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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第149話 海峡のマラッカ

暴走する火山の精霊サンクリアンを倒してサンクバン火山の噴火を止めたエンリ王子たちは、サンクリアンが恋した彼の実の母親ダヤンスンビと降霊術を以て再会させ、彼と和解した。



サンクリアンを連れて麓の村に戻るエンリ王子たち。

噴火の脅威が去った事を告げる。喜ぶ村人たち。


そしてサンクリアンの姿を見てテンションを上げる村の女性たち。

「あの、この素敵な人は?」

「彼がサンクリアン王子ですよ」

エンリが紹介したサンクリアンに向けて、黄色い歓声を上げる女性たち。


一人の女の子がサンクリアンの手を執った。

「私、あなたの生贄に選ばれたんです。って事は私、あなたのものですよね?」

すると別の女の子が「いや、私が」

更に、別の女の子が「私の方が綺麗ですよね?」

嬉しさと困り顔を行き来するサンクリアンの表情を見て、エンリは呟いた。

「良かったね、モテモテで」


そしてエンリ王子はサンクリアンに「ところで、このあたりの海の近くに洞窟ってありませんか?」

「洞窟なんて、いくらでもありますけど」と、サンクリアン。

エンリは言った。

「かなり前にユーロの船に乗ったバスコという海賊が来ている筈です。そんな船が拠点にした洞窟とか」

「それなら・・・」



サンクリアンの案内で、海岸の崖に口を開けた洞窟に行く。

洞窟の中に宝箱があり、その中にジャカルタ周辺を描いた地図があった。

それを手に、エンリは叫んだ。

「ジャカルタの島々の秘宝、ゲットだぜ」


そんなエンリを見て、サンクリアンは怪訝顔で言った。

「あの・・・秘宝ですか?」

心なしかドン引き気味のサンクリアンを見て、バツの悪い表情になるエンリ。

リラはフォローのつもりでサンクリアンに言った。

「気にしないで下さい。変身ヒーロー物の決め台詞みたいなものなんで」

「そうですか。で、どんな物なんですか?」とサンクリアン。

エンリは「海賊の秘宝ですよ。ひとつながり・・・とか言って、世界の海を支配する海賊王になるための」

タルタは「宝探しは海賊のロマンなので」


サンクリアンは言った。

「それは良かった。けど、何かあなたに渡さなければならないものかあったような気がするんだが」

するとアーサーが「もしかして、果物ナイフじゃないですか? 王子が溶岩に投げた」

「そんなのはいいんで」とエンリ王子。


するとニケが身を乗り出して「けど、普通、それと別の豪華な何かを一緒に持って出るんですよね? あなたが落としたのはどちらですか? とか言って、正直に言うと豪華な方も貰えるって」

