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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
160/550

第160話 飼い猫と飼い主

エンリ王子はカラバ侯爵とともにオーガラットの蜂起の問題を解決し、キホーテは妄想生活と決別して小説家へと転身した。



その頃アラビアでは・・・。


「御主人様、新しい魔法を編み出したでおじゃる」

アラジンのアパートでは、得意顔でアラジンに迫る人化ジンが居た。

「そういうのは要らないから」

そう迷惑そうに言うアラジンに、ジンは「そんな事言わずに・・・」


アラジンは言った。

「今まで、そういうのに騙されて、魔法の失敗とか言って散々酷い目に遭ってきたぞ」

「今度のはマイホームを作るでおじゃる。男の夢でおじゃるよ」とジン。

「いや、俺、家族持ちじゃないし」とアラジン。

ジンは「家付きカー付きババ抜きじゃないと女性にモテないでおじゃる」

「何時の時代だよ」と、あきれ顔のアラジン。



アラジンを無理やり街外れの空地に引っ張っていく人化ジン。


空地に着くと、首に下げたがま口から、小さな立方体のブロックをたくさん出し、積み上げて家の形にする。

そんな玩具のような代物を見て、アラジンは「これがマイホームかよ」

「ここからでおじゃる。アラビンドビンハゲチャビン」

ジンが呪文を唱えると、ブロックの家は巨大化して宮殿のような建物になった。


さすがのアラジンも感心声で「やれば出来るじゃん」


そして、アラジンがその建物に入った直後、ジンは足元で一つのブロックを拾った。

「何で余ってるでおじゃるか?」

その瞬間、建物は崩壊。


瓦礫の中から命からがら這い出したアラジンに、ジンは頭を掻いて「一つ組み忘れたでおじゃる」

「お前なぁ!」



更にその頃、ルーマニアのドラキュラ城では・・・。


カブ公子の使い魔として普通サイズのネズミの姿でドラキュラ城に住み着いたオーガは、雌ネズミたちのハーレムを作って猛烈に繁殖を始めた。

城は膨大な数のネズミで溢れ、城の厨房はネズミの運動場と化し、メイド達は悲鳴を上げた。


厨房をわが物顔で駆け回るネズミたちを前に、困り顔でサリー姫は隣に居るカブ公子に言った。

「どうするのよ、これ」

カブも困り顔で「どうしよう」

「ネズミ算って言葉、知ってるわよね? ネズミ魔獣の王みたいなのにハーレムなんて作らせたら、こうなるって思わなかったの?」

そう姉に追求されて、カブは「どうしよう」


そしてカブは人化ネズミたちを召喚して「お前らネズミで何とかしてくれ」


するとその一匹、人化ネズミのすみれが言った。

「私が前に居た世界で、家に居た女の子が持っていた絵本に、こんな事が書いたありました。地面に開いていた小さな穴におむすびを落としたら、それがネズミの住む世界に繋がっていたと。そんな所に移住するというのはどうでしょうか」

