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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第161話 魅惑の呪文

ポルタ大学魔法学部。ここでリラは魔法を学んでいる。

その日、講義が終わると、一人の女子学生が彼女に話しかけた。

「ご機嫌よう、リラさん」

「へ?・・・」


リラが呆気にとられていると、隣に居る男子学生が小声で解説。

「今のは挨拶の台詞だから。百合日常系でお嬢様キャラが使ってる特殊なやつの・・・」

リラは慌てて女子学生に「そ、そうなのね。ご機嫌よう、リリスさん」


ようやく会話が成立すると、そのリリスという女子学生は言った。

「リラさんって、エンリ殿下と親しいのよね。紹介して欲しい・・・」



一瞬でリラ、警戒モードに入る。そしてリリスの言葉を遮って「ごめんなさい、そういうのは受け付けない事になってるの」

周囲の女子学生が一斉に囃し立てる。

「エンリ殿下を取り合ってリラさんとリリスさんが修羅場ですってよ」

「側室の座を巡るさや当て」


リリスは慌てて「違うわよ。紹介して欲しいのは殿下じゃなくて・・・」

「違うの?」とリラ。


すると周囲の女子学生、がっかり顔であれこれ言い出す。

「そうよね。王子様って言っても、性癖があれじゃ・・・」

「正妻も居るし・・・」

「フツメンだし・・・」

男子学生たちも「王子、形無しだな(笑)」



そしてリラはリリスに「それで、紹介して欲しい人って・・・」

「アーサーさん。魔導士なのよね?」とリリス。

リラは「けど、あの人って女性不信だよ。恋愛対象としては・・・」


斜め上な方向に向かいっ放しの会話に次第にストレスを感じながら、リリスは言った。

「そうじゃなくて、魔法を教わりたいの。彼って創作魔法が出来るのよね?」

「つまり、教えて貰うって口実で、将来性のある男をゲットって訳だ」と周囲の男子。

「リリスって恋愛脳だもんなぁ」と周囲の女子。

リリスはイライラ声で「違うから。私を何だと思ってるのよ」



結局リラは、このリリスという女子学生をアーサーに引き合わせる事になった。

ポルタ城のアーサーの研究室に連れて行く。

研究室では、タルタやジロキチ、エンリたちが集まってわいわいやっていた。


リラはリリスをアーサーに紹介して、目的を話すと、アーサーはリリスに言った。

「君は魔法創作はやった事があるの?」

リリスは「ハローワールドなら」

それを聞いてジロキチが「つまり、一つの世界を創造するって・・・」

タルタが「スゲー。自分が無双するための自分用の異世界を作って、そこに異世界転移して、やりたい放題かよ」


するとアーサーが「いや、光魔法で空中に"ハローワールド"って文字を書く魔法だよ」

がっかり声で「意味あるのかよ」と口を揃える仲間たち。

アーサーは解説した。

「時計塔魔法学校の術式科のビルゲーツ教授が創作術式の初歩だと言って教えてる代物なんだが・・・」



そしてリリスは「あと、ダイエットの魔法というのを・・・」

するとニケがテンションMAXで身を乗り出した。

「凄いじゃない。是非、教えてくれないかしら」

エンリの仲間たちは唖然顔で「ニケさんがダイエット? 恋愛よりお金のニケさんが?」


「失礼ね。私だって女の子ですからね」と口を尖らすニケ。

「二十歳過ぎると女の子とは呼ばないよ」

そう言ったタルタの後頭部を、ニケはハリセンで思い切り叩いた。


「じゃなくて、金持ちの男を捕まえようって訳だろ?」

そう言ったジロキチの後頭部を、ニケはハリセンで思い切り叩いた。

そして「私を何だと思ってるのよ!」


ニケはリリスの手を執って、うっとりとした眼差しで言った。

「是非、教えてくれないかしら。術式のレシピを売り出せば、凄い利益になるわ。女の子たちに爆売れでお金ガッポガッポ」

「結局それかよ」と、エンリの仲間たちはあきれ顔。



そして、リリスは残念そうに言った。

「それが、魔法で皮下脂肪を燃焼させるのですが、胸の脂肪だけ燃焼しちゃいまして。改良したのですが、暴走して人体発火になり兼ねないと周囲に止められて」

タルタは「だよなぁ。ダイエットってのは、本来は運動とか節食でやるものだ」


「それで自動書記の応用で自動運動の術式を作ったのですが」とリリス。

ジロキチが「面倒くさがり屋の三日坊主なタルタにぴったりだな」

「俺を何だと思ってる・・・ってか俺、ダイエットなんてする気無いし」と言ってタルタは口を尖らす。


そして、リリスは残念そうに言った。

「運動を始めたはいいけど、止める呪文を設定するのを忘れて、筋肉痛になっても止まらず散々な目に」

「そりゃご愁傷様」と、エンリの仲間たち。

そして、リリスは残念そうに「次に、幻覚魔法の応用で満腹感を感じる魔法を作ったのですが、魔力消費が激しくて、エネルギー補給のため余計に食欲が増して激太りに」


「つまり魔法でダイエットしたい訳だよね?」とエンリ王子。

するとリリスは「そういう訳ではないのですが、周囲に需要があったもので」

「人に教える前に自分の身で実験して散々な目に遭った訳だ」とアーサー。

リリスは言った。

「というか、自分で実験する前に友達に教えて実験台にしたら、みんな散々な目に・・・。それで恨みを買って女子会を追放されてしまいました」

残念な空気が漂う。



