表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
138/535

第138話 開拓者と現地人

イギリスから西方大陸北部東岸に渡ったイギリス人植民者たち。

農民として土地を開拓して自立しようと新天地を求めた彼等のリーダー、スミスと出会ったポカホンタス。

だが、その土地には既に現地人が居た。そして開拓者たちに立ち退きを求める。



現地人たちが去ると、ポカホンタスは魔法少女の姿を解除して元に戻る。

彼女は先ほどの変身ポーズを思い出し、ヤケ気味な声で言った。

「痛いですよね恥ずかしいですよねこれって中二病ですよね」


慌ててフォローしようと開拓村の人たちは口々に言う。

「いや、可愛いと思う。魔法少女だよね」

「萌えは正義だ」

ポカホンタスは照れ気味な表情で「そう言って貰えると助かります」



そしてスミスは、直面している問題に話を戻す。

「それよりどうする?」

「ここは何とか平和的に」と一人の仲間が言った。

「そうは言っても、どうすれば」とスミスは深刻な表情で・・・。


その時、もう一人の仲間が言った。

「飲みニケーションですよ」

それを聞いて全員が頷く。そして「仕方ない。アレを出そう」


「アレって何ですか?」とポカホンタス。

スミスは「未成年には法律で禁止されているんだが」


「法律で禁止って、まさか、18禁のアレじゃないですよね?」

慌て気味でそう言うポカホンタスに「君は未成年?」と言いながら、小屋から木箱を出す男性たち。

ポカホンタスは顔を赤くして「それ以前に女の子が居る前で、あまり変なものを・・・ってお酒ですか?」

木箱から取り出した酒瓶を手に「何だと思ったの?」と怪訝顔のスミス。



現地人の一団が呪術師を連れて、再び乗り込んで来た。

話し合いの席を設け、コップに注いだウイスキーとつまみが並ぶ。

現地人はウイスキーを飲むと、顔を綻ばせて植民者たちに言った。

「これは美味い」


「解りますか?」と嬉しそうに言うスミス。

長老は「ジンと来る辛みの中に感じる深みとコク。それでいてすっきりと澄んだ口当たり。そしてこの酔いは何だ。まるで火のように効いて来る。こんな酒を一体どうやって造るのかね?」

「大麦という作物を使います」とスミス。

「それは私たちの知らない作物かね?」と尋ねる長老。


スミスは「それをここを切り開いて畑にして作付けしようと」

長老は「解った。許可しよう」



こうして現地人とのトラブルを回避したスミスたちの開拓村で、畑の作付けが始まった。

ポカホンタスも、そのまま開拓村に住み着き、スミスたちと一緒に畑仕事に加わった。


「耕すってこれでいいのか?」と、鍬を振るいながら仲間の一人が・・・。

スミスは「木を切って草取りした地面を鍬でガシガシやって種蒔くんだろ?」


大麦の種を蒔く。

種を蒔いた後の畑を眺めながら、仲間の一人が「芽、出ないね」

「そんな急には出ないよ」とスミスはあきれ顔で言った。

もう一人の仲間が「発芽の儀式とか要るのかな?」

「魔法学校では習いませんでしたけど」とポカホンタス。


更に別の仲間が「種蒔いた回りを、夜中にみんなで囲んで踊りながらぐるぐる回って叫ぶと、ポンポン芽が出て大きく伸びて、天まで届く巨大な木に」

そんないい加減なネタで好き勝手言う開拓者の仲間たち。

「それは豆だろ」

「あれはドングリだったぞ」

「いや、それ夢落ちだから」

「けど翌朝、ちゃんと芽が出てて、"夢だけど夢じゃない"・・・って」



その時、仲間の一人がぽつりと言った。

「それより食料がそろそろ尽きるが」


全員、深刻な表情を見せた。そして「収穫は何か月も先だぞ」

「どうしよう」と、もう一人の仲間が・・・。

更に、もう一人の仲間が「現地人に援助を求めるか?」

「図々し過ぎだと言われるぞ」と言ってスミスが溜息をつく。


すると一人が「けど、俺たちが大麦実らせないと、奴等はウイスキーが飲めない」

別の一人も「それに奴等って原始人だろ? 狩猟採集生活で農業を知らない。それじゃ、この広大な大地で少数しか住めない。俺たちが農業を教えてやれば、俺たちも含めた大勢の人間が暮らせる」



