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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第103話 宝具の精霊

鉄仮面を追い詰めたエンリ王子たちと三銃士。その時、アーサーが看破の魔法を使って見た鉄仮面の素顔はルイ王のものだった。

辛うじて包囲を脱した鉄仮面は、怪盗ルパンと一緒に風俗店に居た所を、偶然居合わせたタルタたちの通報で捕縛された。

そして、マーリンとポンパドール夫人を伴ってホストクラブに入り浸っていた本物のルイ王の帰還により、鉄仮面の正体は王の双子の弟のオルレアン公フィリップと判明した。


「王様の弟ってあんなのですか?」

そう言うエンリにルイ王は「いや、普段は至って真面目な奴なんだが」

「王宮からは遠ざけられてましたけどね」とリシュリュー。

「それで不満が爆発?」とアーサー。

アンヌ王妃は「王への忠誠心は人一倍ある方でしたから。それで王位争いになる事を恐れて、自ら身を引いたのです」

「そんな人が・・・」とエンリは言うと、鉄仮面を見て溜息をついた。



そんな事を話すルイ王とエンリたちを他所に、鉄仮面はアンヌ王妃にセクハラ発言を連発し、激怒する三銃士をコンスタンツが必死に宥めている。

そんな鉄仮面を暫し眺めると、王は言った。

「お前、フィリップじゃないだろ」

鉄仮面は「そう思う? なら、私は誰でしょう」

ルイ王は「お前、仮面に取り付いた魔物だろ」

「な・・・・」


「思い出した!」

そう言ってアーサーは記憶の魔道具を出して映像を再生。

映像の中のエンリが謎の仮面を付けて、痛いポーズとともに「我は世界の裏に封じられし邪神の転生、闇のヒーロー、ロキ仮面」


エンリは慌てて「止めろ、人の黒歴史を」

そんなエンリにアーサーは、映像の中のエンリの仮面を指して「見て下さい。この仮面」


映像の中のロキ仮面と目の前の鉄仮面を見比べるエンリ王子。

そして叫んだ。

「そうか。どうりで見た事のある仮面だと思ったら」

タルタが「あの時王子がかぶってたのと同じ」


「そもそもあの仮面って?・・・」

そう問うレラに、エンリは言った。

「ノルマンのカール王子から借りたんだよ。元々あそこの城の宝物蔵にあったもので、ワルキューレ養成学校でハロウィンに使う予定で持ち出したんだそうだが」

ジロキチが「それがノルマン王都再建費用のために他の財宝と一緒に売りに出されて、こんな所に流れ着いたと?」

「それを王子もつけたんですよね?」とカルロ。

「あれを付けたら、やたら気分がハイになってさ、台詞とかポーズがスラスラ出て来るんだよ」


そんなエンリに鉄仮面は笑いが止まらないといった体で「あの時は面白かったなぁ。"闇が呼ぶ、陰が呼ぶ、神を倒せと魔王が叫ぶ"」

エンリは「止めろ・・・ってか、あれはお前の仕業かよ」

鉄仮面は「あの時のドイツ兵があんたを見てた痛い視線・・・ぶわーっはっはっは」

「止めろーーーーーーー」

そして落ち込むエンリ王子。


「で、お前は何なんだよ」

そう問うダルタニアンに鉄仮面は「さっきも言ったじゃん。俺はロキ。ノルマンの民が崇める正真正銘の神様だ。控えおろう頭が高いっ」

「いや、邪神だろ」とアラミスはあきれ顔で言う。

「つまりはケツァルコアトルと同じ、像やら宝具やらに取り付いて、悪戯をする精霊だよな」とアーサー。

鉄仮面は「ちゃんと神話にも名前が載ってるぞ」


「そんな事はいいんだよ。とにかくフィリップから離れろ」とルイ王。

「やなこった」

そう言って居座りを決め込む鉄仮面に、ルイ王は「あいつの自我をどうした?」

「眠ってるよ。お前さんの夢でも見てるんじゃねーの?」と鉄仮面。

「どうしますか?」と困り顔のリシュリュー。



その時、ジロキチが言った。

「あの、俺の故郷にこんな話があるんだが」

「ジパングに?」とエンリ。


ジロキチがジパングに伝わる昔話を語った。


昔、仲の良い母と息子が居た。やがて息子は隣村から嫁を貰った。

