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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第135話 聖槍の回収

シチリア騎士団長ボエモン侯爵。

かつて聖槍ロンギヌスを振るう最強の騎士とうたわれた彼は、スパニア内乱でエンリ王子と戦い、エンリが大地の魔剣により起こした地割れに呑まれて聖槍を失った。

その彼が、彼に恋する少女ジェルミの想いに応えるため、失った聖槍ロンギヌスの回収と、そして恋愛の自由を認めるスパニア国教会聖騎士への転職を決意した。



エンリはボエモンとともにスパニア首都へ。

イザベラ女帝に用件を伝えて、郊外の平原に向かう。かつて内乱の戦場だった所だ。


「ここですよね」

そう言ってアーサーが指した場所。

内乱の際に魔剣と融合した岩盤が当時のままだ。

エンリはボエモンに、過去の世界で見た、先祖が湖の精から魔剣を貰った時の話を語った。

「落とし物を返す湖の精の話は聞いた事はありますが、まさか本当に・・・」と真剣な表情のボエモン。



エンリはそこに大地の魔剣を突き立てて、呪句を唱えた。

「我が大地の剣よ。ミクロなる汝、母にしてマクロなる大地と繋がりて、ひとつながりの我が剣たれ。烈震を以て大地を刻み地の底に至らん。地割れあれ」

激しい大地の揺れとともに地は裂けて深い地割れが生じた。

その底に真っ赤に焼けた溶岩が見える。


アーサーの風魔法で溶岩の縁に降り立つアーサー、エンリ、そしてボエモン。

「熱いですね」とアーサー。

エンリも「あまり長居は出来んな」


ボエモンは溶岩に果物ナイフを投げた。

そしてアーサーが召喚の呪文を唱える。

「汝、大地の精霊。万物を産み育む世界の母よ。汝の名はノミデス」

溶岩の上に魔法陣を描き古代文字を配する。

「ノミデスよ。地の底に沈みし宝器を携え、我が前に姿を示せ。召喚あれ!」



褐色黒髪の大人な巨乳美女が薄絹を纏って溶岩から姿を現した。

その手に果物ナイフとロンギヌスの槍。

「湖の精と随分違うな」とエンリ。

「大地は万物を産む母の力の源ですからね。地母神デメテル、性殖神イシュタル、家庭神ヘスティアはみんな同じ大地神の別の面を現した女神ですよ」とアーサー。

「だからヘスティア様は巨乳なのか」と、妙な事に納得するエンリ。


そんなエンリたちを他所に、溶岩の上に立つ大地の精はボエモンに問う。

「あなたが落としたのは、こちらの豪華な聖槍ですか? それともこちらの果物ナイフですか?」

ボエモンは嬉しそうに身を乗り出して「その槍です。私のロンギヌス」


だが、そんなボエモンに精霊は言った。

「違いますね。あなたが落としたのは、こちらの果物ナイフです。あなたは強欲です。強欲は罪であり、ただ失うのみです」

そして精霊は溶岩に消えた。

ボエモン唖然。

そして「いや、その槍も俺が落としたんだが」と涙目で呟く。


エンリは、あきれ顔でボエモンに言った。

「あのさ、こういうののテンプレ、知ってるよね?」



再びボエモンは果物ナイフを投げ、アーサーは呪文を唱える。


溶岩から出現する大地の精。

「あなたが落としたのは、こちらの豪華な聖槍ですか? それともこちらの果物ナイフですか?」

ボエモンは「その果物ナイフです」


「ではどうぞ」

そう言って、大地の精はボエモンに果物ナイフを渡し、聖槍を携えて溶岩へ消えた。

ボエモン、涙目で「それも俺の槍・・・」



残念な空気が漂い、ボエモンが感情的な声でエンリに「どーすりゃいいんだよ」


そんなボエモンにエンリは「まあ、落ち着いて。さっき俺が話した事、憶えてるよね?」

「まさか、本当にやるの?」

そう言って困り顔を見せるボエモンに、エンリは「成功例だからね」



ボエモンは果物ナイフを投げ、アーサーは呪文を唱える。

溶岩から出現する大地の精。

「あなたが落としたのは、こちらの豪華な聖槍ですか? それともこちらの果物ナイフですか?」

ボエモンは大地の精の頬に手を当てて言った。

「そんなものより、君が欲しい」

大人な黒髪巨乳美女の姿の精は頬を染めた。


目的物を回収したボエモンは、エンリ王子とともに、アーサーの風魔法で地上に戻る。

そして、ロンギヌスの槍を持つボエモンにしがみついて、その胸に頬ずりする黒髪美女の精霊。

「いいのか? これで」と呟いて、ボエモンは頭を抱えた。



エンリ王子はボエモンをスパニアの宮廷に連れて行き、スパニア国教会付聖騎士として雇用契約。


ご満悦の体でイザベラは言った。

「スパニア国教会の凄い戦力だわ。それにロンギヌスの槍は聖杯に負けない聖遺物よ。他の教会に凄い差をつける事になるわね。聖杯を無駄にしちゃったヘンリー王なんか地団太踏んで悔しがるでしょうね」

「そういう台詞は謹んでくれないかな。外交問題になるぞ」と頭痛顔のエンリ。

「言ったという証拠が残らなければいいのよ。それよりその槍、普段はトレドの大聖堂に預けて貰えないかしら。巡礼者がわんさか来てお布施を稼げるわ」

そう楽しそうに言うイザベラに、エンリは「まさか槍のお告げで先祖の霊がとか言って壺売ったりしないよね?」

「儲かるのに」とイザベラ。

エンリは「頼むから止めて」



そしてイザベラはボエモンにベッタリの黒髪褐色美女を見て、言った。

「で、そちらが大地の精霊さんね?」

「ノミデスよ」と名乗る大地の精霊。

「大地の女神は豊穣を司る。あなたが居ればスパニアの農業は安泰ね。歓迎するわ」

そう言うイザベラに精霊は「だったら、一つ欲しいものがあるんだけど」

「何かしら?」


精霊ノミデスは言った。

「このボエモンというイケメンな人。既婚者だっていうんだけど」

「好きにすればいいわ。スパニア国教会では恋愛は自由よ」と無責任な事を平然と言うイザベラ。

ボエモンは困り顔で「あの・・・女帝陛下?」

「恋愛は自己責任でよろしく」と、更に無責任なイザベラ。


ボエモンは更に困り顔で「エンリ王子?」と彼に助け船を求めるが・・・。

エンリはボエモンの肩にポン、と手を置いて「良かったじゃんモテモテで」

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