猟兵隊だけで十分だ」

「あれでも正規軍ですよ。それとドイツ皇帝軍の将軍も」とピュートルの部下。

「もっと役立たずじゃないか」と、ピュートルは溜息をつく。



イワン将軍以下、ロシア軍の幹部とドイツ皇帝軍の将軍が参加し、ピュートル帝の元で作戦会議。


広げた地図の前でイワン将軍が言った。

「我々ロシア軍はノルマン半島正面へ。南岸のバルト方面はロシア軍の一部とドイツ軍で」

するとピュートルは「いや、主戦場はバルト方面になる。ノルマン半島へは一部でいい」

イワンは「ですが北方には主敵のノルマンの首都が・・・」


ピュートル帝は言った。

「これは海洋の覇権を得る戦いで、本当の敵は英仏だ。そして奴ら外国兵はノルマンの寒さの中では十分に戦えない。北方での敵はノルマン軍だけだ。しかもカール王太子はポーランド王に頼られて本国に戻れない」



連合軍側の作戦会議ではヘンリー王、ルイ王、フリードリヒ王、カール王子とエンリ王子、そして各国の将軍。

広げた地図の前でカール王子は言った。

「バルト側ではイギリス・フランス・スパニア・プロイセン・ノルマンの連合軍で、どうでしょうか」


「ノルマン半島は本当に大丈夫なの?」と不安顔のルイ王。

「フィンランドのマンネルハイム公爵は無敵ですよ」とカールは胸を張る。

「けど公爵の手勢だけって・・・」とエンリが心配そうに言う。

ヘンリー王が「既に雪が降ってます。我々では満足に動けない」

「それはフィンランド公も同じなのでは?」とエンリ王子。


「心配なら、エンリ王子に行って頂けたら・・・」とフリードリヒ王。

エンリは「ポルタ人はもっと寒さに弱いですよ」

するとカール王子が「けど、奥の手をいろいろ持ってますよね? それで、いざという時は公爵を助けて欲しい」



フィンランド軍と合流するエンリ王子のタルタ海賊団。


「あなたがマンネルハイム公爵ですね?」

そう言ってエンリが差し出した握手の手を握り、公爵は言った。

「よく来てくれた、エンリ王子。あなたが居れば千人力だ」

「敵は万単位居ますけどね」とエンリ王子。

マンネルハイム公爵は「戦争は兵力だけでは決まりませんよ」

「ご尤も」

「それに、少数で大軍を破れば気持ちいいじゃないですか」とマンネルハイム公爵。

エンリは困り顔で「そういうゲーム感覚は要らないから」

残念な空気が漂う。


「それで、どう戦いますか?」

そうエンリに問われた公爵は「敵は凍結した湖沼を渡って北上して来ます」

「それを迎え撃つのですね?」とエンリ。

「敵は都市を占領するでしょう」と公爵。

「市街戦になりますね?」とエンリ。

「いえ、都市は放棄します」と公爵。

「はぁ?」


マンネルハイム公爵は言った。

「ロシア軍は市街戦では無敵と聞きます」

「それはピュートルの親衛隊で、彼はバルト側に居るようですけど」とエンリ。

公爵は「都市の向うの山に立て籠もります、奴らはあの都市からこの山岳地を通って北上する。それを阻止するのです」



雪山を登るフィンランド兵たちとエンリの仲間たち。

足が雪に潜るのを防ぐため、靴に四角い板状のものを取り付ける。

夜は雪洞を掘って野営する。


四人一組で雪洞に入る。

「やたら寒いんだが」とタルタが不平を言う

「毛皮の防寒具を着てるだろ」とエンリ。

「中で火とか焚くと雪が解けて水浸しになりますよね」とリラ。



翌日、ロシア兵が雪の中を進軍して来た。

フィンランド兵たちは先端の反った細長い板を両足に装着。

「あれは?」

そうエンリが訊ねると、公爵は「スキーですよ。雪の上を素早く移動できます」

左手に先端の咎った杖を持ち、右手に銃。


フィンランド兵は斜面を高速で滑降し、敵部隊に近接して射撃を繰り返す。

敵は慌てて反撃しようと銃を構えるが、既にフィンランド兵は去っている。

そして別方向から次のフィンランド兵の襲撃。


上から戦闘の様子を見て驚嘆するエンリ王子たち。

ジロキチが「戦闘というより一方的な狩りだな」

カルロが「すげー」

「それで、降りた後はどうするんですか?」

エンリにそう問われて、マンネルハイム公爵は「また登って攻撃再開です」

するとファフが「ねえねえ主様、ドラゴンで運び上げたらどうかな?」

「それは助かります」と公爵。


ファフのドラゴンが空を飛んでロープを引く。

スキーを履いたフィンランド兵がそれに掴って雪の斜面を登る。

そして襲撃再開。

ロシア軍は完全に逼塞。

一日の戦闘が終わる。

「俺たち、殆ど出番、無かったね」とカルロが言った。


そんな時、通話の魔道具で連絡。

「至急、タルタ海賊団の応援を」と、バルト側の戦場に居たカール王子の声。

「何があった?」とエンリが問うと、カールは言った。

「ファイヤードラゴンが現れました」



エンリたちがフィンランドで戦っていた間、バルト側では、先ず、エストニア公領に侵入したロシア軍を連合軍が迎え撃った。


当初優勢と思われていた連合軍だったが、いくつもの国から来た寄せ集めである。

ピュートル皇帝の巧みな用兵とドイツ魔導士隊の魔獣たち、そして何よりフランス軍やスパニア軍の寒さに弱いという欠点を突かれ、タリンの街に撤退した。

これをロシア軍が外から攻めると同時に、潜伏していたロシア工作隊の手引きでピュートル直属の近衛猟兵が侵入。

市街の至る所で襲撃戦が展開された。

二階・三階に潜んで窓から狙撃して移動するロシア猟兵たちの伏兵戦と外からの攻撃の挟み撃ちに遭い、連合軍は大きな被害を受けて街から撤退。


まもなく連合軍は体勢を立て直して街を包囲した。

撤退時に住民とともに市内の食料を全て搬出していたのが功を奏し、プロイセンの囚人騎兵がロシア軍の補給線を襲撃して補給路を断った。

食料不足に苦しむロシア軍が消耗するのを見計らって盛大な攻城戦を仕掛ける連合軍。

長引くのが不利と見たピュートルは緒戦でファイヤードラゴンを投入したのだ。



「あれに対抗できるのはエンリ王子のドラゴンしか居ない。という訳で・・・」

話を聞いたエンリ王子、仲間たちとあれこれ・・・。

エンリが「あんなのと下手に格闘したら火傷するぞ」

するとリラが「私がウォータードラゴンで相手をします。炎には水です」

マンネルハイム公爵は言った。

「行って下さい。ここは大丈夫です」



イギリス海軍の船でフィンランド湾を横断するエンリ王子たち。

タリンの街の戦場でエンリが見たものは、巨大な炎の龍を取り囲む何匹ものウォータードラゴン。

その水の龍はファイヤードラゴンの炎を浴びて次々に蒸発する。

エンリ王子唖然。

「ウォータードラゴン、駄目じゃん」

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