その5
鍵を差し込んで扉を開けると室内は熱気が隠っていた。だが窓を開けると、風が通り過ぎていき、すぐに涼しくなる。
「エアコンもあるけど、いい風も吹くよ、ここは」
この建物は木造を基本としたログハウス作りだ。玄関隣にウッドデッキがあり、二脚の椅子とパラソルが設置されている。一階は二十五畳のリビングにキッチン、トイレとバスルーム、二階は十五畳にキングサイズのベッドの寝室とベランダ。目の前には白い砂浜と青い海が広がる。裏手は雑木林と駐車場のみだ。それがこの建物の全景である。
「冷蔵庫の中には、ある程度の食べ物と飲物を入れて置いたけど……」
マコは周囲を確認しながら冷蔵庫を開けた。つまみのような物やビールやワインが詰まっている。
「その、オレ、てっきり年輩の人が来るかと思ってて。親父が君たちの事、あんまし教えてくれなかったから」
男は頭を掻きながら、申し訳無さそうに呟いた。
「あっ、そうそう。オレは管理人の息子で、君たちのお世話係をする事になったんだ」
キノは宮島を改めて凝視した。背が高く、男らしい肌の色と逞しい体つき、この浜辺にふさわしい爽やかな印象だ。
「逢ってびっくりした。正直、こんな凄く可愛い娘たちが、こんな場所に二人で来てるなんて思わなかった」
少し赤面して白い歯を見せ、再び頭を掻いている。第一印象で率直な感想だ。
「キノ、私たち可愛いって褒められたよ」
マコは嬉しそうにキノと腕を組む。
「ははは」
男の言葉に嬉しがっている彼女を見て、引き吊った笑いしか出なかった。
「主役は僕らだぞ」
と小さく呟いている。
「じゃ、何かあったら、ここへ電話してよ」
宮島は鍵を入れていたポケットと反対の方から紙切れを取り出し、テーブルのリモコン類の横に置いた。そこには管理人の自宅らしき電話番号が書いてある。
「あっ、そうそう」
思いついたようにボールペンで紙の余った場所に更に書き込んだ。
「これ、オレの携帯番号。ここに一番にどうぞ。すぐに飛んでいくよ」
マコは微笑んで紙を受け取る。彼女はまじまじとそれを眺めた。
「そりゃ、ご丁寧にどうも」
その紙を細い指でマコの手から摘まみ上げ、頬を膨らませて答える。
「もしもの時しか連絡しないから、ご心配なく。宮島さん」
その膨れっ面を見て、男は何がいけなかったのかわからない複雑な表情をした。マコは溜め息混じりに困った顔を見せる。
「じゃあ、オレはこれで。お二人とも、いいバカンスを」
駐車場に止めてあった大型バイクで、宮島は手を振って去っていった。同じ様に手を振って見送りしたマコはキノに向き直る。
「キノ。もう少し愛想良くしなきゃ。お世話になるんだし」
仁王立ちで、ちょっと眉が上がっていた。
「ふん。あんなのいなくても、マコは僕が守るさ」
頭の後ろで腕を組み、口を尖らせる。
「もう、何故、そんな話になるのよ」
呆れた表情になるが、「この計画は私のために、キノが一生懸命に考えたこと」と思うと、マコは許せてしまうのだった。
その夜は二人とも慣れないことに疲れたのか、軽い食事とシャワーの後、すぐに深い眠りに就いてしまった。
ただいつものベッドより大きく、二人とも近い距離でー。




