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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第141話 陸戦の海賊

イギリスから新天地を求める農業植民として移住したスミスたちメイフラワー植民村。

これに圧力をかけようと乗り込んだゴイセン海賊団の潜水艦隊をリラの人魚に乗ったエンリ王子が破ると、エンリたちは本格的な攻勢に出た。



ファフのドラゴンに乗ったアーサーとエンリ王子。アーサーが防御魔法で敵の大砲を防ぎ、ドラゴンの炎とエンリの巨人剣で敵船を次々に撃破。

その様子を見て、船に居る仲間たちにニケが激を飛ばす。

「こっちも突入して大砲と鋼鉄砲弾で行くわよ」

リラが「私も爆雷で出ます」

するとジロキチとカルロが「それより俺たちを敵船まで運んでくれ。乗り込んで斬りまくってやる」

「了解です」


ニケが船の進路を突入コースにとって敵艦隊に向かう中、鋼鉄砲弾の体勢をとったタルタが敵船団の様子に気付いた。

「敵艦隊、逃げていくよ」

「ざまーみろ」と気勢を上げるジロキチ。

だがニケはしばらく敵艦隊の動きを観察すると「いや、上陸して陸上から攻め込む気よ」


敵艦は密集隊形を組み、防御魔法でドラゴンの炎と魔剣攻撃を防ぎ、村から離れた所で上陸を開始した。

それを見たエンリはアーサーに「こっちも体制を整えて陸上で迎撃するぞ」



エンリ王子の船が植民村の港に戻る。

それを見た植民者たちと、村に居た現地人たちも集まって来る。


その時、上空に大きな烏が飛来するのが見えた。

烏に誰か乗っている。

「間桐の式神烏ですね」とアーサーがエンリに・・・。



式神烏が港に舞い降りる。

乗っていたのは間桐たち三人、そしてマーリンとノミデス。


式神札に戻る烏を見て、エンリは「これで大洋を横断したのかよ。よく魔力が保ったな」

「精霊が居るからね」とドヤ顔のノミデス。

間桐は「イザベラさんが応援に出してくれたんだ。しばらく授業は休講って事でね」

「こんな面白いイベント、参加しない手は無いわよね」とマーリン。

アーサーはあきれ顔で「イベントって・・・」


エンリは笑いながら「イギリスとオランダが対立してる所に第三勢力を育成して、東岸三分の計で分裂状態を維持させれば、スパニアの対抗勢力が育たない・・・とでも、イザベラが言った?」

