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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第139話 はぐれ者の植民地

ポカホンタスが西方大陸北部東岸でスミス達開拓植民者の仲間に加わり、悪戦苦闘していた頃、ポルタでは・・・。



その日、エンリ王子は、ポルタ大学の魔法学部長パラケルサスの研究室を訪れていた。

「今更だと思うんだが、俺の魔剣の何を調べたいと?」

そう問うエンリにパラケルサスは言った。

「そっちじゃなくて鞘なんですが、伝説ではこの鞘に、持ち主のあらゆる傷を瞬時に回復させる力があるというのです」

「そんな力があれば俺は無敵だな」と呟き、エンリ王子の目の色が変わる。


魔剣の鞘を受け取って調べるパラケルサス。

そして「特別な力があるようにも見えませんけど」

だが、エンリはワクワク顔で「封印されているんじゃないかな。アーサーの短剣みたいに。とにかく解明しろ。今解明しろ。すぐ解明しろ」

「まあまあ」と彼を宥めるパラケルサス。


とりあえず魔剣は、しばらくパラケルサスが預かる事になる。  



研究室を出たエンリは「リラの様子でも見に行くか」と呟き、準教授に昇格したローラの研究室へ向かった。

現在、彼女の研究室は、少年少女探偵団のたまり場になっていた。


エンリ王子が行くと、講師の遠坂と間桐、そして学生のリラ・若狭・ムラマサ。更に何故かジロキチも居た。


若狭は、エンリに挨拶がてら「二人で探偵団に入る事になりまして」とエンリに・・・。

「人々の命を守るため頑張るでござる」とムラマサ。

エンリは笑って「辻斬りやってた奴の言う台詞とは思えないぞ」

「それは言わない約束かと」と困り顔の若狭。

「それに、犯罪者なら遠慮なく斬れるでござる」とドヤ顔のムラマサ。

若狭は更に困り顔で「そういう危ないのは止めて」



「ところで何でジロキチまで?」

そう言うエンリに、若狭は「私の恋人ですから」

ムラマサは「我が主でござる」

エンリは笑ってジロキチに「お前、過保護過ぎだろ」

ジロキチは「リラさんに会いに来た王子が言う台詞じゃないかと思うが」


「これでポカホンタスが居ればなぁ」と遠坂が遠い目をする。

間桐が「どうしてるかな、あの人」

リラは「西方大陸で頑張ってるんですよ」

するとローラが「そういえば、そのポカホンタスから手紙が来てるわよ」



ローラが机の引き出しから手紙を出す。

みんなで手紙を読む。


読み終わって、みんなであれこれ言う。

「つまり、彼氏を紹介したいから来て欲しい・・・と」と遠坂。

「西方大陸の北側で、相手はイギリス人植民者ですか」とリラ。

「あのあたりは大洋を渡った所で、イギリスやらオランダやらフランスやらの奴等が植民都市を作ってるからね」とエンリ。

「それで、何て所だっけ?」と間桐。

ローラが「サンフラワー植民村・・・だそうですけど」

エンリは「そんな植民都市あったっけ?」と言って首を傾げた。



エンリ王子たちタルタ海賊団が様子を見に行く事になる。若狭とムラマサも同行する事になった。

準備を整えて、出港前にパラケルサス学部長の所に行った。


「魔剣の鞘の解析は進んだ?」

そう期待を込めて問うエンリに、パラケルサスは「剣の魔力を封じて初期化してみたのですが、治癒とかとは関係無さそうですね。鞘も単なる入れ物です。ただ、これは湖の精霊から貰ったのですよね? 元々古代王も、その湖の精霊からこの剣を貰ったという伝説もあるのです。王子は水が万物の根源だという説はご存じですか?」

