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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第101話 仮面の国王

エンリ王子夫妻がフランスを訪問してルイ王夫妻が主催する夜会に招かれた直後のルイ王の失踪、そして翌日、アンヌ王妃の馬車を襲った仮面の変態露出魔。

その事件を捜索する衛士隊に、仲間とともに手を貸す事になったエンリ王子たちは、衛士隊の詰め所で話を聞いた。



先ず、衛士隊員たちにアーサーが言った。

「とりあえず、これまでの事件についての情報を整理しようか」

「ってか、銃士隊とは別個に捜査してるんだよね。情報をつき合わせるべきだと思いますよ」とカルロ。

「奴等は足手纏いで捜査の邪魔だ」と衛士隊隊長。

ジロキチはあきれ顔で「向うもお前らの事をそう言ってると思うぞ」

隊長はむっとした顔で「事件は我々だけで解決できる」


「その前にお前らに話したい人が居るんだが」

エンリがそう言って、衛士隊隊長に通話の魔道具を渡す。

魔道具の向うから「隊長だね?」

「リシュリュー閣下。いえ、彼等は・・・了解しました」

隊長は焦り顔でそう言って通話を切る。そして隊員たちに言った。

「宰相閣下が銃士隊と協力して捜査しろと仰っている。不本意だが仕方がない」



銃士隊の詰め所に向かう衛士隊とエンリ王子たち。

「ですが隊長、まさか奴等に頭を下げろと?・・・」と歩きながら一人の隊員が隊長に・・・。

するとエンリが言った。

「向うにも王妃様から話が来てる筈だよ。ファフのドラゴンを王宮に飛ばして、お使いを出したんだ」



銃士隊の詰め所で双方の情報をつき合わせる。双方、魔導局の魔導士の協力を得て捜査を進めていた。

双方の話を聞いてエンリは言った。

「どちらも目撃情報は乏しいですか?」


「隠身の魔法を使っているのだと思います」と銃士隊側の魔導士。

「それに、かなり身軽で逃げ足も速く、神出鬼没」とアトスが顔を曇らせる。

「奴の隠れ家をダウジングで探すとか出来ないの?」とカルロ。

「魔力の隠蔽が相当巧妙です」と衛士隊側の魔導士。

「残存魔素とかは?」とアーサー。

銃士隊側の魔導士は「遺留品とかがあれば良いのですが」


エンリは言った。

「最初に奴と遭遇したのはアラミスだよね?」

ポルタスが「それが、王妃様の乗った馬車を護衛して手玉に取られたと、落ち込んでいて」

「何と軟弱な」と衛士隊隊長。

そんな彼にアトスは「お前、あいつと闘って勝った事無いよね?」

「何だと!」と激高する衛士隊隊長。

エンリが「まあまあ、とにかく無理にでも話を聞くしか無いだろ」



「おいアラミス、入るぞ」

そうアトスが言って、一同、アラミスの部屋に入ると、部屋の中でアラミスは、座禅を組んで瞑想していた。

アラミスは「しばらく一人にしてくれ」

「今は非常時だ」とアトス。

「自分の未熟さを思い知った。こんな俺では、またみんなの足を引っ張る」とアラミス。

「そんな事は・・・」と困り顔のポルタス。

アラミスは苦渋の表情で「アンヌ王妃を守れなかった」


するとアトスが言った。

「だから何だ。あの時お前は一人だった」

「いや、俺たちも居たんですが」と、警備に随行した隊員たち。

アトスは「お前らモブ隊員はいいんだよ」

「そんなぁ」


そう残念な顔で言う隊員たちを他所に、アトスは言った。

「俺たちは三銃士だ。三人居てこそ力を発揮できる」

「あの・・・、俺は?」とダルタニアン。

アトスは「お前は見習いだろ」

「そんなぁ」


そう残念な顔で言うダルタニアンを他所に、アトスは言った。

「あの時、俺もポルタスも居なかった。だからお前は力を発揮出来なかった。今、俺たちにはお前が居ない」

アラミスは言った。

「解ったよ。俺たちは三人で一つだ」

「あの、俺も・・・ですよね?」とダルタニアン。


互いにレイピアを抜いて上に掲げ、三人の結束を誓う三銃士を他所に、ニケが言った。

「ところで、さっきから何か臭くない?」

「何だろう」と一同周囲を見回す。

そしてアトスはアラミスに「お前が座禅組んでる下に敷いてたもの、そりゃ何だ?」


アラミスは「鉄仮面が着ていたマントだ。あの時の屈辱を忘れないために・・・」

「臥薪嘗胆ってやつかよ。けどそれって薪を並べた上だぞ」とアトス。

アラミスは「それだと痛いだろ」

「あのなぁ」とあきれ顔で言うアトス。


カルロはそのマントを手に取って、言った。

「って事はこれ、遺留品だよね?」

「これで奴の魔素を特定できる」と喜ぶアーサー。



特殊仕様のダウジング棒に、マントに残留していた魔素を登録。

カルロがそれを持って、棒が導く方向へ歩く。

詰め所の前の道を右へ曲がり、次の角を右へ。さらに次の角を右へ。

「ここだ」

そう言って立ち止まるカルロに、リラが「けど、ここって銃士隊の詰め所ですよね?」

「あ・・・」と一同唖然。


その時、一人の銃士隊員が持っていた遺留品のマントがふわりと宙に浮かぶと、高笑いして言葉を発した。

