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滅亡間際の異世界へ〜オリジナル戦国スキルで異世界無双英雄伝〜  作者: さいぞう
第二章 アウゼフ王国義勇軍編
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第三十四話 義勇軍vs魔王軍

~Another view ジェイク~


カイルの突撃の掛け声にカイル隊はすぐに鬨の声を上げた。士気は充分に高まっており、誰一人魔王軍に臆してはいない。


「野郎ども、進みながら横に広がっていけ!」


部下達に指示を出し突撃を開始する。ルーカスの立てた作戦は言ってみればカイル隊による力押しだった。扇状に広がっていき各地で暴れまわって軍兵や募集兵を牽引してくれと言われている。ジェイクは右翼を担当することになっている。


「俺はそのまま右翼まで突き進む。しっかり漢をみせてこいや。ゴブリン共をなぶり殺せっ!」


走りながら檄を飛ばし背中の鞘から双剣を抜き取った。アイテムボックスをもってはいるが敢えて双剣だけはポーチにしまわずに背中に背負っている。


もう少しでゴブリンの大群に突入するというタイミングでカイルから弥助をセットする掛け声がある。


(測ったようなタイミングだな。)


まるで上から戦場を見ているかのようなカイルの掛け声に思わず笑みが溢れる。


「剛力!」


魔王軍へ突入するタイミングで全員で剛力を発動させる。


「オラオラオラァ!」


剛力を使った状態での連撃は驚くほどよく切れた。まるで両手で振り回しているかのような威力を片手で実現させている。


「はっはー!かかってこいや!オラァ!」


闘いながらテンションが上がっていくのが分かる。回転するように敵陣の中を双剣を振り回し、どんどんと右翼に向かって突き進む。


前方にオークが盾兵に向かって巨大な棍棒を振り回しているのが見えた。


「オークは俺に任せろっ!」


軍兵に声をかけながら勢いそのままにオークの前に躍り出ると、オークは棍棒をジェイクに向かって振り下ろしてきた。


「力比べといこうじゃねーか!」


双剣を頭上でクロスさせ、棍棒を受け止める。

剛力の効果のおかげか全く力負けする気がしない。


「オラァ!」


そのまま力任せに棍棒を弾きあげた。オークの腕が大きく跳ね上げられ体勢を崩した。


「俺の勝ちだ!クソ雑魚がぁ」


そう叫びながら連撃によりオークを両断した。

次の相手を求めて、再度走り出したところで剛力の効果が切れたのが感覚でわかる。


すぐにカイルから可児才蔵セットの掛け声があった。ジェイクは敢えて双剣のスタイルを継続するつもりだ。部下達が素早く槍に切り替えて白光状態で飛び交っているのが見えた。


「いいぞ、その調子だ!」


笑いながらそう呟き、ジェイクは更に右翼へ右翼へと突き進む。


ーーーーーーーーーーーーー


~Another view シルビア~


「シルビア隊は前線に出た後に横に展開しろ!盾兵と連携するぞ!」


ジェイク達が動き出したのを見て、シルビアも素早く配下兵に指示を出した。シルビア隊は30人で構成されており、全員が大弓を手にしている。

ルーカスの作戦では盾兵を壁にしながら横に展開し大弓による狙撃役を任されている。


ジェイクが右に突き進んでいくのが見える。カイルは左に進んでいる。シルビアは中央から少し左寄りに位置するつもりでいる。

盾兵の後ろ側にたどり着くとそこから弓の射程を考えながら一定の距離をあけて横に広がっていく。この距離間隔もルーカスの指示により事前に練習していた通りだ。


「劣勢の場所を狙うんだ!あとはオークだ!オークを狙い撃てっ!」


横に広がっていく配下兵達に向かって指示を出すと、シルビアも大弓を構えて矢を引きはじめる。

大弓をギリギリッと引き、少し距離の離れたオークのこめかみを撃ち抜いた。オークの位置を確認しながら移動して射抜く。移動して射抜くを繰り返す。


シルビアは戦場を冷静に見渡していた。

オークの数、位置、どこが劣勢でどこが踏ん張っているか。シルビアはいつも後ろから戦況を眺めながら戦って来た。誰が危ないか、どこに射撃を入れるべきか。今、その目はパーティ単位ではなく、軍単位で戦況を測ろうとしている。


ゴブリンに押されているエリアでは、ゴブリンを纏めて射抜いて援護射撃を繰り出す。


シルビアの射程は長くそして戦況を分析しながら移動しつつ矢を放ってくシルビアの姿に軍兵達は頼もしさを感じていた。


「オークは俺達に任せろ!危ない時はひたすら耐えてくれ!援護する」


シルビアが軍兵達に声をかけると、「オォォ!」と軍兵達がそれに応えた。


ふいに視界の端にバロウが敵陣に切り込んでいくのが見えた。


「死ぬんじゃねーぞ!バロウ」


そう呟きながら放ったシルビアの矢がオークの眉間を貫いた。


ーーーーーーーーーーーーー


~Another view バロウ~


「バロウ隊!横に広がって前線の軍兵を回復しまくるんだ!俺達が誰も死なせねー!」


シルビアが配下兵に指示を出したのを見てすぐにバロウも指示を出した。バロウ隊は24人で構成され魔導武器バロウメイスを装備している部隊だ。

ルーカスからは軍兵とカイル隊の回復支援を主な役割として与えられている。


ルーカスに最初にそれを言われた時、俺も闘いたいと駄々をこねた。みんなが戦っている中で自分だけ後方にいるなんてごめんだった。

結局は無理をしないことを条件にバロウだけは最前線で回復をしながら戦ってもいいということになった。


「ヒール!ヒール!---ヒール!大丈夫か?ヒール!」


バロウが手慣れた様子で次々にヒールをかけていく。バロウ隊の面々も怪我をして倒れている軍兵に向かってヒールをかけ始める。やはり慣れの差なのか少し手際が落ちるが確実に回復を行なっていく。


