私のお願い事
とある町の町外れに、小さな小屋がありました。
その小屋には、リアという小さな女の子とお父さん、お母さんが暮らしていました。
リアは少し内気で寂しがり屋な、小さな6歳の女の子。
そんなリアには、毎日一緒に遊んでいたお友達がいました。
レイラ、リアの幼なじみの女の子です。
リアにとって、レイラに会って一緒に遊ぶ時間が一番の楽しみでした。
レイラと一緒にいることが、リアの幸せと言ってもいいくらいでした。
けれども、レイラとの楽しい時間は、そう長くは続きませんでした。
レイラは隣町に引っ越してしまったのです。
「引っ越すから、リアちゃんとはしばらく会えなくなっちゃうの。ごめんなさい…」
突然、そう言われました。
レイラがいなくなってからリアは、寂しさで毎日毎日泣いていました。
お父さんとお母さんに甘えて、少しでも寂しさをなくそうと思ったこともありました。
でも、お父さんとお母さんに甘えても甘えても、リアの寂しさが消えることはありませんでした。
そんなある日の夜、リアは自分の部屋で一人過ごしていました。
さっきまで泣いていたので、ほっぺたが涙で濡れています。
「あれ、なんだろう…」
何気なく、窓の外を見たリアが言いました。
窓に近づいて、もっとよく見てみました。
「わあ……!」
リアの目に映ったのは、真っ黒なお空にきらきら輝くお星さまに、真っ白な線を描きながらどこかへ向かってゆく流れ星でした。
「あのきれいなお空、パパとママにも教えてあげなきゃ」
ほっぺたを濡らしている涙をぬぐうのも忘れて、リアはお父さんとお母さんのもとへ走りました。
リアは、今さっき見たきれいなお空のことを、それはもう楽しそうにお父さんとお母さんに話しました。
一通り話し終わるとお母さんが、
「笑顔でお話をするあなたに、涙は似合わないわ」
と、ほっぺたに溜まったままの涙を拭いてくれました。
「ママ、ありがとう」
リアは笑顔でそう言いました。
「ねえ、さっきのお話を聞いてて気づいたのだけれど、リアはもしかして流れ星を見たんじゃないかしら」
「流れ星?」
リアはきょとんとしながら言いました。
「そう。流れ星はね、見えてる間にお願い事を言うと本当に叶うっていう言い伝えがあるの。リアも、次また流れ星を見たら、何かお願い事をしてみればいいんじゃないかしら」
「私の、お願い事」
リアはささやくように言いました。
「私、もう一回流れ星さん見つけてお願い事言いたい」
リアは自分の部屋の窓へ走りました。
その日から毎晩、リアは自分の部屋の窓の前に立って流れ星を探しました。
毎日必死に探しました。
けれども、見えるのは真っ黒なお空にきらきら輝いているお星さまだけ。
流れ星は見つかりません。
それでもリアは諦めませんでした。
お願い事を言うために、探し続けました。
そんな日々が一月程続いた頃、その時は突然やって来ました。
「あ、あれ…!」
リアの目に映ったのは、あの時と同じ真っ白な線を描いていくもの。
流れ星でした。
(は、早く、お願い事、言わなきゃ…!)
「も、もう一回…、レイラちゃんと会えますように!」
夢中で叫びました。
「これでお願い事が叶う…のかな?ふわあ……あれ、なんだか眠くなってきちゃった…」
流れ星を見つけられて、お願い事も無事に言えたことで安心したのか、リアはそのまま眠りについてしまいました。
流れ星にお願い事を言った翌日、いつもの何気ない一日が始まりました。
そのまま時間は過ぎて、そろそろお日さまが地面の中へ隠れそうになってきた頃、ドアをノックする音が聞こえました。
(誰か来たのかな。うちに誰か来るなんて、珍しいな…)
そう思いながらドアを開けました。
「──!」
目の前には、信じられない光景が広がっていました。
「レイラ…ちゃん?ほんとにレイラちゃん?」
リアは目の前でにこにこしている女の子に向かって震える声で言いました。
「うん。久しぶり、リアちゃん。会いたかったよ」
この信じられない出来事をお父さんとお母さんに話すと、二人は笑って答えました。
「リアを驚かせたかったから、レイラとそのご両親が遊びに来ることは内緒にしてたんだ」
お父さんが説明してくれました。
「ほら、リアちゃん。早く一緒にお部屋に遊びに行こうよ。あ、今日はお泊まりだから、夜遅くまで遊んでも大丈夫なんだ。それで、遊び終わったら…一緒に寝よ?」
「うん…!」
私はこたえました。
流れ星さんに感謝をしながら、
心の底から湧き出てくる幸せを噛みしめながら。
(私のお願い事を叶えてくれてありがとう、流れ星さん)