「おとぎ話だろ?」とカブ。

だが、隣に居たブラド伯は「いや、それは固有結界ではないのか? ケットシーたちの女王と臣下の住む都も、彼らが作った固有結界だ」


ブラド伯はネズミたちのために固有結界を作り、オーガラットたちはそこに移住した。



ポルタにも平和が戻った。


ポルタの街の一画にその店はある。

猫カフェ「ミケ子」という、その店の客の居ない店内で、レジーナは開いている椅子に座って、入口を見て溜息をついていた。

「タルタさん、最近来ないなぁ」


足元で白猫がじゃれつくと、その猫を抱き上げて話しかけるレジーナ。

「そうだよね、タルタさんにはタマが居るから」

膝の上に白猫を乗せて背を撫でると、レジーナは呟いた。

「寂しいなぁ」


彼女の目から一筋の涙が流れる。それをじっと見つめるシロ。



その日の夕方、タルタのアパートでは・・・。


帰宅するタルタに駆け寄るタマは、女の子の姿で「お帰り、タルタ。ご飯は?」

「作り置きのスープがあるだろ」とタルタ。

するとタマは「男料理は飽きた」


タルタは溜息をつくと「何が食べたい?」

タマは「お魚」

「肉でいいだろ」とタルタ。

「お魚がいい。但し煮干し以外で」

そう駄々をこねるタマに、タルタは「贅沢言うな」


タマは猫に変身し、タルタの足元にすり寄る。

タルタは猫のタマを抱き上げて、溜息をついて「しょうがないな」

「だからタルタって好き」

そう言って、甘えた鳴き声とともにタルタの手を舐めるタマ。



だが、次の瞬間、タマは鋭い目つきで戸口を睨むと、タルタの手の中から飛び出し、玄関に向けて唸り声とともに毛を逆立てた。

「敵か?」

そう言って、タルタの視線は玄関へ。


窓を突き破って数匹の猫がタルタの部屋に飛び込む。

タマは二本足で立ってレイピアを構えた。

タルタも身構える。


部屋に飛び込んだうちの一匹が二本足で立ってドアのロックを解除し、ドアを開ける。

一匹の猫が二本足で部屋へ。更に数匹の猫が後に続く。


玄関から乗り込む二本足の猫に、タルタは「ケットシーの女王だな?」

女王猫は「タマ、訴えにより、あなたを討伐します」

「今更何だって言うのよ」とタマが怒鳴る。

「ってか訴えって・・・」とタルタ。


数匹の猫が部屋に入り、タルタの前に進み出た。

その先頭に居る白い雌猫を見て、タルタは「シロちゃんじゃないか」

「タルタさんは、彼らに見覚えがありますよね?」と女王猫。

タルタは「ミケ子の猫たちだな?」



シロが哀しそうな鳴き声を上げてタルタに足元のすり寄る。

そして女王猫は「レジーナさん。彼女があなたを想って泣いていると」


「そうだったのか。いや、忘れてた訳じゃないんだが、ずっと行ってなかったからなぁ」

そう言うとタルタはシロを抱き上げた。

そして「悪かったよ。俺、何も知らなくて」


シロは嬉しそうに鳴いた。

そんなシロに応えるように、タルタは言った。


「ミケ子の経営がそんなに苦しいなんて。俺が行かないと客が来なくて潰れるんだよな?」


シロの目が点になり、猫たち全員、前のめりでコケた。

残念な空気が漂う。



「見てられないわね」と言いながら、一人の女が玄関から入って来る。

タルタは「ニケさん」と・・・。


「人の事を散々唐変木とか言っといて、自分はこれかよ」と言いながら、四本の刀を背負った男が入って来る。

タルタは「ジロキチ」と・・・。


「やはりここは俺みたいな恋の達人の出番かと」と言いながら、いかにも軽そうな男が入って来る。

タルタは「カルロ、何でここに・・・」

そんなカルロにニケは「あんたは女の敵でしょうが」


更に、エンリ王子が乗り込んで来た。

「猫が集団で騒いで迷惑だって通報があったんだよ。ついこの間、猫が暴れて窓とか盛大に壊したばかりだからな」

そう言いながらエンリが女王猫をチラ見する。

女王猫は恐縮声で「あの時はご迷惑を」



そしてエンリは言った。

「で、タルタ。お前、レジーナさんの事をどう思ってる?」

「どうって、いい人だと思うけど」とタルタ。

「いい人と好きな人は違うぞ」とエンリ。

タルタは「何の話だよ」

そんな残念な会話にニケが口を挟んで「本人から言わないと解らないと思うわよ」



エンリの後ろからレジーナが入って来た。

もじもじしているレジーナ。

「あの、レジーナさん?」

レジーナはそうタルタに言われて、ビクっと反応しながら「はい」

「今度、お店に行くね」

そうタルタに言われて、レジーナは嬉しそうに「はい、お待ちしています」


そしてタルタは言った。

「それと、お店の宣伝とか考えないとね。俺以外の客が居なくて経営が苦しいんだよね?」

仲間たちは苛立たしそうに口を揃えて「違うだろ!」

「じゃ、何の話だよ」と困り顔のタルタ。



そしてレジーナは意を決した。

「私、タルタさんが好きです」

「そうなの?」とタルタ唖然。


「けどタルタさん、猫が好きなんですよね?」とレジーナは哀しそうに言う。

タルタは「まあ可愛いし」

「エンリさんが魚が好きなように」とレジーナ。

タルタは慌てて「いや、俺、変態じゃないから」

「変態言うな。これは個性だ」とエンリは言って口を尖らす。


タルタは溜息をつくと「だから、俺は人間の女性も好きだから」

レジーナは嬉しそうに「それじゃ、私と付き合ってくれますか?」

「いや、急に言われても」と困り顔のタルタ。

レジーナは哀しそうに「駄目ですか?」



そんなタルタに、仲間たちは声を揃えて「タルタ、ちょっとこっちに来い」


仲間たちに囲まれ、正座させられて小一時間説教を受けるタルタ。

レジーナはおろおろしながら、彼等に「あの、そこまでして頂かなくても・・・」

そんなレジーナに、ニケは「遠慮しなくていいのよ。あれは面白がってるだけだから」

「へ?・・・」


唖然顔のレジーナにニケは言った。

「他人の恋愛に首突っ込む事ほど面白い事は無いから」

「そういうものですか?」と怪訝顔のレジーナ。



ようやく説教から解放されると、タルタは言った。

「レジーナさん、俺と付き合ってくれ」

「喜んで」

そう嬉しそうに答えるレジーナを見て、リラは「良かったね、レジーナさん」



そんな経緯を見届けると、女王猫は言った。

「という訳でタマ、あなたは身を引きなさい」

「まあ、そうだよな」と仲間たちも頷く。

タマは泣きそうになって「タルタぁ」と彼に縋る。

タルタ、困り顔で「え・・・えーっと」


するとレジーナは言った。

「あの、三人で暮らしませんか?」

「いいの?」

そう嬉しそうに言うタマにレジーナは「私も猫は好きです」


タマは「私、レズじゃないけどね」

レジーナは「私もです」

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