「火だという説は聞いてるけどね。宇宙を生じさせた原初の爆発のエネルギーだと言うのだろ? 水ってどんな意味があるんだ?」とエンリ。

「水は命の源という事です。あらゆる生命の活動は水の上に成り立っていると」とパラケルサス。


そしてパラケルサスは、預かっていた短剣を出して、アーサーに・・・。

「それとアーサー、この短剣なんだが、何かのキーワードが封印を解く鍵になっているようなんだ」

「どんなキーワードか解るか?」とアーサー。

パラケルサスは「四文字という所までは突き止めたが、後は偶然を期待するしか無いかと。あと、ドラゴン用のご注文の品だ」と言って、大き目のペンダントを出した。

「距離とかはどうなんだ?」とエンリ。

「特注品ですから、球体地面の反対側からだって大丈夫ですよ」とパラケルサス。



植民村の位置はまもなく判明した。


大洋を渡って新大陸北部へ向かい、植民村の粗末な港へ。

村には開拓者の若い男性たち。そこでエンリたちはポカホンタスと再会する。


「久しぶりね、リラさん。それと自称・・・じゃなくてエンリ王子」

そう言って再開を喜ぶポカホンタスに、若狭は「あなたがポカホンタス先輩ですね?」

「あなたは?」と問われて、若狭は自己紹介。

「若狭といいます。それで、こっちがムラマサ。ポルタ大学の魔法学部に通って少年少女探偵団に入団しました」


「探偵団って・・・」

そう言って怪訝顔をするポカホンタスに、リラは「遠坂さんたちも居ます。時計塔を卒業して講師に採用されたんです」

「そうなのね。けど就職して社会人になっても少年少女なのかな?」とポカホンタス。

「そういえば・・・」とエンリたち。そして残念な空気が漂う。



「それであなたが・・・」

そう言ってエンリが視線を向けた、ポカホンタスの隣に居る男性。

ポカホンタスは彼の手を執って「私の彼のスミスよ」

「よろしく」とスミスはエンリたちに・・・。


「それでここって・・・」

そう言って村を見回すエンリに、スミスは「農業植民として、ここに移住しました」

「収穫は秋だよね? 慣れない気候で不作だったら悲惨だぞ」とエンリ。

スミスは「その時は現地人から援助を」


エンリはあきれ顔で「その発想は甘いと思うが。ってか、他の植民都市みたいに貿易港とかじゃないの?」

「イギリス国教会絡みのゴタゴタから逃げてきたんで、特許状とか貰ってないんです」とスミス。

「って事はジュネーブ派か」とエンリが言うと、スミスは溜息をついて言った。

「そうなんだけど、本部の指令とか正直ウザいんで」

エンリも溜息をつくと「何ならポルタ商人とか紹介してやっても・・・ってか、俺たちも建前上は交易船なんだが」



するとニケがノリノリで「私が取引相手になってあげても」

「ニケさんは暴利狙ってふっかけるだろ」

そう止めに入るエンリを他所に、ニケは「輸出品とかあるの?」

「現地人が吸ってた煙草があります。葉を乾燥させて火をつけて煙を吸うと気分が良くなるんです」とスミスが煙草を出して見せる。

「それ麻薬じゃないのか?」と疑問顔のエンリ。

ポカホンタスは「人間止めたりとかって事にはならないんで」


スミスが吸ってみせる。

未来のビジョンが見えると言い出すスミス。

それを見てエンリは「やっぱり麻薬じゃん」

「いや、この人は特殊なんです」とポカホンタスがフォロー。


開拓者の一人が「それより輸入したいものがあるんですが」

「何?」

そう身を乗り出すニケに、彼は「ウイスキーを」

「現地人が欲しがる訳ね?」とニケ。

開拓者たちは「いや、俺たちが飲みたいんだけど」


「先ず生き残る事を考えようよ」と、あきれ顔のスミス。

「そうは言っても、畑仕事の後の一杯が・・・。俺たち、このために生きてるんだな・・・って」と、一人の開拓者が・・・。

もう一人の開拓者が「けど、現地人にあげちゃったんで」

「やっぱり現地人が欲しがる訳か」とエンリ。



その時、現地人の一団が村を訪れた。


「おや、見ない顔ですね」

そう、現地人のリーダーらしき男性が、エンリたちを見て言うと、エンリは彼等に言った。

「ここの現地人の人たちですね。我々は通りすがりの交易商ですが」

「もしかしてウィスキーを」と、身を乗り出す現地人。

「それは無いけど」とエンリが残念そうに言う。


「持って来てくれたんじゃないの?」

そう言って涙目で迫る現地人にタジタジとなるエンリ王子。

そして「ワインならありますけど」



宴を開き、ワインのグラスと食べ物が並ぶ。

現地人はワインを飲むと、顔を綻ばせてエンリたちに言った。

「これは美味い」


「解りますか?」と嬉しそうに言うエンリ。

現地人のリーダーは「辛みの中にもフルーティな口当たり。ほんのりと感じる甘味にも似た舌ざわり。柔らかな心地よい酔い。こんな酒を一体どうやって造るのかね。やっぱり大麦ですか?」

「葡萄という果物を使います」とエンリ。

「それもここで栽培するのですか?」とスミスに尋ねる現地人。

スミスは「やりましょう」

エンリは心配顔で「手を広げ過ぎるのは良くないと思うんだが」



次第に打ち解ける中、エンリは現地人に訊ねた。

「皆さんはこの村とは、どんな関係を?」

「農業を指導しています」と現地人のリーダー。


タルタはスミスに「お前等依存しまくってるじゃん」

「そうは言っても、俺たち元々商人だし、農業は素人だし」と涼しい顔のスミス。

「文明人形無しだな、おい」とジロキチ。

するとリラが「そういうプライドは捨てた方がいいと思いますよ」

アーサーも「それに、ここの人たちだって、ちゃんとした文化があるんだし」


エンリが「そういう建前論はともかく、俺たちが知ってて彼等の役に立つ事って無いの?」

「例えば、文明が古代レベルの世界に異世界転生したとして、どうやって無双する?」とジロキチ。

カルロが「神様ボーナスで凄い魔力」

「じゃなくて、文明知識を教えて役に立って感謝されて・・・って事だろ?」とエンリ。


その時、思い出したように、リラが言った。

「そういえば、キンカ帝国の人たちは鉄も馬も知らなかったんですよね?」

現地人の一人が「鉄って何ですか?」

「こういう刃物を作れます」と言って、スミスがナイフを出す。


木を簡単に削れるナイフを見て驚く現地人。

「これは凄い。それで、馬って何ですか?」

「動物を飼いならして乗り物にするんです」とスミス。

「それは凄い。どうやって作るんですか?」

そう問われてスミスは「いや、俺たちも作れないんだが」

現地人たちは残念そうな顔で「駄目じゃん」


エンリは「とりあえず自分たちの知識の範囲でやれる事を考えようよ」

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