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滅亡間際の異世界へ〜オリジナル戦国スキルで異世界無双英雄伝〜  作者: さいぞう
第一章 はじまりのダンジョン編
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第七話 猛進のグレイトボア

ボス部屋に入ると、そこは大きめの部屋になっていた。部屋を見渡すと部屋の中央に何か大きな物が見えた。


「なんだありゃ。でかい、アフリカゾウかよ。」


思わずそう呟いたカイルの目線の先にいたのは、巨大なイノシシの魔獣グレイトボアだ。


口の両側に太い牙があり、フゴフゴ鼻息を立てながらこちらに興味を示すこともなくウロウロしている。


(これは、チャンスなのか?)


気づいているのかいないのか、近づいてもまだフゴフゴしているだけだった。


グレイトボアの様子を伺いながら槍を構えた。


「貰ったぁぁ!!」


そう叫びながら木の槍を力一杯突き刺す。


槍を刺した時に手に伝わってきた感触に驚く。分厚い皮膚に覆われているのか全力で突き刺したのにほとんど刺さった感じがしなかった。


「プギィィイイイイイイ!!!」


グレイトボアは絶叫し、そのまま槍を振りほどかれ、距離を取られてしまった。


槍の先端を見たが血がついている様子は無い。


(これはまずいかもしれない)


先程の攻撃でかなり興奮しているのか今にも突進してきそうな状態でこちらを見ている。かなり鼻息が荒い。


そのまま槍を構えながら様子を見ているとグレイトボアが雄叫びをあげながら、突進を開始する。


ドドドドドドドッ!!


物凄い音をたて地面を荒々しく蹴り、上下に揺れながら迫り来る。

巨大な塊が猛スピードで突っ込んでくるようだった。


「やばいっ!」


横っ飛びでなんとか倒れながらも回避する。

あまりの突進のスピードに思わず回避動作が大きくなってしまい、焦りながらすぐに体勢を立て直そうとする。


顔を上げてグレイトボアの様子を確認すると、予想外な事にグレイトボアはそのまま突進をやめず、部屋の壁にドーン!とでかい音をたててぶち当たっていた。

部屋は揺れ、天井から砂埃が舞い落ちてくる。


「なんだこいつ、むちゃくちゃだ!」


止まる気の無い突進。自分から壁にぶつかってダメージはないのだろうか。


(知能が低いのか?)


あれこれ考えるが、なぜそんな行動を取るのかわからない。わからないが、そのとてつもない突進の威力と猛進ぶりは流石に恐怖を感じてしまう。


すかさず部屋中央まで行き距離を取った。

思ったより突進のスピードが速かったからだ。最初のボスはまさに猪突猛進を体現している。


気を取り直し、取り敢えず次も回避すると決める。重芯を沈めたと思ったら勢いよく突進を始めたのを見て、横っ飛びで回避した。


すぐに次の動きを確認すると、グレイトボアは再び反対側の壁に激突していた。

どうやらぶつかるまで止まるつもりはないようだ。


動きの傾向は掴むことができた。

次はどう勝つかを考えだす。


「ただ避けるばっかりいてもしょうがないよな。」


そう呟きながら反撃に出ることを決意する。


「さぁ!かかってこいっ!!」


気合いをいれるために朱槍を構えながら叫ぶ。


相手の動きをじっくり見定めていると、グレイトボアが突進を始めたのがわかった。


今だ!と槍を持つ手に力が入る。


「白光っ……」


発動しようとした瞬間、強烈な悪寒が背筋に走った。こんな経験は今までに無い。

第六感なのか身体が全力で動き出そうとするのを拒否しているようだった。

瞬間的にグレイトボアが数倍に膨れ上がって見え、死が迫っているように感じた。


「まずいっ!」


身体が反射的に動き、横っ飛びをした。

直後に真横を大きな音を立てながら巨大な塊が通り過ぎていった。一瞬迷った分回避はかなりギリギリだった。


「プハァ!ハァッ、ハァッ」


冷や汗が溢れ出て、動悸が激しくなり、猛烈に呼吸が荒くなっていた。

死を意識したせいかもしれない。


「はっ、はははっ!」


自分の馬鹿さ加減に笑いが出た。


(確実に今死んでいた。何を過信して馬鹿正直にまっすぐ突っ込もうとしている。ひねりも工夫も無い。俺は勇者でも英雄でも無い。小賢しく工夫してなんぼだろ!)


すぐに間違いを反省し、自らを鼓舞する。

そして、もう一度相手を見つめ直した。


不思議と頭は少しスッキリしていて、思考がクリアになっていく。カイルは土壇場で集中力が増していっていた。


(どうする。回避して突くか。回避動作がデカすぎる。あんなにデカくて速くちゃ、体勢を立て直すのが精一杯だ)


必死に思考を続けながら、またも迫り来る突進を回避し、すぐに立て直す。


(真正面を避けつつ、一撃必殺の威力が必要だ。)


そこまで考えた時に不意にグレイトボアを倒すイメージが湧きあがる。


閃いた。


(イメージは湧いた。だが、多分かなり危険なやり方だ。ーーー危険だが、正直これしか無い。)


カイルはボス部屋のちょうどど真ん中に立ち、迫り来る突進を回避し続けている状況だ。


部屋の中央で長い息を吐き、集中を増していく。


(いけるか?大丈夫か?)