そんなリリスにアーサーは「で結局、どんな魔法を創りたいの?」

「チャームという魔法があるのですよね?」

そう答えるリリスを見て、エンリは困り顔で「媚薬の魔法版かよ。法律で禁止されているんだが」

するとリリスは「アーサー先生は海賊団に居るんですよね? 略奪が仕事で本来は違法行為なのを、実質指揮官がエンリ王太子で、その権力で超法規的に・・・」


エンリの仲間たち一同、憤懣顔で「俺たちを何だと思ってるんだよ」

「やってるのは、略奪というより宝さがしとトラブル解決なんだが・・・」と困り顔のエンリ。

「権力で違法を黙認して貰えるんじゃないんですか?」と残念そうに言うリリス。

「あのなぁ」とエンリ。



そんなリリスにカルロが「要するにその魔法で、自分をハブった女子会の友達に好かれて仲直りしたいと」

するとリリスは心外そうな声で「私を何だと思ってるんですか? 私、レズじゃありません。百合イチャラブが女の子の幸せだなんて漫画やアニメの中だけです。私、好きな男の子が居るんです。イケメンで成績トップで凄くモテて・・・」

「ハブられた原因ってむしろそっちなんじゃ・・・」と溜息をつくタルタ。


するとエンリが「マーリンなら知ってるんじゃないかな?」

「聞いたんですけど、そんなの知ってたら媚薬なんて使わないって」とリリス。

「それで創作術式でと」

そう言って溜息をつくアーサーに、リリスは「アーサー先生はアンチソルトの呪文を創作したんですよね?」

アーサーは「ってか俺、先生じゃないから」



リリスを帰すと、アーサーは仲間たちに相談した。

「どうしたものですかね?」

エンリが「違法だからなぁ」

タルタが「だよねぇ。もし、マーリンさんみたいな人の手に渡ったら」

「あの人には媚薬があるけどね」とジロキチ。

「あれだって本来違法なんだが」とエンリ王子。


するとニケが目一杯の同情顔で言った。

「何言ってるのよ。女の子の恋は全てに優先するのよ。年頃の女の子が悩んでいるのよ。叶えてあげたいと思わないの?」

眼に涙を滲ませるニケ。


そんな彼女にエンリは「とか何とか云って、術式のレシピ売りさばいて儲ける気だろ」

「私を何だと思ってるのよ」とニケは抗議声で・・・。

「顔に書いてある」

そうエンリに言われで「え、どこに」と慌てるニケに、彼は言った。

「その右手に持ってるの、目薬だよね?」



その時、リラが言った。

「あの、私、王子様に恋をして、すごく辛かったんで、あの子の気持ち、解ります。叶えてあげたいです」

「姫」と愛しそうに彼女の手を執るエンリ。

「王子様」

「姫」

アーサーは困り顔で「そういうのは後にしてくれませんか?」


そしてカルロが言った。

「ってかさ、その目当てのイケメンだって、どーせ皆の誰某君とか言って、誰も手を出さずに学生時代終わっちゃうんじゃないの? こういうのって、誰かが手を出さなきゃ話が進まないよ」



結局、アーサーは術式構築を手伝う事になり、リリスはアーサーの研究室に通い始めた。


わくわく顔のリリスにアーサーは説明する。

「アンチソルトは元になる魔法があったんだよね。チャームも、同じ作り方をすると思うよ」

「元になるって、ファイヤーボールとかウィンドアローとか」とリリス。

アーサーは困り顔で「攻撃してどうする!」

リリスは「恋は闘いだって、マーリンさんが・・・」

「そういうマッチョ恋愛な発想は要らないから」と溜息顔のアーサー。


「けどチャームって、無理やり相手の精神を従わせて支配して、あんな事やこんな事を」とリリス。

「そういう危ない話は止めて。下手すりゃエロ小説みたいになるぞ」とアーサー。

「官能小説と呼ぶのが正しいのでは」とリリス。

アーサーは「呼び方はどうでもいい・・・ってか、どこかで聞いたようなやり取りなんだが」


そしてリリスは言った。

「これ、精神に作用する幻覚魔法の同類ですよね? ドンファンというヤリチンが居たそうですけど、相手の恋人の姿に変身して見せて落とすんだそうです」

「それ、バレたら後で大変だぞ」と言って肩を竦めるアーサー。

するとリリスは「けど、相手の理想のイメージに化ける・・・というより自分に投影させる事が出来れば」


(なるほど・・・)とアーサーは脳内で呟く。

そして「君の理想の男性って?」

「えーっ、アーサー先生、私の事を」

そんな、わざとらしい警戒声のリリスに、アーサーは「じゃなくて!」



汗だくで趣旨を説明するアーサー。

「そうですねぇ。何だろうちょっとよくわっかんなーい」

そんなリリスの台詞に多少ドン引きしつつ、アーサーは「意中の彼が居るんじゃなかったっけ?」と疑問顔で・・・。

リリスは「まあ、イケメンだしハイスペでハイランクでヒエラルキーのトップでみんなの王子様で」

アーサーは溜息をついて言った。

「それってみんなの理想で自分自身のじゃないだろ。それと、王子様ってのは止めて。身近に居る残念なイメージと被るんで」



その時、エンリ王子は盛大にくしゃみをしていた。

隣で寄り添うリラは、心配そうに「王子様、風邪ですか?」

「そうかも。賢い人は風邪をひきやすいと言うからなぁ」とエンリ。

「お薬、ありますよ」とリラは言って、薬の包みを出す。

エンリは「いつもすまないねぇ・・・ってそれ、イザベラが父上に飲ませてた胃の痛くなる奴」

「そうでした」

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