開拓者たちは集団で現地人の村を訪れたが、大人が誰も居ない。

残っていた子供に訊ねる。

「熊魔獣が出たから、みんなで退治しに行ったよ」と子供たち。

スミスは「出直すしか無いか」と・・・。



その時、村の外の様子を見に行ったスミスの仲間の一人が戻って来た。

「こっちに凄い物があるのを見つけたぞ」


彼についてその場所に行くと、現地人の家が並ぶ無人の村があった。

「廃村だね」と仲間の一人が・・・。

スミスは「何かの理由で放棄されたんだろうな」


家に囲まれた広場の一画の、大きく土盛りしている所を見て、もう人の仲間が「塚みたいなのがあるけど」

「宝物を埋めたとか?」と、更にもう一人の仲間が・・・。

ポカホンタスは言った。

「そういえば友達が言ってました。"ひとつながりの大秘宝"というのがあって、その片割れが世界中に眠ってるって」

「この中にその一つが埋めてあったりして」と言い出すスミス。

「掘ってみようか?」


そう言って開拓者たちが塚を掘ると、木の箱が出て来た。そして中に大きな植物の実。

「お宝じゃ無かった」とがっかりする仲間たち。

だが、スミスが「いや、もしかしたら食べられるものかも」

するとポカホンタスがその実を見て「これ、トウモロコシですよ。周りの粒粒を食べるんです」

塚の周囲を見回した仲間の一人が「回りにも塚があるけど、そこにも埋めてあるのかな?」



回りの塚を掘ると人骨が出て来た。

スミスは慌てて「墓じゃないか。すぐ埋め戻せ」


周囲の小さな塚を掘った部分を埋め戻すと、スミスは大きな塚から出てきた木箱を見て、言った

「つまりこれはお供えに埋めたものって訳か」

すると仲間の一人が「これがあれば助かる」

「けどお供えだよ」と別の仲間が言って尻込みする。

だが、更に別の仲間が「いや、生きてる人優先だ」



トウモロコシを運び出す開拓者たち。

運びながら、仲間の一人が言った。

「奴等って、ちゃんと農業やってたんだね」



運び出したトウモロコシで食いつないで一安心・・・と思っていたら、現地人の一団が乗り込んで来た。

「あなた達、無人の村に侵入して塚の中のトウモロコシを盗みましたね? あれは冬を越す蓄えなのですよ」

「そうなの?」

そう言って唖然とする開拓者たちは、相当怒っているらしい現地人を見て「どうしよう」と・・・。


スミスは現地人たちに言った。

「知らなかったとはいえ、とんだご迷惑を。食料が尽きてピンチだったのです。代金をお支払いします」


金貨の袋を出してお金を渡すが・・・。

「こんな石でどうしろと」と、怪訝顔の現地人。

「こいつら金貨を知らない」

そう言う困り顔の仲間に、スミスは「ここは物々交換の経済なんだよ」


開拓者たちが困っていると、現地人が言った。

「ウイスキーならどうですか? あれ、まだありますよね?」

「貴重な楽しみなんだが」

そう言って渋る開拓者たちに、スミスは言った。

「この際、命には代えられないよ」



現地人たちは納得して取引に応じた。


そんな中でスミスが現地人たちに言った。

「それともう一つお願いがあるのですが、トウモロコシの育て方を教えて貰えないでしょうか。やはり、土地に合った作物じゃないと無理があるのかも。我々、実は農業の素人なんです」

長老は溜息をついて「あなた達、農業を甞め過ぎですよ」



彼等は現地人からトウモロコシの育て方を教わり、ようやく開拓は軌道に乗った。

指導を受けながら、仲間の一人がスミスに言った。

「俺たち、文明人なんだが」

スミスは溜息をついて「そういうプライドは捨てた方がいいと思うよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