「無限ループご苦労さん」

声が終わって地面に落ちる遺留品のマント。


「ダウジングに使われる事を見越して細工を仕込んだって訳か」と驚き顔のアトス。

「子供の悪戯かよ」とあきれ顔のエンリ。

「やっぱり俺は未熟だ」

そう言って落ち込むアラミス。



その時、アーサーが言った。

「いえ、それ、ちょっと貸してくれますか」

エンリは「アーサー、何か解るのか?」

「気ですよ。ミン国に行った時に読み方を教わったんです」とアーサー。

「気って何ですか?」と銃士隊側の魔導士が、きょとんとした顔で尋ねた。


アーサーは言った。

「東洋の魔導士が重視する霊的エネルギーです。魔素は人間の魂の領域に属するメンタル体が発するもので直接魔法に関わりますが、気はその下の領域に属して、肉体に宿る生命力に関わったりするものです。鉄仮面はきっと、それを手掛かりにする者がいる事を知らない」

「けど、ダウジングはそれを使うようになってないですよね?」と衛士隊側の魔導士。

「奴が事件を起こす時、気配として空から探知する事は出来ます」とアーサー。



アーサーはドラゴンに乗って隠身魔法で姿を隠しながら、夜のパリの街を空からパトロール。

そして、街の一画に鉄仮面の気配を感知した。

「奴が現れました。ある貴族の屋敷に入った所です」と念話で仲間たちに連絡。


銃士隊と衛士隊で屋敷を包囲し、エンリたちと三銃士が屋敷に乗り込む。

そして空からドラゴンとアーサーが、鉄仮面の前に舞い降りた。

「現れたな、鉄仮面」と言って身構える三銃士たち。

「よくここが解ったな」と言って身構える鉄仮面。


始めて目の当りにした彼を見て、エンリ王子は思った。

(この仮面、どこかで見たような・・・)

「とにかく鉄仮面、逮捕だ」と叫んで迫る彼らに、鉄仮面は言った。

「そううまくいくかな?」



無数の鉄仮面が現れる。

「幻覚魔法だ」

そう叫んで、アーサーがアンチ魔法で幻覚を破る。

鉄仮面が巨大烏を召喚する。

ファフが炎を吐いて烏を追い払う。


四人の銃士が切りかかるのを除けながら、鉄仮面は刀を抜いてアーサーに迫る。

その前にジロキチとタルタが立ち塞がり、その背後でアーサーは看破の魔法で鉄の仮面の下を覗いた。

それを見てアーサー絶句。

そして呻いた。(そんな馬鹿な)


斬りかかる鉄仮面の刀をタルタが鉄化で受け止め、その背後からジロキチが跳躍して四本の刀で鉄仮面に斬りかかる。

そのジロキチの剣戟を全てかわす鉄仮面。その時、鉄化を解いたタルタが鉄仮面の腕を掴んで投げ飛ばした。

「仮面分身」

そう鉄仮面は空中で叫ぶと、空中に無数の仮面が出現して宙に浮いた。それを足掛かりに宙を駈け上る鉄仮面。

ニケが短銃を連射し、エンリが光の巨人剣を振るうが、それらをかわして鉄仮面は姿を消した。



「逃げられたか」

そう残念そうに呻くエンリにアーサーは「あの、王子。奴の顔・・・」

「どうした?」と尋ねるエンリに、アーサーは言った。

「看破の魔法で見たんです。あれはルイ王でした」


「何ですとーーーーーー!」

その場に居た全員が絶句。



包囲を逃れた鉄仮面は、別の貴族の屋敷に潜り込んだ。

「危ない所だった」

そう言って、そこに座り込んで一息ついている鉄仮面に、一人の男が歩み寄って話しかけた。

「あんた、この家の人じゃないね?」


「お前は?」

そう訊ねる鉄仮面に彼は言った。

「俺は泥棒さ。人は俺をこう呼ぶ。怪盗ルパンとね」

「つまり同業者って訳だ」と鉄仮面。


ルパンは「その仮面、今世間を騒がせてる鉄仮面だよね?」

「まあな」

そんな鉄仮面にルパンは「俺と組まないか?」

「いいね。けど、美人と組む主義じゃ無かったっけ?」と鉄仮面。


ルパンは言った。

「その場によるさ。それよりその仮面、結構なお宝なんじゃないのか?」

「これはやらんぞ。ってか、やろうにも外れないんだ」と鉄仮面。

「なるほどな」と頷くルパン。


「それよりここには、盗みか?」

そう問う鉄仮面にルパンは「まあね。フランス貴族は金持ちだから、みんな結構なお宝を抱えてる」

「手を貸すぞ」と鉄仮面は言って、二人は握手を交わした。



アンヌ王妃とリシュリューは、銃士隊と衛士隊の報告を受け、エンリ王子たちも同席する。

「本当にあれがルイ王だと・・・」

そう言って溜息をつくリシュリューに、アーサーは「確かに見ました」

「けどなぁ」とリシュリュー。

アンヌ王妃は「言われてみれば、確かに背格好は陛下と同じでしたわ」


「けど陛下は何故そんな事を」とアラミス。

アトスは「乱心したとしか・・・」

「こんな事が外部に知られたら・・・」と衛士隊隊長。


エンリは言った。

「では我々はポルタに戻ります。これ以上外国の王家として首を突っ込む事は、国際問題になりますので」

リシュリューは「そうして頂けると助かる。それと、この件はどうか内密に」

「教皇派の耳にでも入ったら厄介な事になりますからね。我々は明日、この国を立ちます」とエンリは言った。 

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