嫁は気立ての良い娘で、そして信心深く、たいそう夫婦仲が良く、しばしば近くのお寺に通い、信者たちの間ではおしどり夫婦として評判だった。

だが母親は息子を取られたような気持ちになり、次第に嫉妬心を抑えきれなくなった母親に、一人の男が一枚の鬼の面を出して言った。

「このお面は肉付の面と言って、かぶれば本物の鬼のようになれる。これを被って脅かしてやるといいよ。けど、面を長い事つけたままにすると、大変な事になりますよ」

母親はそれを受け取り、二人がお寺から帰る夜道で、それをかぶって彼等の前に躍り出た。

息子と嫁は肝をつぶして逃げ出し、母親は嫁の慌てぶりを見て大笑い。

すっきりした所で母親は面を外そうとしたが、どうしても外れない。母親が困っていると、さっきの男が現れて、言った。

「忠告しましたよね? その面をつけたままにしていると、体の一部になるんです。そしてやがて顔だけでなく、全身が鬼のようになって、身も心も鬼になってしまうのですよ。ドーン!」



「それって・・・」

そう一様に呟く仲間たちに、アーサーは「この鉄の仮面と同じ類の宝器精霊なんだろうね」

「じゃ、外れないのかよ」とタルタ。

鉄仮面は得意げに「手遅れだね。この体はもう俺のものさ」


するとエンリが言った。

「まてよ、俺もこいつをかぶったんだよな」

「もう少しかぶってたら、お前も俺のものになったんだが」と鉄仮面。

「こ・・・怖ぇーーーーーー」とエンリは肩を竦める。


「けど、あの時は外れたよね?」とタルタ。

「不殺の呪いをかけた槍で一旦死んだからな」とエンリ。

アラミスが「じゃ、フィリップ殿下も不殺の呪いの刃物で殺せば」

「お前やれよ」とタルタがアラミスに・・・。

アラミスは「嫌だよ。王族殺しは重罪だ」


するとリラが「それより、ジロキチさんの昔話って、続きは無いの?」

「あるよ」

そう言って、ジロキチは昔話の続きを語った。



母親は家に帰り、半ば鬼と化した姿で布団を被って引き籠っていたが、不安に耐えられなくなった彼女は息子夫婦に事実を打ち明けた。

すると嫁は言った。

「私たちが通っているお寺の住職様はとても徳の高い方で、きっと助けてくれます」

息子夫婦は二人で母親を連れて寺に行った。

住職は話を聞くと、母親の前でお経を唱え、その功徳でお面はぽろりと外れたという。



「坊主の説教に効き目とかあるのかよ」とダルタニアン。

タルタが「嘘臭ぇー」

鉄仮面が「だだだだよな。そんなの坊主が宣伝用にでっち上げた作り話に決まってるよ。あは、あはははははは」



そんな鉄仮面にアトスが「お前、動揺してない?」

「ななななな何の事だよ」と慌て声の鉄仮面。


アトスとポルタスが鉄仮面の両脇を抑えた。

そしてアトスが「ものは試しです。坊さんに説教して貰いましょう」

「冗談じゃない。そんなつまらんものに付き合わされてたまるか」と喚く鉄仮面。

「けど、生半可な僧侶じゃ利きませんよね?」とアラミス。

するとリシュリューが「うってつけの奴が居るぞ。フランス国教会タレーラン総大主教。本人にその気さえあればいつでも教皇になれるって言われてるくらいの大物だよ」



暴れる鉄仮面をポルタスが担いでノートルダム大聖堂へ。


いかにも高位の僧侶といった服装の男性が彼らを迎えて言った。

「お待ちしていました。私がタレーランです。そちらが魔物に取り付かれたフィリップ殿下ですね?」

鉄仮面はジタバタと藻掻きながら「魔物じゃないぞ。俺はロキ。神話にも出て来るれっきとした神様だぞ」


そんな鉄仮面を無視して「では始めましょう」と・・・。

鉄仮面は「俺の話を聞けよ!」



椅子に縛り付けた鉄仮面を前にタレーラン総大主教の説教開始。

一時間、二時間と説教は続く。


同席していたエンリの仲間たちの忍耐にも限度が来る。

「これ、いつまで続くの?」とファフ。

「ってか本当に偉い坊さんなのかよ。滅茶苦茶話がつまらんのだが」とエンリ。

「今言った事って、これで四回目ですよね?」とリラ。

アーサーが「俺たちもう帰っていいよね?」

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