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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
185/540

第185話 仮面の皇子

フェリペ皇子の5歳の誕生日の式典のため、エンリ王子が仲間とともにスパニア王宮に来て、2日目。


エンリ夫妻は来客の対応で大忙し。

フェリペ皇子はフランスのルイ王子と一緒に、カブ公子に連れられて城下の街で悪戯しまくり。

それを箒に乗ったサリー姫が空から追い回し、三人はフェリペの皇妃の座を夢見る幼い貴族令嬢に匿われる。



3日目

フェリペ皇子の五歳の誕生日の式典の当日。

馬車に乗ってイザベラ女帝夫妻と五歳の皇子が街でパレード。


パレードを見物する市民たちが、馬車の上で手を振るフェリペ皇子を見て、口々に言う。

「なんて可愛らしい」

「賢そうな皇子ですこと」

「これでスパニアも安泰だ」


先導する従者マゼランと側近たち。

その後ろ、馬車の前には騎馬のタルタ海賊団。その先頭に女性用の鎧を纏ったリラと、ファフを後ろに乗せたアーサー。

彼等を見て、あれこれ噂話に花を咲かせる市民たち。

「あの姫騎士は?」

「エンリ様の側室で凄腕の魔導戦士だそうだ」

「全体攻撃で何度も敵軍を壊滅させたというぞ」

「かっこいいなぁ」

「何でも人化のクィーンマーメードらしいよ。人魚姫って呼ばれてるそうだ」

「あの女の子は人化ドラゴンだってさ」

「つまりモンスター娘軍団か」

「じゃ、他の奴らも全員男装の姫騎士か?」

「それにしちゃ美形に見えんが」



騎馬で行進する彼等も、行進しながら仲間とあれこれ言う。

リラが「何だかすごく見られてる気がするんですけど」

「そりゃ見られるためのパレードだもんな」とタルタ。

「変な噂とかされてるかも」とアーサー。

ニケが「やたら話盛られた流言が飛び交って、そうとう斜め上な盛られ方してそう」

タルタが「気のせいだろ」


通りに面した建物の最上階から撒かれた花びらが舞い散るのを見て、ニケが言った。

「どうせなら金貨でも撒いたらどうなのよ」

そう、アーサーの後ろを進むニケが言う。

「それ却下ね」とアーサー。

ニケは「コストがかかるって言うんでしょ? けど、こういうのはコストをかけてこそ、この国の経済力を見せつけて民心を掴むものよ」

「じゃなくて、金貨なんて撒いたら、ニケさん馬から飛び降りて、地べた這い蹲って金貨拾いまくるだろ」とアーサー。

「私を何だと思ってるのよ」と言って口を尖らすニケ。


リラの後ろを進むタルタが「あ、金貨が降ってきた」

「え、どこどこ?」

テンションMAXで馬から飛び降りようとするニケを、タルタが慌てて止めた。

タルタの頭の上で猫の姿のタマが欠伸をしながら言った。

「ほんっと、恥ずかしい女ね。これだから人間は」

アーサーが「こういうのを人間の基準にしちゃ駄目だろ」

「こういうのって何よ」と言って口を尖らすニケ。


タマは「猫は人間と違って見かけを飾って見世物になったりしないわ」

「猫たちも見に来てるけど」とタルタ。

「いいのよ、あんな奴等」とタマ。

ニケが「あれ、ペロ子爵じゃないの?」

「え、どこどこ?」とタマは慌てて周囲を見回す。

「嘘よ」

そう言って舌を出すニケに、タマは「あんたねぇ」

するとアーサーが「けど、来てると思うよ。カラバ侯爵も招かれているからね」


見物する女性たちにカルロは左手を振り、右手で投げキッスを連打。

黄色い歓声を上げる女性たち。

ジロキチは後ろの馬車に居るエンリに、横に居るカルロを指して言った。

「こいつ、殴っていいか?」

エンリは困り顔で「公衆の面前で暴力騒ぎは止めてくれ」

ジロキチの後ろに若狭とムラマサ。

エンリ夫妻とフェリペ皇子の乗る馬車の後ろには、スパニア国軍の騎士団。そしてボエモン率いるスパニア国教会聖騎士団。



聖堂に入り、マルコ総大主教による祝福の儀礼。

そして宮殿正門上の櫓の上。正門前広場に集まった国民の前でイザベラが演説する。

歓呼の声を上げる国民達。



夜となり、宮殿の大広間で夜会が始る。

貴族たちと外国からの賓客が集う中で、主役である皇子とその父母が登場。

式典運営の労をねぎらう女帝の御言葉の後、歓談となる。


ご馳走を貪るタルタとファフ。

ファフが「貴族飯、美味しいの」

