表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キノは〜ふ! Return  作者: 七月 夏喜
第1話 キノとマコとおんなキノと
3/87

その3

 土曜日、朝からマコの姿はなかった。

「お友達と会う約束があると言われてました」

「そうか」

 亜紀那は、朝食を用意し始める。

「誰と?」

「そこまでは聞いていません。キノ様こそ、ご存知無いのですか?」

「……いや、聞いてない」

 キノは大きなため息をついた。

「どうかされましたか」

「亜紀那さん、最近マコの様子どうかな?」

 トーストをひとかじりする。そして苦みの効いたコーヒーを飲んだ。

「さあ、今朝もにこやかでしたよ。何も特に感じませんでしたが……」

 彼女はキノの苦悩する顔を見つめる。

「大丈夫ですよキノ様。それともマコ様が誰と会うのかが、ご心配なのですか」

 キノは飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになった。驚いて、亜紀那の方を向く。

「と、とんでもない」

「そうそう、それでいのです。それにキノ様は、女の子と違って男子ですよ。もっとどっしりと構えていなくては」

 亜紀那は、目玉焼きとベーコンを皿に盛り、机に置いた。

「そう、だけど」

 キノは椅子の上で膝を抱え、いつかの夜のことを思い出す。おんなキノのことが、なぜだか頭に浮かんだ。亜紀那は遠目でキノを見つめている。

「……キノ様。まだまだ色々、ありますわ」


「マコさん! こっち、こっち!」

 遠くから『本田千秋』の声が聞こえた。マコは駆け足で、彼女のもとに急ぐ。千秋は手を振って待ち合わせの場所で微笑んでいた。

「ごめん、少し遅れちゃった」

 マコの息が荒い。

「大丈夫、私も今来たとこ」

 千秋はマコの顔をまじまじと見た。マコは不思議そうに見つめ返す。

「どっ、どうかした?」

 千秋は、マコの近くに寄り添った。

「マコさん随分、綺麗になったね」

 彼女はマコの肩に手を回す。久しぶりの突飛な行動にマコは少し驚いた。

「すっかり、鈴美麗家の妻だね」

 彼女は向き直って、マコの顔を凝視する。目が真剣だ。

「千秋ちゃん?」

「キノマコ2世は?」

「え、え、え、え」

 千秋は顔をじっと顔を覗き込んだ。マコは赤面して、体を硬直させる。

「冗談、冗談。マコさんったら、間に受けちゃって」

「ちょ、ちょっと、もう!」

 マコは膨れた。

「でも、きっと可愛い子になるんだろうなあ。キノちゃんとマコさんのベビーは」

 煌めく瞳の千秋の顔は恍惚としている。

「本当に、まだなの」

 どんな想像をしているのかマコにはわからないが、焦って話を変えた。

「千秋ちゃん。そ、そんなことより、何かあったの」

 千秋は我に返ったように、体を動かす。

「どこか、ゆっくり座って話ししよう」

「う、うん」

 マコは胸を撫で下ろして、彼女の後を追った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