エンリはそんなニケを制して「いや、そんなの期待して無いから」

アーサーも「ってか図々し過ぎだよ、ニケさん」

「何言ってるのよ。海賊のロマンをフイにする気?」と言ってニケは口を尖らす。

「どーせ高値で売れるとか期待してるんだろ」とジロキチもニケに・・・。



「ありますよ」

そう言ってサンクリアンは、赤い魔石を埋め込んだ短剣をエンリに渡した。

アーサーは、思わず身を乗り出して「それって、万能の魔力が込められているという」

ジロキチも身を乗り出して「凄い切れ味で何でも切れるという」

ニケも身を乗り出して「武器屋の精神を操って超高値で買わせる呪いがかかっているという」


「そういうのは無いですけど」と困り顔のサンクリアン。

「つまり、カール王子の所の偽の聖槍みたいな、ただの権威の象徴?」とタルタが身も蓋も無い事を言う。

エンリは困り顔で「折角くれるってのに失礼だろ。ってかそれ、カールが聞いたら泣くぞ」

「いや、ただの権威の象徴みたいなもので」とサンクリアン。

「そうなの?」


サンクリアンは言った。

「火山の精霊の・・・ね。火山は世界各地にあります。そこには精霊も居る。もし、火山に関するトラブルに巻き込まれた時、これを使えばその精霊の助力を仰ぐ事が出来ます」



サンクバン火山の問題を解決してマラッカに凱旋したエンリ達を、マラッカの民たちは歓呼の声で迎えた。

「まるで英雄扱いだな」

そう言うタルタに、エンリは街角で手を振る民衆に向けて片手を上げてみせながら、自慢顔MAXで言った。

「いや、実際英雄だろ。何せ噴火で滅ぶ筈の周囲の村を救ったんだからな」


王宮でマラッカ王に首尾を報告する。

すると王は「実は大体の事は知っているのです」

「既に誰かから報告があったのですか?」とエンリ。

「お告げですよ。精霊サンクリアンからの、ね」

そう感謝を込めて言う王に、嫌な予感を感じたエンリは「お告げって、どんな?」


王はお告げの内容を記録した文書を読み上げた。

曰く。

「自分は実の母親に恋をしてしまうという、けして理解されない愛に苦しんでいた。だが、同じように理解されない愛の形を抱え、苦しみを分かち合う友と出会えた。ロリコンでホモでお魚フェチという変態三重奏を抱えながらも強く生きているポルタ国エンリ王子と出会い、共に理解し合う事で、自分は胸を張ってこのジャカルタの民と共にあらんとする勇気を得る事が出来た。これからはこの大地と民を守る存在でありたい」


エンリは青くなり、冷や汗混じりのおろおろ声で「ま・・・まさかそれ、公表しました?」

「もちろん、一言一句漏らす事なく、我が領土の津々浦々まで」と、いかにも善意な笑顔のマラッカ国王。

エンリ王子唖然。


アーサーが「良かったですね、王子」

カルロが「ジャカルタの英雄ですよ」

そしてリラが「見て下さい、王宮前で民があんなに」



王城の窓から見下ろすと、城門前に集まった民衆がポルタの旗を振って叫んでいる。

「ロリコン王子エンリ万歳」

「あなたはホモの誇りだ」

「お魚フェチ、エンリ王子に栄光あれ」


エンリ、頭を抱えて「いや、俺、ロリコンでもホモでも無いんだが・・・」

「けど変態お魚フェチなんですよね?」

そう楽しそうに言うアーサーに、エンリは「変態言うな、あれは個性だ」


王宮前の民たちが声を揃えて叫ぶ。

「変態三重奏エンリ王子万歳」


エンリは天を仰ぎ、悲痛な声で叫んだ。

「風評被害ジャー」



こうして、植民市反乱騒ぎを解決し、サンクバン火山の噴火を止めてマラッカに戻ったエンリ王子は、マラッカ王との間で植民市の自由な交易を保障する条約を結んだ。


調印式を終えて植民市に戻るエンリ王子たち。

お茶を飲んで一息つく中で、ジロキチが「これでジャカルタでの仕事も片付いたよね」

「そろそろポルタに戻ろうよ」とタルタ。

するとニケが「ちょっと待ってよ。まだお金を儲けてないわよ」

「それはニケさんの都合だろ」とタルタ。

するとジロキチが「けど、いつものパターンだと、ここでまた何か事件とか・・・」

エンリは溜息をついて「また縁起の悪い事を」


するとカルロが言った。

「けど、結局今回の反乱騒ぎって、アラビア商人が交易の独占を計って、ポルタ商人を追い出そうとしたからですよね? 彼等がこのまま大人しく引き下がりますかね?」

エンリは溜息をついて「それだよなぁ」



その時、エンリ達の元に一人の役人が急報が届けた。

「大変です。水先案内人たちが消えました」


「消えたって・・・まさか集団で異世界転移とか」

そんな斜め上な事を言うタルタに、役人は言った。

「じゃなくて、アラビア商人が水先案内人を全員連れ去ったんです」

「冗談じゃないわ。岩礁の多いマラッカ海峡が通れなくなるじゃないのよ」と、深刻な表情を見せるニケ。

役人も「彼等が居なければ、地元の我々ですら、この海峡を通れなくなります」

「すぐ追いかけよう」と号令するエンリ。


だが、アーサーが「追いかけるにも、先ず海峡を出るための水先案内をどうしたら・・・」

するとリラが言った。

「私が海に潜って水先案内をやります。ヴェルダ岬の岩礁地帯を通った時みたいに」



王宮に連絡して追跡艦隊を手配すると、エンリたちは船に乗り、国王自ら旗艦に乗り込んだマラッカ艦隊を先導して港を出た。

リラは人魚に変身して海に潜り、魚の使い魔たちを召喚。

魚たちが隊列を組んで海峡を泳ぎ、岩礁を避けて通れる所を探す。

「王子様、こっちです」

人魚の姿のリラが水面で船を先導し、無事に海峡を出た。

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