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21 手がかり

「教団には、アーレのことは?」

「話しておりません。…あのような連中に、話せるものですか」

 フリッツの話が真実であれば、アーレは最初の想定通り、誘拐の目撃者を消すために連れ去られたと思った方がいいだろう。

「教団が利用しそうな施設を教えてもらいたい」

 アルトゥールが地図を広げると、フリッツは地図のなかに十の印をつけた。

 この中から、テオ少年が保護された街と洞窟をつなぐ街道に近く、移動に半日かからない場所は三つあった。ウィンダル領と重なるところもあり、手続きを待っていたら遅くなってしまう。一刻を争う事態だ。

 アルトゥールは地図を握り、取り調べの部屋を出た。


 遠出の準備をしていると、客が来たと呼び出された。

 面会室に行くと、待っていたのはエッフェンベルガー子爵だった。教団が起こした事件のことも、アーレのことも知っているようだった。

「すみませんが、手短にお願いします。これから出かけるので」

「アーレを探しに行ってくれるんだろう?」

 そう言うと、子爵は何かの野菜の茎を、葉が着いたままの状態で取り出した。

「教団がらみの事件と聞いた。奴らはよく特殊な眠り薬を使う。もし、眠ったままになっていたら、連中の薬にはこれが効く。滋養の実の葉だ」

「実じゃなくて、葉ですか?」

「連中の薬は毒消しの実も効果が薄い。この葉を一度に三枚煎じて最低でも三日間飲ませれば、しびれもとれ、目覚めてからの記憶障害もないだろう」

 記憶障害。十二年前の事件で、アーレが負った後遺症だ。

「なかなかやっかいな薬でね。時々ウィンダルで同じ薬を使った事件があり、ウィンダルと共同で解毒の研究をしてきた。私の本来の専門は薬学でね…。効き目は保証する」

 アルトゥールは滋養の実の茎を受け取ると、少々かさばったが、葉をちぎらず、茎をゆっくりとたわめて鞄に入れた。

「何もかも失ってしまった子だ。中途半端な気持ちで近寄って欲しくない、そう思っていたが、今、あの子のために動いてくれるのは、君だけだ」

「家の者にも、無事に連れて帰れなければ勘当だと言われてます。…連れて帰れないようなふぬけなら、衛士を辞めますよ」

 アルトゥールは子爵に軽く礼をすると、そのままアーレを探しに出立した。


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