自信がある訳ではなかった。そのイメージにたどり着くまでの過程に問題があるからだ。


(だが、行くしかない。ーーーーよしっ、やるぞ!決めた。やってやる!)


自問自答の上、ついには腹を決める。


迫るグレイトボアの突進を回避し、

回避してすぐ体勢を立て直しなが部屋の中央からグレイトボア側に距離を詰める。


ちょうど5:5だった場所から3:7の距離に位置したのだ。


「これは、流石に近すぎるか。。」


近い。あまりの近さに自分で選んだ距離だが

自信が無くなってくる。脳裏には先程の死にかけたイメージが焼き付いてしまっていた。

思わずグレイトボアの圧力に圧倒されかける。


(いつ来る。見切れ、見切れ、見切れ)


必死に自らを奮い立たせる。

迫力がやばい。

汗が頬を伝っているのがわかった。緊張し、心臓がバクバクしている。


「俺も可児才蔵みたいになりたいもんだ」


吐き捨てるようにそう呟いた。

可児才蔵は勇猛で知られた武将だ。可児才蔵ならこんな状況でも笑って対峙するだろうと

思うが、自分は対峙するだけでいっぱいいっぱいだ。

勇猛果敢。そんな存在にずっと憧れを抱いてきた。


可児才蔵の事を意識したおかげか、湧くように気合がみなぎってくる。

カイルの集中力が研ぎ澄まされていく。


中腰気味に踵を少し浮かせ、いつでも動ける状態で待ち構えた。


じっとグレイトボアを見据えていると、僅かにそれでいて力強く重芯を沈めるのが見えた。


(来るっ!!)


直感で動き出しを感じとる。

そう考えたときには既に身体が動き出しており、横っ飛びで回避する。


直後に身体の真横を巨大な塊が過ぎ去っていった。カイルの回避動作からの立て直しも速くすぐに次の行動に出る。


「白光一閃突き!!」


過ぎ去るグレイトボアに向かって白光一閃突きを発動する。

身体が白い光を帯びてカイルは神速で直進し、グレイトボアを追いかけていく。


「うおおおおおおおおお!!!」


ぐんぐん距離を縮めていった。

それは思い描いた通りのタイミングだった。


ドッ!ーーーーグッバーーンッ!!


グレイトボアが壁に追突した瞬間、カイルの一閃突きがグレイトボアの後方に突き刺さる。そのまま衝撃波が発生し、壁への追突の衝撃と重なった。ものすごい衝撃音とともにグレイトボアが弾け飛んだのだ。


肉片が宙を舞い、バラバラと地面に落ちていく。カイルと壁の間には原型を留めていないグレイトボアの残骸が転がっている。


「や、やった。。やったぞー!!」


そう叫び、腰が抜けたように大の字に寝転がる。


蘭丸が走り寄り、顔を舐めてきた。

蘭丸は言いつけを守り、ずっと見守っていてくれた。まるでお疲れ様とでも言ってくれているようだ。


「ははっ、蘭丸。ありがとうな」


蘭丸を撫でながら立ちあがる。


「クラム、見てろよ!俺はもっともっと強くなってやるからな!」


そう言いながらクラムに向かって拳を天に突き上げた。


ーーーーーーーーーーーー


「さてと、、」


クラムへ高らかに宣言を終え、気持ちを切り替えて魔石を回収する。

魔石はいつものより少し大きい。


(流石、ボスの魔石だ)


先に進もうと部屋の中央を見ると宝箱が見えた。


「おぉ!撃破報酬かっ!」


思ってもいなかった報酬に思わずテンションがあがる。宝箱は開ける瞬間が何よりの楽しみだ。

ワクワクしながら宝箱を開ける。


「はうあ!!槍だ。槍が入ってる。しかも、柄の部分が朱色じゃないか。。」


嬉しすぎて涙が出そうだ。

もはや頬擦りをしたくなるレベルだった。


歴史上、朱色の槍は武勇の誉れとして限られた人しか持つことが許されなかった。

歴史好きとしてはこれ以上無く格別なご褒美なのだ。


笑顔でクラムが見ている気がした。


「ありがとう。頑張るよ!」


そう言いながら、朱槍を触り感触を確かめる。


やはり木の槍とは全然違う。

ズッシリといい感じの重みがある。


刃先、石突き、柄、それぞれの部位を眺め、その出来上がりに感心をする。



何かを思い立ったようにおもむろに槍を構え、

朱槍を頭上でグルグルと振り回し、片足をドンっと出してポーズを決める。


「我こそは、アウゼフ王国軍 一番槍 カイル!いざっ!尋常に勝負っ!!」


そう叫び、そのまましばらく沈黙が流れる。

蘭丸は不思議そうにこちらを見ている。


「くっくっくっ、はっはっはっ!!

はぁ~。一回言って見たかったんだよな。これ。


朱槍を手にし、戦国武将の気分を味わいたかったのだ。自分でやっときながらも馬鹿みたいだと若干の後悔が襲ってくる。


「すまんすまん、びっくりさせたか?先に行こうか」


そう言いながら蘭丸の頭を撫で、先に歩を進めた。


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