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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第174話 屈従の島

エンリ王子たちが訪れた西方大陸北辺のビンランド村。

こことサーモンの人工増殖で協定を結んだフランス人ケベック植民地をドレイク海賊団から守るため、エンリ王子たちは、ビンランド村に住む少年トルフィンの故郷だったアイスランドのヘルダ村を訪れ、ここを占拠していたガイル海賊団の留守役たちを拘束した。



その夜、海賊団の本隊から連絡が来た。

「ケベックの船を襲うための補給に立ち寄る。水と食料を用意しておけ」

「了解です」と、海賊の声色を真似てカルロが答える。

「お前、声が変だぞ」

そう問う疑問声にカルロは「風邪ぎみなもので。ここは寒いですから。ゴホ、ゴホゴホ」



カルロが通信魔道具を切る。

「奴らを誘い込むぞ」とエンリ王子。

「それで一網打尽だよな。俺にも・・・」

そう言いかけたトルフィンに、エンリは「いや、子供はおとなしくしてろ」

「俺は大人だ」とトルフィンは反発顔で・・・。


するとニケはトルフィンの隣に座り、太腿をちらり。

赤くなるトルフィン。

「やっぱり子供ね・・・ってか、何よ?あんた達その顔!」

ニケは仲間たちの残念そうな視線に気付き、そう言って口を尖らす。

タルタが「似合わねー」


「悪かったわね」

ニケはそう言うと、酒瓶を開けてグラスに注いだ。

そしてトルフィンの前にグラスを出して「お酒を飲めたら大人と認めてあげるわ」


トルフィンはグラスの酒を一気に飲み干し、あっけなく眠った。

「ニケさん、眠り薬を混ぜたでしょ?」とアーサー。

そして・・・・・・・・・・・・・・



ガイル海賊団は首尾よくフランス人の海産物輸送船を襲い、積荷をごっそり奪ってやったと、海上で気勢を上げていた。

部下の一人が「今回もチョロかったですね」

「俺たちは天下のガイル海賊団だ」とガイル団長。

「ドレイク提督配下の兵隊ですけどね」と、もう一人の部下。

ガイルは「そのうちデカくなって提督の代わりにイギリス海賊を率いてやるさ」



ガイルの船は、足がつかないようアムステルダムのドイツ人商人の商館へ。


「干しタラにニシンにホタテ貝に蟹、そしてサーモンのイクラ。これだけあって、このお値段。とっても良心的でしょ?」

ガイル団長のトレードマークの船長帽と海賊服を纏い、部下の海賊一人を連れた彼は、マルク商会の商館長と、運び込んだ品物を前に商談会。

「何せ元手がゼロの・・・」

そう言う商館長に「それは言わない約束かと」

商館長は「いやご尤も。騙す奪うは手っ取り早く稼ぐ最高の早道。これも世界最強のドレイク海賊団の後ろ盾あっての・・・」

「マルク商会の、そちも悪よのう」

「ガイル様ほどではありませんよ」


「これで今日もガッポガッポ。ほーっほっはっほ」

そう高笑いする海賊帽を見て、ふと商館長は思った。

(何でオバサン笑い? まあいいや)



品物の樽が引き渡され、代金を受け取った海賊団が港を去る。


商館長は「それじゃ、今回のサーモンのオクラの出来はどんなかなぁ?」

「早速味見ですか?」

そうあきれ顔で言う部下に、商館長は「品質管理は流通業の基本だ。俺の好物なんだよね」


樽の一つを開けると、中にはオクラならぬ羊の糞。

「何じゃこりゃー!」



海賊船が港を離れる。

甲板では船長帽と海賊服の上着を脱ぐニケが居た。

部下の海賊に変装して幻覚魔法でニケをサポートしていたアーサーも普段の服装に戻る。


そしてエンリから通信魔道具で連絡。

「どうだった?」

「うまくいったわよ。代金もバッチリ」と、笑いが止まらないといった体のニケ。

「そろそろ幻覚魔法の効き目が切れる頃だろ」と魔道具からエンリの声。

船の中には眠らされて手足を縛られた海賊たち。


アーサーは「それで、こいつらどうしますか?」

エンリは「生かしておいてもいい事無いし、処置は任せる」



ロンドンに居るドレイク提督に、マルク商会から通信魔道具で連絡。

「ドレイクさん、海産物と称する荷物は受け取りましたけどね」

そんなマルク商会当主の言葉に、ドレイクは「そりゃどうも」


商会当主の憤懣声が炸裂する。

「どうもじゃないです。家畜の糞とか売りつけて、どうしろって言うんですか? そもそもあれ、食品どころか海で獲れたものでも無いですよね?!」

「何を言ってる?」と困惑するドレイク。

「あなたの所との取引は今回限りにさせて頂きます」と言ってマルク商会当主は通話を切った。

「ちよっと・・・」


ドレイクは部下に「どうなってる? ガイルの奴を呼び出せ」

「それが、アムステルダムを出てから消息不明でして」と、部下も困惑顔。



ヘルダ村には、膨れっ面のトルフィンが居た。

「俺を眠らせて自分達で勝手に海賊退治かよ。奴らは親父の仇だ。この手で殺す筈だったんだ」

「退治にも段取りってもんがあるんだよ」とエンリ王子。

トルフィンは「留守番してた奴等は当然殺すんだよな?」

「殺された村人たちの報復か?」


そう問うエンリにトルフィンは言った。

「俺の家族はみんな殺された。俺は記憶は曖昧だけど、親父はあんな奴等に負けないくらい強かったのは憶えてる。それが、俺や村の仲間を人質にとられて・・・」

エンリは言う。

「報復は何も生まない。処刑するにしても、きちんとした裁判が必要だ」



エンリは留守役の海賊たちをアルシング議会に突き出し、裁きを求めた。


対応した議会の議長はエンリに言った。

「彼等はドレイク海賊団の部下なのですよね?」

エンリは「まさか報復を恐れて生かして返すと?」

「報復に来ないと思いますか?」と議長。

「来るだろうね。けど俺たちが撃退しますよ」とエンリ。


議長は言った。

「ポルタの王太子であるあなたが、ここに常駐して、ずっと守ってくれるとでも? 彼等があの村に非道を働いた事は知っていました。周囲の村から人質をとって、あの地区の議席を要求し、我々は後難を恐れて黙認した。それ以前からノルウェー公の介入に甘んじ、唯一神の信者としての立場も強制され、ノルマンの信仰は影で黙認されてきたに過ぎない。あの槍だって、そうやって細々と伝えられて来たんです。とにかく、ヘルダ村を救って頂いた事は感謝します。温泉にでも浸かって、ゆっくりして行って下さい」

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