「どうして解ったんですか?」

そう不思議そうに言うローラに、エンリは「そりゃ解るよ。あの人との付き合いも長いからね」



そんな彼等を他所に、マーリンはポカホンタスの隣に居るスミスに言った。

「あなたがスミスさんね。いい男」

「人の彼氏にちょっかい出さないでくれます?」と警戒心剥き出しのポカホンタス。

マーリンは涼しい顔で「恋愛は自由よ」

「そういうのは止めてくれないかな」

そう言って止めに入るアーサーに、マーリンは「あなた、童貞でしょ?」


その時、アーサーの短刀が光を放ち、不思議な魔力を帯びた。

鞘から抜くと、刀身に幾つかの古代文字が浮かんでいる。

「もしかして、今のが封印を解くキーワード?」

そうエンリに言われたアーサーは、悟ったような顔で言った。

「思い出した。聖杯を探索していたイギリス古代王の騎士は、童貞であったが故に聖杯を手に出来たんだ」


タルタは「それでこれかよ。嫌なキーワードだな」

カルロが「いや、三十まで童貞を続けたら魔法使いになれるって」

「魔導士を何だと思ってるんだ」と言ってアーサーが口を尖らす。


マーリンが現地人を見て、言った。

「あなた達、現地人の人たちね? これを預かって来たんだけど」

出された木箱を開けて現地人たちは大喜び。

「ウイスキーじゃないですか。それにワインも・・・」

「その代り、彼等に手を貸してくれないかしら」

そうマーリンに言われて、現地人たちは「喜んで」



翌朝、北側沿岸に上陸したゴイセン海賊軍がサンフラワー村へ進軍を開始した。

迎え撃つのは武装した開拓者たちと現地人、エンリ王子とその友人たち。

「俺たちも手を貸すぞ」

そう名乗り出たマッチョの一団を見て、タルタは嬉しそうに「ドレイク提督」


ドレイクはエンリに言った。

「お前等の味方になる訳じゃないが、やつらには借りがあるんでな。盛大に返してやる」

「けど、向うは相当な大軍ですよ」とアーサーは望遠鏡で、進軍して来る敵を見て言った。

ドレイクは向うに居るオランダ勢の様子を見て「海賊だけじゃなくて、植民都市の市民兵も居るな」


だが、エンリは余裕の笑みを浮かべて「こっちには幾つも奥の手がある」



進軍して来る敵に向かい、アーサーが正面に立ってファイヤーボールを連射。

敵魔導士たちが彼に向けて一斉に攻撃魔法。

だが、アーサーが左手で短剣を翳すと、その前で敵の攻撃は全て消滅した。

「これが抗魔の短剣の威力か」とアーサーは短剣を手に呟く。


敵は防御魔法で攻撃を防ぎつつ突撃を開始。

アーサーはスケルトン軍団を召喚。長槍を構えて密集隊形をとり、敵を迎え撃つスケルトンたち。

タルタは驚き顔で「スケルトンのファランクスかよ」

アーサーは言った。

「提督たちと戦った時に思ったんです。こいつ等はあまり強くないから、戦法を工夫すればいいんじゃないかって」



スケルトン達の長槍の束を薙ぎ払い、ウィル率いるゴイセン海賊団の猛者たちがファランクスを突破して来る。

その前に立ち塞がるタルタ、ジロキチ、カルロ、そしてエンリ王子。


タルタは体の表面を部分鉄化で覆って敵の攻撃を防ぎ、剣を振るう。

そんなタルタを見てジロキチは「だいぶ上達したな」

「おかげ様でな」とタルタ。


四本の刀を振るうジロキチは、敵の炎魔法を氷魔力を付与した刀で、闇魔法を光魔法を付与した刀で切り裂く。

「風吹、真白、よくやったぞ」

そう自分の刀をうっとりした声で褒めるジロキチに、若狭は困り声で「そういうのって、ちょっと気持ち悪いですよ」


その若狭にムラマサが「主、敵は手強いですよ。ここは拙者で」

「解った」


妖刀の姿になったムラマサを持つ若狭に、その妖力が憑依する。

妖刀使いとなった若狭は一瞬で周囲の敵を圧倒した。

ムラマサは若狭の手の中で、うっとりした声で「達人の血はひと味違うでござる」

若狭は困り声で「そういうのも止めて下さい」



ジロキチたちを囲もうとするゴイセン海賊たちの間をカルロが駆け抜け、ナイフを振るって攪乱。

彼に斬りつけようとした海賊の一人が、いきなり背を斬られて倒れる。

敵の姿が見えないままバタバタと倒れるゴイセン側の海賊たち。

「どうなってる」と叫んでうろたえる海賊の一人の耳に、遠坂の声が届く。

「ここだよ」

彼が背後を振り向く間もなく、遠坂の忍刀が一閃。


隠身魔法で姿を隠しながら切りまくる遠坂に、カルロが「それ、いいな。今度教えろよ」

「魔法戦闘科に入学しますか?」と遠坂。

カルロは「いいね。女子学生も居るんだよね?」