タルタが「やっぱりご馳走なら肉だよな」

「野菜も食べないと大きくならないよ」とファフ。

「お前が言うかよ」とタルタ。

ファフは「ドラゴンに戻れば大きいもん」


貴族たちに怪しげな儲け話を売り歩くニケ。

武官たちを相手に自慢話を語るジロキチ。

話盛りまくりのジロキチの自慢話を脇で聞いて、困り顔の若狭とムラマサ。



フェリペ皇子の元に殺到する幼い貴族令嬢たちが、争ってダンスの相手をねだる。


フェリペが対応に辟易した頃、ブラド伯一家が彼に話しかける。

「師匠、それとサリー姫」

はしゃぐフェリペにサリー姫は「今日は一段と可愛らしいですわ」

「姫もお美しくて、さすが大人の女性です」とフェリペはお世辞で返す。

するとカブは「15才は未成年だけどね」

「この時代設定では結婚だって出来るんですから、十分に大人よ」とサリー姫。

カブは「胸はそうは言ってないみたいだけどね」

サリー姫、カブに拳骨。


そしてサリー姫はフェリペに「一曲踊って頂けるかしら」

「喜んで」


15才の女の子を小さな体でリードする幼いフェリペ皇子のダンスを見て、令嬢たちは忌々しげに言う。

「何よ、あの女」

「ブラド伯の姫ですってよ」

「私、侯爵令嬢なんですけど」

「私のお父様は公爵よ」

「それにブラド伯ってバンパイアですわよね」

「まぁ怖い」

後ろでマゼランが咳払い。しゅんとなっていそいそと退散する幼い令嬢たち。


そんな彼等を見て、エンリは笑って言った。

「あいつ、モテモテだな」

「次期皇帝ですからね」とイザベラ。

エンリは不満顔で「俺だって時期国王なんだが、あんなじゃ無かったぞ」

リラが「王子様には私が居ます」

「いや、別にいいけどね」とエンリ。

「それに、寄って来るのは子供ばかりじゃ無いですか。あと15年は必要なガキンチョですよ」

そう言うカルロに、エンリは「お前は何を張り合ってるんだ?」


ダンスが終わり、若い御婦人たちがフェリペ皇子の周りに集まって、あれこれ言う。

「フェリペ様、なんて可愛らしい」

「母性本能が破裂しそう」

「可愛いは正義ですわよね」

そんな様子を見て、カルロは「王子、親ガチャって残酷ですよね」

「だからお前は何を張り合ってるんだよ」と、あきれ顔のエンリ。



そんな時間が過ぎた頃、マゼランがフェリペにそっと耳打ち。

「皇子、宴もたけなわですし、そろそろ・・・」

フェリペは「やるか、アレを」

「では司会に話をつけて来ます」とマゼランは言って、司会の方へ。



そして司会が人々に呼び掛け、注目を促す。

「では皆様、フェリペ皇子より、お言葉を給われるとの事で」

来客たちはみんなの前に立つフェリペを見て、口々に言った。

「この歳で何と立派な」

「さすがはイザベラ様の御子息」


そしてフェリペは語り始める。

「皆さん。僕のために集まって貰えた事を感謝します。僕はスパニア女帝を母として生まれ、この国と民の明日を生涯をかけて守る覚悟を感じています。けど、何より誇らしく思うのは我が父、ポルタ王国王太子エンリの子として生まれた事です。父は王太子でありながら自ら海に乗り出し、タルタ海賊団を率いて世界中でいろんな難問を解決して来ました。世界の海を支配する"ひとつながりの大秘宝"を発見し、ボルタ王太子として、海賊王として活躍しています。けど父はその裏で世界一かっこいい第三の顔を秘めている事を、記憶の魔道具の映像で僕は知りました」


とてつも無く嫌な予感に、エンリは「ちょっと待て」と・・・。

だが、彼が止める間も無く、フェリペ皇子は叫んだ。

「最高にかっこいい父の姿。それは闇のヒーローロキ仮面」



フェリペはマントを羽織り、イタリアの偽聖遺物職人に作らせた鉄製の仮面を被る。

それはあのロキの仮面の精巧な模造品。

かつてエンリがノルマンの戦場で見せたものとそっくりな、微妙な変身ポーズをとってフェリペ皇子は叫んだ。


「闇が呼ぶ。影が呼ぶ。神を倒せと魔王が叫ぶ。我は世界の裏に封じられし邪神の転生、闇のヒーロー、ロキ仮面。世界の終末を告げる魔笛の響きとともに、ここに見参!」


大はしゃぎでヒーローごっこに興じる五歳の幼児に、夜会参加者唖然。貴族令嬢たち唖然。

お祝い気分が一転した、とてつもなく残念な空気が充満する中、エンリは頭を抱えた。

「誰だよ、俺の息子にあの映像見せた奴は」

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