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滅亡間際の異世界へ〜オリジナル戦国スキルで異世界無双英雄伝〜  作者: さいぞう
第二章 アウゼフ王国義勇軍編
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第三十八話 集結

バロウが奥の手である閃光弾を使い、それに対してザールは無差別攻撃で対応した。

周辺はフレイムにより火の海と化し、そこから更に外側に向けて無数のダークボールが飛び交い、いくつもの爆発が巻き起こる。

そんな状況の中、シルビアとバロウの元にルーカスが駆けつけた。


ルーカスはこの状況を見ながらどう動くかを思案する。


「シルビア。弓は引けそうか?いけるなら、ラシュタール方向に弓なりに鏑矢を打ってほしいんだが。」


「あぁ、大丈夫だが何の意味があるんだ?」


不思議な顔をしながらシルビアがルーカスに聞く。


「カイルに意図を伝えたいんだが、まぁ伝われば儲けものぐらいのものだ。よろしく頼む。」


そうルーカスに言われ、わかったと返事しながらシルビアはラシュタール方向に鏑矢を放った。


「無茶苦茶な攻撃をやめたな。あいつ、もう視力が回復しやがったか。こっちに向かってくるぞ」


バロウはザールの様子をずっと伺っていた。シルビアの鏑矢を見てザールがこちらの居場所に気づいたらしく向かってきているのが見えた。


「全軍!戦いながら少しずつ後退しろ!」


その時、カイルの声が戦場全体に響き渡る。

その声に軍兵が「オォ!!」と応答し、募集兵もそれに合わせて後退を始める。

カイルの掛け声はこの戦場に置いて既に絶大な信頼が寄せられている状態になっていた。


「シルビア、バロウ!ここでやつを足止めするぞ!そうすればあいつを戦場から切り離すことができる。」


ルーカスの狙いはザールを分断し決戦を挑むことだった。その意図をカイルがどこまで読み取り軍全体に指示を出したのは謎だが、事はルーカスの狙い通りの形になろうとしている。


「結構正念場って感じだなぁ!シルビア、へこたれんなよ!」


「馬鹿を言え。へこたれかけてたのはお前の方だろ。」


そう言いながらシルビアが矢を放つ。すると、お返しと言わんばかりにダークボールが飛来する。


「避けろっ!」


シルビアがいち早く察知し合図を出した。3人はその場から飛ぶようにダークボールによる爆発を回避する。


回避する際に3人は違う方向に飛んだため、僅かに距離が離れてしまった。そのタイミングでザールがシルビアに強襲をかけた。


「テメェが一番鬱陶しいんだよー!」


迫り来るザールに対し、シルビアは全力で回避することを選択する。


ザールの手刀を顔を僅かにズラし回避した。


「あぁ?避けてんじゃねーぞ!オラぁ!」


避けられたことに苛立ったザールが連続で突きを加えてきた。


それを更にシルビアは躱す。躱す。躱していっている。シルビアは驚くほどの回避力を見せた。


シルビアは元々目がいい。それが今、全力で回避動作のためだけに使われている。ほとんど無意識だが僅かな筋肉の挙動、体重移動、それらを見逃さず捉え軌道を読むことに成功していた。


(なんだ?感覚がどんどん研ぎ澄まされていく。)


回避をしながら、シルビアはザールの動きが少しずつ遅く感じるような感覚を覚えていた。


ザールの下から突き上げるような手刀をバックジャンプで回避しながら、空中で素早く矢を放った。しかし、それはザールの右肩を狙うも身体をズラされ避けられてしまう。


「糞雑魚がぁ。調子に乗るんじゃねー!!」


そう叫びながらザールが全身から黒いオーラを放ち爆発させた。


「まずい!」


予期せぬ攻撃に咄嗟に両腕でガードするも、その爆発を受け、シルビアが宙を舞うように吹き飛ばされる。


「ルーカス!シルビアを頼む!」


ザールがシルビアに追撃を加えようとしたところでなんとかバロウが間に割って入った。


「お前の相手は俺だ!」


「こいよ。糞雑魚!ーーフレイム!」


ザールがフレイム放ってきた。

バロウは両腕でガードしながらザールに向かって突っ込んでいく。


「ヒール!!」


自身にヒールをかけながらフレイムの炎を強引に突破した。


「あちぃなぁ!この野郎!」


「ダークボール!」


ザールは炎を突破し、ガードを解いた直後のバロウの腹部にダークボールを直接押し当て爆発させた。


「ぐあぁああ!」


爆発によりバロウが吹き飛ぶ。


「お前がそう来るのも想定済みなんだよ。」


吹き飛んでいくバロウに対してザールが呟く。

そして、残りはお前だとルーカスの方を睨みつけた。


その時、白光状態となったカイルがザールの前に降り立った。


「ルーカス!シルビアとバロウは大丈夫か?」


「あぁ、二人分のエリクサーはある。大丈夫だ!」


カイルの問いにルーカスが即座に答える。


「お前のその声。聞き覚えがあるな。鬱陶しい演説かましてたやつだ。そう、カイルだ。勝利に導くとかなんとかほざいてやがった。一番鬱陶しかったやつがついに現れたか。」


静かに怒りが篭ったトーンでザールがカイルに向かって話しかける。


「左翼のゴブリンロードは俺がやっつけたよ。あとはお前だけだ。観念したらどうだ?」


カイルは敢えてゴブリンロードを倒したことに触れ、相手に揺さぶりをかけようと試みた。


「あぁ?ゴブリンロードだぁ?あんな雑魚が死んだからどうだってんだ。関係ねぇ。今、ここで俺が全員殺すからな。」


そう言うザールが何かの気配を察知して、後ろを振り返った。そこにはジェイクが無言で迫っており、双剣で斬りつけてきていた。


「雑魚がどんどん湧いてきやがる。これで最後か?」


ジェイクの双剣を手刀で弾き返し、奇襲は失敗する。チッと舌打ちをしてジェイクは一旦距離をとった。ついに、ザールとの決戦にカイルとジェイクが集結した。


「なんかこいつ腹立つ喋り方してんな。これが魔族か。」


ジェイクがそう呟きながらザールを睨みつける。


「カイル、ジェイク。遅いぞ。やっときてくれたのかよ。」


エリクサーを飲んだバロウが復帰して二人の元にやってきた。その後ろにはルーカスとシルビアの姿もある。


「遅くなってごめん。魔族相手によく耐えてくれたね。ーーールーカス。状況を簡潔にお願いできるかな。」


「指揮官は魔族。得意なのは炎系だ。火炎を出すフレイムに爆発を起こすダークボール。近接は手刀だ。だが、金属のような硬さがあるぞ。」


カイルの問いにルーカスが即座に答えた。


「了解!とりあえずはジェイクが俺と一緒に前衛。ルーカスとバロウは中衛。シルビアが後衛でいつも通りでいこうか。」


カイルが素早く指示を出しそれにそれぞれが返事をして戦闘の陣形をとる。


カイル達とザールの最後の戦いが始まろうとしていた。

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