エンリは炎の巨人剣で敵の密集している所を一撃。彼に向けた銃撃をリラが氷の楯の防御魔法で防ぎ、アイスブレッドで牽制攻撃。

陣形の敗れた所に、間桐が操る狼の式神の群れが突入。

彼が乗る狼の後ろにローラとポカホンタスの乗る狼。二人の魔法攻撃がゴイセン側の戦力を削る。


隊列を組んで鉄砲を構えるゴイセン側の兵に、ニケが短銃を連射。

スミスが雷の矢を打ち込む。

開拓者たちは銃で、現地人たちは弓矢を連射。


次々に倒れる敵を見て現地人戦士が叫ぶ。 

「我等、インディオは精霊の試練を乗り越えた無敵の戦士。あらゆる敵を倒す。インディアン嘘つかない」

スミスは困り顔で「何の台詞ですか?」



ゴイセン側の部下が焦り顔で団長のウィルに「何だか押されてませんか?」

「そんな訳あるか。俺たちは世界最強のゴイセン海賊団だ」と強気を見せるウィル。

そんな彼の前に巨大な斧を持つマッチョが迫った。

「おい、そこの海賊大将。今日こそ決着をつけてやる」


「ドレイク、今日で俺が勝ち越しだ」

そう言って大刀を構えるウィルにドレイクは「こっちの台詞だ」


ドレイクの大斧とウィルの大刀が火花を散らす。



「そこまでだ」

馬上で現地人の子供に刃物を突き付けるゴイセン側の海賊。


彼は現地人戦士たちに向けて叫んだ。

「そこのインディオ共、この子供を殺されたくなくば俺たちにつけ。こいつだけじゃないぞ。お前等の村は俺たちの仲間が占領した。残ってる女子供は全員人質だ」

「何と卑劣な」と現地人戦士たち。

エンリも「典型的な悪役だな」


馬上の海賊は「悪役で悪かったな。その分、人殺しとか何とも思ってないからな。脅しじゃないぞ」

エンリは溜息をつくと「そう来ると思ってたよ。ファフ、出番だ」



村に残っていたファフにアーサーが念話の指令を送る。

「あの人達の村に悪者が居るんだね? 了解」

そう言ってドラゴンに変身したファフが現地人の村に行くと、村の広場に集められた女と子供に、数人の海賊が銃を突き付けていた。


海賊はファフを見ると「こいつらを殺されたくなければ人に戻って手を挙げろ」

ファフは海賊たちに言った。

「主様が言ってた。一人殺すも百人殺すも一緒だから、一人でも殺したら炎で皆殺しにしろって」

「俺たちは悪者だから、人殺しなんて何とも思ってないが、お前等も同じかよ」と海賊たち。

ファフは「だったら、武器捨てて誰も殺さずに手を挙げた人だけ殺さないであげる。主様が言ってた。殺す奴には殺される覚悟がある筈だから、そういう人を殺すのは悪人じゃないって」


海賊たちは互いに顔を見合わせた。

一人の海賊が仲間たちに「俺たち、鉄の結束を誇るゴイセン海賊団だよな」

「死ぬなら一緒だよね」と、もう一人の海賊。

更に、もう一人の海賊が「けど、東インド会社の飼い犬だよね」

海賊たちは口々に言った。

「あの金持ちたちのために死ぬのかよ」

「俺、武器捨てます」

「俺も」



「だそうだぞ。人質作戦失敗だな」

そう言って村の状況を敵の海賊たちに伝えるエンリ王子。

唖然とする馬上の海賊。その隙を突いたニケの銃弾で、彼は額を撃ち抜かれ、カルロが人質の子供を救出した。



ウィルは怒りMAXな表情で部下たちに言った。

「おのれ、こうなったら、あれを出そう」

彼の部下の魔導士ホッブスは「まだ傷が癒えてません」

ウィルは「戦えればいい。奴等のドラゴンはどうせ素手だ」


ホッブスは召喚呪文を唱え、海上にリバイアサンが出現した。

アーサーは念話で「ファフ、戻って来い」


縛り上げた数人の海賊をぶらさげて、ファフのドラゴンが飛来する。

「よくやった、ファフ。この間の奴だが、やれるか」

そう言うエンリにドラゴンは「ファフ、頑張る」

アーサーが「例のお守りは持ってるよな」

「ペンダントにしてぶらさげてるよ」とドラゴンが答える。


ドラゴンに向けてアーサーが転移の呪文を唱える。

ファフの右手に剣、左手に防魔の楯が出現した。



リバイアサンが放ったファイヤーボルトを、ファフは楯で防ぎ、剣で斬りかかる。

巨大モンスターどうしの剣戟が始った。

リバイアサンの長い蛇身がファフの胴に巻き付くと、ファフはそれに剣を突き立て血しぶきが上がる。

たじろいだリバイアサンの胸に剣を突き立て、咆哮とともにリバイアサンは消えた。


頼みのモンスターを倒されたニューアムステルダムの市民兵は戦意を失い、総崩れとなる。

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