「すまない。助かった。」


軍兵達はお礼をいいながら立ち上がり戦線に戻っていく。バロウ隊のおかげで各地で兵達が戦闘に戻っていっている。


「よし、なんとか任せても大丈夫そうだな。

へっへー!いっちょ、やってやるかー!」


バロウメイスを構え、バロウは単独で敵陣に切り込んでいくことにした。盾兵を囲んでいたゴブリン達を3体同時に魔力の刃で両断し、すぐに刃を解いた。バロウはあれから練習を重ね、斬る瞬間だけ魔力の刃を出すやり方を会得していた。

次にオークに狙いを定め更に奥を目指していく。


「ほいっ!ほいっ!オラァ!」


軽やかな掛け声とともに襲い掛かるゴブリンを切り伏せていく。


オークに辿り着き、オークが大きな棍棒を振り下ろしてくるのを魔力の刃で受け止める動作をみせた。オークはぶつかり合う衝撃に備えて手に力をこめた。


「はい、残念でした〜!」


バロウが寸前で刃を解くと棍棒がスカを食い大振りとなってオークの体勢を大きく崩れる。

そこを改めて刃を出現させ両断した。


「闘う回復屋バロウ様のお出ましだい!」


バロウメイスを肩に置きバロウがゴブリン達に向かって名乗りをあげた。


ーーーーーーーーーーーーー


~Another view ルーカス~


ルーカスは元いた場所から動かず戦場を見渡している。カイルが左翼に向かっていき、ジェイクが右翼。シルビアは盾兵と連携をはじめ、バロウは単騎で中央に突っ込んでいったのが見えた。

カイル隊の面々は横に広がっていきながら各地で順調に暴れているようだ。


「指揮官はどこだ。どこにいる。」


そう呟きながら戦場で起きる変化を見逃すまいと後方から見渡しているのだ。


不意に左翼で激しい音と共に兵が舞い上がるのが見えた。何かがそこに出現したことが見て分かるが、カイルもそれに反応して向かっていっているのが見える。


(あれはたぶん違う。あからさまに目立ちすぎている。だとすると、中央か右翼かもしれない。)


ルーカスは左翼に出現したのは指揮官ではないと踏んだ。ルーカスにはもう一つなんとかしないといけない問題を抱えていた。

それは募集兵達の存在だ。


カイル隊が流れを押し戻し、軍兵達が奮闘している。この状況においてもまだ募集兵達は動き出そうとしていない。戦況を覆すにはまだ数が足りていない。なんとかして募集兵を動かす必要があった。


彼らは報酬目当て、復讐、街を守るため等それぞれの思いで参加しているが寄せ集めの集団だった。戦闘経験もそれほど多くない。

それが初めての戦場で圧倒され、倍の軍勢を相手することとなり、開幕に恐怖心を植え付けられてしまった。足が地面にずっしりと根付き離れない感覚に襲われている。参加したことを後悔したものすらいた状況だった。


この状況をみてルーカスが動き出す。


「おい、みんな!俺たちもやろうぜ!黙って見てる場合か。あんな子供が敵陣ど真ん中に切り込んでいっている。カイル隊と軍兵達が各地で流れを押し戻してくれている。俺たちは何のために参加した?!必死に戦っている姿をただ見ているだけなのか!?」


突如叫び出したルーカスの言葉に最初は驚きを見せていたが、次第に募集兵の顔つきが変わっていくのが見て分かる。煽られて顔つきが険しくなっていっている。


(もう少しだ。)


「お前らが行かないなら、俺だけでもいく!まだ気概が残っているやつだけついてこい!これでもまだ動けないようなやつはとっととケツまくって逃げやがれっ!」


ルーカスが煽るように叫び続ける。


「うるせー!そんなことはわかってんだよ!わかってんだがビビって足が動かねー。ビビっちまったもんはしょーがねーだろっ!」


募集兵の一人がルーカスに向かって叫んだ。


「まだ叫ぶ元気が残ってるじゃないか!それなら動けるようになる方法を教えてやるっ!叫ぶんだっ!騙されたと思って叫んでみろ!さぁ!叫ぶんだ!」


ルーカスの言葉に言われた本人は若干戸惑いを見せたが腹を決めた様子で叫び出した。


「うおおおおおー!!」


「そうだ!もっと叫べ!腹から声を絞り出せ!周りのやつも見ているだけか?!ほら、叫ぶんだ!」


ルーカスのその言葉に反応するように叫ぶ声が連鎖していく。それは募集兵達の中央部から始まり、叫びの連鎖は両翼に向かってどんどんと広がっていく。ついに怒号のような掛け声となって弾けた。


「「「オォォォォ!!」」」


ビリビリと大気を震わせながらカイル隊を除く残りの募集兵達が鬨の声を上げ出した。募集兵達は声を上げながら気分が高揚していくのを感じていた。今までの鬱憤を全て吐き出すかのように叫び続けている。


「いくぞ!全員突撃だっ!!」


頃合いを見てルーカスが合図を出すと一気に募集兵達が突撃を開始した。


(さぁ、これでこちらの駒は揃った。あとは闘うだけだ。)


義勇軍の死力を尽くした闘いは終盤に向かおうとしている。

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