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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第136話 不倫とロマンス

教皇派との和解のためイタリアを訪れたエンリ王子が出くわしたボエモン侯爵と少女ジェルミとの恋愛騒動。

ボエモンは彼女の想いに応えようと、スパニア国教会聖騎士団に転職した。

そのために、失っていたロンギヌスの聖槍の、地の底からの回収を果たす。そして聖槍について来た大地の精霊ノミデス。



ボエモンはイタリアに帰還して、スパニアへの引っ越し準備に入った。

シチリア騎士団の事務で退職手続き。その事務室の前で好き勝手言う団員たち。

「団長ともお別れかぁ」

「寂しくなるなぁ」

「ジェルミさん、良かったね」


手続きが終わって事務室を出たボエモンは、部下たちの様子を見て、彼らに言った。

「お前等、俺が居なくなって喜んでないか?」

すると団員たちは口を揃えて「当然じゃないですか。女の子たちがみんな団長に夢中で俺たち日陰者だったんだから」


ボエモン唖然。そして「じゃ、やたら俺と彼女をくっつけようとしたのって、彼女に同情したんじゃなくて」

「上の人が片付かないと、俺たちみたいなのに順番が回ってこないんですよ」と一人の団員。

「これでやっと団長狙ってた女の子たちが諦めてくれる」と、別の団員が言った。


ボエモンはあきれ顔で「お前等だって聖騎士だろーが」

更に別の団員が「その前にイタリア男ですから」

「いや、俺たちはノルマンから移住した水軍騎士の子孫で・・・」

そう言うボエモンに団員達は「先祖が何だろーがイタリアに500年も住んでればイタリア人ですよ」

「そういうものか?」とボエモン。


一人の団員が言った。

「そういうものです。ところでそんな褐色美人、どこでゲットしたんですか?」

ボエモンにべったりと寄り添いっぱなしのノミデスを、羨ましそうに見る団員たち。



ジェルミと祖父母両家に首尾を報告するボエモン。

嬉々としてスパニアに引っ越す準備を始めるモンタギュー家とキャピュレット家。


だがジェルミは、ボエモンにべったりの褐色黒髪美女を見て。目を吊り上げた。

「あんた何よ」

そう言って食ってかかるジェルミに、精霊ノミデスは得意顔で言った。

「ダーリンは私のものよ。彼は地の底で私に言ったの。あのロンギヌスの槍なんかより、私が欲しいって」


ジェルミ、怒り爆発。

「な・・・何よ。ボエモン様は私のダーリンよ。結婚の約束したわよね? その女から離れてよ。ダーリン・・・ダーリンの・・・馬鹿ぁ」

そして壮絶な修羅場が始まった。



そんな様子を眺めて、お気楽な口調で好き勝手言うエンリと仲間たち。

タルタが「どーすんだ、これ」

「まあ、なるようになるだろ」とエンリ王子。

ジロキチが「俺の故郷にこんな話があるんだ」と言って、語り始める。


ある山寺に若い僧侶見習いが居た。彼は美形で、麓の村娘の憧れの的だった。

そして娘たちから多くの恋文が送られたが、彼は女性は修行の邪魔だとして彼女たちを無視し、ある日、溜った恋文をまとめて焼き捨てた。

するとその炎に、恋文に込められた娘たちの情念が宿り、若者の顔を醜く焼いてしまった。

若者はその顔を恥じて寺を出て近くの洞窟に籠り、やがて鬼となって仲間を集め、都近くの山に住み着いて女性を浚い、略奪を繰り返した。

都は五人の武士を派遣してこの鬼を退治した。


「怖い話ですね」

そうリラが言うと、ジロキチは「けど、この話には続きがあるんだ」と・・・。


千年経った頃、ある人の夢枕にこの鬼が現れて、彼に言った。

「最初、自分に想いを寄せてくれた娘たちの気持ちにちゃんと答えてあげれていたら、あんな事にはならなかった。これから自分は若い人たちの恋心を叶える神になろうと思うので、社を立てて祀って欲しい」

そして、彼を祀る社が建てられた。



アーサーが「ちゃんと想いに応えてあげれば・・・かぁ」

「いい話ですね」とリラ。

するとエンリが「いや、ちょっと待て。そのモテる奴に言い寄る娘って大勢居た訳だよね? その娘たちに一々応えてたらどうなる?」

「三又四又当たり前・・・って事になるよね」とタルタが言った。

「あ・・・・」



スパルタの首都は、いつものように多くの人で賑わっている。


そんな街角を歩く一人の女性に声をかける男性が居た。

「お姉さん一人? 暇なら俺とお茶しない?」

「あら、いい男ね」

いかにも軽そうな、それでいて相当なイケメンを見て、女性は思わずその気になる。

その男性が最近イタリアから転職して来たボエモン侯爵である事を彼女は知らない。

だが・・・。


「ダーリン、何してるのよ」

若い女の子と大人な褐色美人が、二人並んで怖い目で睨んでいる。

ボエモンは冷や汗交じりの造り笑顔で「ノミデスさん、ジェルミ、こりゃまた奇遇な」


「奇遇なじゃないわよ。私という者がありながら」

そう言ってボエモンに詰め寄るノミデスにジェルミは「その人は私のダーリンよ」

「何よ。私大地の精霊、あなた一般人でしょうが」とノミデスが切り返す。

「私は彼の妻ですからね。法律上の権利があるの」とジェルミ。

「そんなものに縛られない恋心で、私を欲しいと彼は言ったの」とノミデス。

ジェルミは「あなたは聖槍を人質にとって無理やりそう言わせたんでしょうが」


そして二人、声を揃えて「ダーリン、どうなのよ。私とこの女とどっちをとるの? はっきり・・・ってダーリンはどこ?」



通りの向こうへ逃げていくボエモン。

走りながら彼は叫んだ。

「ずっと我慢してきたんだ。俺の青春はこれからだ。たった二人の女に縛られてたまるか。世界の女は俺のものだ。浮気は文化だぁ」

「待ちなさいダーリン。普通は一人に縛られるんですからね」と声を揃えて叫ぶジェルミとノミデス。


逃げるボエモンに向けてアースブレッドを乱射するノミデス。サンダーボルトを乱射するジェルミ。

街の人たちに盛大に迷惑をかけながら、二人はボエモンを追いかける。


そして二人は、並んで彼を追いながら言い争う。

ジェルミが「いい加減身を引きなさい」

ノミデスが「あなたが引きなさいよ」

「彼は私の夫よ。あなたがやってる事は不倫よ。人の道に反するのよ」とジェルミ。

「私、人じゃなくて精霊だもーん」とノミデス。


ボエモンが大通りに入る。

直線道路を走る彼の背中に攻撃魔法の狙いをつけて、撃ち出しながら二人の女は叫んだ。

「ダーリンのばかぁ!」

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